婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。

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After 7. 誠実の庭で結ばれる誓い

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白いバラの庭は、朝の光を受けて静かに輝いていた。
クラリッサは、ひとり庭石の小道を歩きながら、咲き始めたバラの花弁にそっと触れた。

柔らかな白が、指先でふるりと揺れる。
香りはまだ淡いが、それでも確かに、自分の庭の匂いだった。

この庭は、母の庭だ。
エリザベラが好んで世話をし、エインズワース家の女主人として、ここに季節を刻んでいった。

クラリッサが覚えている母の姿は、決して多くない。
それでも、白いバラの前に立つと、胸の奥に、かすかな温度が戻ってくる。

「……おはよう、クラリッサ」

背後からかかった低い声に振り向くと、エインズワース公爵がそこにいた。

いつも通りの重厚な佇まい。
朝の光を背に受けたその姿は、昔と変わらず“静寂の一部”のようだった。

「おはようございます、父上」

クラリッサは裾を摘まみ、穏やかに一礼する。
公爵は短く頷き、彼女の隣まで歩み寄ると、同じ白いバラを見つめた。

「今年は、よく咲きそうだな」

「はい。冬がやわらかかったおかげか、蕾も多くて……」

言いながら、クラリッサは少しだけ息をつく。

この庭で父と並ぶとき、自分はいつも、ほんの少しだけ幼くなる。
安心と、懐かしさと、少しの心細さが混じった、不思議な感覚だった。

公爵はしばらく黙っていた。

風が吹き、バラの枝と枝が触れ合う音がする。
その静けさを一度受け止めてから、父はぽつりと言葉を落とした。

「……お前は、よくやっている」

クラリッサは、思わず父の横顔を見上げる。

「王女殿下の補佐。
 外交の席、新法の説明。……どこでも、お前の名を聞く」

「……父上」

「エインズワースの名だけで呼ばれているのではない。
 クラリッサという人間を求めて、声が掛かっている」

それは、この父にしては十分すぎるほどの賛辞だった。
胸の奥に、誇らしさと、少しのくすぐったさが広がる。

「……もったいないお言葉です」

そう答えると、公爵はほんのわずか口元を緩めた。

「人間の誠実には、向けどころがある」

短く、しかし迷いのない声音だった。

「国。家。人。
 お前は、これまで国と家に多くを割いた」

「はい」

そこで彼は、すぐには続けなかった。
クラリッサが何か言葉を探すのを、静かに待っている沈黙だった。

クラリッサは胸の奥を確かめるように息を吸う。

何も言えずにいる娘を見て、公爵はわずかに視線を落とした。

「……これからは、自分のためにも使え」

厳格でありながら、優しく背中を押す一言だった。
クラリッサは、息をのんだ。

父の視線が、今度は庭ではなく、娘の横顔に向けられている。

「お前は誠実に選び続け、ここまで歩んできた」

あのとき。
断罪の嵐が過ぎ去ったあの日、
父の私室で交わした会話が脳裏によみがえる。

「誰を選ぶにせよ――胸を張って選べ。
 その相手には、国に向けるのと同じだけ……いや、それ以上の誠実を向けろ」

断言に似た口調。
だが、「そうあれ」と娘の未来に祈る響きがあった。

クラリッサの心臓が、静かに高鳴る。
父の言葉は、まるで、クラリッサの迷いごと包み込んでいたかのようだった。

「……もしも」

気づけば、声が喉から漏れていた。

自分の心を、もう隠さないと決めたはず。
シャーロットの言葉に背中を押された夜のことが、思い出される。

「もしも、わたくしが、誰かと共に歩みたいと願ったとき」

公爵は、わずかに首を傾けた。
問いを急かさず、続きを待つ沈黙を置く。

「その方が、国にも誠実でいようとする人であれば……父上は、どうお感じになりますか?」

