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10章 延引された結婚式
淡く散りゆく恋の花 inベルナートside
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◇
エリュシオンから了承を得てサーヤを連れてきたのは、森の中にある少し開けた小高い丘で俺のとっておきの場所。
辺り一面鮮やかに咲き乱れる黄色の花と、どこまで広がる綺麗な青空を見ていると、”黒”という色を気にしてる自分がとてもちっぽけに感じてすごく明るい気持ちになれる。
「わぁ・・・綺麗――――・・・」
「でしょ?この景色、一度サーヤに見せたかったんだ。気に入ってくれた?」
「うん、すっごく綺麗!ありがとう、ベルナートさん」
さっきまでは何か聞きたそうな顔をしていたサーヤも、一瞬にしてこの景色に魅了されたらしい。
サーヤの背にあるドレスのリボンが光に反射して虹色に輝き、妖精の羽根みたいに見えてすごく綺麗だ。
俺の大好きな場所に大好きなサーヤが居る。
そんな状況が嬉しくてドキドキしながら、いつも寛いでいる大木の根元へサーヤを案内し、特殊空間にある敷物やクッションを出してからサーヤと2人で腰を掛ける。
「ここはね、俺の大好きな場所なんだ。この景色を見てると、すごく癒されて元気が湧いてくる」
「そうだね、すごく綺麗で心地良い・・・“帰らずの森”って物騒な名前なのに、こんな素敵な場所があるなんて全然知らなかった」
「ふふっ、“帰らずの森”なんて言ってるのは人間くらいだよ。この森は妖精や精霊が住処としている大切な森だから、人間に荒らされないためにそう仕向けてるんだ」
「なるほど・・・って、あたしも一応人間なんだけどね」
「ふふっ、もちろんサーヤは特別!俺を含めた精霊王達が加護を与えている精霊の愛し子だもん」
「えぇ?!愛し子だなんて、なんか大げさだなぁ」
“精霊の愛し子”・・・そう、ミナトやセイル達精霊王から愛されて加護を与えられ、“黒”である俺の事も差別なく接して加護を受け入れてくれた初めての人間。
・・・最初はそう思ってた。
・・・――――以前アレクの所に行った時、アレクやクラリス、ティリアに恋愛、愛情、性など主に男女間に関係する事を色々教わった。
・・・アレクの完璧主義というか、徹底過ぎる所は正直ちょっと怖かった。
でも、おかげで今までよくわからなかった自分の感情や、行動の意味がようやくわかってすごくスッキリしたけど、同時にサーヤと顔を合わせる事がすごく緊張して恥ずかしくなった。
好きだと気付いてしまうと、サーヤが前よりも可愛く見えてドキドキして、とても平静ではいられなかった。
そばにいると欲望に駆られてぎゅうって抱きしめたりしそうで・・・
サーヤは俺が好きだって言ったら、少しは俺の事も男だと見てくれるかな?
俺の事も、エリュシオンみたいに受け入れてくれる・・・―――――?
「ベルナートさん、何かあった?なんか、いつもと違う気がする」
「・・・サーヤ、俺ね、今日はサーヤに伝えたい事があるんだ」
「伝えたい、こと?」
そっとサーヤの手を取り、手の甲へ優しく口づけるとサーヤがものすごく驚いて困惑していた。
「サーヤ・・・俺ね、サーヤの事が好きだよ」
目をパチパチさせる姿も可愛いなと思いながら、サーヤの瞳をじっと見つめたまま俺は言葉を続けた。
「俺の“好き”は家族や仲間って意味じゃなくて、一人の女性としてって意味だよ」
「!!」
さすがに瞳を見たままこれ以上言葉を続けられなくて、優しく包み込むようにサーヤを抱きしめた。
「サーヤは、“黒”である俺を受け入れてくれた初めての人で、俺に温もりや安心感を与えてくれた。・・・それに、口づけの気持ち良さや、女性の身体がふわふわ柔らかくてお菓子みたいに甘いって事も教えてくれた」
「いやいやちょっと待って、後半がおかしい!それは教えたんじゃなくて・・・――――」
「今まで居場所がなかった俺に居場所をくれた。――――そして何より、“好き”という感情を俺に教えてくれた・・・」
「・・・っ、ベルナートさん・・・」
一度口に出すと、感情が溢れてどんどん言葉が止まらなくなった。
