突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第三章 めざすは運動会!

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「どうしよう……!」
 よく晴れた春の昼下がり。
 わたしはわかりやすく頭を抱えていた。
 運動会が来月下旬に開催されるのに合わせて、ついに体育の授業を使っての準備が始まった。
 徒競走もあるのだけど、わたしにとっての問題は全員参加のダンスだ……!
 ただでさえモタモタしているのに、身長が高くてよけいに目立ってしまう気がする。
 そうすると手足の動きがますます縮こまってしまって、恥ずかしさで上手く踊れなくなってしまうのだ。
「じゃあみんな、今日やったダンスは来週までに家で練習してきてくださいね。動画配信もされてますので~」
 授業の最後に先生がそう告げる。
 わたしは「はぁ~い」とみんなに合わせてボソボソと返事をしつつ、気が重いまま給食の時間に突入した。
 どうしよう。
 ダンス、苦手すぎるよ~!!
「はあ……」
 五時間目になって、グループワークの時間になってもわたしはダンスのことを考えて頭がいっぱいいっぱいになっている。
 今日はこの時間が終わったら、次の時間は委員会の役割決めをすると言っていた。
 いよいよいろんなことが始まるのだ。
 わかりやすくため息をついてから顔をあげると、同じグループの三人がわたしを見ていた。
「どうしたの~ひなちゃんったら。そんなにおっきいため息ついちゃってぇ~!」
 結愛ちゃんにそう言われ、わたしは顔がかっと熱くなる。
 完全に無意識だった……!
 恥ずかしすぎる。
 ちらりと見れば、蒼太くんと胡桃沢くんもまだこっちを見ている。
「どうかしたのかな? ひなさん」
「どうしたんだよ、市山」
「あっ……ごめんね、みんな……」
 グループワークとは全く関係ないところでわたしが深いため息をついてしまったせいで、本当に申し訳ない……!
「えっとね、ほら、体育のときにダンスが上手く出来なかったなって思って……落ち込んでただけだから」
 あわててそれだけ言って、わたしは資料を読み出した。
 防災についての学習だから、ちゃんと集中しないと!
「ひなさん、僕で良かったら教えようか?」
 にこにことした王子様スマイルの胡桃沢くんが、自分の指さしながらそう言った。
 えっ……?
「でも胡桃沢くん、もうダンス全部覚えたの?」
「ちあきだよ、千明」
「胡桃沢く」
「ち・あ・き。はい、言ってみて?」
 笑顔なのに、絶対に譲らないというつよい意思を胡桃沢くん……じゃなかった、千明くんから感じる。
 わたしは一回深呼吸をして「千明くん」と口から出してみた。
 そうすると、とても満足そうにしている。
「えっ! それ結愛にも教えてほしいなぁ! 結愛も分からないところがあってぇ」
 机から身を乗り出すようにして、結愛ちゃんが千明くんに訴えている。
 わたしは分からない所ではなくて、最初からいまいち上手くできない。
 それを千明くんはもう全部覚えてしまったのだという。さすがmomoくんだ……!
「いいよ。僕、歌とダンスは得意だから。ひなさんと結愛さんと……蒼太も一緒に練習しよう」
 千明くんがそう言ったところで、クラスの空気がざわりと変わった気がした。
「え! 胡桃沢くん、わたしたちにも教えてよ!!」
「千明くん、こっちも!」
「えーっわたしたちも教わりたいな」
「蒼太くんもいるの!?」
 いつから聞いていたのか、ほかの班の女の子たちも一斉にこちらに向かって話しかけて来た。
 話しかけるタイミングを窺っていたのかもしれない。
 席を立ってわらわらと集まって来る子たちもいて、わたしはどうしたらいいかわからなくなる。
「こら、席につきなさい!」
 ビックリした先生がそう言うと、女の子たちはキャッキャと席に戻っていった。
 千明くんと蒼太くんのこと、みんなよく見てるんだなぁ。
 そう思うと、心の中がチリッと痛くなるような感覚があった。
「……?」
 なんだろう。
 心臓が痛い……のかな?
 よく分からずにいると、蒼太くんは呆れた目をしていた。
「どうするんだよ、千明」
「はは。みんなかわいいね。ダンス頑張りたいんだねぇ」
 のほほんとした千明くんにわたしもホッコリする。
 でもとてもじゃないけど、みんなで参加する時にはわたしは顔を出せそうにないな、と思ってしまった。
 なんだかみんなの顔がちょっと怖かった気もする……!
 休み時間になると、クラスは千明くんのダンスレッスンはいつにするか、という話題でもちきりだった。
「む~。結愛たちが先にお願いしたのに。ねっ、ひなちゃん」
「そうだね。さすが千明くんたちだね」
「……そうだね」
 ほっぺを膨らませて口を尖らせる結愛ちゃんに、わたしは曖昧に返事をした。
 千明くん、すごく囲まれてる。
 あれではきっと、わたしにダンスを教えるという所までは順番は回って来なそうだ。
 本当に下手すぎるので、なんとか苦手を払拭したいところだったけれど。
――この前、蒼太くんだって苦手なことがあった。
 それは周りの人からしたら、ささやかなことかもしれない。でも本人にとっては大きなことで、気にしてしまうこともある。
 わたしがダンスを苦手なのは、元を辿れば身長のせいだということが分かっている。
 でも、そのことを気にして上手く踊れないのは、練習が足りていないからだ。
 なんでもかんでも、身長のせいにしてないかな?
 そう思うきっかけになった。
「次の時間、委員決めか~。面倒じゃない委員会がいいな。ひなちゃんは何か希望あるぅ?」
 結愛ちゃんに聞かれて、わたしはうーんと首を捻った。
 何がいいだろう。
 あんまり目立ちたくないというのが本音だから、正直学級委員じゃなければそれでいい。
「図書委員とか園芸委員とかがいいかなぁ……」
「あー、ひなちゃんっぽい。わかる。でもすごく人気ありそうだよねぇ。私は保健委員とかにしようなぁ」
「結愛ちゃんっぽくてすごく素敵だね」
「え、そう? ふふん、ありがとう!」
 今日もかわいい結愛ちゃんは、ポニーテールが動く度に上下に揺れる。
 少しカールを帯びたその髪型がとても可愛らしい。
「結愛ちゃんって、髪の毛は自分でやってるの?」
「うん、そうだけど……」
「そうなんだ! 器用なんだねぇ。すごいね、やっぱり練習とかするの?」
「ま、まあ……週末に動画とか見ながらやったりとか……してるけどぉ」
「すごーい! わたしも前に見たけど、意味が分からなくて無理だったよ。結愛ちゃんすごいね」
 わたしもかわいい髪型には興味があるから、自分の部屋でやる分にはいいだろうと動画を検索したことがある。
『だれでも十分でできる!』
『不器用さんにもオススメヘアアレンジ☆』
 などなど、カンタンをうたう動画を漁ってはみたものの、全然出来なかった。
 だから、結愛ちゃんは本当にすごいと思う。
「……ありがと」
 結愛ちゃんはすこしだけ恥ずかしそうにそう言うと、「やりたい委員になれたらいいね」と言ってくれた。
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