酒池肉林王と7番目の天使~番外編集~

日向かなた

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民衆の王子(本編52話省略分ー1)

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 ――1496年9月15日。

 カプリコルノ・カンクロ両国国王フラヴィオ・マストランジェロに、カプリコルノ国第三王女であり、カンクロ国第一王女である12番目の天使ヴィルジニアが生まれてから間もなく。

 もうすぐ13歳になる第四王子ティートが、自慢の碧眼を輝かせ、興奮気味にこう言った。

「可愛すぎだろ、おれの妹! 町に知らせに行ってくる!」

 ティートのひとつ年下の従兄弟――フェデリコ三男エルネストもその碧眼を煌めかせて続いた。

「ぼくは村に知らせに行ってきます」

 と2人で宮廷の4階から1階まで駆け下り、大手門のある『下の中庭』へと出る。

 まずは厩舎に入ったら愛馬に騎乗し、馬の腹を脚で押して発進。

「フォォォォウ!」

 と厩舎から飛び出して行くティートの後を、エルネストが追っていく。

 秋晴れの爽やかな空の下、ティートは茶色の髪を、エルネストは深い金の髪を風に靡かせて大手門を潜り、跳ね橋を渡る。

 その直後、揃って「あ」と手綱を控え、馬の足を止めた。

 宮廷と王都オルキデーアを繋ぐ緩やかな坂を、野菜を山積みにした荷馬車が上ってくる。

「こーんにーちはー」

 と屈託のない笑顔を見せた荷馬車の御者は、5日後に5歳になる4番目の天使パオラ・ファビオ夫妻の長男リクだった。

 癖が強めの茶色い髪も整った顔立ちもパオラ似で、夫ファビオが恵まれた体格をしているせいか、身体は並の5歳児よりも大きい。

 もうきちんと両親の手伝いをしているようで、以前はパオラが運んできてくれることが多かった野菜を、最近はこうしてリクが運んできてくれることもしばしば。

「おー、リク! ちょうどいいところに来た。さっき、ベルナデッタ女王陛下が王女を産んだんだ。名前はヴィルジニア。トーレに続いて女王陛下似ですっげー可愛いの、おれの妹」

 とティートが誇らしげに言うと、リクが「えっ!」と声を上げた。

「ほんとですだか! 村のみんなが楽しみにしてたから、すぐに知らせねぇと!」

 リクは急いで野菜を宮廷に運んでいくと、白髪の執事ファウストから代金をもらって踵を返した。

 大手門の外で待っていてくれたティート・エルネストと共に、王都オルキデーアへと続く緩やかな坂を下りて行く。

 リクが背中に竹刀を装備しているのを見て、エルネストが「へー」と感心して問うた。

「リク、もう武術の鍛錬してるの?」

「畑仕事のあいまに、父ちゃんにしごかれるだ。オトコは強くなきゃダメだって。おいらの名前は、陛下が強いオトコになるようにって願いをこめてつけてくれたし、強くなきゃ大切なものを守れないときがあるからって。父ちゃん、すげぇきびしいだ」

 と不服そうな横顔をするリクを見て、その後頭部をティートが「おい」と言いながら軽く叩いた。

「父ちゃんの言うことはちゃんと聞いとけ、リク」

 エルネストが「そうだよ」と続く。

「君のお父さんはね、昔辛い想いをしたことがあるから言ってるんだよ。君に同じ想いをしてほしくないから、厳しくしてるんだ」

 リクが「ごめんなさいだ」と俯いた。

「おいらも知ってるだ。父ちゃんには母ちゃんの前に結婚してた人がいて、娘もいて、でも2人ともプリームラ貴族の女に殺されたって……」

「ああ。おれガキだったけど、当時のことよく覚えてるよ。実際に見たわけじゃないけど、聞いてるだけで吐き気がしそうな事件だった」

「ちなみに当時小さかったティート殿下とぼくは、陰で当時の処刑執行人――ベルナデッタ女王陛下には逆らわないことを心に誓ってねー。事件を起こしたプリームラ貴婦人とは、違う怖さがあったっていうか」

「そうそう。当時この世で一番偉いと思ってた父上たちも頼りにしてたしさ、子供心に畏怖したよな。女王になったとき、何の違和感もなかった」

 リクが「あー」と言った。

「村のみんなもそんなこと言ってただよー。今のおいらたちの生活が豊かなのは、女王陛下が女王陛下になる前から女王陛下みたいなお人だったからだって。でも女王陛下は貴族にはいじめられがちだから、いざとなったら、おいらたちが貴族をボコって女王陛下をまもんなきゃダメだって」

