酒池肉林王と7番目の天使~番外編集~

日向かなた

文字の大きさ
37 / 51

初めての弟ー3(本編52話省略分ー6)

しおりを挟む
 注文した料理の中からヴァレンティーナは好きなものを取って一人前程度食べ、残りの9人前程度をガルテリオが平らげた。

 店を出たらまた馬に乗り、来た道を少し戻って中央通りに入り、南下して市壁の南門を潜ると、そこにはオルキデーアの農村が広がっている。

 町でもそうであったように、ヴァレンティーナはここでも駆け寄ってくる村人に手を振り、笑顔を返して仕事をする。

 村の中央にある、堅牢な石造りの村の避難所――4番目の天使パオラ一家の邸宅――までやって来ると、その前でファビオ・リク親子が剣術の鍛錬をしていた。

 ヴァレンティーナとガルテリオが挨拶をしようと口を開きかけたときに、リクの幼い声が響き渡った。

「ああーっ! 父ちゃん、何してるだーーーっ!」

 続いて、30過ぎになったファビオの絶叫。

「やっちまっただあぁぁーーーっ!」

 と、頭を抱える。

 ヴァレンティーナとガルテリオもしっかり見ていたが、ファビオが練習用の剣を振り回したときに、ガツンと邸宅の角にぶつけてしまった。

 ファビオはフラヴィオにも引けを取らない恵まれた体格をしているものだから、外壁に結構な傷が出来た。

「おいらたちの家、村のみんなの避難所なんだど!」

「んだべ、大変だべ! すぐに石材もらって直さねえと!」

 と自宅の馬小屋に駆けて行こうとしたファビオに、ヴァレンティーナが声を掛ける。

「大丈夫よ、ファビオさん。あとで修理屋さんに来てもらうから」

「ヴァレンティーナ殿下!」

 と、親子の声が揃った。

「もう大丈夫ですだか!?」

「ええ、もう何ともないわ。心配掛けてごめんなさい」

 安堵の表情を見せたと思った親子が、今度は苦虫を噛み潰したような表情になっていく。

「おいら、ほんっとにアクアーリオがゆるせねぇだ」

「ああ、父ちゃんもだリク。パオラもヴァレンティーナ殿下が可哀想だって泣いてたし、アクアーリオ戦のとき陛下にオイラも連れてってもらうべ」

「とくに王太子をとっちめてきてくろ、父ちゃん」

「おう、任せろ」

 と闘志に燃えている親子を見てヴァレンティーナが苦笑したとき、後方からパオラの声が聞こえてきた。

「ティーナ殿下! もう起きて大丈夫だか!?」

 パオラは荷馬車に乗っていて、どこかへ野菜果物を届けてきたのだと分かる。

「ええ、もう大丈夫よ」

 とヴァレンティーナはガルテリオに馬から降ろしてもらうと、「良かっただ!」と馬車から飛び降りてきたパオラと抱擁し合った。

 リクが寄って来て、パオラの顔を覗き込む。

「母ちゃん、『姫通り』の菓子屋に果物もっていっただけにしては遅かっただね? 外で昼飯くってきただか?」

「いんや、町の病院に行ってきただ」

 その言葉を聞いた4人が「病院?」と声高に声を揃えた。

「ぐ、具合悪いだかパオラ!? 何で言わねぇ! ああ、大変だべ! すぐに寝かせねぇと!」

 とファビオが妻を抱き上げると、それは「違うべ」と言った。

「病院にたしかめに行っただよ。授かった気がして」

「え?」

「赤ちゃん」

「え?」

「2人目出来ただよ、ファビオ兄」

「――えっ!」

 と再び4人の声が揃った。

 ファビオがパオラを抱っこしたまま欣喜雀躍し、リクが興奮して両親の顔を交互に見る。

「おいら、兄ちゃんになるだか!?」

「んだぞ、リク! 弟か妹かは生まれてみなきゃ分かんねぇけど、おまえ来年兄ちゃんになるんだど!」

