異世界神話をこの俺が!?――コンプレックスを乗り越えろ――

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

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第1章 ようやく始まった俺の冒険

2.俺と相棒の名前

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「ニ~ィ。ニ~ィ。」

 突然神様に「お任せします」と言われ、子猫(?)を置いて行かれた。

「まぁ、これも運命ってことか…。それにしても、この大きさがこの世界の猫の標準なのかな……?」

 子猫というにはいささか大きめの猫が俺の足元にすり寄ってきたので抱き上げてみた。

「おぉ! お前、嫌がらずに抱っこさせてくれるんだ~。それに思ったより軽い。可愛いな~ぁ。」

「ニィ!」

 子猫は俺が「可愛い」と言ったのを理解した様で嬉しそうに鳴いて返事をした。
 俺は抱き上げた猫を抱っこし、子猫の頭をなでながら考えた。

「ひとまずこの子に名前をつけなきゃな~……。う~ん…、そうだな~……。」

 どんな名前を付けようかと色々と悩んだが、ありきたりな名前ばかりしか思い浮かんでこず、何かが違う気がしてどれもピンとこなかった。

「な~んか良いのないかな~ぁ……。そういえば俺の名前は『使徒パウロと一緒に旅した医者、Luca』から名付けたって母さんが言ってたっけ!」

 名付けで悩んでいると、ふいに自分の名前が付けられた由来を思い出し、そこでピンとくるものがあった。

「決めた! 俺の役割はこの世界を治す“医者”みたいなもんだ。ちょうど良いし、俺の名前の由来にあやかってお前は今日から『パウロ』だ! よろしくな、パウロ。これから一緒に冒険をしよう!」

 パウロと名付けたその大きな子猫はすごく嬉しそうに喉を鳴らした。
 するとそれを合図にした様に、神様から貰った左手にはめていた指輪から、光が扇状にパァーと出てきた。

「な、なんだ……?」

 その光の中に浮かぶ様に1冊の大きな本が頭上に現れ、開かれた真っ白なページの中に羽ペンで、俺とパウロの出会いの話が自動的に刻まれた。

「すごい…。これが聖書なんだ…。……これって後で消せる機能ってあるのかな…?」

 俺は初めて見た『本』の形となっている聖書の神々しさに驚くと同時に後々の事が心配になってきた。

「ハッ! ちょっと待て! こうやって俺が死ぬまで記録されるなんて…、下手なことはできないぞ…。しかも死後には公開されて神話として世間に広まるとか……、よく考えたらどんな罰ゲームだよって感じだよな……。ア、アハッ、ハハハハ…………。」

 心配と恥ずかしさから俺は苦笑いをもらしていた。
 少し複雑な気持ちではあったが、ため息と共に色々と諦めもついた。

「まぁ、有名税とでも思って……。嘆いていても始まらないか……。無い様には努めるけど…、よーーーっぽどの事があった時には、神様に頼んでどうにかそれを消してもらおう! きっとできるだろうから。うん!」

 俺は不確定ながら神様ならきっとできるはずと信じ、前向きに考える事にして不安な気持ちを振り切ってここから動く事にした。
 色々と使えるだろうと鞄に入れていた風呂敷を取り出し、たすき掛けにして胸の所で子猫を包んだ。

「ほら、パウロ。こうやって抱っこしていると温かいし、一緒に楽に馬に乗れるだろう。」

「ニィ!」

 パウロは包まれた風呂敷から顔だけ出して返事をした。
 この包まれている状態が安心する様で喜んでいるみたいだった。
 しかし、この大きさでもやはり子猫なのだ……。
 馬を走らせた時に伝わる振動が心地よかったのか、すぐに寝息が聞こえてきた。


 神様に言われた通り、アシュワガンダを目指して馬を東へ東へと走らせていると夕方になり、暮れかけてきた。

「今日はここまでだ。まだアシュワガンダには着かないし、近くに人里もないから今日はここで野営だな。」

 街道沿いに走り、森を抜けるとあった綺麗な湖のそばで今日は野営することにした。
 馬から降りた俺は、パウロを包んである風呂敷を肩からそっと外して地面に降ろし、俺は近くで薪になる枯れ枝拾いをした。
 拾った枯れ枝を集めて火を起こし、焚火を作った。

「この火属性の赤い魔晶石って、何度使っても便利だよな~。使う人間の魔力が枯渇しない限り、永遠と魔力を流すと簡単に火が付くんだもんな~。マッチやライターなんて燃えたり燃料が無くなったら終わりだもんな~。」

 俺は手の平に乗せた魔晶石を見ながら、この世界にある便利な魔法の石に前の世界の不便さを思い出して感心した。
 水の魔晶石で鍋に水を入れて焚火の上にかけ、街を出る前に買った焼鳥も温めようと一緒に火にかけた。

「ンニィ?」

「おっ! 起きたか、パウロ。そういえば…お前は何を食べる生き物なんだろう? 俺の思っている猫と一緒と思っていいのかな~?」

 俺は横に休ませていた馬の傍に行き、両脇に下げた鞄の中を何か良い物がなかったかなと漁った。

「う~ん…。俺の食べるものしか入れてないからな~ぁ。……こんな物しかないけど食べるかな~?」

 鞄から木製のスープ皿と干し肉を取り出し、干し肉をお湯で少しふやかしてからパウロの前に置いてみた。
 するとパウロは鼻をヒクヒクとさせてお皿に顔を突っ込み、ペロッと確認する様に舐めると、その後大丈夫だと判断したのかガツガツと食べだした。

「パウロ…そんなにお腹空いてたのか? まぁ、あれだけ長い時間眠っていればお腹も空くよな。…フフフッ。」

 俺は食べ終えたパウロの満足そうな表情かおに和んで笑みがこぼれた。

「俺は暫くは1人旅をしようと思ってたけど、最初からこんなに可愛い相棒が居てくれるなんて…。神様から託された仕事は大変そうだけど、パウロが居れば癒されるし、とても楽しい旅になりそうだな。」

 俺は温めた焼鳥とパンを食べて夕食を済ませ、淹れたお茶を飲んで温まると、魔物除けのテントを張った。
 テントの中にパウロと一緒に入ると、パウロが寝息をたてだしたので俺も釣られてすぐに眠りについた。
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