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後編
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「あんな顔だけの男だったなんて知りませんでした!」
「あちらから婚約破棄してくれて幸いでしたわ!」
「もっと素敵な殿方と出会えましたの!」
「あなたのおかげですわ!」
どうもありがとうございました! というご令嬢達の声が唱和する。え? そうなの? まぁ、見た目は皆よかったと思うけど、あ、そう。中身最低だったんだ。ぼんくら王子以外との接触は殆ど無かったんで、よく分からなかったけど、よかったね?
「はい、感謝しています!」
きゃいきゃいご令嬢達がはしゃぐ。女子高生ののりにちょっと似てるかな? 可愛いよな、これも。俺がそう思って、ほのぼのしている間も、ご令嬢達の興奮は収まらず、
「あなたが殴って下さって、胸がすっとしましたわ!」
「ええ、わたくしも!」
「あの時の彼の顔ったら!」
「ええ、相当の間抜け面でしたわね。もう可笑しくって!」
「良い気味よね!」
きゃいきゃい笑いながら、元婚約者達をかなり辛辣にこき下ろす。
「捨てないでって言われても、ねぇ?」
「あら、あなたも言われましたの?」
「ということはあなたも?」
「ええ、愛してるとか今更ですわね。お断りですわ」
「みっともなくすがる男って、ほんっと嫌ですわよね?」
「ええ、情けないにも程がありますわね」
元婚約者達は、ぼろくそに言われまくりだ。
えーっと、何だろう……楽しそうな彼女達は可愛いんだけど、ちょっと引く。いいのか? 一応あいつら婚約者だったんだよな? まぁ、浮気した相手じゃ、こんなもんか。女って怖い。俺も気をつけよう。他人の振り見て我が振り直せ。いや、俺、あそこまで馬鹿じゃないけどな?
リリアーナちゃんを筆頭にご令嬢達を中へ招き入れる。
リリアーナちゃんは相変わらず洗練された優雅な仕草で椅子へすわり、笑う姿が相変わらず綺麗で見惚れてしまう。リリアーナちゃんマジ天使。
「あなたには個人的にお礼をしたいと思ってまいりましたの」
彼女はそう言って話を切り出した。
「何でもおっしゃって下さい。嫌がらせをされていたというのは事実のようですし、そのお詫びもかねて」
「でも、リリアーナ様のせいではありません」
俺がそう言うも、リリアーナちゃんは首を横に振って、
「いいえ、わたくしも止めようとはしませんでしたし、その、腹を立てていたのも事実ですから……誤解、だったようですわね。本当に申し訳なく思っております」
さらりと銀の髪が肩からこぼれ落ちる。
何とリリアーナちゃんが頭を下げたのだ。俺は慌てた。上位貴族が下位貴族に頭を下げるなど、本来ならありえない。俺は急ぎ跪いてその手を取った。うおっ! 白魚のような手! にやけそうになる顔を慌てて引き締める。
「よ、よしてください。俺、じゃない、わたしはちっとも気にしていませんから! お気持ちだけでも十分です!」
リリアーナちゃんが形のよい眉を軽くよせる。
「それではわたくしの気がおさまりません。こうしてわざわざ出向いたわたくしに恥をかかせるつもりですか?」
「そんなつもりでは……」
どうしようと考える。お礼、お礼……。
もらいたいものは一つだけあった。不敬なような気もするが、リリアーナちゃんからのキスがもらえたら、なんて考えてしまう。
ほっぺにでもいいから。女同士なんだし、この際思い切って……。でも、それを言ったら「気色悪い」ってなるんだろうなぁ……。初恋の君にふられたときのショックが未だに尾を引いている俺はかなりのチキン野郎。
「じゃ、じゃあ、お友達になってください」
俺はそう言っていた。
「お友達?」
「ええ、そうです。わたし、情けないことに同性のお友達が一人もいませんの。リリアーナ様のように素敵な方とお昼を一緒に食べたり、お茶をご一緒したりできれば本当に嬉しいですわ」
男よけにもなりますし、と言えば、本当に楽しそうに笑われた。
「では、そのように」
リリアーナちゃんが了承すると、
「あら、でしたら、わたくしともお友達になって下さらないかしら?」
一緒に付いてきていたご令嬢の一人がそんな事を言い出して、
「それなら、わたくしともお願いしますわ」
「是非、お友達になってください」
四人のご令嬢達が次々名乗り出てくれた。おお! 人生最大のモテ期か?
