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我儘(本編49.5話ー3)
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――時刻は22時前。
レオーネ国王マサムネ・サイトウ(38歳)の朝政の時間だからと、レオーネ国一同がカプリコルノ国を後にした頃。
宮廷の4階にある王侯貴族専用の浴室を借りて入浴を終えたシャルロッテが、家政婦長ピエトラにコラードの部屋へと案内されていた。
中に入ると、天使番号1番ベラドンナ(来月35歳)と2番アリーチェ(今年で34歳)、7番ベル(今年で21歳)が茶を用意して待っていた。
ソファに腰掛けるなり、シャルロッテに緊張が走る。
「こ……これが噂の『いつもの茶』なのね」
ベルが「いいえ」と返した。
「『いつもの茶・改』でございます。『いつもの茶』を私がより『改良』し、美容効果を強化致しました」
「味の方は『改悪』ですから気を付けて」
とベラドンナが口を挟んだ傍ら、ベルが「どうぞ」とそれを注いだカップをシャルロッテの手前に差し出す。
アリーチェが心配そうな顔をして口を開いた。
「ほ、本当に大丈夫ですかシャルロッテ陛下……きっとご想像されているより、何十倍、何百倍も強烈な味ですよ」
「だ、大丈夫よ、気にしないで」
とシャルロッテが、同い年のベラドンナやひとつ年下のアリーチェの肌を見つめる。
「若いベルは兎も角、あなたたち本当に信じられないくらいお肌が綺麗ね。このお茶でそうなれるって言うなら、私も頑張らなくっちゃ……!」
と女王らしく上品な手付きでタッツァを口に持っていったシャルロッテが、「うっ!」と呻いた後にむせ返る。
「ヤダ、何これ! あなたたち、こんなの飲んでるなんて嘘でしょう!?」
「シャルロッテ陛下、お口直しをどうぞ」
とベルが次に出したスープらしきものを、シャルロッテが慌ててスプーンで口に入れる。
今度は「あら」と表情が明るくなった。
「これは美味しいわ」
「お肌のプリプリピカピカに欠かせない、『魔女ツッパ』でございます」
「なんか凄い名前ね……――って、きゃあ! 何これ、指!?」
「鶏の三本指の足でございます」
「なんでそんなの入ってるのよ、気持ち悪い!」
「毒ではありませんから大丈夫です。ささ、シャルロッテ陛下、コラード様が来る前に」
「そ、そうだわ、頑張らないとっ……」
と苦悶の表情を浮かべながら『いつもの茶・改』と『魔女ツッパ』を胃に収めていくシャルロッテを見て、ベラドンナとアリーチェの口から「大変ですね」と出る。
「シャルロッテ陛下とコラードと同じで、フラヴィオ様とベルも17歳差だけど……女性の方が年上だと、そういうところで精神的に辛そう。女性って結局、いつの時代も容姿が重視されるだけだし」
「でもコラード陛下は大丈夫じゃない? もともと年上の女性が好きでシャルロッテ陛下を選んだのだもの」
シャルロッテが「そうだけど」と苦笑した。
「夫が自分より掛け離れて若いと、やっぱり気を遣うわよ。親子に見られてもおかしくないし」
ベルが3人の顔を見回した。
「フラヴィオ様と私も親子に見えたりするんですか?」
「見えないわよ、意外と。フラヴィオ様は若いし、ベルの雰囲気は三十路越えだから」
とベラドンナが言うと、シャルロッテが「でも」と続く。
「私とコラードは、そうは見られないと思うのよ。オルランド殿下は落ち着いて見えるけど、コラードは37歳『児』のフラヴィオ似だし、ちょくちょく我儘言うし、甘えん坊で幼いわ」
「たしかにコラード様は、フラヴィオ様似ですが」
と返したベルが、一呼吸置いて「でも」と続けた。
「フラヴィオ様は子供のような一面も持っているというだけで、私から見てやっぱり大人の男性です。フラヴィオ様の責任感や包容力、器の広さ、それから悪いことをしたと思ったら素直に謝ることが出来るところなども、子供には無いものではありませんか?」