「うおぉ、そうか! おいら、兄ちゃんになるだか! 父ちゃん!」

「んだぞ、リク! 良かったな!」

「うん、父ちゃん! ところで、赤ん坊ってどうやったらできるだ!?」

「――えっ……!?」

 とファビオが硬直した傍ら、ガルテリオがヴァレンティーナを馬に乗せた。

 下から見上げた蒼の瞳にうっすらと涙が浮かんでいるのを見て、宥めるように微笑する。

「おめでとうございます、パオラさん。では、僕たちはこれで。壁の修理屋は後で来させますので」

「や、あのっ……!」

 とファビオが助けを求めて手を伸ばしたのが分かったが、ガルテリオは何も気付かなかった振りをして馬を発進。

 その場を後にして、コニッリョの山方向――西へと向かっていく。

「パオラさんたちは何の悪気もありません」

「ええ、分かっているわガルテリオ。いいのよ、私も嬉しいわ」

 とガルテリオに笑顔を見せた後、前方を向いたヴァレンティーナの視界がぼやけていく。

(検討も何も無かったわ、ベル)

 どうしてこんな肝心なことを忘れていたのだろうと思う。

 自身にはガルテリオと結婚する資格なんてなかった。

(だって私、赤ちゃんが出来ないのだもの……――)

 ――コニッリョの山の付近までやって来ると、馬を止めずにはいられないほどコニッリョに囲まれた。

 と言っても、ガルテリオのことは一切目に入っていない様子。

 一匹のコニッリョがヴァレンティーナの手を握ったと思ったら、「ぐわりぃれ」と治癒魔法を掛けた。

 その途端、グワリーレを掛けられたヴァレンティーナは当然のこと、密集していたことで肌がくっ付いていたコニッリョたちにも次から次へと魔法が伝わり、最終的にはそこにいるガルテリオと馬以外の一同を眩しい光が包み込んでいった。

 これほどにまで強力なグワリーレを見たことが無く、ガルテリオが唖然とする。

「こ…これが本物のグワリーレか……!」

 ヴァレンティーナがコニッリョたちに「ありがとう」と笑顔を向けた。

「心配掛けてごめんね。私は怪我をしていたのではないし、身体はもうすっかり治ったから大丈夫よ。あと、これからはまた毎週あんこをあげに来るから、楽しみにしててね」

 コニッリョの山を後にしたら、ガルテリオは宮廷のある方向――北へと向かって行く。

 つまり帰路に着いたわけだが、町中を通っていくか、市壁の外を通っていくか悩んで、後者を選択することにした。

 もう帰るのだと思うと残念で、後はせめて2人きりでいたかった。

「ちゃんと夕餉前には間に合いそうね。今日はありがとう、ガルテリオ。楽しかったわ」

「僕もです、ありがとうございました。また誘ってください」

 返事の「ええ」が返ってくるまでに、数秒の間があった。

 ガルテリオがその顔を覗き込んでみると、蒼の瞳と目が合わない。

「ティーナ殿下……?」

 さらに目を逸らすように、ヴァレンティーナが前方を見る。

「教えて、ガルテリオ」

「スィー」

「去年のあなたの誕生日のアレ、今も?」

「もちろんです。あのとき僕は、今までも、これからもあなたを愛していると言いました。だから僕は今日、アップンタメントをしているようでとても嬉しかった」

 ヴァレンティーナがまた少しのあいだ黙った。

 そして再び聞こえてきた言葉は、「ごめんね」だった。

「私、あなたのことは好きよ。だって、私にとったら『初めての弟』だもの、可愛いもの。好きよ、本当に。でも、それは男の人としてじゃないわ。あくまでも『弟』としてよ。だから迷惑なの。私のこと、そういう目で見るのもう止めて。私のことはもう忘れて、別の女性と幸せになって。それが私の願いよ」