感情が溢れた分だけ力が入ってしまい、サーヤを抱きしめる腕も無意識に強くなってしまう。
「最初はね、俺の加護を受け入れてくれた事がすごく嬉しくて、ただサーヤのそばにいたいって思った。でも、そばにいたら今度はくっつきたくなって・・・くっついたら抱きしめたい、口づけしたいってどんどんしたい事が増えていった」
「ベルナートさん、それは・・・」
「誰でも良いんじゃないし、ただ気持ち良いからしたいんじゃないよ。サーヤだから・・・サーヤが俺のした事で反応してくれるのが嬉しくてすごく可愛くて、もっともっと可愛いサーヤを見たくなって・・・エリュシオンに見せてるみたいな顔を俺にも向けて欲しいって思った」
「・・・」
見守る対象だったサーヤ。
でも、いつからかサーヤと一緒にいるエリュシオンを見て、羨ましいなと感じるようになった。
「俺も、サーヤの特別になりたい・・・」
「!」
「俺も、サーヤといちゃいちゃしたい」
「!!」
「俺もサーヤとえっちして、いっぱい気持ち良い事したい!」
「だぁぁぁぁっ!わかった!理解したから!!そーゆ―事は口に出して言わないのっ、バカぁ!!」
バシッとサーヤに思いっきり叩かれた。
こういう事って口にしちゃいけなかったのかな?でも言わないと伝わらないし・・・
ちらっと見えたサーヤの顔は少し赤くなっている。
俺の事を少しは意識してくれたんだろうか?
だから、あとこれだけでも・・・と思ってまたサーヤのてをきゅっと握って言葉を続けた。
「俺もっ、サーヤと家族になりたい・・・サーヤとの子供が欲しい・・・!!」
「!!!!!」
顔は見えないけど、サーヤがものすごく驚いているのがわかる。
・・・言ってしまった。
俺が思ってて、したいと思っている事をすべて伝えた。後悔はしていない。
大丈夫。覚悟もできてる。
サーヤの答えはきっと・・・―――――
「ベルナートさん・・・ごめんね。あたしの”特別”は、エルだけなの」
「・・・うん」
「・・・だから、ベルナートさんの気持ちには応え、られない・・・」
わかってた。サーヤにとって唯一無二の存在はエリュシオンだけだ。
「好きって、想ってくれてありがと・・・でも、ごめんなさ・・・」
「・・・うん。良いんだよ、サーヤ」
攫われてすごく怖くて不安な時も、記憶喪失になったエリュシオンの呪いを解くために迷いなく髪を切った時も、エリュシオンと間違って俺に甘えてきた時も、ずっとサーヤが想っていたのはエリュシオンだけだった。
でも、今は俺のためにサーヤが泣いてくれている。
俺を利用する方法だって、サーヤならいくらでもあるのに他の人間みたいにサーヤは俺や精霊王達を利用しようとしないで、正面からきちんと向き合ってくれる。
だから大好きなんだ。
それにエリュシオンだって・・・
「・・・ホントはね、この気持ち、サーヤに告げても困らせるだけだってわかってたから黙ってるつもりだった。・・・でも、俺の気持ちを知って欲しいと思ったし、“好き”って気持ちも含めて色んなことを教えてくれたサーヤにお礼も言いたかった・・・そしたらね、エリュシオンが“伝えたいなら伝えれば良い”って言ってくれたんだ」
「・・・エルが・・・?」
俺とサーヤに何があったのか、俺がサーヤをどう思っているのか、それを全部知った上で俺を排除するんじゃなくきちんとサーヤと話す機会を与えてくれた。
俺はサーヤも大好きだけど、エリュシオンも大好きだ・・・―――――
「サーヤ、好きだよ。すっごく大好き。・・・でもね、一番好きなのはエリュシオンと一緒にいる時の幸せそうなサーヤの笑顔・・・俺にはあんな顔させられない」
「ベルナート、さん・・・」
「好きだけど、俺じゃダメで・・・俺がエリュシオンと同じ事したくてもサーヤを傷つけちゃう。大好きだけど、傷つけたくない。・・・大好きだから、傷つけたくない・・・今も、泣かせたくなんかないのに、ごめんね」
せっかく綺麗に着飾っていたのに、ボロボロに泣かせてしまった。
多少は気にしてくれるかなと思ったけど、ここまで泣かれるとは思わなかった。
ホントにサーヤは優しい・・・振られたのに、これからも護りたいと思ってしまう。
「ううん。ベルナートさん、ありがとう。気持ちもお礼の言葉もすごく嬉しい」