「たしかに」とベラドンナとアリーチェの声が揃った。
「言われてみれば、コラードもそうよね。ランドと比べると幼いけど」
「コラード陛下に限らず、マストランジェロ一族の男性はそうなのよ。フラヴィオ様似のコラード陛下は幼いようで、実際の年齢より大人なのよ」
ベルが「それに」と続ける。
「コラード様は最近、『力の王』と重なって見えますから尚のことです。『力の王』は弱い者を守るために身を挺して戦うことの出来る、とても強い男性です。フラヴィオ様は繊細なお心をお持ちですが、大切なもの、弱いものを守るときはきっと誰よりもお強いのです。つまり……」
とシャルロッテの顔を見つめたベルの表情が、恍惚としていった。
「ベルナデッタのフラヴィオ様はとっても素敵なのですよー」
「は?」
ベルは立ち上がって「では、おやすみなさいませ」と3人に頭を下げると、浮ついた足取りで部屋を後にした。
「いえ、ちょっと、ベル? 私、コラードの話してたわよねぇ? ちょっとー? ベルナデッタ陛下ー?」
ベルの代わりに、ベラドンナとアリーチェが「ごめんなさい」と呆れた笑顔で謝る。
「あの2人、さっぱり愛が冷めなくて。それどころかコニッリョとの融和が近付くに連れ、結婚も近付いて来てるからもう、頭の中がお花畑っていうか」
「つまりあの、コラード陛下もフラヴィオ様と同じで、とっても素敵な大人の男性ってことを、ベルはお伝えしたかったのかと」
シャルロッテが「そうね」と微笑した。
「私、勝手にコラードのことを子供と思い込んでたのかも。ああして、こうして、あれは嫌、これは嫌って我儘も多いし、甘えん坊だけど……コラードももう大人の男なのよね――」
――コラードは、ベラドンナとアリーチェが出て行ってから10分後の、23時に部屋にやって来た。
半裸で、風呂上りで濡れた頭をタオルでワシャワシャと拭きながら、もうレットに入っていたシャルロッテの下へとやって来る。
「あー、疲れた」
と大きな欠伸をしてレットに潜り、シャルロッテの柔らかな腕枕に頬擦りする。
「ねー、ロッテ。オレ鍛錬頑張ったよ。偉い? 偉いでしょ?」
「ええ、偉いわねコラード」
とその明るい茶色の頭を撫でてやると、「でしょー」と誇らしげな笑顔が現れる。
それを見ながら、シャルロッテが噴き出した。
「やっぱり気のせいだったかしらね」
「何が?」
シャルロッテは「何でも無いわ」と返すと、話を切り替えた。
「ところで、今日は急にどうしたのよ? レオの祝宴だったのに、突然鍛錬を始めちゃって」
「さっきも言ったけど、ただそういう気分だったんだよ。習慣が身に付いてるっていうかさ。こっちで暮らしてた頃は、ほぼ毎日鍛錬だったから、しないと落ち着かない日もあるんだ」
「そう。『力の王』の子は殊勝ね。あなた、今でもすでにうちの国で一番強いのに」
「うん。でも、本当の『力の王』には敵わないし、何が起こるか分からないから。オレは鍛錬に気を抜くべきじゃないよ」
と言ったコラードの顔が大人びて見えて、シャルロッテが「あら」とまたその頭を撫でる。
「偉いわね、感心しちゃう。やっぱり気のせいじゃないのかも」
「何が?」
「何でも無いわ」
とシャルロッテが再びそう返すと、「そう」と言ったコラード。
目前にあるシャルロッテの顔をしばしのあいだ黙って見つめた後、徐に再び口を開いた。
「ねぇ……ロッテ。こんなこと早々無いけど、万が一のことを想定して決めておきたいことがあるんだ。ていうか、もう決めた。オレの我儘かもしれないんだけど……」
「ええ、何? あなたの我儘ならしょっちゅう聞いてるから言ってみて」
「サジッターリオにさ、カプリコルノの『人間卒業生』もびっくりなバケモノが現れたとするよ。そしたら、オレやリナルド、レンツォを置いて、子供たちと逃げて」
シャルロッテが声高に「嫌よ」と返した。
