リズエッタのチート飯

10期

文字の大きさ
148 / 149

120 新事実、と

しおりを挟む
 





 限られた時間は刻々と過ぎていくもので、残りの日数は後二日。二日と言っても最終日は学院まで戻る時間も有するので、一日半といったところだろうか。


 これまでに作り終えたフリーズドライは百四十を超え、ノルマは制覇した。
 作ったものはお味噌汁をはじめとしたスープ各種、カレーや丼もの、糖分としてのアイスクリームとプリン等々。制作三日目から生産スピードが上がった故にこなせた数だといえるだろう。
 しかしながら四日にして私はとある疑問を抱いたのだ。
 どうやってこれらを保存するべきなのだろうと。


 フリーズドライは水分を抜くことで出来上がる品物で、いかにその乾燥を保っているかが重要になる。
 私の知ってるフリーズドライは密閉した袋に入っているか、もしくは真空パックしてあったものだと記憶している。
 だがしかし今の私にそれらを準備できる筈もなく、折角作ったフリーズドライはそのまま麻袋に詰められておりこのままではやはり長期保存には向かないのではと考えた。
 だがしがし、これはすぐ様杞憂であったと知ることになったのである。

「リズの作ったものなら腐らないよ? 今まで貰ったの少しずつ食べてても変化するのは見た目だけだったよ?」

 そう言ったアルノーに同意するかのようにスヴェンも頷き、眉間に手を当て深くため息をついた。

「お前の作った庭産の食い物は多少傷むが腐った試しはねぇよ。作ってる本人であるお前は気にしなかったただろうが、売り手としてはどんくらい日持ちするか気にするもんだ。で、結果は見た目は多少傷んで変わるが、腐らない。見た目も持ち運ぶ過程で傷む程度で根本的に食い物が悪くなってはいないんだろうがな」
「━━なんてこったいっ!」

 初めて知る事実に思わず私は間抜けな顔を二人に晒す。
 腐ることがないということは無理にフリーズドライを作る必要が無かったのではないか。いやしかし、アルノーに持たせる保存食の種類は増えたし結果オーライなのか?
 むしろ何故今までそれを教えてくれなかった!?
 ひとまずこれで問題は解決したようなものだが、若干腑に落ちない。
 もっと早く知っていれば、アルノーが入学する前にもっと準備出来たはず。
 わざわざ調べようとしなかった私と悪いのだろうが、調べて教えてくれなかったスヴェンも悪い。
 今日のご飯は少なめにしてやる。

 ジト目で睨み付けるとスヴェンは視線を逸らし、そしてもう一度ため息をついてこう言った。
 お前が調子にのるから言わなかったんだ、と。

 あらがち間違いではないが、それでも報連相は大事だと思うのだが。





 さて、フリーズドライ問題はこれで解決として私を次に頭を悩ませたのは家に届いた一通の手紙である。
 差出人は我が領主であるガリレオ・バーベイル。
 今までも用事があると従者がここまで来て手紙を渡して行ったが、今回は"招待状"という形で届いたのだ。
 日程はアルノーが学院に戻った次の日。私がブラコンなのを考慮したのか、それともたまたまかは分からないが兎も角三日後には領主邸へ向かわなければならない。
 以前大量に亜人をもらい受けてから私は訪れていないし、亜人を受け取ってもいない。
 となると新たな亜人の受け入れかと考えるも前回があの量だったのだ、それほど用意しているとは考えづらい。それに手紙には亜人についての記載はなく、相談したい事があるとしか書いていない。
 何となくだが、嫌な予感はする。
 否、嫌な予感しかしない。
 何せ領主の、貴族の"相談したい事"だ。
 よくなことではないのだろう。

「スヴェンさーん、これ、行かなきゃ駄目?」
「駄目だ、行かないっつー選択はない。 貴族のお呼び出しだぞ? 行かない方が後々面倒なことになるのは分かってるだろう?」
「分かってるけどさぁ……」

 貴族だからこそ面倒なんだよね。
 自分の方が偉いと分かってる人間が、態々低姿勢でくるってことは絶対にろくでもないことを考えてるに違いない。
 普通"お越しください"なんて手紙を目下た平民に送らないだろう?前回のことがあって少し私への態度を改めたとしても、貴族として平民に頭を下げることはしないはず。
 それでもこうして私みたいな平民へ招待状を送るということはそれなりの理由があるのだろう。
 どうせ保存食の量を増やせとかもっと融通利かせろって事なんだろうけど、それなりの見返りを考えているのだろうか?
 この前の亜人は領主の不手際から大量に買い取らせてもらったが、次はそうはいかない。
 また自分有利に事を運ぼうとしたら本気で切ってやる。たとえスヴェンにどつかれたとしてもだ。

「まぁ、あれだ。 俺にも考えがあるからあまり考え無しの行動するなよ」
「うー、善処するー」

 善処するとは言ったが、了解はしてないよ?



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

兄の親友が彼氏になって、ただいちゃいちゃするだけの話

狭山雪菜
恋愛
篠田青葉はひょんなきっかけで、1コ上の兄の親友と付き合う事となった。 そんな2人のただただいちゃいちゃしているだけのお話です。 この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...