公爵は、少しだけ目を細めた。
それから、ごくあたりまえのように答える。

「当然のことだ」

「とう……ぜん、でございますか」

「ああ。エインズワースの娘が選ぶ相手なら、そうでないと物足りない」

冗談めかした一言に、娘の判断への信頼が含まれていた。

ふっと、目尻がやわらぐ。

「……ハーランドの倅あたりなら、なお良い」

クラリッサは、完全に動きを止めた。
父は、まるで天気の話でもするような顔で続ける。

「父親は少々、策を好みすぎるところがあるが……息子は違う。
 理を好み、人の沈黙を見落とさない。
 お前の隣に立てば、過不足はない」

「父上……」

驚きに胸が波打ち、頬に熱が昇った。

「昼には城へ上がるのだろう」

「は、はい。本日は地方からの報告書の整理が……」

「ハーランドの倅も、同じ資料に目を通すはずだ」

あくまで仕事の話として整えられた言葉。
けれど、その奥にある含みを、クラリッサは痛いほど理解していた。

「書類の山ばかり見るな」

父は、白いバラから少しだけ視線を外しながら続ける。

「その向こうで働く者に、目を向けておけ」

言葉は厳しかったけれど、父のまなざしは穏やかだった。 

「……クラリッサ」

名を呼ばれ、クラリッサは自然と背筋を伸ばす。

父は、白いバラを一瞥してから、静かに言葉を置いた。

「お前が選んだ言葉なら、私は尊重する」

クラリッサは、はっと顔を上げる。

「国を支えると決めたときも、家の誇りを守ると決めたときも。
 お前は誠実を曲げなかった」

そこで一度、短く息を吐いた。

「だから――これから歩む先と、その隣に立つ者も、お前自身の判断で定めろ」

クラリッサは、ゆっくりと頭を下げる。

「……はい」

その返事は、自分自身への誓いでもあった。

父は、それ以上何も言わなかった。
白いバラをひとつ見上げると、静かに踵を返す。

遠ざかる足音を聞きながら、クラリッサは胸の奥に宿った温かさを、そっと抱きしめた。


◇◇◇

 
昼下がりの執務室は、紙とインクと疲労の匂いで満ちていた。

地方から届いた報告書の山が、机の上に小さな山脈を形作っている。

新法が施行されてからしばらく経ち、各地でさまざまな反応が起きていた。
理解と歓迎。戸惑いと反発。
どれも、無視できない声だ。

クラリッサは、一枚一枚目を通しながら、要点を抜き出していく。
誤解が生じている箇所には印をつけ、説明の必要な条文番号を余白に書き込む。

「……こちらの領主は、かなり不安を抱いていらっしゃるようですわね」

思わず漏れた独り言に、別の机から声が返ってきた。

「どの書簡です?」

顔を上げると、向かいの席でペンを走らせていたセドリックがこちらを見ていた。

「ここと、ここと……このあたりです」

クラリッサは、印をつけた報告書を差し出した。
セドリックはそれを受け取り、ざっと目を走らせる。

「……ふむ。まるで、“貴族の権利を一方的に奪おうとしている”かのように読んでいますね」

「ええ。本来は、“双方の義務を明文化し、守られるべき者を守るため”の条文ですのに」

「少し、言葉が足りなかったのかもしれません」

セドリックの指先が、条文番号をなぞる。

「新法の説明文書を、もう一段階、平易にして各地に送る必要がありそうです」

「その文案を、わたくしにお任せいただけますか?」

自然と、口から言葉が出ていた。
セドリックは驚いたように瞬きをしてから、柔らかく微笑む。

「もちろん。あなたほど言葉を丁寧に扱える人を、他に知りません」

「……お上手ですこと」

そう返しながらも、心のどこかがくすぐったくなる。
自分が選んだ言葉を、彼が信頼してくれている――それは、この上なく嬉しいことだった。

二人はしばらく、集中して作業を続けた。
報告書の山が少しずつ低くなっていく。
その度に、国のどこかで生じている小さな誤解や不安が、ひとつずつほどけていくような気がした。

