酒池肉林王と7番目の天使~番外編集~

日向かなた

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身体測定ー5

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「あ、7番。エルネスト・マストランジェロです。趣味は外国語の勉強です。最近はカンクロ語を学んでいます。特技は……弦楽器かなぁ。父上が、ぼくは兄弟・従兄弟の中でいちばん上手だって仰ってくれました。初恋はティーナ殿下ですが、好みの女の子は妹のビアンカにしておきます。このあいだ、「何よ、どいつもこいつもティーナ殿下ティーナ殿下って! ビアンカだってかわいいのに!」って泣いてたから……」

 フェデリコ三男エルネスト・マストランジェロ(6歳と11ヶ月)は――

 母親譲りの深い金の髪と、父・伯父親譲りの碧眼を持つ。

 マストランジェロ一族の男として強くならなければならない使命に一生懸命の一方で、昼休みには必ず外国語の本を呼んで勉強を欠かさない真面目な性格。

 現在6か国語を話すことが出来る。

 憧れは強く賢い父で、その高貴な碧眼を受け継いだことが自慢。

 その身体測定の結果は、身長131cm・体重29kgだった。

「8番! ティート・マストランジェロ! 趣味は、たまの休日のナンパ! 特技は、つまらなそうにしてる女を笑わせること! 初恋はおれも姉上! 好みも姉上っていったらそうだけど、絶世の美少女なんて早々いるんもんじゃないし……笑った顔がかわいいこ。あと料理がうまいのもいいな」

 第四王子ティート・マストランジェロ(7歳と6ヶ月)は――

 皆がフラヴィオ似で天真爛漫だと言うし、否定はしない。

 しかし、敢えてそういう風に振る舞っているときもある。心の中ではそれなりに悩んでいた。

 第四王子なんて王太子と比べたら周りからそんなに持て囃されるものではないと分かっていても、王子なのだ。

 もっと持て囃して欲しい、目立ちたがり屋だから。

 それなのに、髪は何の変哲もない有り触れている普通の茶色と来た。

 さらに誰もが絶世の美男だと認める父・叔父の顔と、鏡に映る自身の顔を比べてしまう度に、溜め息が出る。

 平々凡々に見えるからだ。

 実際のところは平凡ではなく、必ず並よりも整った顔立ちで生まれて来るマストランジェロ一族だからそれなりだ。しかし、比較対象がそんな父たちとなっては、そんなに顔を褒められた経験がない。

 でも唯一、エルネストと同様、父・叔父から譲り受けた碧眼は、頻繁に褒めてもらえる。休日に必ずと言って良いほど町や村にナンパに行くのは、それを見せびらかす意味も含まれていた。

 顔に関しては特に何も言われなくても、瞳だけは「高貴」だと、「綺麗」や「美しい」と、「さすが王子」だと、言って貰えるからだ。

 尚、日々の鍛錬は苦しいよりも楽しいと思えるが、勉強は苦手。カプリコルノ語とレオーネ語は普通に喋られるが、他は無理。

 最近になって覚えろ言われたカンクロ語なんて、難し過ぎて2秒で爆睡する。

 その身体測定の結果は、身長135cm・体重30kgだった。

「9番、レンツォ・マストランジェロです。趣味は、絵と読書です。特技は……ボクの特技は……」

 とレンツォが口籠ると、父と叔父がその名を呼んだ。振り返ると、2人の優しい微笑がある。

「おまえは父上より絵が上手いじゃないか」

「歌だって上手だろう?」

 レンツォが「スィー」と照れ臭そうな笑顔を見せて続ける。

「特技は絵と歌です。初恋はボクも姉上です。好みの女性は……んと、おしとやかで優しいひと。姉上や母上、アリー叔母上みたいな」

 第三王子レンツォ・マストランジェロ(9歳と3ヶ月)は――

 外見で父や叔父に似た部分は少なく、亡くなった母ヴィットーリアから多くを受け継いでいた。

 父・叔父は金髪碧眼だが、母ヴィットーリア(と叔母ベラドンナ)は黒茶色の髪と瞳をしている。レンツォは黒茶とまでは行かないが、深い茶色の髪と瞳をしていた。

 また顔立ちも母寄りで、特に穏やかな目元はそっくりだった。

 今はちゃんと男の子に見えるが、もっと小さな頃は女の子に見られることも少なくなく、兄コラードにドレスヴェスティートを着せられたこともあった。傷付いて大泣きした。

 恐らく兄弟・従兄弟の中で一番おとなしく、気も弱く、自信も無い。

 さっき言った通り絵画の才もあるし、歌だって上手なのに、そういう性格故にそれが分からないでいた。

 また、マストランジェロ一族の男としては、身体の成長がゆっくりだった。

 父・叔父に対しては当然、賢いひとり目の兄オルランドや、強い2人目の兄コラードのことも、尊敬の眼差しで見ている。弟のティートは、世話が焼けるけど可愛いと思っている。

 マストランジェロ一族の男としてすべての女に対して優しく接しているが、声が大きかったり、口調が強い女は本当はちょっと怖い。母や姉、叔母のように淑やかで心優しい女と恋愛結婚したい。

 尚、この世で一番恐ろしい女は宰相ベルだと確信しているのは秘密。

 その身体測定の結果は、身長140cm・体重33kgだった。

「10番、ガルテリオ・マストランジェロです。趣味も特技もチェススカッキ。遊漁も好き。初恋は僕もティーナ殿下で、ティーナ殿下と結婚したかったのですが……」

 フェデリコ次男ガルテリオ・マストランジェロ(10歳と1ヶ月)は――

 少し暗めの茶色い髪と、母から受け継いだはしばみ色の瞳を持つ。

 第三王子レンツォの気が弱くておとなしいのとは、また少し違う。おとなしいというか寡黙で、感情も普段そんなに表面に出さない。

 兄弟や従兄弟たちと口喧嘩となると黙る一方だが、殴り合いの喧嘩となると負けはしない。

 現在、第二王子コラードが父・伯父の力を最も受け継いでいると言われるが、その次に来るのは恐らくこのガルテリオだった。

 その趣味がスカッキでなく、四六時中、剣を振るっているような子だったならまた変わっていただろうと一部で囁かれる。

 見当たらないと思って探してみると、大体3階の居間にあるスカッキと睨めっこしていて、ひとり黙々と駒を動かして熟考している。

 もっと小さな頃からスカッキで父に勝つことを目標にしていたが、ベルが宮廷に来てからというものそれにも完敗。もうひとつ目標が出来た。

 ベルの前ではなんてことない顔をして、自室に戻ってからひとり悔しさに涙を流す性質。

 その身体測定の結果は、身長154cm・体重54kg。

 同い年の子と比べると、遥かに大きかった。

「ここらでそろそろワイが」

 と、55kgのマサムネが天秤の重り役になる。次のリナルドはマサムネよりも若干目線が下に来るが、重量の方は上回っているのは明らかだった。

「11番! リナルド・マストランジェロ! 趣味は、叔父上こと酒池肉林王陛下が付き添って手取り足取り教えてくれる性教育の受講です! 最新の特技は破廉恥! 初恋はもちろん私もティーナ殿下! 好みは優しい女性。マヤ殿下がそうであると嬉しいんだけど。顔は美人と可愛いなら、可愛い方がいいかな」

 フェデリコ長男リナルド・マストランジェロ(12歳と11ヶ月)は――

 金茶の髪と、母親譲りの榛色の瞳を持つ。

 末の弟――絶世の美乳児レオナルドを除く兄弟・従兄弟の中では、一番美形だと自分では思っているし、実際そう言われてきた。

 ちょっと適当で面倒臭がりなところはあるが、武術だってそれなりだし、性教育以外の勉強は進んでしないだけで、やれば出来る。

 基本的に、兄弟・従兄弟の中で、何をやっても上位の方に来る。

 器用貧乏とも言うのかもしれないが、周りからよく褒められて育ってきたお陰で、自尊心は高い。

 マストランジェロ一族は大きな力を持って生まれて来る一方で、繊細な心を持ち合わせているが、その中でもリナルドは傷付きやすい方だった。

 普段は陽気な笑顔を見せていることが多いが、自尊心を傷つけられるとたちまち滅入る。相手が弟たちや従兄弟なら、殴り合いの大喧嘩に発展する。

 そういう性格なのでズバズバ物を言う女は得意ではなく、女なので嫌いではないが、正直得意ではない。相手の気持ちを考えて発言できる心優しい女が好き。

 その身体測定の結果は、身長168cm・60kgだった。

「宰相、巻尺も用意しておいて」

 と、言ってからコラードが挙手する。

「12番! コラード・マストランジェロ! 趣味は、昔はオレも父上から教えてもらう性教育だったんだけどなぁ。ロッテ(婚約者)が嫌がるから、もう受講してないし。今は武術の鍛錬かな。まぁ、特技は変わらず破廉恥だけど。好みは、お姉様!」