「・・・っ、サーヤ・・・俺が、初めて好きになった人・・・初めて護りたいと思った人・・・そして、これからも護りたい人・・・」
「ベル、ナートさ・・・」
「結婚式、サーヤの幸せいっぱいの顔、すっごくすっごく可愛かった。これからも、サーヤが笑顔でいられるよう護るから・・・だから・・・サーヤを好きでいる事は、許してね・・・」
「!!」
サーヤはまた涙を溢れさせながら無言で頷いてくれた。
こんなサーヤだから、俺は好きになったんだ。
気持ちだけでも受け入れてくれたのが嬉しくて、“好きだよ”とか“大好き”と呟きながらサーヤを抱きしめた。
このままずっとこうしていたいけど、さすがにそうもいかないしサーヤをエリュシオンや双子の元へ帰さないとね。
「話、聞いてくれてありがとう、サーヤ。」
「ん、聞いてあげる事しかできなくて・・・ごめんね」
「ううん、サーヤがこうして俺の事を思って泣いてくれてるのが嬉しい。俺、サーヤにちゃんと好かれてたんだね」
「・・・かけがえのない仲間だもの。今までいっぱい助けてくれて、ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
想いを告げた後に振られたら、今まで通り俺はサーヤを加護の対象として護ると決めていた。
サーヤをエリュシオンの元へ送ったら、俺はサーヤを必要以上に抱きしめたり、ましてや口づけもしないつもりだ。
だから・・・
「サーヤ・・・最後に1つだけ良い?」
「ん、なぁに?」
「最後に、口づけ、しても良い?」
「・・・」
はっきりと特別なのはエリュシオンだけって言ってたのに、ここですぐにダメと言わないのは優しさなのか、少しは俺を好きになってくれたからなのか・・・
どちらでも良い。今だけはその優しさに付け込ませてもらうね、サーヤ・・・
「ふふっ、最後だから俺が勝手にしちゃうよ。サーヤは勝手にされただけなんだから悪くないからね」
「え・・・んんっ」
以前サーヤにしてもらった、蕩けそうなほど甘くて気持ち良い口づけ。
上手くできてるかどうかわからないけど、”大好きだよ”と気持ちを込めて、口唇を優しく甘噛みしてみたり、歯列を舌で丁寧になぞったり、必死に逃げようとするサーヤの舌を絡めとったり、サーヤがしてくれた口づけを思い出しながらしてみた。
「んっ、ぁ、ベルナートさ・・・んんっ」
「ん、なんか、口づけしょっぱいね」
「・・・っはぁ、バカ、それは涙・・・んんっ、ゃ、最後って、言ったのに・・・んっ」
「はぁ・・・最後とは言ったけど、“1回”とは言ってないよ♪」
「!!!」
”最後だ”と言い聞かせて、ここぞとばかりにサーヤの口唇を堪能する。
顔を赤くしながら少し息の荒くなったサーヤは、やっぱり堪らなく可愛い。
「結婚式を挙げた日の夜って“初夜”って言うんでしょ?エリュシオンにいっぱい消毒してもらえば良いよ」
「!!!!」
今夜はエリュシオンといっぱい愛し合う日だって聞いた。
だったら、俺が少しくらいサーヤに口づけをしたって・・・―――――
「・・・おい駄犬。俺はそこまで許した記憶はないのだが?」
「「??!!」」
ゾクッと底冷えするような殺気で一気に現実に引き戻され、一瞬強い風が吹き抜けたかと思ったら、さっきまで抱きしめていたサーヤはエリュシオンの腕の中にいた。
エリュシオンはサーヤに自分の上着を羽織らせタオルを渡してから、殺気を放ったまま俺に近づいてきた。
「駄犬・・・あんな事をしていたのだ。話は全部終わっているのだろう?」
「う、うん・・・」
「・・・お前は、今後もサーヤに加護を与え続けるのか?それとも・・・―――――」
「!!」
エリュシオンも、なんだかんだと心配して俺を気遣ってくれているのが嬉しい。
でも、殺気を放つのはそろそろやめて欲しいかな・・・
「これからもサーヤに加護は与え続けるし、変わらずサーヤを護るよ」
「そうか。ならば、今回は不問にしてやる。・・・今後はサーヤに近づくお前の様な男がいたら排除しろ。良いな」
「俺みたいな男・・・?」
「あぁ。・・・先ほどのようにサーヤを抱きしめているのが、自分ではない別の男だったらどうする?」
「!!!・・・ぶっ殺すっ!ってか、一生覚めない悪夢をお見舞いしてやるっ!!!」