 ティートから思わず「おいおい」と出た一方、エルネストが苦笑した。

「ねぇリク、村の皆さんに、貴族は貴族でもプリームラ貴族だけにしてくれるよう言っておいてくれる? もともとオルキデーア貴族はおとなしくしていた方だったし、今ではほぼすべてが女王陛下に畏敬の念を抱いてるんだ。オルキデーア貴族はもうそんなに女王陛下の敵じゃないよ。それから、フラヴィオ陛下の敵でもない」

 リクが少しのあいだ黙考して、眉を寄せた。

「プリームラ貴族は今も敵ってことでいいだか?」

「プリームラ貴族の男性たちは陛下の敵って思っていいよ。女性たちは陛下が好きなことも多いけど、ベルナデッタ女王陛下を好きかと言ったら、そうでもないみたい」

「腹たつだな! いつまで敵でいる気だか!?」

「死ぬまで?」

 と、ティートとエルネストの溜め息交じりの声がハモッた。

 只今の王都オルキデーアの流行色は、赤とピンクローザ

 以前は『赤とローザのドレスヴェスティートは20歳未満の特権』なんて風習があったが、それを拭い去りたかったらしいフラヴィオが、わざわざ『女は20歳を超えても赤とローザのヴェスティートを着ること』なんて法律を作った。

 さらに最近民衆の女たちが、その髪型や服装を参考にしたがるベルナデッタ女王が、ローザのブリブリヴェスティートを着せられ、強引にパラータに行かされたお陰で、町はすっかり赤とローザで溢れていた。

「ああ、いいな。町が華やかで。おれ、赤の中でもワインヴィーノ色のヴェスティートを着てるお姉様とか、色っぽくて好きだわ」

「そうですね、ティート殿下。ぼくはローザのヴェスティートが可愛くて好き」

 王都オルキデーアの中央通りに入ったら南下し、少しすると右手側に、3番目の天使セレーナのパン屋パネッテリーアのある通りへ入る曲がり角が見えてくる。

「じゃ、おれ町の溜まり場――セレーナさんのパネッテリーアに知らせに行ってくるから。エルネストは村に知らせに行くつもりだったけど、リクが来たしどうする?」

 とティートに問われたエルネストがリクを見ると、それはこう答えながら馬車を引き続き南方向へと走らせて行った。

「おいらが村のみんなにジーナ殿下のこと知らせてくるですだよー。んだば、またー」

 ということで、エルネストもティートと共に中央通りから右手側――西方向に曲がっていく。

 その通りは石造りの家――主にオルキデーア貴族の家――が建ち並んでいて、早朝から夕方の時間帯は常に焼き立てのパンパーネの香りが漂っている。

 特に大きな石造りの建物が見えたら、それが町天使セレーナのパネッテリーアだ。

 町には敵に襲われたときなどの避難所が2ヵ所あり、1つ目は学校で2つ目がこのパネッテリーアだった。

 尚、2ヵ所に入りきらなかった場合は、同じく石造りで頑丈な病院と教会も利用するようになっている。

「うぃーっす」

 と、武術の鍛錬が休日の度にパネッテリーアにやって来ているティートが気軽に入っていく一方、久々のエルネストは「お邪魔します」と店内のあちこちにいる民衆に会釈をしながら入っていく。

