突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第二章 ブラストのみんな

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 真っ黒な画面に、血文字が浮かび上がる。
 この心臓を揺らすような不気味なバックミュージックが怖さを倍増させている気がする。
 場面はとある研究施設に移る。
 道の感染症対策のために造られたその施設では、政府主導で違法な人体実験が行われていて──ある日、ウイルス感染によりゾンビが生まれてしまった!
 命令によりそれらを駆逐するのがプレイヤーの役割だ。
 見てるだけでもこわい……!
 仄暗い画面のどこからゾンビが飛び出してくるかわからない。
 見ているだけのわたしでも、手に汗を握ってしまう。
 でもきっと、蒼太くんだから大丈夫だよね。
 シューティングゲームも狩りのゲームもなんでもソツなくこなす蒼太くんだ。
 きっとゾンビが出てきてもサクッと退治してくれる……
《ヴワああアアああアアアア‼︎》
「「「‼︎」」」
 プレイヤーが階段を登り始めたところで、踊り場から急にゾンビが二体叫びながら飛び出してきた。
「ビッ……くりした~~~! おらっ!」
 カネちさんはガチャガチャとボタンを操作し、銃を発射している。
 外面右のゾンビはみるみるうちに倒されていっている。
「……あれ?」
 そこでわたしはあることに気がついた。
 画面左の、青い服のプレイヤーが全く動いていないのだ。
 代わりにゾンビが画面に大接近していて、こわい顔がアップで映っている。
 どういうこと?
 カネちさんは戦っているし……ということはもしかして、こっちは蒼太くん……?
 まさかと思って蒼太くんの方を見ると、蒼太くんは全然手を動かしていなかった。
 というか、目を閉じてる……
「蒼太くん、大丈夫?」
「……」
 声かけにも反応しない。無だ。
「やばい、ひなちゃんこれは……蒼太はホラーゲーム無理っぽい。代打頼むね!」
「えっあっわっ」
 蒼太くんの手からコントローラーを引き抜いた紫音くんは、それをわたしへと手渡す。
 ワタワタとそれを受け取って画面を見れば、ゾンビにガフガフと齧られる攻撃を受けている真っ最中だった。
 それに後ろの方からもさらに別のゾンビが湧き出している。
 ひいいいいい!
 そこからはわたしは無我夢中だった。
 照準を合わせてライフルで撃ったり、武器を変えてランチャーでトドメを刺したり、
 とにかく怯える暇もないくらい操作に夢中になる。
 やっと最初のゾンビ集団を一掃したところで、わたしはようやく一息ついた。
「はあはあ、なんだかとっても疲れた……」
 ゲーム的にも区切りが良く、わたしはコントローラーを置く。
 突然参加することになって驚いたけど、慣れてしまえば途中からはこわさというよりミッションをこなすイメージでサクサクと操作できた気がする。
「え……まじか、ひなちゃんホラゲ得意なの……?」
「……」
「うおーーー! なんかヤバかったけどひなちゃんのおかげで助かったっ! あと蒼太、お前ホラゲ嫌いだったんだな! なんかごめん!」
 驚いた顔を浮かべる紫音くんと、無言の蒼太くん、それから大盛り上がりのカネちさん。
 三人ともわたしを見ている。
 えっと……?
「ひなちゃん、怖くねーの⁉︎」
「さ、最初はびっくりしましたけど、慣れたら平気でした。モンスター狩るよりは全然やりやすかったので……」
「市山……すごいな……」
 どこか青白い顔をした蒼太くんがポツリとそう語る。
「本当、すごいねひなちゃん! よし次は俺もやってみよっと。カネち、続きやろうぜ」
「オーケー」
 紫音くんとカネちさんはコントローラーを手に、またぞうん日ゲームを再開した。
 また薄暗い研究所を進んでいく。
「俺、部屋に戻る……」
 蒼太くんは立ち上がると、フラフラとリビングを出てゆく。
 わたしは慌ててその背中を追いかけた。
「蒼太くん、大丈夫?」
「……大丈夫」
 そうは言うけど、顔は全然大丈夫じゃない、
 まさか蒼太くんに苦手なものがあると思わなかった。
「蒼太くん、一緒にこねこちゃんの動画見よう!」
 わたしは蒼太くんの腕を掴んで、自分の部屋へと連れてゆく。
 後ろから戸惑う声が聞こえたけど、気にしない!
 タブレットを操作して、お気に入りの動画をスタートする。ふわふわのラグドールの赤ちゃんの動画だ。
 苦手なことをやってきっと疲れてしまったであろう蒼太くんにはこのもふもふで癒されてもらおう。
「見てみて、可愛いよね……。わたしが一番好きなのは、このお風呂のやつ! 水濡れるとこーんなに小さくなっちゃうんだよ」
 ラグドールはふわふわの長毛猫ちゃんだ。
 それが水に濡れると、毛並みがぺったりとなりかなりほっそりとした見た目になる。そのギャップが楽しいのだ。
「……笑わねーの?」
「えっ、何を?」
「……ゲーム配信とかしてるくせに、ホラゲでビビって目も開けられないとか、ダサいだろ……」
 蒼太くんは今まで見たことがないくらいに沈んでいる。
「そんなことないよ。苦手なものって誰にでもあるもん」
 蒼太くんを元気づけようと、そんなことを口にした。
 わたしは苦手なことが多い方なので、その気持ちはよくわかる。
「ダサいなんて思わないよ」
 でも、だからと言って『ダサい』と思うことなんてない。本当に。
「こんなこと言うとよくないかもしれないけど、わたしはちょっと安心した」
「え?」
「何でもできる蒼太くんにも苦手なものがあるんだなって」
「それはそうだろ」
「ふふ。そうだよね」
 画面の中では、猫ちゃんがガラスの鉢に入って、元の形がわからないくらいに溶けていた。不思議だ。
 できること、できないこと、わたしにもある。
 好きなものも嫌いなものもある。
 でも、だからと言って、その人の魅力が損なわれたりはしない。むしろ、より魅力的に思える気がする。
──わたしもそうだったらいいな。
 少し照れた顔をしている蒼太くんを見ながら、わたしはそんなことを思った。
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