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ティアラナさんの唇を奪え
三人が作る料理はどんなの?
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「一番の有望株は、やはりルナリエ支店長の息子さんであるナギさんでしょうかね、解説のペレさん。女の子であるパミュちゃんの料理も気になるところではありますが」
「そうねんー。でもナギ君の調理台には、石炎筒(せきえんとう)で炊かれたお米と卵しか用意されてないわん」
「そうですねー。ここから一般人が連想できる料理と言ったらやっぱり――スクランブルエッグ」
「お米はおむすびにでもしとこうかしらん」
「おや? ブリューナグ選手、さすがはプロ料理人の息子と言うべきか、まずは調理台にいちゃもんをつけることから始めてますねー」
「控え目に言ってもプロのすることとは思えないわねん」
「石炎盤の蓋を外しー、鉄棒で中を直接かき混ぜる。油をかけて、炎を巻き上げて、その上でフライパンを振るう。舞い上がるお米はまるで波濤のようだってあっかーん。燃える燃える! 何しとるねんあいつ、頭おかしいんとちゃうん!? 消防、消防ー!! 誰かそこのブルーレイクから水汲んできてー!! 大至急!!」
「大丈夫よ、ターニャちゃん」
「と言うと、解説のペレさん」
「石炎盤の蓋を使わず、火力を最大にし、その上でフライパンを振るう。あれこそ上尾の斉の伝統料理、卵チャーハンよ。シンプルであるが故、料理人の腕がもっとも出る料理だと言われているわん。ちなみに炎に油をかけたのは、赤魔術の炎から悪意を飛ばすためなのよん」
「なるほどー。しかし、ルナリエと言えば、北頭料理を主に取り扱っていましたよね? 何故彼は上尾の斉の伝統料理を作っているんでしょうか?」
「料理人は料理に縛られたりしないからじゃないかしらん」
「おっとかっこいい。それも料理界の言葉ですか?」
「二秒前に考えたわん」
「……さて、続いては、登録番号二番、エルメルリアに舞い降りた天使、パミュちゃんですが、ボウルの中を一生懸命かき混ぜておりますねー。この仕草だけで愛くるしいものがあります。使っている材料は、卵に砂糖に牛乳。先に切っておかれたパンから察するに、これはやはり、フレンチトーストを作ろうとしている、と考えるのが妥当でしょうか」
「こっちの方がよっぽどルナリエっぽい料理ねん」
「バターを引いたフライパンの上に、パンをゆっくり並べていきます。うーん、見てるだけでお腹がすいてきますねー。さてここで、ゲストであるティアラナさんに感想を聞いてみましょうか? どうでしょう、ティアラナさん。……ティアラナさん?」
「……え? あーうん、みんな頑張ってるんじゃないかな、うん。あはは……」
「おっとー? 見たでしょうか、気づきましたでしょうか、今のティアラナさんの視線の先を。声が聞こえなくなるほどの熱視線を送っておりました。では我々もまた見ていきましょう。登録番号三番、ビュウ=フェナリスくん」
ターニャの言葉に導かれ、俺の元に一斉に殺意が集まる。見なくてもそれがわかった。俺はこの際何も考えず、黙々と具材を刻んだ。
「しっかしさっきから彼は何を作ろうとしているのでしょうか? さっきから鬼のようにキャベツを刻んでいるのですが。何か思い当たるところとかありますか? ゲストのティアラナさん」
「……」
「……ねぇ? ペレさん」
「うーん、多分、お好み焼きじゃないかしらん。爪島の伝統料理として有名ねん」
「相変わらず博識ですねー、ペレさん。で、それは一体全体どういう料理なんですか?」
「うーん、まあ単にお好みのものを小麦粉で固めて焼くってだけの料理ねん。キャベツは歯ごたえを出すためのもの。簡素ながら意外と考えられているって、昔どこかの誰かが言ってたような気がするわねん」
「ほう。で、その誰か、とは?」
「……」
「あのー、さっきからちょいちょい無視するの、やめてもらっていいですかね? 二人とも。仕事が成り立たなくなるので……」
「完成!!」
「完成しました!!」
「おぉっと!! ナギくんに続き、パミュちゃんも料理を完成させたもようです。お好み焼きとやらは――もうしばらくかかりそうなので、先に二人の試食をすませてしまいましょうか? ティアラナさん」
「……」
「……いやホンマ、五秒以内に回答なかったら、うちが先にディープキスかまします。いや、ホンマに」
「魔術とは膨大な学問であり魔術師とは学者のようなもの。という言葉のまま、ラーナは学者肌だからニャー。一度何かに興味を持ってしまったラーナは、てこでも動かないニャー。好きにさせておくのが吉にゃー」
「はぁ~。わかりました。お二人には申し訳ないですが、もう少し待ってみましょうか」
ボウルに卵、鰹節からとった出汁、小麦粉を入れてかき混ぜる。その後に具材を放り込んで、更にかき混ぜた。
シャコシャコと音が響く。
チラリと横を見る。
ティアラナが顎肘ついて、俺を見ている。目を細くして、口端を持ち上げていた。白い肌に、口紅の色がよく映える。
ティアラナは誰に対しても笑顔を絶やさない。だから誰に対しても人気がある。しかし、この表情(えがお)は俺にしか見せたことがないんじゃないか、なんて、多分、この世界の誰もが考えそうなことを俺は考えた。