 売り場に焼き立てのパーネを並べていた店主セレーナが、「いらっしゃい」と明るい笑顔と真っ白な歯を見せた傍ら、店内の端っこから「おー」と声が上がった。

 そこには飲食するための長方形の食卓が三台設置してあり、いつもそうであるように民衆の老若男女が屯している。

「今日はティート殿下だけじゃなくて、エルネスト様もいるぅー」

「早く席を空けろ、席を」

 と急遽真ん中の食卓に作られた2人分の席に着きながら、ティートが「ねえ」と口を尖らせた。

「なんか皆、おれよりエルネストの方に気ぃ遣ってない? 王子はエルネストじゃなくて、おれだからね?」

 店内にいる民衆から笑いが起こった。

「ちゃんと分かってるわ、ティート殿下。今日もとっても綺麗な碧眼ね、流石は王子殿下だわ」

「でもほら、ティート殿下と違って、エルネスト殿下はそんなに見ないから」

 セレーナがパーネを山盛りした皿を2人の前に置きながら、「それで」と問う。

「今日は二人でどうしたの? いつもはティート殿下ひとりで町にナンパに繰り出すのに」

「おっと、そうそう。おれ、今日はナンパしに来たんじゃないんだよ。さっきベルナデッタ女王陛下が王女を産んだから、皆に知らせに来たんだ」

 店内に驚きと歓声の声が上がった。

 エルネストが続いて「名前はヴィルジニア殿下です」と言うと、数人が外へ飛び出して国中に喧伝しに向かう。

「もうさ、すーげー可愛いんだよジーナ! トーレをそのまま女にした感じ! つまり女王陛下そっくりでさ、高貴な金髪碧眼でさ!」

「へぇー!」

 と民衆と盛り上がりながらパーネを頬張るティートが、ふと苦笑していく。

「さらに存在感なくなったな、おれ……」

 昔から悩みだった。

 性格は目立ちたがりだ。

 それなのに、王子の中でも持て囃される王太子じゃなくて、第四王子に生まれて来た。

 父と叔父は最も高貴とされる金髪碧眼なのに、自身はカプリコルノ国に一番多いだろう何の変哲もない茶髪。

 父と叔父は誰もが認める絶世の美男だから、やっぱりとても格好良いし、褒められると自慢にも思う。

 でも、そのあとに鏡で見る自身の姿はとても平凡で、悲しくなる。

 せめて『力の王』『力の王弟』の力をそのまま受け継いでいれば救いだったのに、そのまま受け継いでいたのは父の頭だった。

 つまり勉強が苦手で、昔も今も10分も持たずに爆睡する。

「おれの唯一の自慢は碧眼だ。皆、もっと褒めてくれ」

 と涙目になったティートを見て、セレーナが「もう」と溜め息を吐く。

「あたし、いつも言っているでしょう? ティート殿下は平凡なんかじゃないのよ? 綺麗な碧眼をしてるし、整った顔立ちをしているし、力だってマストランジェロ一族の男性が謙遜したら嫌味にしか聞こえないでしょう……まぁ、トーレ殿下を除いて?」

「って言われてもさ……おれの周りが凄すぎて実感が湧かないんだ」

 とすっかり落ち込んでいるティートを見て、セレーナが食卓に屯している民衆の顔々を見回した。

「アレ、見せてあげたら?」

「うーん、でも……怒られるんじゃ?」

 と周りにいる民衆が、ティートやエルネストの顔色をうかがうように見る。

 小首を傾げた2人が、「アレって?」とセレーナに問うた。

「『民衆が選ぶ好きなマストランジェロ一族の男性の投票結果』よ」

 2人が「えっ!」と仰天の声を上げた。

「と、投票って……誰が始めたんだよ、そんなこと!? おれは見たくない、絶対見たくない! 無理無理無理!」

 と食卓の上に突っ伏して視界を防ぐティートの傍ら、エルネストが苦笑しながら周りに手を差し出した。

「見せてください。いえ、ティート殿下以上に存在感の無いぼくは下から数えた方が早いのは分かってるから、そんなに見たいわけじゃないけど、そんなのがあるって知ったら気になっちゃうし……」

「止めろよ、見るなよエルネスト!」

 と必死な様子で、ティートが声を上げる。

「まず1位から4位は父上とフェーデ叔父上、レオ、トーレなのは確実で、それはおれの中でどうにもこうにも諦めが付くから良いとして、その後の順位を見るのが怖い! ランド兄上はそれだけで持て囃される王太子だし、コラード兄上なんてサジッターリオ国王になっちゃったし、レンツォ兄上もサジッターリオの第二王女と結婚して微妙に身分が昇格したし! リナルドなんてサジッターリオの王太女殿下と結婚して各段に昇格、今やおれより上! ていうか、そうでなくてもあいつレオが生まれる前は一番顔が良くてモテモテだったし! ガルテリオはコラード兄上の次に武術の才があるから、おれよりずっと強いし、頭だっておれより50倍いいし、身体もでかけりゃブツもでかいし!」

「ちょっと下ネタは止めて……」

 とエルネストが周り気にして赤面し、咳払いをした後、「まあまあ」と宥めた。

「ぼくがいるじゃないですか、ティート殿下。ぼくはティート殿下より弱いし、顔も平凡ですよ?」

「おまえ深い金の髪をしてるところが、おれより高貴だし! おれのが強いけど、おまえ頭良くて6ヵ国語ペラペラだし、弦楽器の演奏だって優秀だし! おれに確実に優しくしてくれるのなんてアレックスだけだ!」

