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第1章 ようやく始まった俺の冒険
3.猫は猫でも…
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「う、うぅ~ん……。」
顔をザリザリとしたもので撫でられ、そのくすぐったさに俺は目を覚ました。
目を開けると、目の前には俺の頬を舐めて起こそうとしているパウロがいた。
「なんだよ~。くずぐったいよ、パウロ。もう起きたから…。もう、止めてよパウロ。」
「ニャ!」
「おはよう。」
じゃれついてくるパウロの頭を撫でながら朝の挨拶を交わすと、俺はテントを出て欠伸をしながら湖のほとりまで歩いた。
湖の水は夜の寒さで冷やされており、顔を洗うとスッキリと目が覚めた。
「うおぉ~! 冷たくて気持ち良い!」
俺は朝の支度をしている間に馬の世話をしておこうと、昨晩繋いでいたテントの傍らから湖のほとりまで連れてきて水を飲ませた。
その間にテントを片付けたりしていると、馬はあちこちにワサワサと生えている草を食んでいた。
「よしっ! 俺達も朝ごはんにするか。」
パウロには昨晩と同じくお湯でふやかした干し肉を与え、俺は干し肉とパンとお茶にした。
「取りあえず保存食をと思って干し肉と固焼きパンを買っておいたけど…、このパンって顎がすごく疲れるな~。もうちょっと食べやすい保存食とかあれば良いのに…。この世界って、旅の携帯保存食に関しては種類もそんなに無いから食事は微妙だしなぁ……。前に来た救世主は旅をしなかったのか? 遺していった日本の文化の中にも旅に使えそうな物はなかったし…。」
俺は疲れた顎をさすりながら右手に持つパンを睨んだ。
「目的地のアシュワガンダまではまだだろうし、今日寄れそうな村か街にでも何か美味しい物があると良いんだけど……。じゃないと俺の顎がそのうち壊れちゃうよ。なぁ、パウロ。お前のご飯だって探さなきゃならないしな。」
「ニィ。」
横でふやかした干し肉を食べていたパウロがこちらを振り返り、元気よく返事をした。
俺は片づけを済ませると焚火を埋め、パウロを昨日と同じ様に抱いて馬に乗った。
「パウロ、寝ても良いけど落ちない様にしろよ。」
「ニッ!」
包まれた風呂敷の中からパウロの元気な声がした。
そうして俺は馬をまた東へ東へと走らせていると、少し大きな村が見えてきた。
自らの持つ魔力の量、それを現す髪の色で身分の決まるこの世界は、それによって着る事のできる服の色までも決められている。
俺は面倒事を避ける為、身分を少し低く見せようと予め着ていた平民のモスグリーン色の外套のフードを髪の色が見えない様に目深に被った。
村に入ると村長の家がどこにあるのか村人に聞き、挨拶をしておいた。
「ほぉ~。剣士を目指して修行の旅をしているのですか。元々は聖都に…。ここは茶畑があるぐらいで何もない村ですが、一応宿はあります。どうぞゆっくりして行ってください。」
この世界では聖都と呼ばれる首都に住んでいて、剣士を目指していると言えば平民が旅をしていても怪しまれない。
貴族や神官なんかだと妙なしがらみや問題も出てくるので、色々と考えた末にこれが一番自由に動けると判断したのだ。
この村に一軒だけある宿は良い感じに古びていて、正に有名人が泊まりにくる“隠れ宿”という雰囲気だった。
暮れる時間にはまだ少し早かったが、今日はここに泊まる事にした。
「いらっしゃい! お客さん、1名様?」
「あぁ。後、表に馬を1頭止めてある。それと……。」
俺は包んで抱っこしていたパウロの風呂敷を少しめくり、受付をしていた娘に顔を見せた。
「まぁ! 可愛い~ぃ!」
