星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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汝、それを思い出してはならない。*(かなり痛いです)

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 ふわり、とリロイが浮いた。

 ドン!

 見えない力に弾かれて、リロイが倒れていた床から天井に打ち付けられる。落下したのと同じ衝撃がありそうな音。
 俺の視線より上になって、いつも綺麗に整えられている黒髪が血でべっとり額に貼り付いているのが見える。見える所であんなだったら、服に被われて見えない所はもっと酷いことになってるに違いない。

 落ちることなく天井に張り付いたままだ。
「ふふ」
 ジョバンニがまた嫌な笑いを漏らした。
「ぐっ」
 リロイの顔が苦痛に歪む。身体が痙攣を起こす。
「彼の骨、丈夫だね」
 信じられない言葉をジョバンニが平然と口にする。
「止めろ!」
 叫んでしまった。そんなのジョバンニを煽るだけで逆効果なのに。そんなの分かっているのに。叫ばずにいられない。ジョバンニに捕らえられたまま何も出来ない。

「ごふっ」
 リロイの口から血が零れ落ちる。
「止めて! 止めて止めて!!」
 お願いだ。もう俺の大切な人に酷いことしないで。
「だめだ、リョウ!」
 王子様も叫ぶ。
 ドン!
 ジョバンニはリロイにしたのと同じ様に、グエンを天井に打ち付けた。

 考える間もなく衝撃が来た。
 キールだった。
 いつの間にかジョバンニの背後に回って体当たりして来たのだ。グエンは注意を引き付ける為わざと叫んだのだ。
 キールがぶち当たったのはジョバンニだったが俺たちもついでに衝撃を受ける。
 ついでだったけど、ついでに俺たちはやっとジョバンニから逃れた。
 天井から落ちて来るリロイの元に走る。
 魔法は効かない。
 体で受け止めるしか!
「リョウ! 木蓮の木だ!」
 そう叫んだのはジョバンニの声だ。
 え?
「思い出すな!」
 王子様も叫んだのは、計算外だったんだろう? 後で、予想通りだ、なんて言ってたけど、絶対嘘だ。王族って自分の手柄にするよね、そういうとこ。


「君の魔法を許す! 思い出せ!」

 組み合ってるジョバンニとキールにライトとヒヨリが喰らい付く。

「君が初めてこちらに来た場所だ。彼らーー彼と初めて会った場所だよ!」
「思い出すな!」
 そう叫んだのは誰なのか、もう分からない。

 思い出すなと言われてもそんなの無理だ。
 リロイは落ちて来る。グエンも。皆んなは倒れたまま。かろうじて動ける者もジョバンニに絡め取られる。

 止めて。死んでしまう。

「安全なところへ!」
 ジョバンニが煽る。
 安全なところへ。
 彼を安全なところへ連れ出さなくては。
 何も心配要らないところ。

 ジョバンニの声が響く。
「君たちが出逢ったところだ」
 頭の中に忍び込んで来る。

 思い出すのは、木蓮の木。

 それははっきり目の前に浮かび上がる。
 絡まった二つの木蓮。
 まだ花は咲いてなくて、俺にはそれが木蓮だとはよく判らなかったけど。キラキラの雪を被せて。ヒヨリがあれは木蓮だよって言った。

 そうして、黒猫は鳴くんだ。
 今までで一番大きな声で。
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