 視線を落としたヴァレンティーナの視界に、手綱を握っているガルテリオの大きな手が映る。

 小さく震えていた。

「――……分かりました」

 そう言ってガルテリオは馬の足を速めると、方向転換して市壁の西門へと向かっていった。





 ――宮廷の大手門や厩舎、武具庫のある『下の中庭』。

 民兵が軍事訓練を終えた後のそこで、ジルベルトが不機嫌そうに練習用の大剣を振り回していた。

「あー、むかつく! ガルテリオの奴、オレの知らないあいだにティーナをさらって行きやがって!」

「だから、ただのティーナ殿下の護衛だってば、ガルテリオ兄上は」

 と、斧槍アラバルダでジルベルトの相手をしているレオナルドがげんなりした様子で返す。

 その近くで、ムサシが自身と瓜二つの顔をした今年4つになる甥っ子――テツオに弓矢を教えながら、溜め息交じりに続いた。

「少し落ち着くでござるよ、ジル。もうそろそろお二方は帰ってくるでござるから」

「そりゃそーだ、兄貴! もしメシまでに帰って来なかったら、ガルテリオの奴ぶっ殺してやっかんな!」

 テツオが母アヤメや、祖父マサムネと同じ口調で突っ込む。

「おっちゃん、仲間をそういうことしたらあかんのやで」

「テツオおまえ、オレをおっちゃん言うな」

「なんでやねん。テツオのおっちゃんの弟なんやからおっちゃんやん」

「そうかもしれねーけど、8歳におっちゃんはねーだろオイ」

 レオナルドが話を戻す。

「ガルテリオ兄上を怒らせることをしたら駄目だよ、ジル。ガルテリオ兄上って怒ると一番怖いんだから。トーレ殿下みたいに可愛くしてないとボコボコにされるよ?」

「って、オレが可愛くしたら気持ちわりーだろ! 逆にボコられるわ! てか、オレのつえーし!」

「今はガルテリオ殿でござるよ」

 と、ムサシが返した。

「将来はおまえでござろうが、今はまだガルテリオ殿の方が強いでござるよジル。ガルテリオ殿に本気になられたらおまえはやられる。拙者もおまえを守ってやれぬかもしれぬから、おとなしくしているでござるよ」