「そんなこと出来るわけないでしょう? 私、フラヴィオやフェーデに合わす顔が無いわよ」
「それ、オレのこと守らなきゃいけない対象――子供だと思ってるってこと?」
と、コラードの口が尖る。
「そうじゃないわ、ついさっきあなたのこと大人だと思ったもの」
「じゃあ、オレのお願い聞いて。これは父上やフェーデ叔父上にも言われてることだから」
「それでも嫌よ」
「オレは――」
「絶対嫌、許さないわ」
とシャルロッテが強い語調でコラードの言葉を遮ると、それは「もう」と笑った。
「ロッテも我儘だな。さっきも言ったけど、早々無い話だから怒らないで」
「そ、そうね……ごめんなさい」
とシャルロッテの吊り上がっていた眉が下がると、コラードが「でもね」と続けた。
「もしそういうことになったら、そうして欲しいんだ。さっき父上にも言われたけど、マストランジェロ一族の男は大切なものを守れなかったときが一番辛い想いをするから」
「本当に我儘ね。私の気持ちを考えてない」
「うん、ごめん。ついでにもうひとつ我儘言っていい?」
「ついでにって何よ。でもま、言ってみて?」
「あのね」
と言うなり、コラードが言い辛そうにして口を閉ざした。
機嫌をうかがうようにシャルロッテの顔を見つめる。
「怒らないから」
とシャルロッテが言うと、コラードが再び「あのね」と言った。
「オレが先に死んだら、再婚しないで」
「え?」
「しかも絶対。絶対しないで、再婚。オレ、墓の中でそいつと上手くやっていく自信無いから」
と真剣なその顔を見ながら、シャルロッテが噴き出して哄笑する。
コラードが眉を顰めた。
「いや、笑うとこじゃないんだけど。本気で言ってるんだよ、オレは。ちょっと待って、オレが先に死んだら他の男と再婚する気なの?」
「さぁ、どうかしらね。お肌に悪いからもう寝るわ、おやすみなさい」
とシャルロッテが背を向けて横臥すると、コラードが「あっ!」と頬を膨らませた。
「嫌だって、ちょっと! 嫌っていうか、無理だから! オレそいつ無理だから! ねぇ、ロッテ!」
とその顔を後ろから覗き込むと、それは瞼を閉じて寝息を立てている。
「もう怒った!」
シャルロッテの借りもののワンピース型の寝間着の裾から、フラヴィオ・フェデリコ兄弟を上回る長身の大きな手が侵入する。
いつもはシャルロッテの身体を好き放題にしながらも優しいそれは、本日は大変ご機嫌斜めな模様。
乱暴に脚のあいだに長い指が侵入していく。
「怒ったって、下半身が?」
「そう!」
指が出て行ってから間もなく、今度はそのご立腹中らしいコラードの下半身が身中に押し入って来ると、シャルロッテの身体が大きく揺れ動いた。
「ねぇ、再婚しないって言ってよ、ロッテ……!」
「ふふ」
「なんで笑うの! オレ、本気でお願いしてるのに!」
と焦燥をぶつけるようにコラードがシャルロッテの身体を突き動かしていると、またその笑い声が聞こえてきた。
「分かった分かった、分かったわよコラード。落ち着いて」
とシャルロッテが顔を後ろに捻ると、コラードの酷く剥れた顔が見えた。
髪と同じ明るい茶色の瞳に涙が滲んでいるのを見て、その頭を撫でる。
「からかってごめんね、コラード。あなたが無いことを心配しているから、おかしくなっちゃって」
「再婚しない!?」
「しないわよ、誓って」
その言葉を聞いたコラードが、やっと静まる。
後ろから大きな腕に抱き締められたシャルロッテの耳元、鼻を啜る音が聞こえる。
「ごめん、酷いことして」
「大丈夫よ」
「あともうひとつ我儘」
「まだあるのねぇ。何かしら?」
「もし逆になっちゃったらのこと考えてみて」
「私が先に死んだらってこと?」
「そう。オレに再婚して欲しくないでしょ? だからオレに再婚しないでって言って」
シャルロッテが「うーん」と唸ると、コラードの顔がまた剥れた。
「オレはヤキモチ焼くのに、ロッテは焼かないってこと?」