「いやそれ、アレックス殿下の最下位は決定ってこと? 可哀想だし」

 ひとりの民衆から「これです」と一枚の紙がエルネストに渡される。

 ティートに「見るなって!」と言われたエルネストだったが、やっぱり気になるので目を通していく。

 1位はフラヴィオで2位はフェデリコ、3位はレオナルド、4位はサルヴァトーレと、そこまではティートの予想通りの結果が並んでいる。

 そして第5位を見たときに、エルネストから「なんだ」と意外そうな声が出た。

「見てください、ティート殿下」

「ヤダよ!」

「そうですか。では皆さん、この紙をお返しします」

「いや、気になるし!」

 と食卓からを上げたティートに、エルネストが「どうぞ」と紙を渡す。

 恐る恐るそれに目を通していくティートが、「え?」と第5位に目を留めた。

「――おれぇっ?」

 と意表を突かれて、声が裏返る。

 セレーナが「ふふ」と笑った。

「存在感が無いなんてとんでもない。一番よく町に遊びに来てくれて、うちのお店の常連のお客様のティート殿下は、王子殿下たちの中でも親しみがあるのよ? フラヴィオ様似で明るくて話し易いし、貴族のご夫人やご令嬢、美人でもない庶民でもナンパしてくれたって、喜んでる女性も少なくないし。投票はひとり3票だったのだけれど、見ての通りその中にティート殿下を入れる人は多かったわ」

「そうなのっ?」

 とティートが周りを見回すと、『はいスィー』の笑顔が並んでいた。

「オレ、3票ともティート殿下に投票したよ。いつも一緒に遊んでくれるから」

「わたしもよ。でも……ねぇ、15になったらやっぱり貴族のご令嬢と結婚しちゃうの?」

「えー、ヤダなぁ。ティート殿下はわたしたちの王子殿下だったのに、なんか取られちゃうみたいで寂しい」

「え……」と、周りの民衆の顔を見回すティート。

 その碧眼はだんだんと煌めいていき、最後には爛々として隣のエルネストの顔を捕えた。

「エルネスト、おれ結婚しないわ。皆の王子でいるわ……!」

「それ陛下に怒られないかなぁ」

「大丈夫だよ。もともと父上に好きにしていいって言われてたし、兄上たちがしっかり子孫を残したから。自由でいいな、第四王子って! 最高だな、第四王子って! おれ、第四王子で良かったわ!」

 と、父フラヴィオを彷彿とさせる明るい笑顔が咲く。

「よっし! 皆の王子のおれ、いざとなったら全力で皆を守る! でもおれだけじゃ半人前だから、エルネストおまえも手伝え! 半人前っていうか、おれの力が『中の上』だったら、おまえは『中の下』じゃん? だから、おれとおまえ2人一緒になれば、父上たちひとり分くらいにはなれる……かも!」

「そうですね、ティート殿下。ぼくはどっちかと言ったら助手だけど、『力の王弟』の息子として精一杯頑張ります」

 微笑ましそうに2人を見つめていたセレーナが、ふと「そういえば」と気付く。

「結婚といえば、年齢的には先にガルテリオ様よねぇ? 今年成人して15になったんだし。そういう話は出てるの?」

「いや、今のところ出てないと思うけど」

 とティートが、ガルテリオの弟であるエルネストを見た。

「あいつ無口だから分かり辛いんだけどさ、もしかして姉上がアクアーリオ王太子と結婚したときの失恋から立ち直ってない? あいつもともとチェススカッキ――とたまに遊漁――ばっかしてたけど、姉上が結婚してから本当にそれしか興味なくなったように見えるんだけど。女大好きマストランジェロ一族の男としてどうなんだろうな、それって? あとトーレといるのを良く見るような」

 エルネストが「うーん」と唸った。

「ぼくもよく分からないんですよね、ガルテリオ兄上のことは。だってほら、寡黙なだけじゃなくて顔にもあんまり感情を出さないでしょ? だから失恋についてはどうか分からないけど……でも、わずかでも時間が空けば居間でトーレ殿下と楽しそうにスカッキしてるのは知ってる。トーレ殿下が相手だとよく喋るんだよね、ガルテリオ兄上って」

「何あいつ……もしかして姉上の次はトーレ狙い? 流石レオの兄、性別お構いなしか」

「それは無いわよ」

 と、笑いながら突っ込んだセレーナ。

 王子王女やその従兄弟たちのことは、生まれた頃から見て来ている。

 そのうち、ガルテリオの姿が脳裏に浮かんできた。

 子供の頃から一番寡黙で、また『力の王』の甥や『力の王弟』の息子の名に恥じない立派な体格をしていた。

 表情豊かな方ではないが、マストランジェロ一族の男らしく、女と会話するときは少し表情がやわらかくなる。

 特にそれはヴァレンティーナが相手だと傍目にもはっきり分かるくらいに、優しい笑顔を浮かべる。

 それは物心がついたであろう年齢の頃からずっと変わらず、つい先日のベルの誕生日でも見た。

「もしかしてガルテリオ様って、未だにティーナ殿下に恋をしているのかしら?」


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