「だって、兄貴……!」

 とジルベルトの口が尖ったとき、大手門にヴァレンティーナとガルテリオの姿が見えた。

 ジルベルトが「あっ!」とそちらへと疾走していく。

「ティーナ!」

「あら、ただいまジル」

 ガルテリオが宮廷の出入り口で馬を止めると、ジルベルトが手を伸ばしてヴァレンティーナを馬から降ろした。

「大丈夫か!? こいつに何もされてねーか……!?」

「何のことよ。ただ町と村、コニッリョの皆に元気になった姿を見せに行っただけよ」

 と笑ったヴァレンティーナが、「ただいまー」と言いながら宮廷の中へと入っていく。

 それを聞いて安堵したジルベルトの方は、厩舎へと向かって行くガルテリオの後を追っていった。

「おい! ガルテリオ! おまえふざけやがって!」

 嫌な予感がしたレオナルドとムサシも続いて厩舎へと駆けて行く一方、テツオは宮廷の中へと入っていく。

「あかんあかん、これはケンカのにおいやで」

 レオナルドとムサシが厩舎に入ると、ガルテリオがフェデリコから借りた白馬を馬房に戻したところだった。

 食って掛かるジルベルトの声がまるで聞こえていないかのように、馬の首を「ありがとう」と撫でた後、厩舎の出入り口へと戻ってくる。

「おい、聞いてんのかよガルテリオ!」

 とジルベルトはガルテリオの背を追い駆けながら喚くが、それは振り返らないまま宮廷へと向かって行く。

 どこかぼうっとしていて、擦れ違ったレオナルドとムサシの姿も見えていないようだった。

 そして堪忍袋が切れたらしいジルベルトが、「聞け!」と声を荒げながら練習用の大剣でその大きな背中を殴り付ける。

「――っ……!」

 一瞬で真っ青になったレオナルドとムサシが駆け出したとき、ガルテリオがゆっくりと振り返った。

 その殺気漂う剣幕を見て、思わず「うわぁ」と足が止まってしまった2人の手前、ジルベルトの針山のような頭が地面にめり込んでいく。

 一瞬死んだように見えたが、ハケモノの子はやはりバケモノで、「いてーな!」と元気良く頭を地面から引っこ抜いた。

 激昂して、ガルテリオに殴り掛かろうとしたら胸倉を掴まれて、城壁に向かってぶん投げられる。

 今度は頭が壁に埋まっていった。

 ジルベルトはまた元気良く頭を引っこ抜いたが、頭部から流血しているのを見て、やっと固まっていた2人の足が動き出す。

「落ち着いてください、ガルテリオ兄上!」

 とジルベルトに迫るガルテリオの背にレオナルドがしがみ付き、ムサシがジルベルトを背に庇う。

「拙者の弟が申し訳ない、ガルテリオ殿! お許しくだされ!」

 その額には青筋が浮かび、目が据わり、まるで聞こえていないようで、その足が止まらない。

「ガルテリオ兄上、止めてください!」

「ジルをお許しくだされ、ガルテリオ殿!」

 ジルベルトが殺されるかもしれない。

 2人がそう思ったとき、宮廷の中からテツオの声が聞こえてきた。

「はよ、はよ! おっちゃん、こっちや!」

 続いてサルヴァトーレの声。

「えっ? トーレって来月で6つなのにもうおっちゃんなの?」

「そやで。テツオのおとんの弟なんやから、おっちゃんやで」

「そうなんだ。トーレ、知らなかった……まだ毛も生えてないのに」

 そして宮廷から出て来たサルヴァトーレが「あ、ガルテリオ先生!」と見つけると、それははっと我に返って振り返った。

「おかりなさい、ガルテリオ先生!」

 と無邪気な笑顔で駆け寄ってきたサルヴァトーレを、「ただいま」とつい先ほどまでとは別人の優しい笑顔で抱っこする。

「今日は『中の中庭』で鍛錬を頑張っていたのかい?」

「スィー! あのね、トーレね、腕立て伏せ12回できるようになったの!」

「それは凄い、力持ちだ。先生、負けちゃうよ」

 とガルテリオが宮廷の中へと消えていくと、レオナルドとムサシが脱力していった。

 テツオが「どや!」と胸を張る。

「テツオのおかげやろ? キテンがきくやろ? かしこいやろ?」

 本当によくやったと、レオナルドとムサシに頭を撫で繰り回されるテツオが、嬉しそうに八重歯を見せて笑む。

 その傍ら、ジルベルトが赤く染まった頭を横に振った。

「あー、クラクラする。ガルテリオの奴、ブチ切れてんな」

「おまえが悪いんでござるよ、ジル。ティーナ殿下は何も無かったと言っていたのに、おまえという奴は……」

「ちげーよ、兄貴。ありゃティーナと何も無くねーよ。振られたんだな」

 とジルベルトは短く笑うと、宮廷の中へと入っていった。

「おーい、テンテーン。ちょっとグワリーレ頼むわー」

 その頃、ガルテリオの左腕に抱っこされて階段を登っていたサルヴァトーレ。

 今日の出来事を楽しそうにガルテリオに話していたが、ふと心配そうに「先生?」とその顔を覗き込んだ。

「どうしたの? 先生笑ってるのに、とっても悲しそう」

「そんなことないよ、大丈夫だよ」

「先生、嘘ついた」

「うん……ごめん。分からないんだ」

「何が? 言ってみて、先生! トーレ、分かるかも!」

 とサルヴァトーレが必死な様子で訴えると、階段の真ん中でガルテリオの足が止まった。

 サルヴァトーレの小さな胸に、顔を埋める。

「教えてよ……」

「分かった!」

 と言いながら、サルヴァトーレが守るようにガルテリオの頭を抱き締めた。

「僕は、どうやったら一度愛した人を忘れられるの……どうやったら、他の女性を愛せるの――」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

処理中です...