「そうじゃないのよ。あなたフラヴィオ似でしょう? ひとりでやって行けるかしら。毎晩泣いてそう」
「そこまで考えなくていいから」
「じゃあ……再婚しないでくれる? 私が先に死んでも。たしかにちょっとムッとするわ」
コラードが「うん」と、いつもの明るい笑顔を咲かせた。
「しないよ、絶対」
「お墓の中で、私と再婚相手の女の戦いが始まったら困るものね」
「うん――って、うわ、怖っ…! オレ絶対絶対、ぜっっったいしないよ、再婚っ……!」
シャルロッテがまたおかしそうに笑った。
「ねぇ、コラード?」
「ん?」
「私、あなたと結婚してから、たくさん笑うようになったわ。もうひとり子供も増えたし、とても幸せよ。私を選んでくれてありがとうね」
「何それ、オレの台詞でしょ?」
と、コラードとシャルロッテの唇が重なっている頃――
――共に入浴を終えた天使番号5番ヴァレンティーナ(今年で16歳)と天使番号8番アヤメ(今年で20歳)は、浴室から出て来ると自室の方へと向かって並んで歩いていた。
「そういえばアヤメちゃん、悪阻酷かったんですって?」
「そうなんよ。先月ようやっと治まったけど、ほんま辛かった。今はもう、楽やけど」
とアヤメが言いながら、大きくなってきたお腹を摩った。
ヴァレンティーナの蒼の瞳に、幸福の微笑が映る。
「楽しみね。8月か9月に産まれるのでしょう? 名前はもう決めたの?」
「うーんとな、ランドがレオーネ国風の名前にしたいって言うんよ。女の子やったら、ウチの『アヤメ』みたいに花の名前にするゆーてた。サクラとか、ナデシコとか」
「素敵! 男の子だったら?」
「ランドに、強そうな名前考えてといてって言われたんやけど……」
とアヤメが難しそうな顔をして、立ち止まった。
「強そうな名前ってなんやろなぁ…………テツオ?」
「テツオ? それってレオーネ人的に強そうな名前なの?」
「うん、たぶん。『鉄』の『男』で、『鉄男』やから」
「たしかに強そうね。分かったわ、男の子だったらテツオ・マストランジェロね」
とヴァレンティーナが、ふと自分の腹部に目を落とした。
そこにそっと手を当てる。
「ねぇ、アヤメちゃん……私、どうして赤ちゃん授からないのかしら。もうすぐ結婚して10ヶ月なのに」
アヤメの深い茶色の瞳が揺らいだ。
「焦ったらあかんよ、ティーナちゃん。精神的に追い詰められると、赤ちゃん来てくれへんのやで」
「そうなのね。でも……」
と、絶世の美王女の顔に焦りの色が浮かぶ。
廊下を見渡した後、声を潜めた。
「父上たちや私の兄弟、従兄弟、ベルには言わないで。もしかしたら、戦になっちゃうかもしれないから」
「えっ…? どうしたんっ……?」
とアヤメも声を潜めて問い返すと、ヴァレンティーナが続けた。
「私、このまま赤ちゃんを授からなかったら、離婚されちゃうの。授かったとしても、女の子じゃ駄目。男の子を産まないと許されないの」
「えっ……!?」
と今度はアヤメが、驚愕の表情になりながら廊下を見渡した。
尚のこと声を潜める。
「待って、離婚は無いんちゃう? だって、出来へんやろ。アクアーリオは、『力の王』やカンクロ女王に怯えとるから。その離婚、ティーナちゃんを『捨てた』ってことやし、そんなんいてこまされるで」
「離婚したら、そのことは父上やベルに言わないって。言わないまま、新しい王太子妃を迎えて子供を産ませるって」
「なんやねん、それっ……!」
とアヤメの声が思わず大きくなってしまうと、ヴァレンティーナが慌てて「しーっ」と人差し指を唇に当てた。
はっとして口を両手で塞いだアヤメが、周辺を気にしながら「ごめん」と謝る。
「でも、ティーナちゃん……そんなことになって、内緒にしとっても、きっといつかはバレるで?」
ヴァレンティーナが張り詰めた様子で頷く。
「そうなったら、父上たちもベルもアクアーリオ国を許してくれないと思うの……戦争になると思うの。私、そんなのは絶対嫌。だから絶対…絶対絶対、男の子を産まないとっ……!」
