酒池肉林王と7番目の天使

日向かなた

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第37話ー3

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 午前4時半。

 ベルの部屋のレットに、国王フラヴィオが侵入した。

「アモーレ」

 と小声で囁いてベルを後ろから抱き締めると、ベルを隔てた向こうで眠っていたハナが目を開けた。

 迷惑そうに顔を顰めて、黄色い瞳でフラヴィオを見る。

「ベルを起こさないでくれよ、フラビー。眠ったのは1時間半前なんだ。ベルは朝の厨房には来なくていいって家政婦長が言ってたし、8時くらいまでは寝かせてやってよ」

「1時間半前に就寝しただって?」

「皆で宴の続きをやってたんだよ」

 それを聞いたフラヴィオは、何故誘ってくれなかったのかと文句を言おうとしたが、すぐに察して思い直した。

 皆、あくまでもベルのために開いた宴だったのであって、きっとフラヴィオが参加するものでは無かった。

 急に不安を覚えて、ベルの顔を後ろから覗き込む。長い睫毛が濡れていないか、瞼が腫れていないか確認する。

 ハナが「大丈夫」と言った。

「ベルが一番楽しそうだったぞ」

 フラヴィオが「そうか」と安堵して、ベルの栗色の頭に愛おしそうに頬擦りする。

 それを見つめるハナからも、小さく安堵の溜め息が漏れた。2人は昨日までと、何ら変わっていなく見える故に。

 昨日までもこれからも、この酒池肉林王の最寵愛は7番目の天使なのだと訊かずとも分かった。

「ん? なんだハナ? 言っておくが、王妃公認の浮気だぞ」

「いよいよ本当に酒池肉林王って感じだなフラビー。王妃が居て、寵姫が居て。まぁ、今回はヴィットーリアさんのときと違って政略結婚なんだし、どこの国王もそんなもんだけどさ」

 フラヴィオが何か思い出したように「そうだ」と言った。

「9時からのパラータの前に、ヴィットーリアのところに――霊廟に連れて行ってくれ、ハナ」

「ああ、分かった。報告しないとな、ヴィットーリアさんに。カプリコルノはやっとまた歩き出したんだから」

「うむ」と頷いたフラヴィオが、ふと涙を飲み込んだのが分かった。

「改めてヴィットーリアに宣言してくるのだ。余はもう、そなたを失ったときの過ちを二度と繰り返さぬと――」





 ――午前8時50分。

 宮廷の南側に位置する『下の中庭』にある大手門の手前、この日のために用意された豪奢な馬車を囲っている一同が、少し焦っていた。

 あと10分でパラータだというのに、この時間になっても主役の2人と馬車の御者が席に着いていない。

 フェデリコとアドルフォ、マサムネやハナの姿も無い。

 それらは皆、30分前にマストランジェロ王家の霊廟にテレトラスポルトで飛んでいった。

「大丈夫だろ」

 と、本日護衛の仕事のため、板金鎧を装備している第二王子コラード。

 明け方近くまでベルの部屋で食っちゃ飲みや談笑をしていた故に寝不足気味で、大きな欠伸を漏らした。

「史上最低最悪のパラータになるのは確実だけど逃げるわけがないし、母上にしっかり報告したいだけだろ。3分前までに戻ってくれば問題ないよ」

「そうだな」

 と王太子オルランドも、コラードからうつされたように欠伸をした。

 こちらもまた護衛のため板金鎧を装備している。

 一方、その傍らにいる5番目天使――王女ヴァレンティーナは、ドレスヴェスティートの上からエプロングレンビューレを装着していた。

 手には木べらと砂糖の入った袋を持ち、その隣のタロウは大量の小豆が入った大きな鍋を抱えていた。

「私とタロウ君は、パラータが始まったらすぐにコニッリョの山の麓に飛べばいいのよね?」

「そうだよ、ティーナ。いいかい、これは重要な仕事だ。パラータの馬車が町を抜けてコニッリョの山に到着するまでに、君と僕であんこを炊いて、コニッリョをしっかり集めておくんだ。いいね?」

「分かったわ、任せて!」

 ハナが溜め息交じりに口を開く。

「あたいも大忙しなんだよな……ティーナがあんこ炊いて兄貴がその護衛やってる傍らで、結婚式場作んなきゃ行けないから」

「え? ハナちゃんひとりでやるの?」

「手の空いてる天使の皆や家政婦長ピエトラさん、執事ファウストさんが椅子とか食卓とか並べてくれるけど、テレトラスポルトで運ぶのはあたいひとりの役なんだ。まぁ、テンテンも北隣のサジッターリオ国のシャルロッテ女王陛下のお迎えが終わったら、手伝ってくれるけどさ」

