1 / 43
本編
プロローグ
しおりを挟む
――結衣、ほら、お土産。
そう言って、マーガレットのブローチを手渡してくれたのは、一体誰だったのだろう? レイチェルはふとそんなことを思う。これは夢の中での出来事だ。
黒髪の彼はサングラスをかけていて、顔がよく分からない。プレゼントされたマーガレットのブローチは七宝焼きだと、夢の中の私はそう理解するけれど、そんな言葉をどこで聞いたのか、それもまた目を覚ませば不思議に思う。
七宝焼き……ガラスの焼き物よね?
意味は理解は出来るのに、一体どこでそんな知識を得たのか、レイチェルには分からなかった。夢の中の自分がいる部屋が病室だと理解出来るのもまた不思議だった。こんな部屋、見た事ないのに……。腕には点滴の管。薬を入れるチューブだとこれも理解出来る。
夢の中の私は、彼からお土産としてプレゼントされた七宝焼きのブローチを、とてもとても大事にしていたと思うけれど、それも定かではない。
だって夢だもの。
なのに……
――レイチェル、ほら、お土産だ。
幼い頃、そう言って父親が王都からのお土産を手渡してくれた時は、泣いてしまった。目にしたのは陶器製のマーガレットのブローチだったのだけれど、それは夢で見た七宝焼きのマーガレットのブローチによく似ていた。色合いもなにもかも……
――な、泣くほど嬉しかったのか?
父親のベンは戸惑ったようだけれど、泣いてしまったレイチェル自身も戸惑った。嬉しい、懐かしい、会いたい……そんな感情がどっと溢れて止まらなかったのだ。
――ええ、感激しちゃったみたい。パパ、ありがとう。
そう言うと、父親のベンは照れくさそうに笑った。喜んでもらえて嬉しいよ、と。
夢の中の彼は、私を結衣と呼ぶ。
私の名前はレイチェルだ。レイチェル・ホーリー、それが私の名前。でも、夢の中の私はいつだって、違和感なくその呼び名を受け入れている。結衣、そう呼ばれることが夢の中の私は嬉しいみたい。いつだって、彼の声を聞くと心が華やぐもの。
もう一度彼に会いたい……
そんな感触が夢から覚めると、いつだって残っている。
そう言って、マーガレットのブローチを手渡してくれたのは、一体誰だったのだろう? レイチェルはふとそんなことを思う。これは夢の中での出来事だ。
黒髪の彼はサングラスをかけていて、顔がよく分からない。プレゼントされたマーガレットのブローチは七宝焼きだと、夢の中の私はそう理解するけれど、そんな言葉をどこで聞いたのか、それもまた目を覚ませば不思議に思う。
七宝焼き……ガラスの焼き物よね?
意味は理解は出来るのに、一体どこでそんな知識を得たのか、レイチェルには分からなかった。夢の中の自分がいる部屋が病室だと理解出来るのもまた不思議だった。こんな部屋、見た事ないのに……。腕には点滴の管。薬を入れるチューブだとこれも理解出来る。
夢の中の私は、彼からお土産としてプレゼントされた七宝焼きのブローチを、とてもとても大事にしていたと思うけれど、それも定かではない。
だって夢だもの。
なのに……
――レイチェル、ほら、お土産だ。
幼い頃、そう言って父親が王都からのお土産を手渡してくれた時は、泣いてしまった。目にしたのは陶器製のマーガレットのブローチだったのだけれど、それは夢で見た七宝焼きのマーガレットのブローチによく似ていた。色合いもなにもかも……
――な、泣くほど嬉しかったのか?
父親のベンは戸惑ったようだけれど、泣いてしまったレイチェル自身も戸惑った。嬉しい、懐かしい、会いたい……そんな感情がどっと溢れて止まらなかったのだ。
――ええ、感激しちゃったみたい。パパ、ありがとう。
そう言うと、父親のベンは照れくさそうに笑った。喜んでもらえて嬉しいよ、と。
夢の中の彼は、私を結衣と呼ぶ。
私の名前はレイチェルだ。レイチェル・ホーリー、それが私の名前。でも、夢の中の私はいつだって、違和感なくその呼び名を受け入れている。結衣、そう呼ばれることが夢の中の私は嬉しいみたい。いつだって、彼の声を聞くと心が華やぐもの。
もう一度彼に会いたい……
そんな感触が夢から覚めると、いつだって残っている。
22
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる