星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

文字の大きさ
54 / 72

望むものは。

しおりを挟む


「私は君が羨ましい」
 彼の視線の先には多分、俺と同じ、リロイが居るんだ。
「赤い糸で結ばれてるんだって?」
 ふふ、と彼の温かい息が耳に掛かる。
「赤いリボンでぐるぐる巻きにされてたって。王都の御令嬢たちの間で持ち切りだよ、その話」
 誰だ、そんな話広めたの?
 分かってる、王子様だよね?
 いや、ちょっと待て。ゾフィーもジュジュも目を逸らしたぞ。キールとリロイまで在らぬ方を向いてない?

「絶望しない事をね。私たちも結ばれてたのは確かだから。困った事に私は彼女に愛情が持てなかった。赤い糸で結ばれてたのにね。
 さっきも言ったかな?
 なんか繰り言ばかりだね」

 効かない。魔法も何も。皆んなが俺を救おうとしてる。俺には何も出来ない。

 その時温かい息が質量を伴って俺の耳朶に触れた。

「おや、こんな事されるの初めて?
 彼はスローハンドなんだね。以前聞いた話とは随分違うな。君も聞きたい? 彼の武勇伝。勿論、君の現れる前だから許してやって?」
 くすくすと笑う。
 俺は狂人が笑うと怖いのだと知った。
 ああ、そうか。彼は狂人なのだ。
 きっと俺たちの言葉は通じない。
 それでも通じるものが? あると信じたい。

「それともそんな事気にせず、私に攫われる? 絶望より先に。君、彼に似てる。昔の彼に。前世の彼に。この中では、ってだけだけど」
 そう言って、彼の舌が耳に這わされるのと同時に、手が何かを探る様に俺の身体に降りて来た。
「止めろ!」
 リロイが叫ぶ。
「バカだなぁ。そんな事逆効果なのに。若いね、君の恋人も。やはり私に乗り換えてみれば? 満足させてあげるよ。彼なんてすぐ忘れさせてあげる」
「さっさと持ってけ! お前の欲しい宝はそこにある!!」
 かぐや姫の衣裳を指してグエンも叫ぶ。
 王子様。国を代表してそこは国宝守んない?
 有難いけど、目眩するわ。

「いい加減にしろっ!」
 ゾフィーが叫んだ。そして次の場面では地面に打ち付けられ動かなくなった。
 前に出ようとするリロイも跳ね飛ばされる。
 それを皮切りにグエンもジュジュも倒され、攻撃を仕掛けようとした人々が次々と床に這い蹲される。人海戦術で隙を作ろうとしてるのが俺にも分かったので、身を捩ってジョバンニから逃れようとするが、身動きはできるがただの腕力でも敵わない。
 何で俺はこんなに非力なんだ?!


「あー、そうだった。忘れるところだ。
 私が欲しいのはかぐや姫の宝じゃないんだ。別にあるんだ。でもそれを手に入れても結局同じところに行き着く気がして迷ってるんだよ、本当に。君の方がいいかも」


 ふふ、何度目かの小さな笑い声を溢して彼は、
「連理の枝って知ってる?」
 本題に入った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

処理中です...