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第46話ー2
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――1カ月後の1493年2月頭。
「うおぉ、すげぇ! カプリコルノの海ってこんなに綺麗なのか!」
と、カプリコルノの北の海で興奮しているのは、一見して服を着た熊――カンクロ国の熊将軍ことダイ・ケイ。
他にもカンクロ国の将軍たちが、真っ青な海に見惚れている。
「あー、疲れたっ……」
と砂浜の上に四肢をつくは、マサムネの猫4匹と犬1匹――ベルの女官リエン。
カンクロ女王の頼みで、選ばれた100人の厳つい将軍やその重たい鎧をテレトラスポルトで運んできた。
「お疲れ様でございます」
と声が聞こえて一同が振り返ると、そこにはこれでもかというくらい豪奢に着飾ったカンクロ女王がいる。
リエンとカンクロ国の将兵たちが一斉に跪いていった。
どの瞳にも主への親愛の情が浮かんでいる。
「海なんてもんじゃねぇ……俺たちの女王陛下は天女様だぜ……!」
「今日の女王陛下、とってもとっても綺麗ネ!」
ベルの背後から、ルフィーナがおずおずと出て来た。
「あ、あの、カンクロ国の将軍の皆さん。今日はアレックスとシルビーのお披露目パラータの護衛のために、わざわざありがとうございます。なんとお礼を申し上げれば良いかっ……」
「気にしないでくださいヨ、メッゾサングエ王妃陛下! リエンたちは女王陛下の命令で来ただけだかラ!」
「そうです、ルフィーナさん。では、皆様参りましょう。皆様の鎧は、宮廷の中庭に置いてあります」
とベルが南方向――宮廷へと向かって歩き出すと、カンクロ国の将軍たちがぞろぞろと歩いて付いて来る。
マサムネの猫4匹が「門を閉めて来る」とテレトラスポルトでその場を後にすると、リエンが「門?」と鸚鵡返しにしてベルを見た。
「王都オルキデーアの東西南北にある市壁の門です。町が騒がしければコニッリョは近付きませんが、中に入らぬよう念のため。武装集団は人間の目にも恐ろしく映るものですが、臆病なコニッリョにとっては尚のことですからね」
「なるほド。ところで将軍たち武装してから来るんじゃ駄目だったノ?」
「それも念のためです。町の外ではどこでもコニッリョが出没するので。欲を言えばカーネ・ロッソの兵士たちも連れて来たかったのですが、テンテンさんだけでも怯えられている状態ですのでリエンさんひとりが限界です」
宮廷オルキデーア城に辿り着くと、まずはそこに市壁の北門があり、タロウが立っていた。
「間違って閉めるところだったよ。さ、入って入って」
とベルやルフィーナ、カンクロ国一同が中に入ったところで、北門を閉める。
今度は宮廷の搦手門を潜って裏庭に出、そのまま真っ直ぐ歩いて行って、突き当りを左に曲がる。
そこに見えた壁にあるアーチを潜ると、大手門のある『下の中庭』に到着。
「えっ!」
と、熊将軍を始めとするカンクロ将軍たちが仰天した。
「ベルさんが呼んじゃったんです。わ、わたしはカンクロ国の皆さんだけで充分ですと言ったんですがっ……」
と、ルフィーナが少し動揺している。
そこにはベルに負けず劣らず華やかに着飾ったカプリコルノ国王の他、サジッターリオ国王・女王とレオーネ国王夫妻、ヴィルジネ国王夫妻が居た。
またそれぞれの国の豪奢な馬車が用意され、それらはそこに乗って待っていた。
「おー、熊将軍たち来たか。早く鎧を装備してくれ、パラータは30分後だ」
と、カプリコルノの馬車に乗っているフラヴィオが言うと、カンクロ将軍たちが「御意!」と急いで『下の中庭』に置いてある自身たちの鎧を装備し始める。
集合した五国もの国王や女王、王妃を見回すルフィーナが、恐縮のあまり震え上がっていく。
「ベ、ベ、ベ、ベルさんっ……こ、ここまでしていただかなくても、アレックスもシルビーも大丈夫ですっ……!」
「気にするでない、ルフィーナや」