俺は、そんな考えを雲ひとつない大空へと放り捨てて、料理に集中した。そして――
そして――
五分が経過した。
「そうねんー。でもナギ君の調理台には、石炎筒(せきえんとう)で炊かれたお米と卵しか用意されてないわん」
「そうですねー。ここから一般人が連想できる料理と言ったらやっぱり――スクランブルエッグ」
「お米はおむすびにでもしとこうかしらん」
「おや? ブリューナグ選手、さすがはプロ料理人の息子と言うべきか、まずは調理台にいちゃもんをつけることから始めてますねー」
「控え目に言ってもプロのすることとは思えないわねん」
「石炎盤の蓋を外しー、鉄棒で中を直接かき混ぜる。油をかけて、炎を巻き上げて、その上でフライパンを振るう。舞い上がるお米はまるで波濤のようだってあっかーん。燃える燃える! 何しとるねんあいつ、頭おかしいんとちゃうん!? 消防、消防ー!! 誰かそこのブルーレイクから水汲んできてー!! 大至急!!」
「大丈夫よ、ターニャちゃん」
「と言うと、解説のペレさん」
「石炎盤の蓋を使わず、火力を最大にし、その上でフライパンを振るう。あれこそ上尾の斉の伝統料理、卵チャーハンよ。シンプルであるが故、料理人の腕がもっとも出る料理だと言われているわん。ちなみに炎に油をかけたのは、赤魔術の炎から悪意を飛ばすためなのよん」
「なるほどー。しかし、ルナリエと言えば、北頭料理を主に取り扱っていましたよね? 何故彼は上尾の斉の伝統料理を作っているんでしょうか?」
「料理人は料理に縛られたりしないからじゃないかしらん」
「おっとかっこいい。それも料理界の言葉ですか?」
「二秒前に考えたわん」
「……さて、続いては、登録番号二番、エルメルリアに舞い降りた天使、パミュちゃんですが、ボウルの中を一生懸命かき混ぜておりますねー。この仕草だけで愛くるしいものがあります。使っている材料は、卵に砂糖に牛乳。先に切っておかれたパンから察するに、これはやはり、フレンチトーストを作ろうとしている、と考えるのが妥当でしょうか」
「こっちの方がよっぽどルナリエっぽい料理ねん」
「バターを引いたフライパンの上に、パンをゆっくり並べていきます。うーん、見てるだけでお腹がすいてきますねー。さてここで、ゲストであるティアラナさんに感想を聞いてみましょうか? どうでしょう、ティアラナさん。……ティアラナさん?」
「……え? あーうん、みんな頑張ってるんじゃないかな、うん。あはは……」
「おっとー? 見たでしょうか、気づきましたでしょうか、今のティアラナさんの視線の先を。声が聞こえなくなるほどの熱視線を送っておりました。では我々もまた見ていきましょう。登録番号三番、ビュウ=フェナリスくん」
ターニャの言葉に導かれ、俺の元に一斉に殺意が集まる。見なくてもそれがわかった。俺はこの際何も考えず、黙々と具材を刻んだ。
「しっかしさっきから彼は何を作ろうとしているのでしょうか? さっきから鬼のようにキャベツを刻んでいるのですが。何か思い当たるところとかありますか? ゲストのティアラナさん」
「……」
「……ねぇ? ペレさん」
「うーん、多分、お好み焼きじゃないかしらん。爪島の伝統料理として有名ねん」
「相変わらず博識ですねー、ペレさん。で、それは一体全体どういう料理なんですか?」
「うーん、まあ単にお好みのものを小麦粉で固めて焼くってだけの料理ねん。キャベツは歯ごたえを出すためのもの。簡素ながら意外と考えられているって、昔どこかの誰かが言ってたような気がするわねん」
「ほう。で、その誰か、とは?」
「……」
「あのー、さっきからちょいちょい無視するの、やめてもらっていいですかね? 二人とも。仕事が成り立たなくなるので……」
「完成!!」
「完成しました!!」
「おぉっと!! ナギくんに続き、パミュちゃんも料理を完成させたもようです。お好み焼きとやらは――もうしばらくかかりそうなので、先に二人の試食をすませてしまいましょうか? ティアラナさん」
「……」
「……いやホンマ、五秒以内に回答なかったら、うちが先にディープキスかまします。いや、ホンマに」
「魔術とは膨大な学問であり魔術師とは学者のようなもの。という言葉のまま、ラーナは学者肌だからニャー。一度何かに興味を持ってしまったラーナは、てこでも動かないニャー。好きにさせておくのが吉にゃー」
「はぁ~。わかりました。お二人には申し訳ないですが、もう少し待ってみましょうか」
ボウルに卵、鰹節からとった出汁、小麦粉を入れてかき混ぜる。その後に具材を放り込んで、更にかき混ぜた。
シャコシャコと音が響く。
チラリと横を見る。
ティアラナが顎肘ついて、俺を見ている。目を細くして、口端を持ち上げていた。白い肌に、口紅の色がよく映える。
ティアラナは誰に対しても笑顔を絶やさない。だから誰に対しても人気がある。しかし、この表情(えがお)は俺にしか見せたことがないんじゃないか、なんて、多分、この世界の誰もが考えそうなことを俺は考えた。
俺は、そんな考えを雲ひとつない大空へと放り捨てて、料理に集中した。そして――
そして――
五分が経過した。
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