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第7章 成長と変化
3.再会……?
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「お兄ちゃん、そろそろいいんじゃない? 時間。」
「そう……だな。」
買い物も済ませたが時間がまだもう少しだけ早いんじゃないかと思い、精霊の手に乗ったまま街をグルリと一周してみていた。
この街を前回離れてから然程日数が経ったわけではなく全く同じ景色がそこにあるだけのはずだったのだが、前と違って精霊の手に乗って見る景色はまた別物だった。
前来た時には余裕もなく分からなかったが、商店やホテルの周りにはポツポツポツと精霊の手を一時的に止める為の駐車場があるのに気が付いた。
「さすが近代国家って所だったんだな~。サクラヴェール国とは違って俺のよく知る地球の現代により近いってことか。前に来た時はただの空き地だと思ってたけど……。」
俺たちはちょっとした観光気分で街を眺め、夕方になったのを確認するとアージェの家へと向かった。
アージェがどこでどんな仕事をしているだとか、何時から何時まで働いているだとかは知らないが、夕方にもなれば家へと帰っているだろうと最初に出会った時のことを鑑みてこの時間になるまで待っていたのだった。
正直良かったというべきか悪かったというべきか……俺たちが乗っている精霊の手がかなりの高級車だったせいか、徐行で走らせていると道行くすれ違う人たちが皆ビクビクと怖がって避けて歩いていた。
外から精霊の手の中は見えない仕様だし、あの怖がりようは大金持ちだとか結構な権力者だとかが乗っていると思われたんだろうと思う。
俺はちょっと申し訳ない気持ちになって早く立ち去りたいという気持ちになりながらも、初めて来たというピエトロとアンドレアが楽しそうに窓から外を見ている横でドヤ顔でガイドをしているリリアがなんとも微笑ましくて「まぁいっか」と自分の気持ちに蓋をした。
「ここだよ、ここ。」
「着いたにゃ~。」
もう暫くは――ともすれば二度と会えなかったかもしれない一度別れた友と言える存在に、こんなにも早く再会できるとあってリリアはキャッキャと喜んでいた。
その様子に俺の顔は緩んでフフッと笑ってしまった。
最初はアージェに警戒もしていたリリアだったが、短い間だったとはいえあの最後の別れの時にはとても寂しそうな顔をするほど仲良くなっていたのだ。
「家に居るといいな~。」
リリアが先頭に立ち、扉をコンコンコンとノックした。
しかし中からは応答する声もせず、俺の方に振り返ったリリアがどうしたんだろうかと顔を曇らせた。
そして今度は俺が名前を呼びながら扉を再びノックした。
「おーい! アージェ~! 俺だよ~! ルカ~。」
やはり応答する声もしなければ物音ひとつしない所からまだ家に帰っていないのだろうかと思い始めたその時だった。
『ガタッ!』と何か重い物が落ちた音と一緒にズッズッズッと引きずる様な音、更には人か獣かも分からない程くぐもった呻き声の様な音も聞こえてきた。
「アージェ!?」
それらの音にただ事ではないと異様さを感じ、扉に鍵がかかっていないのを確認するとバァンと勢いよく開いて俺たちは家の中へと入った。
「アージェ! どこにいるの? アージェ!」
家の中を皆でくまなく探していると、アージェの寝室で床に突っ伏して倒れているのを発見した。
「どっ、どうしたの!?」
見付けた俺が急いでアージェの許へと駆け寄って体を抱き上げると、後ろから猫たちと一緒に付いて来ていたリリアが何度もアージェの名前を呼びながら続けて駆け寄ってきた。
「ウッ、ウゥ……。君は―――。」
「ルカだよ。分かるかい!?」
「ル……カ………。」
「良かった――。意識はあるみたいだ。一体どうしたんだい?」
「邪…神の……呪、い…が………。」
それだけ言うと体から最後の力も抜け、バタリと気を失った。
「おっ、おい! アージェ!! 呪いってなんだよっ!」
俺は訳が分からなかった。
どうしていいのかも分からず狼狽えるだけで――リリアも猫たちもどうしたらいいのかも分からずオロオロとしていた。
「クソッ! どうしたらいいんだよ………。」
俺はまだまだ無力で無知な自分自身に腹を立て、アージェを見つめたまま顔をしかめてイラつくことしかできなかった。
と、その時だった。
「落ち着きなさい、ルカ。」
その声に引き寄せられるようにして横を向くと、パウロが喋っていた。
「神様――っ!」
「君の―――救世主の持つ聖なる魔力を注ぐのです。さすればよくなりましょう――――。」
また突然現れた神様はそれだけ言うと、今回は何故かすぐにスッとパウロの体から離れて消えていった。
「―――うにゃ?」
パウロもいつもの様に、神様が自分の体を使っているのは分かっているが自分の口を使って何を言っているのかも分かっていないといった感じで、神様の気配が消えた瞬間に間の抜けた声を出していた。
「天啓か―――いや、何でもいい。アージェが助かるというのならそのアドバイスに従うまでさっ!!」
俺はさっそく言われた通りにしようとしたが、魔晶石を使う時と違って1回では簡単には上手くいかなかった。
「何でっ――。魔晶石を使う時なら簡単に魔力を使えたのに………。」
「お兄ちゃん。魔晶石は石の方から魔力を吸おうとする性質なんだから同じに考えちゃだめだよ。生き物の場合はその体の中に既に魔力の器があって、そのひとの意思によってそのひとの魔力しか基本的には受け付けないものなんだから――。無理矢理ねじ込んで押し込めるようにやらないとだよ―――きっと。」
