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日常の章
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丘の上に佇んでいる「かしの木神社」は、すすけた緑色の屋根が目立つ古い神社だ。石造りの長い階段を登った先には、落ち葉で埋もれた石畳が続き、その奥に木造の社が見える。神社は無人で管理もあまりされていない。元々は障子が貼られていただろう扉には、枠だけが残されており、蜂の巣のような穴ぼこから中の薄暗い部屋が覗ける。
かしの木神社は周りを鬱蒼とした木々で囲まれており、丘ではなく森の中にいるような気分にさせられる。僕が生まれる前までは禿げた丘に近かったそうだが、少しずつ樹木が育ち、樹林となり、最後には森のようになってしまったそうだ。
かしの木神社と呼ばれる理由は、御神木としてかしの木が一本植えられていた為だが、御神木は植樹して数年ほどで枯れてしまい、神社の名前を実証できる証拠がなくなっている。
この神社が出来たばかりの頃は参拝客も多かったそうだが、丘の上にあり、高齢者には登るのが困難な階段が続くため、自然と人は減ってしまい、今の廃墟のような状態となっている。
神社の裏手に回ると、一箇所だけ樹木が生えていない部分があり、そこから街を見通すことができる。僕が住んでいる街は、他の地方に比べたら少しだけ栄えた県の中心市街地で、ビジネス街とベッドタウンが河川を中心に分断されている。2年ほど前から本格始動した区画整理によって土地の開発が進み、一部は綺麗な街並みが出来上がり、現在進行中の箇所は工事の看板が入り乱れ、平日は工事の騒音が鳴り響いている。
僕はその場所に作られた壊れかけのベンチに
かしの木神社は周りを鬱蒼とした木々で囲まれており、丘ではなく森の中にいるような気分にさせられる。僕が生まれる前までは禿げた丘に近かったそうだが、少しずつ樹木が育ち、樹林となり、最後には森のようになってしまったそうだ。
かしの木神社と呼ばれる理由は、御神木としてかしの木が一本植えられていた為だが、御神木は植樹して数年ほどで枯れてしまい、神社の名前を実証できる証拠がなくなっている。
この神社が出来たばかりの頃は参拝客も多かったそうだが、丘の上にあり、高齢者には登るのが困難な階段が続くため、自然と人は減ってしまい、今の廃墟のような状態となっている。
神社の裏手に回ると、一箇所だけ樹木が生えていない部分があり、そこから街を見通すことができる。僕が住んでいる街は、他の地方に比べたら少しだけ栄えた県の中心市街地で、ビジネス街とベッドタウンが河川を中心に分断されている。2年ほど前から本格始動した区画整理によって土地の開発が進み、一部は綺麗な街並みが出来上がり、現在進行中の箇所は工事の看板が入り乱れ、平日は工事の騒音が鳴り響いている。
僕はその場所に作られた壊れかけのベンチに
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