「ナナちゃんとネネちゃんは?」

 とヴァレンティーナが2匹に顔を向けると、それは「駄目だ」と首を横に振った。

「あちきら純血ティグラートはコニッリョに怯えられる」

「あちきら純血ティグラートを見たらコニッリョは逃げる」

 よって、此度2匹は宮廷の留守番係だった。

 時刻が8時56分を過ぎた頃、マストランジェロ王家の霊廟に行っていた一同が戻ってきた。

「すまんすまん!」

 と花婿姿のフラヴィオが、花嫁姿のルフィーナを屋根のない馬車の左側に抱き上げて乗せ、自身も右側に飛び乗る。

 護衛たちは用意されていた愛馬に騎乗すると、白銀の板金鎧のフェデリコが馬車の右側に、漆黒の板金鎧のアドルフォが馬車の左側に。

 オルランドは御者席の左側に、コラードは御者席の右側に。

 さらに同じく板金鎧を装備しているアラブが馬車の後ろに。

 フラヴィオが「あれ?」と前後を見る。

「フェーデとドルフは元からだが、おまえたち3人も護衛に付くのか?」

 3人の「スィー」の返事を聞くや否や、フラヴィオはもう一度「あれ?」と言った。

 御者席にベルが座ったからだ。

 何も聞かされていなかったフラヴィオが理由を問おうかとき、時刻はもう9時2分前。

 猫4匹が急いで主役2人と御者、護衛と馬たち、後から付いて行く楽士・兵士たちにバッリエーラを5枚ずつ掛けていく

 それが終わるや否や、御者が馬を発進させた。

「では、参りましょう」

 フラヴィオが少し戸惑う中、馬車が大手門を潜り、王都オルキデーアの中央通りへと続く緩やかな坂を下っていく。

 後からは楽士が続き、その周りを兵士たちが囲っている。

 馬車の真後ろに付いているアラブ――オルキデーア軍大将が、振り返って兵士たちに向かって「気を付けろよ!」と言うと、それぞれが緊張した面持ちで「スィー」と返事をした。

 中央通りの入口が近くなってきて町に集まった民衆から非難の声が飛び交い始めると、主役の2人が違和感を覚える。

 動揺して見たのは、御者――ベルだった。

「ま、待て……何かおかしいぞ、ベル」

「どうして、ベルさんがこんなにっ……!」

 それは一瞬だけ後顧すると、「お構いなく」と2人に笑いかけた。

 馬車が中央通りに入る一歩手前で立ち止まり、オルキデーア軍・プリ―プラ軍の元帥が部下たちに「抜け」と抜剣の命を下す。

 護衛・兵士たちが右手に武器を構え終わると、御者がすっと手を上げた。

 それは楽士長への合図で、間もなくファンファーレファンファーラが鳴り渡る。

 馬車が中央通りへ入ると、より一層の罵詈雑言や物が馬車へと向かって投げつけられる。

「消えろ! このメッゾサングエ女! 陛下の後妻だなんて、汚らわしい!」

「大体、メッゾサングエの中でも、よりによってなんであのルフィーナとかいう前科のある女なのよ!」

「皆、すべては宰相が仕組んだことよ! なんてお可哀想な陛下! あの宰相とメッゾサングエ、グルだったんじゃないの!」

「うるせぇど、おまえら黙れ! わしらの生活を豊かにしてくれた宰相閣下への恩を忘れただか! 悪いとしたら、陛下だべ! 陛下が宰相閣下を捨てて、あのメッゾサングエを選んだんだべ!」

「なんですって! 陛下は犠牲者よ! あんなに宰相をご寵愛だったのに、裏切られたのよ! だって陛下の再婚は宰相が決めたことだって、宰相本人が言ってたじゃない! 人伝の話じゃなくて、本人直筆の手紙が昨日まで町に貼られてたじゃない!」