「・・・今俺がお前に思っている感情もそれで理解できたか?」
「あ・・・」
これからの自分の役割と、エリュシオンが殺気を放っていた理由を理解して少し反省した。
「結婚式はもう終わっているから、俺達は家に戻る。双子は俺の両親に預けているから数日は家に来るな」
「え?レオンとサクラを預けてるの?どうして??」
「お前が言っていたではないか。”初夜でいっぱい消毒してもらえ”とな。初夜だけでは消毒も終わらぬし、俺も満足できないからな」
「!!!」
エリュシオンはそう言ってサーヤの元へ戻り、転移魔法で家に帰っていった。
サーヤはこの後エリュシオンにいっぱい・・・うん、考えるのはやめよう。
明日からすぐに普通になんてなれないから、数日時間が空くのは正直ありがたい。
・・・もしかしてそれを見越して・・・なんて、それは考え過ぎか。
「ははっ、エリュシオンにはホント敵わないなぁ・・・」
2人がいなくなった後、俺はその場で寝ころんだ。
終わった。
終わってしまった、俺の初めての恋・・・
離れがたくて、未練がましく何度も何度もサーヤに口づけた。
「ふふっ、最後に口づけさせてって言った時、“嫌だ”と即答しなかったよね・・・優しすぎるよ、サーヤ」
サーヤの優しさに甘えて、エリュシオンの気遣いに救われた。
「気持ちを伝えられてスッキリしたけど・・・はは、思ったより失恋ってしんどい、かも・・・」
心にぽっかり穴が開いてしまったような喪失感があり、また涙が溢れてくる。
助けを乞うように、流れる雲を見ながら俺は空に向かって手を伸ばす。
すると、ここにいるはずのない小さな手が、俺の手をきゅっと掴んでいた。
エリュシオンから了承を得てサーヤを連れてきたのは、森の中にある少し開けた小高い丘で俺のとっておきの場所。
辺り一面鮮やかに咲き乱れる黄色の花と、どこまで広がる綺麗な青空を見ていると、”黒”という色を気にしてる自分がとてもちっぽけに感じてすごく明るい気持ちになれる。
「わぁ・・・綺麗――――・・・」
「でしょ?この景色、一度サーヤに見せたかったんだ。気に入ってくれた?」
「うん、すっごく綺麗!ありがとう、ベルナートさん」
さっきまでは何か聞きたそうな顔をしていたサーヤも、一瞬にしてこの景色に魅了されたらしい。
サーヤの背にあるドレスのリボンが光に反射して虹色に輝き、妖精の羽根みたいに見えてすごく綺麗だ。
俺の大好きな場所に大好きなサーヤが居る。
そんな状況が嬉しくてドキドキしながら、いつも寛いでいる大木の根元へサーヤを案内し、特殊空間にある敷物やクッションを出してからサーヤと2人で腰を掛ける。
「ここはね、俺の大好きな場所なんだ。この景色を見てると、すごく癒されて元気が湧いてくる」
「そうだね、すごく綺麗で心地良い・・・“帰らずの森”って物騒な名前なのに、こんな素敵な場所があるなんて全然知らなかった」
「ふふっ、“帰らずの森”なんて言ってるのは人間くらいだよ。この森は妖精や精霊が住処としている大切な森だから、人間に荒らされないためにそう仕向けてるんだ」
「なるほど・・・って、あたしも一応人間なんだけどね」
「ふふっ、もちろんサーヤは特別!俺を含めた精霊王達が加護を与えている精霊の愛し子だもん」
「えぇ?!愛し子だなんて、なんか大げさだなぁ」
“精霊の愛し子”・・・そう、ミナトやセイル達精霊王から愛されて加護を与えられ、“黒”である俺の事も差別なく接して加護を受け入れてくれた初めての人間。
・・・最初はそう思ってた。
・・・――――以前アレクの所に行った時、アレクやクラリス、ティリアに恋愛、愛情、性など主に男女間に関係する事を色々教わった。
・・・アレクの完璧主義というか、徹底過ぎる所は正直ちょっと怖かった。
でも、おかげで今までよくわからなかった自分の感情や、行動の意味がようやくわかってすごくスッキリしたけど、同時にサーヤと顔を合わせる事がすごく緊張して恥ずかしくなった。
好きだと気付いてしまうと、サーヤが前よりも可愛く見えてドキドキして、とても平静ではいられなかった。
そばにいると欲望に駆られてぎゅうって抱きしめたりしそうで・・・
サーヤは俺が好きだって言ったら、少しは俺の事も男だと見てくれるかな?
