転生王子の常識は非常識らしいです!

四六くま

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第一章 転生者、ルーク・グランバート

7 乱入者との遭遇

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(シャルル視点)
泣き叫びたい気持ちを必死に抑える少女と、その目の前に立つ男の姿に町の人々が何事か、と集まってきた。

「修理費用五万リブ、払ってよ」
「····!」
男の口から発せられた金額に、私は息を呑んだ。
あんまりだ···。そんな大金払えるはずがない。
ただでさえ今は仕入れがほとんどないのに···。
「え、なになに?」
「五万リブだと?」
「あの子何したの?」
「ぶつかっちまったんだとよ」
「あー、相手が悪かったのか」
「おい、お前行けよ」
「無理だって。それに見ろ、あいつ、物騒なもん持ってるぜ」

私の耳には、周りの声が全くきこえませんでした。それどころか、涙で溢れた目では男の顔の表情すら分かりませんでした。
そんな私を見たその男は、無情に、

「五万、払えないんだろ?だったら五万分働いて返すしかないよなぁ?」

ビクン、と身体が震えた。いや、もしかすると、ただの心音なのかもしれない。それすら分からなかった。それ程に、男の言葉の意味が私の思考を奪った。

ああ、お兄ちゃんはどう思うかな。
これだけの目撃者がいるならもしかすると━━━
いやいやいや、巻き込みたくない。
第一、お母さんはどうするの。



完全なる現実逃避だった。

「とにかく一緒に来てもらおうか」
伸ばしてきた男の手を私は反射的に払った。

途端に男から笑みが消えた。
「・・・・せっかくタダ働きで済ませてやろうと思ったのによお、なんか、もう任務とかどうでもいいや・・・殺す」

「「「・・・・っっ!!!」」」
その場にいた全員が凍り付いた。

「殺す」男は確かにそう言った。その対象はもちろん私です。
逃げなきゃ、どこか、どこでもいいから逃げなきゃ。
頭では分かっていても体が全く動かない。

カチャリ

男は腰から剣をとった。
ギラギラと反射する鋭い刃は、わたしを殺すには十分過ぎる程でした。

「死ね」

私、ここで━━━━━


ガッ!


出てきたのは私の血、ではなくフードのローブを着た人の背中だった。


◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶◀▶
(ルーク視点)

向こうで人だかりがあるけど、どうしたんだろう。大道芸、っていう雰囲気でもないからなぁ。
「先生、あの」
「見に行きたいのでしょう?わかりました。行ってみましょうか」
こ、言葉を先越された···あ。
キーン先生の尻尾がすごい揺れてる。
(先生も気になっていたのか)
先生の真意に気づき、僕は苦笑した。

近付いてみると、どうも芸人とかではなさそうだった。
というよりも、襲われてる?
あの男は多分悪い人だろう。その剣先には少女、そして━━━がいる。

男はローブの人に剣を振るうが、当たる気配がない。上手く少女なの安全を確保している。
あの人、かなりすごい人だよ。
このままなら男も諦めてくれるだろう。  
そう思った矢先だった。見事にフラグが立ちました。
人だかりの中から三人の男が出てきた。どうやら男の仲間らしい。

「おーおー、十番。なんか苦戦してるみたいでさぁーね。な、六番」
「ああ、任務無視して苦戦ってか。そいつぁおもしれぇな!」
「うっせぇな!黙ってやがれ!」
「でもよ、遂行しねえとこっちの首がとぶぜ?」
任務?それはどういう事だろうか。雇われてるのか、それとも、組織なのか。
うーん、分からない!
「ちっ!わーったよ。でも、邪魔な奴は別にいいだろ?」
チラリとローブの人を見て言う。

「「「そういうこと」」」

新たに三人が剣を手にとった。
まずい、四対一になったら分が悪い。
どうするんだろう、と思ってローブの人を見たら、いつの間にかそこにはもう一人、いや、もう一匹が増えていた。
それは、
「猫?」
だった。

「珍しい。召喚獣ですか」
なるほど、それなら納得できる。
多分、自分が戦う間あの子を守る為だろう。
やっさしいー!
将来あんな風に、家庭を守るため自分の事を犠牲にできるような、そんな、夫に····
いかんいかん、つい妄想が入ってしまった。
僕の理性戻ってこーい

ガチャッ  (ただいまー)

((おかえりーー))
 
やばい、僕の思考回路がおかしくなってる。 落ち着けーー!

「おお、遂に斬りかかった!」

はい。落ち着きました。


四人一斉に切りかかるも、ローブの人になかなか当たらない。それ程にまで素早い動きなのだ。
もしかして、もしかすると···とは、なかなか上手くいかないものだ。
六番と呼ばれた男の剣が軽く腰に当たった。
それを機に形勢が逆転してしまった。
太鼓の●人で例えれば、一度リズムが狂ってしまうと、すぐには元のリズムに戻ることが出来ず、ミスを重ねてしまうことと同じように。

(まずい、このままだと···)
そうだ、先生に止めてもらえば。
ばっ、と横をみると見知らぬ人がいた。
あれー?
周りを見渡せば、背が高くて見えない、と言われては後ろに追いやられてた。
何やってんのー!

「うぐっ」
ついに剣が当たった。
そのあいだに他の男が少女に向かって走り出す。

━━━やばい。

そう思った時には、既に身体は動いていた。僕は少女の前に立つと、男の懐に素早く入り、護身用の短刀の柄で男の顎の下を突き出す。
口を開けていた男にとっては、たとえ弱い力でも歯を通して頭全体に衝撃が伝わる。
とてもじゃないが、しばらくは頭がグワングワンして立って居られないだろう。

少女やローブの人、男達、傍観者全員が呆気にとられて目を丸くして僕の方を見た。

まずは一人。

「あ、あの···」
少女がなにか言おうとしているが、僕は微笑みかけて、向かってくる二人に集中した。
「死ねえええーー!!」
ふ、この人達は剣術の型が全くなってない。
ただただ突進してくるだけで隙が多すぎる。唯一褒める所は、相手の力量に対して臆すること無く向かってくることだろう。
こんな奴に、キーン先生お墨付きの僕が負ける訳ない。

とん、と軽くジャンプして男の顔に覆い被さると
「ごっ!ぐふぅ···」
顔面膝蹴りを食らわせる。
そのまま男の頭を軸にしてもう一人の仲間には
「あがっ!」
回し蹴りを。

空中を制するものは戦いを制する、という教えのおかげかな。

とりあえずはコイツらを拘束しとこう。
電流、は強過ぎるからなぁ。静電気くらいをイメージして

「ス、スタンガン」

「「あぎゃあ!」」

三人揃って寝ててくださいな。
にしても、スタンガンが通って良かったよ、魔法ですらない気がするし。

「な、なんなんだよおめえらはよお!お前らにはカンケーないだろ?」
明らかに動揺しきってしまった男には既に戦意は喪失していた。

「たかがガキ一人くれえにそんな怒るこたあねえだろう?世界にはたくさんいるんだから、別に一人奴隷にするくらいどうってこと━━━」

ブチッ

何かが根本的に切れる音がした。
ああ、コイツは救いようのない馬鹿だな。

僕は、

よし決めた、徹底的に後悔させてやる。

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