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2章 いよいよ本編開始??

意識し過ぎた”乙女ゲーム”という世界

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あれから、師匠がくれた腕輪のおかげでクラスに行っても不自然な男子生徒からの接触はなくなった。
メリーとも裏庭で話したきり、クラスも違うし関わることがほとんどなくなった。
王太子との出来事の目撃者はメリーのみだったのか、変に噂が立つこともなく、変わってしまったのはあたしとメリーの関係だけらしい。
周りに大きい変化がないのはありがたいが、できれば変わって欲しくないモノだったな。

学園にいても良いことがない気がして、事あるごとに師匠の元へ行くことが増えたとき、「いつまで辛気臭い顔をしている!いい加減うざいぞ!!」と怒られ、洗いざらい全部吐かされた。

なんだかんだ話を聞いてくれる師匠は、やっぱり根は優しいんだろう……だいぶ言い方はキツイけど。


師匠には全部話すことにした。

この世界が前世でプレイしていた乙女ゲームと世界観がそっくりで、登場人物も起こるイベントも、内容すべてが一致するわけじゃないけど、回避できなかったり経緯が違っても結局同じ台詞を攻略対象や悪役令嬢から言われたり……もう次何が起こるのか、何を防げばよいのか全く分からないなどとにかく全部ぶちまけていた。

そして、もちろんセイのことが前世から好きだったことも話した。
本来であれば王太子の婚約者にならないとセイに出逢えなかったこととか、最後どのように結ばれるかわからないことなども全部。



それらを聞いた師匠は一言……――――――




「くだらない」




「はい?」

え?あたしが今まで悩んで、これだけ泣きながら話した内容に対して“くだらない”の一言ですか?

「お前にどういう知識があって、何を知っていて、どういう結末があるのかは知らんが、お前もわかっているのだろう?ここは“現実”だ。決められた物語やゲームなどというものではないだろうが」
「いや、そうですけど……」
「お前はいったいどうしたいんだ?」
「え?」
「物語で語られるのは学園を卒業するまでであろう?お前の人生は、これからまだまだ先があるんだぞ」
「!!」
「たかだか10数年生きてる小娘が、何人生の終わりみたいな顔をしていのるかと思えば……お前の人生はその10数年で終わるのか?それともその後も続くのか?」
「……っ、続きます、終わらせたりなんかしません!」
「であれば、たかが学生のときの喧嘩など些細なことではないか。時間の無駄だ」
「うぐっ」
「……お前はこれから先どうしたい。何かしたいことはあるか」
「自分の、したいこと……」

そういえばちゃんと考えたことなかったかも。
家は弟が生まれたから安泰だし、それ以外はセイに逢いたい、そばにいたいとしか考えてなかったかも……

「俺の弟子を続けて魔法を極めたいのか、別の特技があってやりたいことがあるのか……今見つけられずとも、それを考えて学ぶのが学生というものだろう」
「師匠……」

どうしよう、師匠がものすごくまともなことを言ってる……
すごくありがたい言葉なんだけど、まとも過ぎる師匠の方が珍しすぎてどうしても感動が薄れてしまう。

(ぶにっ)

「ひひゃいっ(痛いっ)!」
「……お前また俺の悪口でも考えただろう」
「ひょ、ひょふはほほはいへふ~~っ(そ、そんなことないです~~っ)」

うん、師匠はやっぱり師匠でした。

でも話をして、たくさん泣いて、だいぶスッキリできたかも。
メリーは……今は話をしようとしても立場も何もかも違いすぎるし、あたしも事情を話すことは難しい。
殿下との中を邪魔するつもりもないから、今は距離を取るのが一番良いんだろう。

……何年、何十年先でも良い。メリーがあたしを許してくれたら、またいろんな話がしたいな……
殿下と結婚して、さらに遠い存在になってしまうということも考えられるけど……

確かに幼少期に記憶が戻ってから、あたしの頭の中は師匠の特訓以外はゲームのことでいっぱいだったかも。
ゲーム通りの展開になりたくない、ゲーム通りになるならセイがいい!とかね。

「この世界であたしができること……したいこと、かぁ……」

生活するのに便利な魔法はとりあえず覚えたいし、最低限自分の身を守る方法も身につけたい。
なんか前の世界でやってて、こっちでもできそうなことってあるかな……
特別何か得意って言えることなんて……

「ん~……趣味程度のものしか思い当たるものがないなぁ……」
「なんだ、お前にも趣味があったのか?」
「ちょっと師匠、失礼ですよ!あたしにだって趣味くらいあります!!」
「なんだ?言ってみろ」
「お菓子作り、です。……と言っても、この世界ではちゃんと作ったことはないんですけど……」
「……前の世界で、ということか?」
「はい。ただ、魔術師団ここに来てから師匠にもらった材料で適当にご飯を作るくらいはできるようになりましたけどね」
「そういえば、一通り教えてからは自分で作れるからと部屋で食事するようになったな。ちょうど食事の時間も近いから、昼はお前の飯を食わせろ……不味かったら承知しないぞ」
「えぇ??!!……ん~、不味くはないと思いますけど、わかりましたよ。できたら呼ぶので部屋に来てくださいね」


そう言って、あたしはご飯を作るため師匠の部屋を後にした。


「……―――セイル、そこにいるんだろう?」
「あれ、バレてた?リアはまったく気づいてなかったみたいだけどね☆」
「……バカ弟子の話、聞いててどう思った?……くくっ、お前はどうやら前世から好かれてるらしいな」
「ふふ、そうみたい☆それなら名前を知ってたっておかしくないよね♪」
「あのバカ弟子は、だいぶ前世で見たゲームとやらに影響されているな。くだらん」
「そこは同意見☆リアはリアなんだし、自由に生きればいいのにね~」
「……物語を進めないと、どっかの誰かさんに会えないという危機感が原因じゃないのか?」
「ふふ☆そんなに不安になるなんて、ボクを信用してない証拠だね♪……ちょっとお仕置きが必要かな☆」
「……程々にしてやれ。アレはまだ子供ガキだ」
「わかってるよ~☆」


セイと師匠でそんな会話をしているとは露知らず、あたしはお昼ご飯を作っていた。

そして、そのご馳走したお昼ご飯をきっかけに、今後の人生がガラッと変わることになるなんて、その時のあたしは思いもしていなかった。
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