と、マサムネに髭を生やした顔のレオーネ国王。
「わしらはベルに強制されたわけではない。ベルから本日のことは聞いたが、アレックスとシルビーの盾になってやれたらと、皆自主的にやって来たのじゃから」
「えっ……?」
ルフィーナに優しい笑顔を向ける国王たちの顔があった。
「――あ…ありがとうございますっ……!」
と涙ぐみ、深々と頭を下げるルフィーナの傍ら、家政婦長ピエトラがアレッサンドロとシルヴィアを腕に抱いてベルの下へやって来た。
「ほいさ」とアレッサンドロをベルに渡す。
「二人抱っこするのは大変だから、ベルはアレックス殿下を馬車に乗せて行きな。シルビー殿下は陛下に抱っこしてもらえば良いだろう」
「そうですね。ちなみにさっき、馬車の順番で揉めていましたが……」
「ああ、決まったよ。先頭にカンクロ女王陛下の馬車と将軍たち、その次にカプリコルノ国王陛下の馬車と護衛の大公閣下やアドルフォ閣下たち。その後はくじ引きで、レオーネ国、サジッターリオ国、ヴィルジネ国の順になったよ。ちなみにアラブ将軍はうちの将軍だけど、顔がヴィルジネ人だから、なんとなくヴィルジネ国の護衛だ」
少しするとカンクロ将軍たちの準備が整い、マサムネの猫4匹がベルの下へ戻って来る。
ハナが不安げな顔でこう言った。
「あたいもカンクロの馬車に一緒に乗るよ、ベル。町を見てきたけど、赤ん坊や小さい子供を除いて、民衆のほとんどが手に何かしら投げる物を持ってるぞ。建物の窓には弓矢を持った奴らもいたし」
「大丈夫です。強力な盾となるハナたちは予定通り、他国の馬車の護衛に付いてください。私にもアレックス様にもバッリエーラが50枚掛かっているのですから」
「で、でもっ……! じゃ、じゃあせめて、リコたんかアドぽんの護衛を付けなよ。フラビーなんて本当は護衛いらないんだし」
ベルが「いいえ」と返す。
「私とアレックス様の護衛は、御者のリエンさんと熊将軍たちだけで充分です」
と、「さて」と言いながら自身の腕の中のアレッサンドロに微笑みかけた。
「そろそろ参りましょう――」
「うおぉ、すげぇ! カプリコルノの海ってこんなに綺麗なのか!」
と、カプリコルノの北の海で興奮しているのは、一見して服を着た熊――カンクロ国の熊将軍ことダイ・ケイ。
他にもカンクロ国の将軍たちが、真っ青な海に見惚れている。
「あー、疲れたっ……」
と砂浜の上に四肢をつくは、マサムネの猫4匹と犬1匹――ベルの女官リエン。
カンクロ女王の頼みで、選ばれた100人の厳つい将軍やその重たい鎧をテレトラスポルトで運んできた。
「お疲れ様でございます」
と声が聞こえて一同が振り返ると、そこにはこれでもかというくらい豪奢に着飾ったカンクロ女王がいる。
リエンとカンクロ国の将兵たちが一斉に跪いていった。
どの瞳にも主への親愛の情が浮かんでいる。
「海なんてもんじゃねぇ……俺たちの女王陛下は天女様だぜ……!」
「今日の女王陛下、とってもとっても綺麗ネ!」
ベルの背後から、ルフィーナがおずおずと出て来た。
「あ、あの、カンクロ国の将軍の皆さん。今日はアレックスとシルビーのお披露目パラータの護衛のために、わざわざありがとうございます。なんとお礼を申し上げれば良いかっ……」
「気にしないでくださいヨ、メッゾサングエ王妃陛下! リエンたちは女王陛下の命令で来ただけだかラ!」
「そうです、ルフィーナさん。では、皆様参りましょう。皆様の鎧は、宮廷の中庭に置いてあります」
とベルが南方向――宮廷へと向かって歩き出すと、カンクロ国の将軍たちがぞろぞろと歩いて付いて来る。
マサムネの猫4匹が「門を閉めて来る」とテレトラスポルトでその場を後にすると、リエンが「門?」と鸚鵡返しにしてベルを見た。
「王都オルキデーアの東西南北にある市壁の門です。町が騒がしければコニッリョは近付きませんが、中に入らぬよう念のため。武装集団は人間の目にも恐ろしく映るものですが、臆病なコニッリョにとっては尚のことですからね」