「ニ~ィ!」
「コウモリ猫の子供なんだが、どうやら母猫と逸れてしまった様で俺が世話をしているんだ。この子も一緒なんだが……泊まれる? 俺とこの子の食事とかも頼めるかい?」
「えぇ、大丈夫ですよ~! 併設している酒場に用意しておくので、食べに来てくださいね。コウモリ猫が居ついた店は繁盛するって言うから縁起ものですし、問題はありませんから。」
「へ~ぇ、そうなんだ~。」
元居た世界での招き猫みたいなものだろうか。
「お客さん、知らないんですか? ほら、これ。本物のコウモリ猫は難しいんで木彫りなんですけど…、うちの宿にも置いてあるんですよ。」
そう言って、ニコニコしながら受付カウンターの端に置いてある木で作られた手の平サイズのコウモリ猫を指して見せてくれた。
それは……目以外は真っ黒い色をしていて翼が生えているって事以外は、まんま招き猫のポーズをしている木彫りの猫だった。
「馬は横にある厩舎に入れておくとして、猫ちゃんの年齢はいくつくらいですかね~? もう離乳食も過ぎて普通食で良い頃でしょうか?」
「あぁ。今朝もふやかした干し肉を食べていたぐらいだし大丈夫だと思う。」
「……なら、腕によりをかけて作りますね~!」
娘はとてもやる気になっており、嬉しそうだった。
きっと俺だけだったらここまでやる気にはなってなかっただろう…。
パウロという可愛い存在が一緒だったから娘もあそこまで嬉しそうにやる気を出していたのだろうな。
「まぁ、ちょっとだけ複雑な気持ちだけども……。パウロのおかげで美味しいご飯にありつけるという事で…、良しとするか~ぁ。」
俺は困り顔で笑いながらパウロを撫でた。
それから案内された部屋は2階の角部屋で、とても寝心地の良さそうなベッドが設えてあった。
部屋の確認を済ませると、パウロと持っていた紐で少し遊んだ後にベッドに寝かしつけ、俺は宿屋の娘に村のことを聞きに行った。
夕飯まではまだ時間があったので疲れを取ろうと、この村に1つだけあるという薬湯へと入りに公衆浴場に向かった。
顔をザリザリとしたもので撫でられ、そのくすぐったさに俺は目を覚ました。
目を開けると、目の前には俺の頬を舐めて起こそうとしているパウロがいた。
「なんだよ~。くずぐったいよ、パウロ。もう起きたから…。もう、止めてよパウロ。」
「ニャ!」
「おはよう。」
じゃれついてくるパウロの頭を撫でながら朝の挨拶を交わすと、俺はテントを出て欠伸をしながら湖のほとりまで歩いた。
湖の水は夜の寒さで冷やされており、顔を洗うとスッキリと目が覚めた。
「うおぉ~! 冷たくて気持ち良い!」
俺は朝の支度をしている間に馬の世話をしておこうと、昨晩繋いでいたテントの傍らから湖のほとりまで連れてきて水を飲ませた。
その間にテントを片付けたりしていると、馬はあちこちにワサワサと生えている草を食んでいた。
「よしっ! 俺達も朝ごはんにするか。」
パウロには昨晩と同じくお湯でふやかした干し肉を与え、俺は干し肉とパンとお茶にした。
「取りあえず保存食をと思って干し肉と固焼きパンを買っておいたけど…、このパンって顎がすごく疲れるな~。もうちょっと食べやすい保存食とかあれば良いのに…。この世界って、旅の携帯保存食に関しては種類もそんなに無いから食事は微妙だしなぁ……。前に来た救世主は旅をしなかったのか? 遺していった日本の文化の中にも旅に使えそうな物はなかったし…。」
俺は疲れた顎をさすりながら右手に持つパンを睨んだ。
「目的地のアシュワガンダまではまだだろうし、今日寄れそうな村か街にでも何か美味しい物があると良いんだけど……。じゃないと俺の顎がそのうち壊れちゃうよ。なぁ、パウロ。お前のご飯だって探さなきゃならないしな。」