「そう……だな。」
買い物も済ませたが時間がまだもう少しだけ早いんじゃないかと思い、精霊の手に乗ったまま街をグルリと一周してみていた。
この街を前回離れてから然程日数が経ったわけではなく全く同じ景色がそこにあるだけのはずだったのだが、前と違って精霊の手に乗って見る景色はまた別物だった。
前来た時には余裕もなく分からなかったが、商店やホテルの周りにはポツポツポツと精霊の手を一時的に止める為の駐車場があるのに気が付いた。
「さすが近代国家って所だったんだな~。サクラヴェール国とは違って俺のよく知る地球の現代により近いってことか。前に来た時はただの空き地だと思ってたけど……。」
俺たちはちょっとした観光気分で街を眺め、夕方になったのを確認するとアージェの家へと向かった。
アージェがどこでどんな仕事をしているだとか、何時から何時まで働いているだとかは知らないが、夕方にもなれば家へと帰っているだろうと最初に出会った時のことを鑑みてこの時間になるまで待っていたのだった。
正直良かったというべきか悪かったというべきか……俺たちが乗っている精霊の手がかなりの高級車だったせいか、徐行で走らせていると道行くすれ違う人たちが皆ビクビクと怖がって避けて歩いていた。
外から精霊の手の中は見えない仕様だし、あの怖がりようは大金持ちだとか結構な権力者だとかが乗っていると思われたんだろうと思う。
俺はちょっと申し訳ない気持ちになって早く立ち去りたいという気持ちになりながらも、初めて来たというピエトロとアンドレアが楽しそうに窓から外を見ている横でドヤ顔でガイドをしているリリアがなんとも微笑ましくて「まぁいっか」と自分の気持ちに蓋をした。
「ここだよ、ここ。」
「着いたにゃ~。」
もう暫くは――ともすれば二度と会えなかったかもしれない一度別れた友と言える存在に、こんなにも早く再会できるとあってリリアはキャッキャと喜んでいた。
その様子に俺の顔は緩んでフフッと笑ってしまった。
最初はアージェに警戒もしていたリリアだったが、短い間だったとはいえあの最後の別れの時にはとても寂しそうな顔をするほど仲良くなっていたのだ。
「家に居るといいな~。」
リリアが先頭に立ち、扉をコンコンコンとノックした。
しかし中からは応答する声もせず、俺の方に振り返ったリリアがどうしたんだろうかと顔を曇らせた。
そして今度は俺が名前を呼びながら扉を再びノックした。
「おーい! アージェ~! 俺だよ~! ルカ~。」
やはり応答する声もしなければ物音ひとつしない所からまだ家に帰っていないのだろうかと思い始めたその時だった。
『ガタッ!』と何か重い物が落ちた音と一緒にズッズッズッと引きずる様な音、更には人か獣かも分からない程くぐもった呻き声の様な音も聞こえてきた。
「アージェ!?」
それらの音にただ事ではないと異様さを感じ、扉に鍵がかかっていないのを確認するとバァンと勢いよく開いて俺たちは家の中へと入った。
「アージェ! どこにいるの? アージェ!」
家の中を皆でくまなく探していると、アージェの寝室で床に突っ伏して倒れているのを発見した。
「どっ、どうしたの!?」
見付けた俺が急いでアージェの許へと駆け寄って体を抱き上げると、後ろから猫たちと一緒に付いて来ていたリリアが何度もアージェの名前を呼びながら続けて駆け寄ってきた。
「ウッ、ウゥ……。君は―――。」
「ルカだよ。分かるかい!?」
「ル……カ………。」
「良かった――。意識はあるみたいだ。一体どうしたんだい?」
「邪…神の……呪、い…が………。」
それだけ言うと体から最後の力も抜け、バタリと気を失った。
「おっ、おい! アージェ!! 呪いってなんだよっ!」
俺は訳が分からなかった。
どうしていいのかも分からず狼狽えるだけで――リリアも猫たちもどうしたらいいのかも分からずオロオロとしていた。
「クソッ! どうしたらいいんだよ………。」
俺はまだまだ無力で無知な自分自身に腹を立て、アージェを見つめたまま顔をしかめてイラつくことしかできなかった。
と、その時だった。
「落ち着きなさい、ルカ。」
その声に引き寄せられるようにして横を向くと、パウロが喋っていた。
「神様――っ!」
「君の―――救世主の持つ聖なる魔力を注ぐのです。さすればよくなりましょう――――。」
また突然現れた神様はそれだけ言うと、今回は何故かすぐにスッとパウロの体から離れて消えていった。
「―――うにゃ?」
パウロもいつもの様に、神様が自分の体を使っているのは分かっているが自分の口を使って何を言っているのかも分かっていないといった感じで、神様の気配が消えた瞬間に間の抜けた声を出していた。
「天啓か―――いや、何でもいい。アージェが助かるというのならそのアドバイスに従うまでさっ!!」
俺はさっそく言われた通りにしようとしたが、魔晶石を使う時と違って1回では簡単には上手くいかなかった。
「何でっ――。魔晶石を使う時なら簡単に魔力を使えたのに………。」
「お兄ちゃん。魔晶石は石の方から魔力を吸おうとする性質なんだから同じに考えちゃだめだよ。生き物の場合はその体の中に既に魔力の器があって、そのひとの意思によってそのひとの魔力しか基本的には受け付けないものなんだから――。無理矢理ねじ込んで押し込めるようにやらないとだよ―――きっと。」
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