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第三章 めざすは運動会!
閑話・アオ④
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市山の様子がおかしい。
昨日の夕方から部屋からほとんど出てこなかった市山のことを考えながら、俺は兄ちゃんと二人で黙々と朝ごはんを食べる。
「……」
「……」
兄ちゃんもあまり言葉を発さない。
市山はこれまで、俺たちがゲームに誘った時に断ったりしなかった。
それもあって、昨日こと割られた時はそれなりにショックだった。
「……ひなちゃん、俺らがいつもゲームとか誘うの困ってたりしないかな?」
兄ちゃんがそんなことをいうから、俺もドキッとしてしまった。
「楽しんでたと……思う……けど」
一緒に遊ぶ時、市山は外では見せないような笑顔を見せてくれていたように思う。
ゴールしたら嬉しそうだったし、なんならホラゲーまでも対応していた。
「や、でもほら、ひなちゃんってさ、ブラストのファンだよね?」
「うん」
「だからほら、中の人が俺たちだって知って幻滅しちゃったりとか……してないかな」
いつになく兄ちゃんが不安そうだ。
「カネちの圧とか……ひなちゃん苦手だったかもって今さら思っちゃって。ああいうグイグイしたノリは苦手かも」
「あ~……――」
なんと言ったらいいか。
俺は思わず言葉を濁す。
いやでも、楽しそうだったと思う。
もし兄ちゃんが言うように、市山がブラストの中の人を知ってイヤになってしまったとしたら、それはとてつもなくショックだ。
兄ちゃんたちに誘われて始めたとはいえ、今では【ブラストのアオ】という存在は自分の中でも大きくなっている。
配信は楽しい。
コメントを読むのも。
たまにアンチからの辛辣なコメントもあったりするけど、それはそれとして自分の好きなようにプレイすると決めている。
「あ~~。お兄ちゃんに蒼ちゃん。ちょっとひなちゃん熱があるみたい」
市山の部屋に様子を見に行っていた母さんが、体温計を持って戻ってきた。
「え、熱……?」
「そうなの。微熱ではあるんだけど、無理はさせられないから今日はお休みさせるわ」
「大丈夫なのか……?」
俺ががたりと席を立つと、母さんはいつものように力強く笑った。
「大丈夫よ。今日はわたしが家にいるしわ病院にも連れていくから。蒼ちゃんは学校からのプリントとかの持ち帰りをよろしくね」
「俺は!? 俺はどうしたらいい?」
「ええっと……お兄ちゃんは普通に中学校に行って真っ直ぐ帰ってきたらいいんじゃないかな……? あっでも、今日はお友だちは連れてきたらダメよ」
「わかった、カネちは出禁にする!」
なぜだか兄ちゃんの方が慌てている。
いつもドンと構えて優雅な笑顔を浮かべているように見えていたが、実はかなり動揺しているらしい。
まあ、カネちはうるさいからしばらくここに来ないでもらうのはいいかもしれない。
市山も休みたいだろうし。
「もう~! ふたりともそんな顔しないの。ひなちゃんが余計に気にしちゃうわよ~。風邪症状はないみたいだから、もしかしたら疲れとかかもしれないし」
「疲れ……」
「つかれ……」
母さんの言葉に、俺と兄ちゃんは全く同じ言葉を呟いた。
疲れの一部は、俺たちのせいなのかも……?
ちょっと前に、深緑もブラストのメンバーであることを市山に言ったといっていた。
すごく驚いていたそうだ。
それもそうか……。
「もーう! ひなちゃんのことはお母さんに任せてあなたたちは元気に学校行ってらっしゃい!」
しょんぼりする俺たちに、母さんがハッパをかける。
ばしりと叩かれた左肩がいたい。
俺は兄ちゃんと顔を見合わせると残りの朝ごはんを急いでかきこんで、学校に行く準備をした。
……市山の部屋。
玄関の隣にある部屋のドアノブには『ひなちゃんの部屋』と母さん手製の看板が下げられている。
この前の部屋間違え事件のあとにせっせと作っていた。
「……市山?」
俺は扉をコンコンとノックする。
返事はない。
寝ているのだろう。
「ゆっくり休めよ。学校のことは俺がやるから」
それだけ言うのが精一杯だ。
俺は靴を履いたあと、学校へと向かった。
「蒼太、ひなさん風邪でもひいたの?」
休み時間になって、千明が俺の席のところにやってきた。
こっそりと聞いているのは、気を使ってのことだろう。
俺たちが同居していることは、もちろんブラストのメンバー以外は誰も知らない。
メンバーについては、最初にバレてしまったときに説明したからもちろん知っているのだ。
「……あ~うん。まだわかんないけど、母さんが病院に連れていくって」
今朝は顔も見ていない。
昨日の夕ご飯のとき、ものすごく暗い顔をしていたことを思い出す。
先週までは、朝から一緒に登校して身長を教えてくれたりしたのに。
市山がもじもじと恥ずかしそうにいうから何かと思ったら、身長のことで拍子抜けした。