「ニィ。」
横でふやかした干し肉を食べていたパウロがこちらを振り返り、元気よく返事をした。
俺は片づけを済ませると焚火を埋め、パウロを昨日と同じ様に抱いて馬に乗った。
「パウロ、寝ても良いけど落ちない様にしろよ。」
「ニッ!」
包まれた風呂敷の中からパウロの元気な声がした。
そうして俺は馬をまた東へ東へと走らせていると、少し大きな村が見えてきた。
自らの持つ魔力の量、それを現す髪の色で身分の決まるこの世界は、それによって着る事のできる服の色までも決められている。
俺は面倒事を避ける為、身分を少し低く見せようと予め着ていた平民のモスグリーン色の外套のフードを髪の色が見えない様に目深に被った。
村に入ると村長の家がどこにあるのか村人に聞き、挨拶をしておいた。
「ほぉ~。剣士を目指して修行の旅をしているのですか。元々は聖都に…。ここは茶畑があるぐらいで何もない村ですが、一応宿はあります。どうぞゆっくりして行ってください。」
この世界では聖都と呼ばれる首都に住んでいて、剣士を目指していると言えば平民が旅をしていても怪しまれない。
貴族や神官なんかだと妙なしがらみや問題も出てくるので、色々と考えた末にこれが一番自由に動けると判断したのだ。
この村に一軒だけある宿は良い感じに古びていて、正に有名人が泊まりにくる“隠れ宿”という雰囲気だった。
暮れる時間にはまだ少し早かったが、今日はここに泊まる事にした。
「いらっしゃい! お客さん、1名様?」
「あぁ。後、表に馬を1頭止めてある。それと……。」
俺は包んで抱っこしていたパウロの風呂敷を少しめくり、受付をしていた娘に顔を見せた。
「まぁ! 可愛い~ぃ!」
「ニ~ィ!」
「コウモリ猫の子供なんだが、どうやら母猫と逸れてしまった様で俺が世話をしているんだ。この子も一緒なんだが……泊まれる? 俺とこの子の食事とかも頼めるかい?」
「えぇ、大丈夫ですよ~! 併設している酒場に用意しておくので、食べに来てくださいね。コウモリ猫が居ついた店は繁盛するって言うから縁起ものですし、問題はありませんから。」
「へ~ぇ、そうなんだ~。」
元居た世界での招き猫みたいなものだろうか。
「お客さん、知らないんですか? ほら、これ。本物のコウモリ猫は難しいんで木彫りなんですけど…、うちの宿にも置いてあるんですよ。」
そう言って、ニコニコしながら受付カウンターの端に置いてある木で作られた手の平サイズのコウモリ猫を指して見せてくれた。
それは……目以外は真っ黒い色をしていて翼が生えているって事以外は、まんま招き猫のポーズをしている木彫りの猫だった。
「馬は横にある厩舎に入れておくとして、猫ちゃんの年齢はいくつくらいですかね~? もう離乳食も過ぎて普通食で良い頃でしょうか?」
「あぁ。今朝もふやかした干し肉を食べていたぐらいだし大丈夫だと思う。」
「……なら、腕によりをかけて作りますね~!」
娘はとてもやる気になっており、嬉しそうだった。
きっと俺だけだったらここまでやる気にはなってなかっただろう…。
パウロという可愛い存在が一緒だったから娘もあそこまで嬉しそうにやる気を出していたのだろうな。
「まぁ、ちょっとだけ複雑な気持ちだけども……。パウロのおかげで美味しいご飯にありつけるという事で…、良しとするか~ぁ。」
俺は困り顔で笑いながらパウロを撫でた。
それから案内された部屋は2階の角部屋で、とても寝心地の良さそうなベッドが設えてあった。
部屋の確認を済ませると、パウロと持っていた紐で少し遊んだ後にベッドに寝かしつけ、俺は宿屋の娘に村のことを聞きに行った。
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