やがて、窓の外の光がゆっくりと色を変え始める。

「……一段落、ですね」

クラリッサが羽ペンを置いたとき、セドリックもほぼ同時に手を止めた。

「ええ。続きは、明日でも構いません」

机の上を軽く整えると、セドリックは思案するように指先を組んだ。

「クラリッサ様」

「はい?」

「少し、外の空気を吸いませんか。……誠実の庭のほうへ」

その誘い方は自然で。
けれど、クラリッサの心臓は、明らかにいつもと違う速さで高鳴った。

「かしこまりました。ご一緒させていただきます」

言葉だけは穏やかに。
足元だけは、慎重に。

クラリッサはそう自分に言い聞かせながら、椅子から立ち上がった。


◇◇◇


誠実の庭は、夕暮れの光に包まれていた。

使節懇談会の日から、季節がひとつ進んでいる。
あのときはまだ頼りなかった蕾たちが、今はそれぞれの色で咲き始めていた。

淡い黄色。薄紫。純白。
色とりどりの花々が、静かな誇りのように揺れている。

「……きれいですわね」

クラリッサは思わず足を止めた。
あの日、この庭に根を下ろし始めた植物たちが、確かに「ここにいる」と告げていた。

「あなたが選んだ言葉と同じです」

隣で、セドリックが静かに言う。

「今日、地方の報告書に添える文章を読んで、改めて思いました。
 不安も迷いも飲み込んだうえで、それでも前を向けるような言葉だと」

クラリッサは、胸の奥がじんと温かくなるのを感じた。

「……セドリック様」

「はい」

「わたくし、自分の言葉が、誰かの心を動かしているのだと考えると、すこし怖くなることがあります」

風が、彼女の髪を揺らす。

「わたくしの選んだ言葉ひとつで、誰かの明日が変わるかもしれない。
 そう思うと、手が止まることもあるのです」

それは、これまで誰にも口にしなかった弱さだった。
セドリックは、真面目な顔でその言葉を受け止める。

「怖く感じるのは、自然なことです」

「自然……」

「自分の影響をまったく恐れない者のほうが、むしろ危うい」

微かな冗談を含ませながらも、その瞳は真剣だった。

「ですが――怖さを知ったうえで選んだ言葉には、重さがあります。
 クラリッサ様が迷いながら選んだ言葉だからこそ、誰かの支えになり得るのだと思います」

クラリッサは、目を伏せた。
風の音と、自分の鼓動だけが耳に届く。

「……ありがとうございます」

それだけ言うのがやっとだった。
けれど、その一言には、本心のほとんどが詰まっている気がした。

しばらく、二人は並んで歩いた。

以前と同じように、沈黙が二人の間に落ちる。
しかし、その沈黙は、あの頃よりずっと柔らかい。

やがて、庭の中心にある小さな噴水が見えてきたところで、セドリックが足を止めた。
クラリッサも、それにつられて立ち止まる。

「……クラリッサ様」

「はい」

夕暮れの光が、彼の横顔を照らしている。

二人の影が同じ方向を向いたあのときと、同じ光。
けれど、そこに漂う空気は、どこか違って見えた。

「少し、長くなりますが……聞いていただけますか」

いつもより、ほんの少しだけ硬い声だった。
クラリッサは胸の高鳴りを押し隠しながら、静かに頷く。

「構いませんわ」

セドリックは、息を整えるように視線を庭に流した。

「私が、あなたと出会ったとき」

淡々とした口調。
だが、選ばれた言葉には、かすかな震えがある。

「クラリッサ様は、すでに多くを失い、多くを選び直した後でした」

胸の奥が、きゅっと締め付けられる。

ルーファスとの婚約。
あの日の庭。
見届けた背中。

それらが一瞬で蘇る。

セドリックは、そこから目を逸らさずに続けた。

「それでも、あなたは自分の誠実を濁さなかった。
 国のために、王女殿下のために、そして――“かつての婚約者”に対しても、最後まで誠実であろうとした」

クラリッサは、唇を噛みしめた。
あのとき、自分が誠実であったかどうか、今でも完全な答えは出せない。

けれど。

シャーロットの言葉。
父の言葉。
そしてセドリックの言葉が、少しずつ、その迷いに輪郭を与えてくれていた。

「そんなあなたを見ているうちに、私はひとつのことに気づきました」

セドリックは、彼女をまっすぐに見つめる。

「私は、国にだけ誠実でありたいのではない。
 あなたと共にいる未来にも、誠実でありたいのだと」

胸が、高鳴る。

喉が渇く。

