星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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空にありては

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「本題に入ろうか」
 え~と、まだ入ってなかった?
 魔力の影響も感じられないのに、ライト、ヒヨリ、俺を強く捕らえたまま、ジョバンニ=カスティーリャは言葉を続ける。
「君、もしかして自己評価低い?」
 やかましいわ。分かってます~。親の愛情たっぷりで育った訳じゃないから、そんな事。でも俺にはヒヨリが居たから大丈夫なんです~。

「まだ分かってないね。これは君を捕える罠だったんだよ」
「はい?」


「私も転移出来るんだが。あれが効くのは実際に行って自分の目で見て来た、自分の知ってる場所限定だろう?」
 ゾワゾワして来た。身体を捕えている上に、彼は言葉でも俺を絡め取る。
「知らない場所でもある程度なら転移出来るんだろうが、あんな場所だ」

 あんな場所。
 あんなーー魔力の影響が強く、公爵家王家そして神の加護まであるであろう神聖な土地。
「別のおかしな場所に飛ばされるぐらいならまだしも、この身を粉々にしたくはないのでね」
 俺は召喚に失敗した者たちの成れの果ての姿がどうだったか、以前聞いた話を思い出してた。聞いてるだけで吐きそうになるグロテスクな話。召喚ではなく転移だが、あんな場所ではどうなるか分からない。フツーなら弾かれるだけだと聞いたけど。
「能力だけなら、ジュジュでも勿論他の者でも良かったんだが。それは私と同じだしね。ゾフィーは能力はあるし場所は知っているらしいが、どれが木蓮なのか見当もつかなだろうね。
 ああいうモノはね、必要なものにしか分からないんだ。分かる能力というのもある」
 そこで彼は嘲る様に笑った。
「行き着けないんなら同じだろう?」
 強気に言い返したのは俺じゃなくてヒヨリだった。ヒヨリってこんなだったっけ? この五年(俺には半年だったけど)で俺の幼馴染みは身長だけじゃなく大きく自分の中を変えている。

 でも俺たち三人ジョバンニ=カスティーリャの腕の中でジタバタしてるだけなんだけど。
 ジョバンニは俺たちを華麗に無視して言った。
「同じ能力を持っていて、あの場所を知ってる者」

「グエン殿下でも良かったんだが、王子様はなかなかに曲者だ。
 君はあの木を知ってる。そして御し易い」

 言い返せないのが辛い。
 そうなんだよ。もともとそういう性質もあるんだろうが、王子様のあの軽薄は国の為兄の為甥っ子の為わざわざそうしてるんだろう。それは国民皆分かってる。だから王子様はおいそれとは他人の挑発には乗る事もない。乗ったと見せ掛けて、自分の掌の上で泳がせてるんだ。そこは腐っても王族。ローデンハイムは安泰。
 だけど俺は?
 グエンと同じ能力があり、認めたくはないが非常に扱い易い。自分では自覚はないが、子供の腕を捻る様なもんだろう。実際、子供だしね!
「俺はコントロール出来ないぞ」
 自慢じゃないが、俺の能力は限定されている。それは良かった。……良かった? 限定……。限定? 何に限定されてるんだっけ?

 俺の転移魔法は意識しては発動はしないが切羽詰まった時には強力に発動される。

 ヤバい。
 これはヤバい。
 見てはいけないのに。
 ジョバンニ=カスティーリャに覚られてしまう。
 でも目が彼を見つめて離してくれない。
 ジョバンニによって床に縫い付けられた様に動かない彼を。
 幼馴染み以外で初めて逢った大切な人に。こんな短い間に信じられないくらい。


「さあ、君が現れた場所を思い出して? 木蓮の木だよ」

 ふふふ、と狂人の笑いで。

「彼の為に暴走して? 私の為と言えないのが悲しいけど」




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