※本編50話へ
レオーネ国王マサムネ・サイトウ(38歳)の朝政の時間だからと、レオーネ国一同がカプリコルノ国を後にした頃。
宮廷の4階にある王侯貴族専用の浴室を借りて入浴を終えたシャルロッテが、家政婦長ピエトラにコラードの部屋へと案内されていた。
中に入ると、天使番号1番ベラドンナ(来月35歳)と2番アリーチェ(今年で34歳)、7番ベル(今年で21歳)が茶を用意して待っていた。
ソファに腰掛けるなり、シャルロッテに緊張が走る。
「こ……これが噂の『いつもの茶』なのね」
ベルが「いいえ」と返した。
「『いつもの茶・改』でございます。『いつもの茶』を私がより『改良』し、美容効果を強化致しました」
「味の方は『改悪』ですから気を付けて」
とベラドンナが口を挟んだ傍ら、ベルが「どうぞ」とそれを注いだカップをシャルロッテの手前に差し出す。
アリーチェが心配そうな顔をして口を開いた。
「ほ、本当に大丈夫ですかシャルロッテ陛下……きっとご想像されているより、何十倍、何百倍も強烈な味ですよ」
「だ、大丈夫よ、気にしないで」
とシャルロッテが、同い年のベラドンナやひとつ年下のアリーチェの肌を見つめる。
「若いベルは兎も角、あなたたち本当に信じられないくらいお肌が綺麗ね。このお茶でそうなれるって言うなら、私も頑張らなくっちゃ……!」
と女王らしく上品な手付きでタッツァを口に持っていったシャルロッテが、「うっ!」と呻いた後にむせ返る。
「ヤダ、何これ! あなたたち、こんなの飲んでるなんて嘘でしょう!?」
「シャルロッテ陛下、お口直しをどうぞ」
とベルが次に出したスープらしきものを、シャルロッテが慌ててスプーンで口に入れる。
今度は「あら」と表情が明るくなった。
「これは美味しいわ」
「お肌のプリプリピカピカに欠かせない、『魔女ツッパ』でございます」
「なんか凄い名前ね……――って、きゃあ! 何これ、指!?」
「鶏の三本指の足でございます」
「なんでそんなの入ってるのよ、気持ち悪い!」
「毒ではありませんから大丈夫です。ささ、シャルロッテ陛下、コラード様が来る前に」
「そ、そうだわ、頑張らないとっ……」
と苦悶の表情を浮かべながら『いつもの茶・改』と『魔女ツッパ』を胃に収めていくシャルロッテを見て、ベラドンナとアリーチェの口から「大変ですね」と出る。
「シャルロッテ陛下とコラードと同じで、フラヴィオ様とベルも17歳差だけど……女性の方が年上だと、そういうところで精神的に辛そう。女性って結局、いつの時代も容姿が重視されるだけだし」
「でもコラード陛下は大丈夫じゃない? もともと年上の女性が好きでシャルロッテ陛下を選んだのだもの」
シャルロッテが「そうだけど」と苦笑した。
「夫が自分より掛け離れて若いと、やっぱり気を遣うわよ。親子に見られてもおかしくないし」
ベルが3人の顔を見回した。
「フラヴィオ様と私も親子に見えたりするんですか?」
「見えないわよ、意外と。フラヴィオ様は若いし、ベルの雰囲気は三十路越えだから」
とベラドンナが言うと、シャルロッテが「でも」と続く。
「私とコラードは、そうは見られないと思うのよ。オルランド殿下は落ち着いて見えるけど、コラードは37歳『児』のフラヴィオ似だし、ちょくちょく我儘言うし、甘えん坊で幼いわ」
「たしかにコラード様は、フラヴィオ様似ですが」
と返したベルが、一呼吸置いて「でも」と続けた。
「フラヴィオ様は子供のような一面も持っているというだけで、私から見てやっぱり大人の男性です。フラヴィオ様の責任感や包容力、器の広さ、それから悪いことをしたと思ったら素直に謝ることが出来るところなども、子供には無いものではありませんか?」
「たしかに」とベラドンナとアリーチェの声が揃った。
「言われてみれば、コラードもそうよね。ランドと比べると幼いけど」