自分でも制御できない速さで、心臓が動いているのがわかった。

「クラリッサ様」

彼は、言葉を選ぶように、ひと呼吸置いてから続けた。

「私は、あなたの沈黙ごと、隣にいたいと願っています。
 言葉になる前の迷いや、口にされない不安までも含めて、"あなたと共に歩みたい”のです」

沈黙が、二人の間に落ちた。
それは、クラリッサにとって、人生でいちばん長い沈黙だったかもしれない。

風が、バラの花を揺らす。
噴水の水音が、遠くで一定のリズムを刻んでいる。

全ての音が遠ざかり、目の前の男の言葉だけが、はっきりと心に残っていた。

「……それは」

やっとのことで、声を絞り出す。
喉の奥が熱くて、言葉がひっかかる。

「それは、わたくしにとって……とても、贅沢な申し出ですわ」

セドリックの目が、かすかに揺れた。
クラリッサは、視線を落としそうになる自分を必死で支える。

逃げてはいけない。
今度こそ、自分の言葉で選ばなければならない。

シャーロットが告げてくれた言葉。
――あなたはもう、“あの日の婚約者”じゃない。

父が告げてくれた言葉。
――選びなさい、クラリッサ。

その全てが、背中を押してくれていた。

「わたくしは、殿下との婚約を手放しました」

自分でも驚くほど、はっきりした声が出た。

「手放したのは、約束だけではありません。
 “王太子妃として在るはずだった未来”も、手放しました」

セドリックは黙って聞いている。

「……それでも今、もう一度、誰かと共に歩みたいと願っている自分がいます」

胸の奥に、熱が集まる。

それを押し殺さず、形にするのは怖い。

けれど、もう目を背けたくなかった。

「それが許されるのか、ずっと迷っていました」

クラリッサはそっと息を吸い、顔を上げた。

「けれど、シャーロット殿下も、父上も――“選んでよい”と仰ってくださった。
 わたくし自身の誠実を、これから誰に向けるのかを」

セドリックの瞳が、ほんの少し柔らかくなる。

「ならば、私は、その“これから”の中にいたい」

彼の声は、小さく、しかし揺るぎなかった。

クラリッサは、そっと微笑んだ。

自分の中で、ようやくひとつの線が結ばれたのを感じる。

「――でしたら」

言葉を紡ぐ。
それは、彼女にとって、新しい誓いの言葉だった。

「わたくしのこれからの誠実を、セドリック様と分かち合っては……いけませんか?」

セドリックは、一瞬だけ目を見開き、それから、ゆっくりと息を吐いた。

「それは、つまり……」

「わたくしは、あなたの隣を……“共に歩む相手”として選びたいのです」

ようやく、それを言葉にできた。

頬が熱い。
心臓の鼓動がうるさい。

それでも、後悔はなかった。

「国のための誠実も、家のための誠実も捨てません。
 そのうえで――ひとりの女として、あなたを選びたいのです」

セドリックの瞳が、静かに揺れた。

それは驚きと喜びと、どこか安堵が混じり合った揺らぎだった。

「……こんなに、贅沢な言葉を受け取ってしまっても?」

彼は、半ば本気、半ば冗談のように問いかける。

「贅沢なものほど、きちんと扱ってくださる方だと、信じています」

クラリッサは、そう返した。

セドリックは、笑った。
あの日、誠実の庭で見せた笑みよりも、ずっと柔らかい笑みだった。

「――では、改めて」

彼は、クラリッサの前に一歩進み出る。
ほんの少し距離を詰め、その距離を、今度は隠そうともしない。

「クラリッサ・エインズワース。
 あなたが許してくださるのなら――」

彼は右手を差し出した。

「私の恋人になっていただけますか」

その問いは、シンプルで、真っ直ぐで、逃げ道がなかった。

だからこそ、クラリッサは迷わなかった。

「はい」

言葉が、自然に口をついて出る。

「よろこんで、お受けいたします」

クラリッサは、その手に自分の手を重ねた。

以前と同じように、手袋越しの感触。
けれど、その意味はまったく違う。

セドリックは、そっと彼女の手を握る。

握られた手から、体温が伝わってくる。
それは、誓いの印のように、確かな温度だった。

「ありがとうございます」

彼は、静かに頭を垂れた。
まるで、最上級の褒賞を授かった臣下のように。

「これからも、国に誠実であると同時に――あなたにも、誠実でいられるよう努力します」

「わたくしも、そうありたいと思います」