 フラヴィオとルフィーナが、息を呑んでベルの後頭部を見る。

 驚愕していった。

「今の話はなんだ、ベル! 余は聞いていないぞ!」

「どうしてそんなことしたんですか、ベルさん! それではベルさんまで悪者にされてしまいます!」

 衝撃を受けた2人に対し、ベルが「ふふふ」と笑い声を返した。

 それによって、まんまとその策通りに事が運んでいるのだと察する。

「うちの国民は素直さは素晴らしいですね」

 とベルが、「あ」と右斜め前方から飛んできた林檎を見た。

 それは「おっと」とコラードの左手に受け止められ、「はい」と御者席の隙間に置かれる。

「なんだかさっきから、私に野菜や果物が飛んできますね。石やゴミが飛んで来ると思ったのですが」

「要はビビッてんだよ。相手は宰相だし、処刑人だし、天使だし、石なんて投げたら大逆罪にされ兼ねないからな。お、また林檎だ」

「この時期の林檎はまだ高価なのによろしいのでしょうか。でもせっかくなので、後で林檎のケーキトルタにでもして美味しく頂きましょう」

「おっ、いいねー。オレも春夏って食べられなかった林檎トルタ食べたい! あ、でも、兄上はコンポートコンポスタ派だったな?」

「ああ、コラード。私はコンポスタの方が好きなんだけど、作ってくれるかいベル?」

「畏まりました、オルランド様。どっちにしろレモンリモーネも欲しいところですが、収穫時期は10月からですし難しいでしょうか」

「――って、来た来たリモーネ! おっし! これで林檎トルタもコンポスタも食べられるな!」

「これはついてますねぇ。お二方は、どちらに致しましょうか?」

 と、ベルが後方のフラヴィオとルフィーナに振り返る。

 野菜や果物が飛んで来るといったってそれは決して贈りものではなく、誹謗中傷や罵詈雑言が嵐のように振っているのに、それはまるで何処吹く風。

 怒りに悲しみ、胸にじんとくるもの。

 そんな複雑な涙でぼやけた2人の視線の先には、愉快げにさえ見える明るい笑顔があった。

 それは2人の顔を交互に見て、小首を傾げる。

「もしかして、切っただけの生林檎がよろしいでしょうか?」

 オルランドが振り返る。

「生だと酸っぱいから、焼き林檎なんじゃないか?」

 コラードも振り返る。

「すりおろしじゃね?」

 言葉が出ない2人の視界に、ベルへと向かって投げられた林檎が映る。

 ベルと一緒に振り返ったままの体勢でいるオルランド・コラードは気付かず、咄嗟にフラヴィオが身を乗り出して手を伸ばし、ルフィーナが「バッリエーラ!」とベルに重ね掛けする。

 ベルのバッリエーラに弾かれる寸前、フラヴィオの手に握られた林檎は――

「また勝手なことをっ…! 後でお仕置きだからなっ……!」

 と、フラヴィオの口に運ばれていった。

 この時期のまだ酸味が強く、硬い林檎を食べることに集中して気を逸らし、出掛けた涙を奥に引っ込める。

「正解は『そのまんま』かぁ」

 とオルランド・コラードが声をハモらせた一方、ルフィーナが民衆から顔が見えないように俯いた。

 真っ白な花嫁衣裳を、透明な水滴が濡らしていく。

「ありがとうございます、ベルさんっ…! 林檎トルタも、林檎コンポスタも、切っただけの生林檎も、焼き林檎も、すりおろし林檎も、すべてわたしが作りますっ……!」

いいえ、ルフィーナ王妃陛下。そんなことは私がやりますから、そろそろお仕事をお願い致します」

「えっ……?」

 何のことかとルフィーナが狼狽すると、ベルが続けた。

「ルフィーナ王妃陛下は仰いませんでしたか? カプリコルノ国民を好いていると。ならば是非、国民に笑顔を。こんな状況の中では難しいと存じますが、笑顔というのは荒んだ人の心も癒すものですから」

 ルフィーナが「スィー」と返事をして、涙を拭った。

 どんな言葉や物が飛んできても精一杯の笑顔を作り、国民に向かって手を振る。

「陛下もパラータ中におやつを召し上がっていないで、お仕事をお願い致します」

 フラヴィオも「うむ」と返事をして鼻を啜ると、ルフィーナに続いて仕事を始めた。

 ほとんどの民衆に『可哀想な犠牲者』の目で見られているフラヴィオには、ほとんど物が飛んで来ず。

 その傍らという一番暇な位置にいるフェデリコは、兜の中から余裕をもって民衆を見渡していた。

 その碧眼が、ふと一点に留まる――

「――あれは……」

 フラヴィオが「うん?」とフェデリコの顔を見た。

「兄上、あそこにいるのは」

 とフェデリコが指差したものはふっと消える。

 テレトラスポルトだ。

「あ、いえ……本日レオーネ国からは、どれくらいの人数でいらっしゃる予定でしたか」

「余の結婚式だからって、王侯貴族30人くらいで来るって言ってたぞ」

「ならばガットたちも多いのでしょうか」

「結構多いだろうな。レオーネ陛下やムネだけでなく、護衛としてガットを飼っている王侯貴族は多いからな。まぁ、コニッリョに逃げられたら結婚式の意味が無くなってしまうから、ティグラートは連れて来ないよう言ってあるが」

「ではガット・ネーロか……?」

 と呟きながら、フェデリコは辺りを見回してみる。

 さっき見た者は2人組で、その気配はもう辺りに無かった。

 顔をはっきり見たわけではないし、こっちの民衆の服と似たものを着て帽子を深く被っていたが、どことなくこの国出身ではないことは一目で分かった。

(レオーネ国の王侯貴族が連れてきたガットで無かったのなら……)

 テレトラスポルト商人かもしれないし、敵かもしれない。なんせここは度々襲われる宝島故に。

 フラヴィオが「どうした?」とフェデリコの顔を覗き込む。

「兄上……敵が潜んでいることも考えられるため、念のためお気をつけください――」


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