「コラード陛下に限らず、マストランジェロ一族の男性はそうなのよ。フラヴィオ様似のコラード陛下は幼いようで、実際の年齢より大人なのよ」
ベルが「それに」と続ける。
「コラード様は最近、『力の王』と重なって見えますから尚のことです。『力の王』は弱い者を守るために身を挺して戦うことの出来る、とても強い男性です。フラヴィオ様は繊細なお心をお持ちですが、大切なもの、弱いものを守るときはきっと誰よりもお強いのです。つまり……」
とシャルロッテの顔を見つめたベルの表情が、恍惚としていった。
「ベルナデッタのフラヴィオ様はとっても素敵なのですよー」
「は?」
ベルは立ち上がって「では、おやすみなさいませ」と3人に頭を下げると、浮ついた足取りで部屋を後にした。
「いえ、ちょっと、ベル? 私、コラードの話してたわよねぇ? ちょっとー? ベルナデッタ陛下ー?」
ベルの代わりに、ベラドンナとアリーチェが「ごめんなさい」と呆れた笑顔で謝る。
「あの2人、さっぱり愛が冷めなくて。それどころかコニッリョとの融和が近付くに連れ、結婚も近付いて来てるからもう、頭の中がお花畑っていうか」
「つまりあの、コラード陛下もフラヴィオ様と同じで、とっても素敵な大人の男性ってことを、ベルはお伝えしたかったのかと」
シャルロッテが「そうね」と微笑した。
「私、勝手にコラードのことを子供と思い込んでたのかも。ああして、こうして、あれは嫌、これは嫌って我儘も多いし、甘えん坊だけど……コラードももう大人の男なのよね――」
――コラードは、ベラドンナとアリーチェが出て行ってから10分後の、23時に部屋にやって来た。
半裸で、風呂上りで濡れた頭をタオルでワシャワシャと拭きながら、もうレットに入っていたシャルロッテの下へとやって来る。
「あー、疲れた」
と大きな欠伸をしてレットに潜り、シャルロッテの柔らかな腕枕に頬擦りする。
「ねー、ロッテ。オレ鍛錬頑張ったよ。偉い? 偉いでしょ?」
「ええ、偉いわねコラード」
とその明るい茶色の頭を撫でてやると、「でしょー」と誇らしげな笑顔が現れる。
それを見ながら、シャルロッテが噴き出した。
「やっぱり気のせいだったかしらね」
「何が?」
シャルロッテは「何でも無いわ」と返すと、話を切り替えた。
「ところで、今日は急にどうしたのよ? レオの祝宴だったのに、突然鍛錬を始めちゃって」
「さっきも言ったけど、ただそういう気分だったんだよ。習慣が身に付いてるっていうかさ。こっちで暮らしてた頃は、ほぼ毎日鍛錬だったから、しないと落ち着かない日もあるんだ」
「そう。『力の王』の子は殊勝ね。あなた、今でもすでにうちの国で一番強いのに」
「うん。でも、本当の『力の王』には敵わないし、何が起こるか分からないから。オレは鍛錬に気を抜くべきじゃないよ」
と言ったコラードの顔が大人びて見えて、シャルロッテが「あら」とまたその頭を撫でる。
「偉いわね、感心しちゃう。やっぱり気のせいじゃないのかも」
「何が?」
「何でも無いわ」
とシャルロッテが再びそう返すと、「そう」と言ったコラード。
目前にあるシャルロッテの顔をしばしのあいだ黙って見つめた後、徐に再び口を開いた。
「ねぇ……ロッテ。こんなこと早々無いけど、万が一のことを想定して決めておきたいことがあるんだ。ていうか、もう決めた。オレの我儘かもしれないんだけど……」
「ええ、何? あなたの我儘ならしょっちゅう聞いてるから言ってみて」
「サジッターリオにさ、カプリコルノの『人間卒業生』もびっくりなバケモノが現れたとするよ。そしたら、オレやリナルド、レンツォを置いて、子供たちと逃げて」
シャルロッテが声高に「嫌よ」と返した。
「そんなこと出来るわけないでしょう? 私、フラヴィオやフェーデに合わす顔が無いわよ」
「それ、オレのこと守らなきゃいけない対象――子供だと思ってるってこと?」
と、コラードの口が尖る。