「なるほド。ところで将軍たち武装してから来るんじゃ駄目だったノ?」
「それも念のためです。町の外ではどこでもコニッリョが出没するので。欲を言えばカーネ・ロッソの兵士たちも連れて来たかったのですが、テンテンさんだけでも怯えられている状態ですのでリエンさんひとりが限界です」
宮廷オルキデーア城に辿り着くと、まずはそこに市壁の北門があり、タロウが立っていた。
「間違って閉めるところだったよ。さ、入って入って」
とベルやルフィーナ、カンクロ国一同が中に入ったところで、北門を閉める。
今度は宮廷の搦手門を潜って裏庭に出、そのまま真っ直ぐ歩いて行って、突き当りを左に曲がる。
そこに見えた壁にあるアーチを潜ると、大手門のある『下の中庭』に到着。
「えっ!」
と、熊将軍を始めとするカンクロ将軍たちが仰天した。
「ベルさんが呼んじゃったんです。わ、わたしはカンクロ国の皆さんだけで充分ですと言ったんですがっ……」
と、ルフィーナが少し動揺している。
そこにはベルに負けず劣らず華やかに着飾ったカプリコルノ国王の他、サジッターリオ国王・女王とレオーネ国王夫妻、ヴィルジネ国王夫妻が居た。
またそれぞれの国の豪奢な馬車が用意され、それらはそこに乗って待っていた。
「おー、熊将軍たち来たか。早く鎧を装備してくれ、パラータは30分後だ」
と、カプリコルノの馬車に乗っているフラヴィオが言うと、カンクロ将軍たちが「御意!」と急いで『下の中庭』に置いてある自身たちの鎧を装備し始める。
集合した五国もの国王や女王、王妃を見回すルフィーナが、恐縮のあまり震え上がっていく。
「ベ、ベ、ベ、ベルさんっ……こ、ここまでしていただかなくても、アレックスもシルビーも大丈夫ですっ……!」
「気にするでない、ルフィーナや」
と、マサムネに髭を生やした顔のレオーネ国王。
「わしらはベルに強制されたわけではない。ベルから本日のことは聞いたが、アレックスとシルビーの盾になってやれたらと、皆自主的にやって来たのじゃから」
「えっ……?」
ルフィーナに優しい笑顔を向ける国王たちの顔があった。
「――あ…ありがとうございますっ……!」
と涙ぐみ、深々と頭を下げるルフィーナの傍ら、家政婦長ピエトラがアレッサンドロとシルヴィアを腕に抱いてベルの下へやって来た。
「ほいさ」とアレッサンドロをベルに渡す。
「二人抱っこするのは大変だから、ベルはアレックス殿下を馬車に乗せて行きな。シルビー殿下は陛下に抱っこしてもらえば良いだろう」
「そうですね。ちなみにさっき、馬車の順番で揉めていましたが……」
「ああ、決まったよ。先頭にカンクロ女王陛下の馬車と将軍たち、その次にカプリコルノ国王陛下の馬車と護衛の大公閣下やアドルフォ閣下たち。その後はくじ引きで、レオーネ国、サジッターリオ国、ヴィルジネ国の順になったよ。ちなみにアラブ将軍はうちの将軍だけど、顔がヴィルジネ人だから、なんとなくヴィルジネ国の護衛だ」
少しするとカンクロ将軍たちの準備が整い、マサムネの猫4匹がベルの下へ戻って来る。
ハナが不安げな顔でこう言った。
「あたいもカンクロの馬車に一緒に乗るよ、ベル。町を見てきたけど、赤ん坊や小さい子供を除いて、民衆のほとんどが手に何かしら投げる物を持ってるぞ。建物の窓には弓矢を持った奴らもいたし」
「大丈夫です。強力な盾となるハナたちは予定通り、他国の馬車の護衛に付いてください。私にもアレックス様にもバッリエーラが50枚掛かっているのですから」
「で、でもっ……! じゃ、じゃあせめて、リコたんかアドぽんの護衛を付けなよ。フラビーなんて本当は護衛いらないんだし」
ベルが「いいえ」と返す。
「私とアレックス様の護衛は、御者のリエンさんと熊将軍たちだけで充分です」
と、「さて」と言いながら自身の腕の中のアレッサンドロに微笑みかけた。
「そろそろ参りましょう――」
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