立ち去る彼女達を見送りつつ、はぁ、可愛いよなぁ、リリアーナちゃん……。なんだかんだ言っても、リリアーナちゃんが一番可愛い。やっぱりキスくらいねだってもよかったんじゃね? なんて思う自分がいたりする。女同士の友情って言い切れば……駄目かな?
その後日、あのぼんくら王子の行く末が気になって、ちょっとばかり調べてみたら、廃嫡されたことで、周囲の者達から「ぼんくら王子」と渾名されたようだ。まんまじゃん。俺、ずっとそう言ってたけどな? 心の中で。
第一王子に付き従っていた側近達もめでたく廃嫡になったようだ。ま、それが一番だろう。あんなのが国の中枢を担うって滅亡する未来しか見えない。せめて俺が生きている間は、平和な国でいて欲しいしな。
で、あの事件の後、俺は友人が一気に増えた。嬉しい誤算である。
俺のあばれっぷりを見ていた人間はかなりいて、リリアーナちゃんと例の四人のご令嬢達だけでなく、同性からは好意をよせられ、異性からは恐れられるという結果になったのだ。俺に言い寄る男はめっきり減り、これにて一件落着、めでたしめでたし……となるはずが、変わり者はどこにでもいるようで、
「姉貴! 惚れました! お付き合いして下さい!」
「うっとうしいわああああ!」
「うぶおぉ!」
俺を呼び止めた男を拳で撃沈。
あの事件以来、猫をかぶる頻度が減り、地で行くことが多くなった俺。今ではリリアーナちゃんに手作りのお菓子を振る舞われたりなんかして、バラ色の学園生活をエンジョイしているけど、ただ一つ、文句を言ってもいいですか?
俺を男に戻して下さい! そんでもって、リリアーナちゃんを俺の嫁にくれ! ヒロイン補正で! あ、二つだった……。
「あちらから婚約破棄してくれて幸いでしたわ!」
「もっと素敵な殿方と出会えましたの!」
「あなたのおかげですわ!」
どうもありがとうございました! というご令嬢達の声が唱和する。え? そうなの? まぁ、見た目は皆よかったと思うけど、あ、そう。中身最低だったんだ。ぼんくら王子以外との接触は殆ど無かったんで、よく分からなかったけど、よかったね?
「はい、感謝しています!」
きゃいきゃいご令嬢達がはしゃぐ。女子高生ののりにちょっと似てるかな? 可愛いよな、これも。俺がそう思って、ほのぼのしている間も、ご令嬢達の興奮は収まらず、
「あなたが殴って下さって、胸がすっとしましたわ!」
「ええ、わたくしも!」
「あの時の彼の顔ったら!」
「ええ、相当の間抜け面でしたわね。もう可笑しくって!」
「良い気味よね!」
きゃいきゃい笑いながら、元婚約者達をかなり辛辣にこき下ろす。
「捨てないでって言われても、ねぇ?」
「あら、あなたも言われましたの?」
「ということはあなたも?」
「ええ、愛してるとか今更ですわね。お断りですわ」
「みっともなくすがる男って、ほんっと嫌ですわよね?」
「ええ、情けないにも程がありますわね」
元婚約者達は、ぼろくそに言われまくりだ。
えーっと、何だろう……楽しそうな彼女達は可愛いんだけど、ちょっと引く。いいのか? 一応あいつら婚約者だったんだよな? まぁ、浮気した相手じゃ、こんなもんか。女って怖い。俺も気をつけよう。他人の振り見て我が振り直せ。いや、俺、あそこまで馬鹿じゃないけどな?