「そうじゃないわ、ついさっきあなたのこと大人だと思ったもの」
「じゃあ、オレのお願い聞いて。これは父上やフェーデ叔父上にも言われてることだから」
「それでも嫌よ」
「オレは――」
「絶対嫌、許さないわ」
とシャルロッテが強い語調でコラードの言葉を遮ると、それは「もう」と笑った。
「ロッテも我儘だな。さっきも言ったけど、早々無い話だから怒らないで」
「そ、そうね……ごめんなさい」
とシャルロッテの吊り上がっていた眉が下がると、コラードが「でもね」と続けた。
「もしそういうことになったら、そうして欲しいんだ。さっき父上にも言われたけど、マストランジェロ一族の男は大切なものを守れなかったときが一番辛い想いをするから」
「本当に我儘ね。私の気持ちを考えてない」
「うん、ごめん。ついでにもうひとつ我儘言っていい?」
「ついでにって何よ。でもま、言ってみて?」
「あのね」
と言うなり、コラードが言い辛そうにして口を閉ざした。
機嫌をうかがうようにシャルロッテの顔を見つめる。
「怒らないから」
とシャルロッテが言うと、コラードが再び「あのね」と言った。
「オレが先に死んだら、再婚しないで」
「え?」
「しかも絶対。絶対しないで、再婚。オレ、墓の中でそいつと上手くやっていく自信無いから」
と真剣なその顔を見ながら、シャルロッテが噴き出して哄笑する。
コラードが眉を顰めた。
「いや、笑うとこじゃないんだけど。本気で言ってるんだよ、オレは。ちょっと待って、オレが先に死んだら他の男と再婚する気なの?」
「さぁ、どうかしらね。お肌に悪いからもう寝るわ、おやすみなさい」
とシャルロッテが背を向けて横臥すると、コラードが「あっ!」と頬を膨らませた。
「嫌だって、ちょっと! 嫌っていうか、無理だから! オレそいつ無理だから! ねぇ、ロッテ!」
とその顔を後ろから覗き込むと、それは瞼を閉じて寝息を立てている。
「もう怒った!」
シャルロッテの借りもののワンピース型の寝間着の裾から、フラヴィオ・フェデリコ兄弟を上回る長身の大きな手が侵入する。
いつもはシャルロッテの身体を好き放題にしながらも優しいそれは、本日は大変ご機嫌斜めな模様。
乱暴に脚のあいだに長い指が侵入していく。
「怒ったって、下半身が?」
「そう!」
指が出て行ってから間もなく、今度はそのご立腹中らしいコラードの下半身が身中に押し入って来ると、シャルロッテの身体が大きく揺れ動いた。
「ねぇ、再婚しないって言ってよ、ロッテ……!」
「ふふ」
「なんで笑うの! オレ、本気でお願いしてるのに!」
と焦燥をぶつけるようにコラードがシャルロッテの身体を突き動かしていると、またその笑い声が聞こえてきた。
「分かった分かった、分かったわよコラード。落ち着いて」
とシャルロッテが顔を後ろに捻ると、コラードの酷く剥れた顔が見えた。
髪と同じ明るい茶色の瞳に涙が滲んでいるのを見て、その頭を撫でる。
「からかってごめんね、コラード。あなたが無いことを心配しているから、おかしくなっちゃって」
「再婚しない!?」
「しないわよ、誓って」
その言葉を聞いたコラードが、やっと静まる。
後ろから大きな腕に抱き締められたシャルロッテの耳元、鼻を啜る音が聞こえる。
「ごめん、酷いことして」
「大丈夫よ」
「あともうひとつ我儘」
「まだあるのねぇ。何かしら?」
「もし逆になっちゃったらのこと考えてみて」
「私が先に死んだらってこと?」
「そう。オレに再婚して欲しくないでしょ? だからオレに再婚しないでって言って」
シャルロッテが「うーん」と唸ると、コラードの顔がまた剥れた。
「オレはヤキモチ焼くのに、ロッテは焼かないってこと?」
「そうじゃないのよ。あなたフラヴィオ似でしょう? ひとりでやって行けるかしら。毎晩泣いてそう」
「そこまで考えなくていいから」
「じゃあ……再婚しないでくれる? 私が先に死んでも。たしかにちょっとムッとするわ」