「それなんでなん? 10代の女やったらあかんの?」

 とマサムネが問うた。

「いや、駄目とは言わないけど。可愛いより色っぽい方が好きなのと、肌がパーンとしてるのが好きか、ふわふわしてるのが好きかの違い」

「ああ、10代の乳って男が想像してるのより硬かったりするからな。特に肉食やとパーン!」

「それはそれで良いと思うけど、オレはふわふわ派だからねー」

 第二王子コラード・マストランジェロ(14歳と7ヶ月)は――

 金髪ではないが、兄弟・従兄弟の中で一番明るい茶色の髪と瞳を持つ。

 中身も明るく、父の天真爛漫さを受け継いだ。

 兄弟・従兄弟の中で最も武術の才があり、身体の成長も著しい。

 15歳になってからは北隣のサジッターリオ国の女王と結婚し、同時に国王となるため、夕餉後も頻繁に武術の鍛錬に打ち込んで自身を鍛え上げている。

 その代わりと言っちゃなんだが、勉強が得意だったことは一度もない。現在は一応サジッターリオ語を勉強しているが、すぐに寝てしまうのでほとんど進んでいない。

 その身体測定の結果は、身長180cm・体重79kgだった。

 ベルが「なんと」と少し声高になる。

「コラード様は、来年にはフラヴィオ様やフェーデ様の身長を超えられているのでしょうか」

「そんな気はするんだけどさ……」

 とコラードが複雑そうな表情で父・叔父を一瞥した後、両腕を横に上げた。

「はい、宰相。巻尺で胸囲も測ってみて。あと腕周りも」

 胸囲は115cm、腕周りは45cmだった。

 ついでに腰は72cm。

 とても14歳の身体とは思えず、ベルは「凄いですね」と声高になるが、コラードはやはり複雑そうな顔をしている。

「華奢だな、オレ」

「どこがやねん」

 とコラードよりも遥かに華奢なマサムネは即刻突っ込んだが、コラードからは深い溜め息が漏れる。

「オレ凄い頑張って鍛錬してるのに……『力の王』や『力の王弟』に、遥かに及ばないよ」

「私たち兄弟・従兄弟の中で、一番強いおまえが落ち込むな」

 と、俯いているコラードの胸元をどついた王太子オルランドの測定が始まる。

 その顔も明るくはなかった。

「13番、オルランド・マストランジェロ。趣味は楽器の演奏ですが、ここ数年は勉強に追われてあまり……。特技は楽器の演奏、本の早読み、暗記、計算など。好みの女性は妻のアヤメ。賢い女性も魅力的だと思います」

 と、オルランドがベルを一瞥した。

「渾名は『マストランジェロ王家前代未聞100連敗王太子』です」

 眉間にわずかにシワを寄せたベルから突っ込みが入る前に、オルランドが「お願いします」とピエトラに向かって続けた。

 王太子オルランド(15歳と9ヶ月)は――

 王子・従兄弟たちの中で、もっとも落ち着いた色の髪と瞳は、母ヴィットーリア似。

 生真面目な性格のこともあって、物心ついた頃から将来は自身がカプリコルノ国を担うのだという、精神的圧迫を感じてきた。

 楽器を奏でることは癒しにもなったが、そうしているあいだに立派な国王になれないのではないのかという恐怖に駆られ、いつからか一日の鍛錬が終わった後は図書室に籠っていることが多くなった。

 それは、自身が『力の王』・『力の王弟』の力を、それほど受け継いでいない自覚から来るものだった。

 力が無いのなら、頭でこの国を守るしかないと思ったからだ。

 でもその頭もとても賢い叔父に追い付いている気がまるでしなく、助けて欲しくて賢い妻を求めた時期もあった。

 その結果『マストランジェロ王家前代未聞100連敗王太子』になってしまった。

 ドン底まで落ち込んだところを拾ってくれた妻アヤメには、感謝しても仕切れない。

 アヤメ本人も言っていたが、アヤメはそんなに賢い方ではなく、以前求めた理想の妻とは違うかもしれない。

 しかし、オルランドのために賢明に賢くなろうと努力してくれたり、とても愛らしい笑顔で励ましてくれるアヤメは、オルランドにとっての女神だった。

 傍に居てくれるだけで不思議なほど前向きになれ、将来カプリコルノ国を担うため、より一層の努力に励んでいる今日この頃。

 その身体測定の結果は、身長178cm・体重70kgだった。

 胸囲は110cmで、腕周りは42cm、腰は70cm。

 その口から、溜め息が漏れる。

「こういうのを華奢っていうんだぞ、コラード」

「いや、だからどこがやねん。ワイに謝れ」

 とマサムネが言うので、「すみません」と声を揃えておいた兄弟。

 4階にある王侯貴族専用の食堂に戻ろうとせず、壁際に避けて父と叔父の測定結果を待つ。

「次は自分ですね」

 と、今度は大将アラブの番が来た。


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