今年からのサンタクロース

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

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俺が今夜、本当に体験した奇跡をここに綴るゼ

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 今年も一人のクリぼっち。
 この時期は毎年仕事が忙しいから仕方ないとはいえ、なんだか……寂しい。
 辺りは雪がうっすらと降り積もりだして寒く、ぽつんぽつんと灯っている街灯で誰も歩いていない夜道はほの明るくなっていて、それがまた心にこたえる。

「クリスマスなんて……。クリスマスなんて、クソくらえだー!!」

 と、疲労からなんだか変なテンションとなっていた俺は叫んでしまった。
 
「うっ。えっ? ――うわ~あぁぁあぁぁぁあああ!」

 誰もいないと思っていたのに……。
 どこかの家から年老いた男の驚いた声が聞こえ、ドスンという重いものが落ちる音もした。
 しまった――そう思った俺は謝罪をすべきかと即座に考え、声のした方へと足を向ける。
 確実に俺が叫んだ大声のせいだと分かっているからだ、タイミング的に。

「だ、大丈夫ですか?」

 塀の陰からそっと覗くと真っ白なひげを蓄えた恰幅のいい――サンタクロースがいた。
 あのお馴染みの赤い服を着て。

「「えっ!?」」

 怪しい……そう思った、正直なところ。
 互いにビックリして顔を見合わせたが怪しさしか感じられなかったのだ。
 だがその家の親だかが自分の子供にプレゼントを渡すためにサンタクロースの格好をしているのかもしれない。
 そう思いなおしたが――。
 いやいやいや、今日は25日!
 もうとっくに『その日』は終わってるって。

「あ、あの……?」

 こわばらせた表情をしたまま微動だにしない俺の様子を見て、不安そうな声でその男は声をかけてきた。

「えっ――とぉ……。俺の叫び声に驚いた声が聞こえたので、どうしたのかなって……」

 俺はポケットの中に手を突っ込み、そこにあるスマホを握りしめた。
 何かあればすぐ110番できるように。

「フォッフォッフォッフォッフォー。いや~ぁ、情けないものです。確かにちょっとビックリしました」

「何があった……のですか?」

「なんの、なんの。足を滑らせて屋根から落ちてしまっただけです。いや、気にしないでください。この通り脂肪だらけの体なんでちょっと尻もちついてしまった程度なんで。怪我もしてません」

「はぁ……そう、ですか」

 何かが違うと思わせるその底抜けに明るいテンションからくる答えに、俺は気の抜けた返事をするだけだった。
 毒気を抜かれた――まさにそんな感じ。
 その男が落ちた場所が空き地だったこともあり、俺は敷地内に入って手を差し伸べてみることにした。

「とりあえず起き上がってみては……」

「ほっほっ。そうですね~。ありがとうございます」

 ニコニコと笑顔で俺の手をつかみ、その男は起き上がると屋根の上を見上げている。

「いやいや、せっかく会えたのに残念です。早く戻れとトナカイたちが怒っているようですんで」

 その視線に誘われるようjに俺も見上げ、隣の家の屋根の方へと視線を移すと――。

「ふぇっ!?」

 思わずあげてしまった素っ頓狂な声にその男はホッホッホーォと笑っていた。
 屋根には確かにトナカイが数頭――と、そこから繋がれたソリがあったのだ。
 しかも鼻息荒くこちらを睨んでくる『そいつ』は鼻が赤く光っている。

「申し遅れました。私、サンタクロースと言います」

「サ、サ、サ、サンタクロースぅ!? えっ? 本物?」

「本物ですよ~」

「えっ? でも、今日は25日……」

「昨日、何曜日だか知ってます?」

「えっと……日曜日、ですね?」

「そう。だからお休みだったんですよ」

「えっ?」

「サンタクロース業界も『働き方改革』っていうのを取り入れましてねぇ。今年からは24日が土日祝だった場合は25日、もしくは26日にするってことが決まりまして」

 まさかの言葉に俺は目をパチクリとさせた。

「ま、まぁ……。お休みは大事ですよね」

「ホッホッホーォ。そうですよ~。日曜日や祝日は休む日だと昔から天に定められておりますのでね。あなたもお休みの日はちゃんととって、しっかりと休まなきゃダメですよ~」

 そう言って抱えていた白い袋の中をガサゴソと漁るとプレゼント包みされてリボンのついた箱をポンっと俺に渡された。

「はい、これ。あなたにもプレゼント」

「えぇ? 俺はもう大人だけど……」

「大人だっていいじゃないですか。夢を見る時間だって必要です。これで心身ともにあなたもしっかりとお休みしてくださいね~。では……そろそろ仕事に戻りますね~」

「あ、ありがとう!」

「メリークリスマ~ス♪ またより良い一年を~」

 サンタクロースはニッコリとほほ笑んでピョイっと飛び上がり、屋根の上へと上がっていった。
 そこにあるソリへと乗り込むとホッホッホッホーォとトナカイたちに合図をし、夜空を滑って颯爽と消えていったのだった。
 まるで夢――。
 だが手の中には先ほど渡されたプレゼントがあり、俺はギュッとそれを抱きしめた。

 中身は家に帰って開けるまで分からないが絶対に俺が嬉しいものだと分かっている、何か確証のようなものを最初から感じていた。
 サンタクロースへの信頼と、子供の頃を思い出すかのような温かな気持ち。
 目の前にはもういないのにまだ遠くの方からシャンシャンと鳴る鈴の音が聞こえてくる――。
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