コラードが「うん」と、いつもの明るい笑顔を咲かせた。
「しないよ、絶対」
「お墓の中で、私と再婚相手の女の戦いが始まったら困るものね」
「うん――って、うわ、怖っ…! オレ絶対絶対、ぜっっったいしないよ、再婚っ……!」
シャルロッテがまたおかしそうに笑った。
「ねぇ、コラード?」
「ん?」
「私、あなたと結婚してから、たくさん笑うようになったわ。もうひとり子供も増えたし、とても幸せよ。私を選んでくれてありがとうね」
「何それ、オレの台詞でしょ?」
と、コラードとシャルロッテの唇が重なっている頃――
――共に入浴を終えた天使番号5番ヴァレンティーナ(今年で16歳)と天使番号8番アヤメ(今年で20歳)は、浴室から出て来ると自室の方へと向かって並んで歩いていた。
「そういえばアヤメちゃん、悪阻酷かったんですって?」
「そうなんよ。先月ようやっと治まったけど、ほんま辛かった。今はもう、楽やけど」
とアヤメが言いながら、大きくなってきたお腹を摩った。
ヴァレンティーナの蒼の瞳に、幸福の微笑が映る。
「楽しみね。8月か9月に産まれるのでしょう? 名前はもう決めたの?」
「うーんとな、ランドがレオーネ国風の名前にしたいって言うんよ。女の子やったら、ウチの『アヤメ』みたいに花の名前にするゆーてた。サクラとか、ナデシコとか」
「素敵! 男の子だったら?」
「ランドに、強そうな名前考えてといてって言われたんやけど……」
とアヤメが難しそうな顔をして、立ち止まった。
「強そうな名前ってなんやろなぁ…………テツオ?」
「テツオ? それってレオーネ人的に強そうな名前なの?」
「うん、たぶん。『鉄』の『男』で、『鉄男』やから」
「たしかに強そうね。分かったわ、男の子だったらテツオ・マストランジェロね」
とヴァレンティーナが、ふと自分の腹部に目を落とした。
そこにそっと手を当てる。
「ねぇ、アヤメちゃん……私、どうして赤ちゃん授からないのかしら。もうすぐ結婚して10ヶ月なのに」
アヤメの深い茶色の瞳が揺らいだ。
「焦ったらあかんよ、ティーナちゃん。精神的に追い詰められると、赤ちゃん来てくれへんのやで」
「そうなのね。でも……」
と、絶世の美王女の顔に焦りの色が浮かぶ。
廊下を見渡した後、声を潜めた。
「父上たちや私の兄弟、従兄弟、ベルには言わないで。もしかしたら、戦になっちゃうかもしれないから」
「えっ…? どうしたんっ……?」
とアヤメも声を潜めて問い返すと、ヴァレンティーナが続けた。
「私、このまま赤ちゃんを授からなかったら、離婚されちゃうの。授かったとしても、女の子じゃ駄目。男の子を産まないと許されないの」
「えっ……!?」
と今度はアヤメが、驚愕の表情になりながら廊下を見渡した。
尚のこと声を潜める。
「待って、離婚は無いんちゃう? だって、出来へんやろ。アクアーリオは、『力の王』やカンクロ女王に怯えとるから。その離婚、ティーナちゃんを『捨てた』ってことやし、そんなんいてこまされるで」
「離婚したら、そのことは父上やベルに言わないって。言わないまま、新しい王太子妃を迎えて子供を産ませるって」
「なんやねん、それっ……!」
とアヤメの声が思わず大きくなってしまうと、ヴァレンティーナが慌てて「しーっ」と人差し指を唇に当てた。
はっとして口を両手で塞いだアヤメが、周辺を気にしながら「ごめん」と謝る。
「でも、ティーナちゃん……そんなことになって、内緒にしとっても、きっといつかはバレるで?」
ヴァレンティーナが張り詰めた様子で頷く。
「そうなったら、父上たちもベルもアクアーリオ国を許してくれないと思うの……戦争になると思うの。私、そんなのは絶対嫌。だから絶対…絶対絶対、男の子を産まないとっ……!」
※本編50話へ
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