リリアーナちゃんを筆頭にご令嬢達を中へ招き入れる。
リリアーナちゃんは相変わらず洗練された優雅な仕草で椅子へすわり、笑う姿が相変わらず綺麗で見惚れてしまう。リリアーナちゃんマジ天使。
「あなたには個人的にお礼をしたいと思ってまいりましたの」
彼女はそう言って話を切り出した。
「何でもおっしゃって下さい。嫌がらせをされていたというのは事実のようですし、そのお詫びもかねて」
「でも、リリアーナ様のせいではありません」
俺がそう言うも、リリアーナちゃんは首を横に振って、
「いいえ、わたくしも止めようとはしませんでしたし、その、腹を立てていたのも事実ですから……誤解、だったようですわね。本当に申し訳なく思っております」
さらりと銀の髪が肩からこぼれ落ちる。
何とリリアーナちゃんが頭を下げたのだ。俺は慌てた。上位貴族が下位貴族に頭を下げるなど、本来ならありえない。俺は急ぎ跪いてその手を取った。うおっ! 白魚のような手! にやけそうになる顔を慌てて引き締める。
「よ、よしてください。俺、じゃない、わたしはちっとも気にしていませんから! お気持ちだけでも十分です!」
リリアーナちゃんが形のよい眉を軽くよせる。
「それではわたくしの気がおさまりません。こうしてわざわざ出向いたわたくしに恥をかかせるつもりですか?」
「そんなつもりでは……」
どうしようと考える。お礼、お礼……。
もらいたいものは一つだけあった。不敬なような気もするが、リリアーナちゃんからのキスがもらえたら、なんて考えてしまう。
ほっぺにでもいいから。女同士なんだし、この際思い切って……。でも、それを言ったら「気色悪い」ってなるんだろうなぁ……。初恋の君にふられたときのショックが未だに尾を引いている俺はかなりのチキン野郎。
「じゃ、じゃあ、お友達になってください」
俺はそう言っていた。
「お友達?」
「ええ、そうです。わたし、情けないことに同性のお友達が一人もいませんの。リリアーナ様のように素敵な方とお昼を一緒に食べたり、お茶をご一緒したりできれば本当に嬉しいですわ」
男よけにもなりますし、と言えば、本当に楽しそうに笑われた。
「では、そのように」
リリアーナちゃんが了承すると、
「あら、でしたら、わたくしともお友達になって下さらないかしら?」
一緒に付いてきていたご令嬢の一人がそんな事を言い出して、
「それなら、わたくしともお願いしますわ」
「是非、お友達になってください」
四人のご令嬢達が次々名乗り出てくれた。おお! 人生最大のモテ期か?
立ち去る彼女達を見送りつつ、はぁ、可愛いよなぁ、リリアーナちゃん……。なんだかんだ言っても、リリアーナちゃんが一番可愛い。やっぱりキスくらいねだってもよかったんじゃね? なんて思う自分がいたりする。女同士の友情って言い切れば……駄目かな?
その後日、あのぼんくら王子の行く末が気になって、ちょっとばかり調べてみたら、廃嫡されたことで、周囲の者達から「ぼんくら王子」と渾名されたようだ。まんまじゃん。俺、ずっとそう言ってたけどな? 心の中で。
第一王子に付き従っていた側近達もめでたく廃嫡になったようだ。ま、それが一番だろう。あんなのが国の中枢を担うって滅亡する未来しか見えない。せめて俺が生きている間は、平和な国でいて欲しいしな。
で、あの事件の後、俺は友人が一気に増えた。嬉しい誤算である。
俺のあばれっぷりを見ていた人間はかなりいて、リリアーナちゃんと例の四人のご令嬢達だけでなく、同性からは好意をよせられ、異性からは恐れられるという結果になったのだ。俺に言い寄る男はめっきり減り、これにて一件落着、めでたしめでたし……となるはずが、変わり者はどこにでもいるようで、
「姉貴! 惚れました! お付き合いして下さい!」
「うっとうしいわああああ!」
「うぶおぉ!」
俺を呼び止めた男を拳で撃沈。
あの事件以来、猫をかぶる頻度が減り、地で行くことが多くなった俺。今ではリリアーナちゃんに手作りのお菓子を振る舞われたりなんかして、バラ色の学園生活をエンジョイしているけど、ただ一つ、文句を言ってもいいですか?
俺を男に戻して下さい! そんでもって、リリアーナちゃんを俺の嫁にくれ! ヒロイン補正で! あ、二つだった……。
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続きが出るなら読んでみたいです。
mie 様
感想ありがとうございますw返信少々遅くなりましてw
>楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます!ww
>もしヒロインに相手が出来るとしたら、見た目は貴族の男性で中身は女性(前世の記憶持ち)だったらお似合いなのではないかなと思います。
中身逆なのねw でも、これ、意外と難しいよ? 人によるけど、生理的嫌悪ってのがどうしてもあるから。そして、ミアはそれが顕著ですww(百合の方が喜ぶかも?ww)
>出来ればその男性は隠れキャラか執事なんてどうでしょう?
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>読みたいなぁ(´▽`*)
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楽しいものを有難うございました。
hiyo 様
感想ありがとうございます。
>楽しいものを有難うございました。
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