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望むものは。
しおりを挟む「私は君が羨ましい」
彼の視線の先には多分、俺と同じ、リロイが居るんだ。
「赤い糸で結ばれてるんだって?」
ふふ、と彼の温かい息が耳に掛かる。
「赤いリボンでぐるぐる巻きにされてたって。王都の御令嬢たちの間で持ち切りだよ、その話」
誰だ、そんな話広めたの?
分かってる、王子様だよね?
いや、ちょっと待て。ゾフィーもジュジュも目を逸らしたぞ。キールとリロイまで在らぬ方を向いてない?
「絶望しない事をね。私たちも結ばれてたのは確かだから。困った事に私は彼女に愛情が持てなかった。赤い糸で結ばれてたのにね。
さっきも言ったかな?
なんか繰り言ばかりだね」
効かない。魔法も何も。皆んなが俺を救おうとしてる。俺には何も出来ない。
その時温かい息が質量を伴って俺の耳朶に触れた。
「おや、こんな事されるの初めて?
彼はスローハンドなんだね。以前聞いた話とは随分違うな。君も聞きたい? 彼の武勇伝。勿論、君の現れる前だから許してやって?」
くすくすと笑う。
俺は狂人が笑うと怖いのだと知った。
ああ、そうか。彼は狂人なのだ。
きっと俺たちの言葉は通じない。
それでも通じるものが? あると信じたい。
「それともそんな事気にせず、私に攫われる? 絶望より先に。君、彼に似てる。昔の彼に。前世の彼に。この中では、ってだけだけど」
そう言って、彼の舌が耳に這わされるのと同時に、手が何かを探る様に俺の身体に降りて来た。
「止めろ!」
リロイが叫ぶ。
「バカだなぁ。そんな事逆効果なのに。若いね、君の恋人も。やはり私に乗り換えてみれば? 満足させてあげるよ。彼なんてすぐ忘れさせてあげる」
「さっさと持ってけ! お前の欲しい宝はそこにある!!」
かぐや姫の衣裳を指してグエンも叫ぶ。
王子様。国を代表してそこは国宝守んない?
有難いけど、目眩するわ。
「いい加減にしろっ!」
ゾフィーが叫んだ。そして次の場面では地面に打ち付けられ動かなくなった。
前に出ようとするリロイも跳ね飛ばされる。
それを皮切りにグエンもジュジュも倒され、攻撃を仕掛けようとした人々が次々と床に這い蹲される。人海戦術で隙を作ろうとしてるのが俺にも分かったので、身を捩ってジョバンニから逃れようとするが、身動きはできるがただの腕力でも敵わない。
何で俺はこんなに非力なんだ?!
「あー、そうだった。忘れるところだ。
私が欲しいのはかぐや姫の宝じゃないんだ。別にあるんだ。でもそれを手に入れても結局同じところに行き着く気がして迷ってるんだよ、本当に。君の方がいいかも」
ふふ、何度目かの小さな笑い声を溢して彼は、
「連理の枝って知ってる?」
本題に入った。
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