でも、勇気を出してくれたのはわかった。
市山が身長のことを気にしているのは見ていて分かっているから。
昨日の夕方から部屋からほとんど出てこなかった市山のことを考えながら、俺は兄ちゃんと二人で黙々と朝ごはんを食べる。
「……」
「……」
兄ちゃんもあまり言葉を発さない。
市山はこれまで、俺たちがゲームに誘った時に断ったりしなかった。
それもあって、昨日こと割られた時はそれなりにショックだった。
「……ひなちゃん、俺らがいつもゲームとか誘うの困ってたりしないかな?」
兄ちゃんがそんなことをいうから、俺もドキッとしてしまった。
「楽しんでたと……思う……けど」
一緒に遊ぶ時、市山は外では見せないような笑顔を見せてくれていたように思う。
ゴールしたら嬉しそうだったし、なんならホラゲーまでも対応していた。
「や、でもほら、ひなちゃんってさ、ブラストのファンだよね?」
「うん」
「だからほら、中の人が俺たちだって知って幻滅しちゃったりとか……してないかな」
いつになく兄ちゃんが不安そうだ。
「カネちの圧とか……ひなちゃん苦手だったかもって今さら思っちゃって。ああいうグイグイしたノリは苦手かも」
「あ~……――」
なんと言ったらいいか。
俺は思わず言葉を濁す。
いやでも、楽しそうだったと思う。
もし兄ちゃんが言うように、市山がブラストの中の人を知ってイヤになってしまったとしたら、それはとてつもなくショックだ。
兄ちゃんたちに誘われて始めたとはいえ、今では【ブラストのアオ】という存在は自分の中でも大きくなっている。
配信は楽しい。
コメントを読むのも。
たまにアンチからの辛辣なコメントもあったりするけど、それはそれとして自分の好きなようにプレイすると決めている。
「あ~~。お兄ちゃんに蒼ちゃん。ちょっとひなちゃん熱があるみたい」
市山の部屋に様子を見に行っていた母さんが、体温計を持って戻ってきた。
「え、熱……?」
「そうなの。微熱ではあるんだけど、無理はさせられないから今日はお休みさせるわ」
「大丈夫なのか……?」
俺ががたりと席を立つと、母さんはいつものように力強く笑った。
「大丈夫よ。今日はわたしが家にいるしわ病院にも連れていくから。蒼ちゃんは学校からのプリントとかの持ち帰りをよろしくね」
「俺は!? 俺はどうしたらいい?」
「ええっと……お兄ちゃんは普通に中学校に行って真っ直ぐ帰ってきたらいいんじゃないかな……? あっでも、今日はお友だちは連れてきたらダメよ」
「わかった、カネちは出禁にする!」
なぜだか兄ちゃんの方が慌てている。
いつもドンと構えて優雅な笑顔を浮かべているように見えていたが、実はかなり動揺しているらしい。
まあ、カネちはうるさいからしばらくここに来ないでもらうのはいいかもしれない。
市山も休みたいだろうし。
「もう~! ふたりともそんな顔しないの。ひなちゃんが余計に気にしちゃうわよ~。風邪症状はないみたいだから、もしかしたら疲れとかかもしれないし」
「疲れ……」
「つかれ……」
母さんの言葉に、俺と兄ちゃんは全く同じ言葉を呟いた。
疲れの一部は、俺たちのせいなのかも……?
ちょっと前に、深緑もブラストのメンバーであることを市山に言ったといっていた。
すごく驚いていたそうだ。
それもそうか……。
「もーう! ひなちゃんのことはお母さんに任せてあなたたちは元気に学校行ってらっしゃい!」
しょんぼりする俺たちに、母さんがハッパをかける。
ばしりと叩かれた左肩がいたい。
俺は兄ちゃんと顔を見合わせると残りの朝ごはんを急いでかきこんで、学校に行く準備をした。
……市山の部屋。
玄関の隣にある部屋のドアノブには『ひなちゃんの部屋』と母さん手製の看板が下げられている。
この前の部屋間違え事件のあとにせっせと作っていた。
「……市山?」
俺は扉をコンコンとノックする。
返事はない。
寝ているのだろう。
「ゆっくり休めよ。学校のことは俺がやるから」
それだけ言うのが精一杯だ。
俺は靴を履いたあと、学校へと向かった。
「蒼太、ひなさん風邪でもひいたの?」
休み時間になって、千明が俺の席のところにやってきた。
こっそりと聞いているのは、気を使ってのことだろう。
俺たちが同居していることは、もちろんブラストのメンバー以外は誰も知らない。
メンバーについては、最初にバレてしまったときに説明したからもちろん知っているのだ。
「……あ~うん。まだわかんないけど、母さんが病院に連れていくって」
今朝は顔も見ていない。
昨日の夕ご飯のとき、ものすごく暗い顔をしていたことを思い出す。
先週までは、朝から一緒に登校して身長を教えてくれたりしたのに。
市山がもじもじと恥ずかしそうにいうから何かと思ったら、身長のことで拍子抜けした。
でも、勇気を出してくれたのはわかった。
市山が身長のことを気にしているのは見ていて分かっているから。
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