ふたりの影が、夕陽の中で重なった。

今度は、はっきりと重なっている。
同じ方向を向き、同じ長さで伸びている。

セドリックは、迷うように一瞬だけ視線を泳がせ、それから、静かにクラリッサの手の甲を持ち上げた。

「少しだけ、無礼を」

そう前置きして、丁寧に唇を触れさせる。

かすかな感触。
けれど、クラリッサの心には、雷のように響いた。

「……っ」

息が止まりかける。
恥ずかしさと、こそばゆさと、どうしようもない幸福感が一度に押し寄せた。

「今のは――恋人としてのご挨拶、ということで」

セドリックの冗談めいた言葉に、クラリッサは耐えきれず笑ってしまう。

「ずいぶんと礼儀正しいご挨拶ですこと」

「あなたのご家族に顔向けできる程度の範囲で、と思いまして」

「……それでしたら、父上はきっと、“足りない”と仰いますわ」

ぽろりとこぼれた言葉に、自分で驚く。

だが、もう止めたくはなかった。

父がくれた許し。
シャーロットがくれた後押し。

それらすべてが、今この瞬間に繋がっている。

セドリックは目を見開き、それから、とても嬉しそうに笑った。

「では、いずれ正式に、ご挨拶に伺わないといけませんね」

「そのときは、覚悟なさってくださいませ。わたくしの父上は、厳しい方ですから」

「厳しい父上に認めてもらえるよう、いっそう誠実でいなければ」

冗談と、本気と。
ふたりの言葉は、そのどちらもを含んでいた。

クラリッサは、隣にいる男の横顔を見上げる。

この人となら、選び続けていける。
国にも、自分にも、そして互いにも、誠実なままでいられる。

そう信じられた。

風が、庭を通り抜ける。
咲き始めた花々が、かすかに揺れる。

誠実の庭は、今日も静かだ。
けれど、その静けさは、もう「独りきりの静寂」ではない。

ふたりで選び続けていくための、穏やかな余白だった。

クラリッサは、握られた手にほんの少し力を込めた。
セドリックも、それに応えるように指を絡める。

これからも、何度も迷うだろう。
何度も立ち止まり、言葉を探すだろう。

それでも――

「セドリック様」

「はい、クラリッサ様」

「わたくし、これからも……あなたと一緒に、選び続けたいと思います」

セドリックは、ゆっくりと頷いた。

「ええ。ともに、選び続けましょう」

ふたりは並んで歩き出した。

誠実の庭の小道を、同じ歩幅で。

その先にある未来を、少しずつ分け合いながら。



ーーfin.
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感想 3

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みんなの感想(3件)

豆餅
2026.01.16 豆餅

言葉の重みとその後ろにある思い、生きているすべての人に存在しているのに無いかのように目を瞑り過ごしていくそんな人生を生きたくないなぁと考えさせられました。
このお話は私の午前中の時間を思考の散策の時間に変えてしまった。

2026.01.17 みかぼう。

物語に登場する一人ひとりが、それぞれ想いを抱え、不器用ながら言葉を紡いで生きていました。
それが豆餅さんに伝わったことを、嬉しく思います。お読みいただきありがとうございました。

解除
ありす
2025.11.19 ありす

とても重くて深い話でした。
個人的はクラリッサに対して不誠実なままのルーファスにイラッとしましたが…。
自分に心地よい言葉を告げてくれる方に浮気したって事ですよね。
なのにその事に対して一言もクラリッサに告げないって、┐(´д`)┌←気持ち的にはこんな感じです。

2025.11.19 みかぼう。

思いをありったけ詰め込んだことで、とても重たい物語になりました(汗)
読んでくださって嬉しいです!

ルーファスは不誠実、極まりないですよね。
本人がそのことを自覚する前に、クラリッサからバッサリやられました。
修道院送りとなり、禊の機会は失われましたので、
この後の人生すべてをかけて、修道院できっちり奉仕してもらいましょう。

解除
ハネケ
2025.11.19 ハネケ

超面白い。

2025.11.19 みかぼう。

ありがとうございます!

解除

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