俺の事も、エリュシオンみたいに受け入れてくれる・・・―――――?
「ベルナートさん、何かあった?なんか、いつもと違う気がする」
「・・・サーヤ、俺ね、今日はサーヤに伝えたい事があるんだ」
「伝えたい、こと?」
そっとサーヤの手を取り、手の甲へ優しく口づけるとサーヤがものすごく驚いて困惑していた。
「サーヤ・・・俺ね、サーヤの事が好きだよ」
目をパチパチさせる姿も可愛いなと思いながら、サーヤの瞳をじっと見つめたまま俺は言葉を続けた。
「俺の“好き”は家族や仲間って意味じゃなくて、一人の女性としてって意味だよ」
「!!」
さすがに瞳を見たままこれ以上言葉を続けられなくて、優しく包み込むようにサーヤを抱きしめた。
「サーヤは、“黒”である俺を受け入れてくれた初めての人で、俺に温もりや安心感を与えてくれた。・・・それに、口づけの気持ち良さや、女性の身体がふわふわ柔らかくてお菓子みたいに甘いって事も教えてくれた」
「いやいやちょっと待って、後半がおかしい!それは教えたんじゃなくて・・・――――」
「今まで居場所がなかった俺に居場所をくれた。――――そして何より、“好き”という感情を俺に教えてくれた・・・」
「・・・っ、ベルナートさん・・・」
一度口に出すと、感情が溢れてどんどん言葉が止まらなくなった。
感情が溢れた分だけ力が入ってしまい、サーヤを抱きしめる腕も無意識に強くなってしまう。
「最初はね、俺の加護を受け入れてくれた事がすごく嬉しくて、ただサーヤのそばにいたいって思った。でも、そばにいたら今度はくっつきたくなって・・・くっついたら抱きしめたい、口づけしたいってどんどんしたい事が増えていった」
「ベルナートさん、それは・・・」
「誰でも良いんじゃないし、ただ気持ち良いからしたいんじゃないよ。サーヤだから・・・サーヤが俺のした事で反応してくれるのが嬉しくてすごく可愛くて、もっともっと可愛いサーヤを見たくなって・・・エリュシオンに見せてるみたいな顔を俺にも向けて欲しいって思った」
「・・・」
見守る対象だったサーヤ。
でも、いつからかサーヤと一緒にいるエリュシオンを見て、羨ましいなと感じるようになった。
「俺も、サーヤの特別になりたい・・・」
「!」
「俺も、サーヤといちゃいちゃしたい」
「!!」
「俺もサーヤとえっちして、いっぱい気持ち良い事したい!」
「だぁぁぁぁっ!わかった!理解したから!!そーゆ―事は口に出して言わないのっ、バカぁ!!」
バシッとサーヤに思いっきり叩かれた。
こういう事って口にしちゃいけなかったのかな?でも言わないと伝わらないし・・・
ちらっと見えたサーヤの顔は少し赤くなっている。
俺の事を少しは意識してくれたんだろうか?
だから、あとこれだけでも・・・と思ってまたサーヤのてをきゅっと握って言葉を続けた。
「俺もっ、サーヤと家族になりたい・・・サーヤとの子供が欲しい・・・!!」
「!!!!!」
顔は見えないけど、サーヤがものすごく驚いているのがわかる。
・・・言ってしまった。
俺が思ってて、したいと思っている事をすべて伝えた。後悔はしていない。
大丈夫。覚悟もできてる。
サーヤの答えはきっと・・・―――――
「ベルナートさん・・・ごめんね。あたしの”特別”は、エルだけなの」
「・・・うん」
「・・・だから、ベルナートさんの気持ちには応え、られない・・・」
わかってた。サーヤにとって唯一無二の存在はエリュシオンだけだ。
「好きって、想ってくれてありがと・・・でも、ごめんなさ・・・」
「・・・うん。良いんだよ、サーヤ」
攫われてすごく怖くて不安な時も、記憶喪失になったエリュシオンの呪いを解くために迷いなく髪を切った時も、エリュシオンと間違って俺に甘えてきた時も、ずっとサーヤが想っていたのはエリュシオンだけだった。
でも、今は俺のためにサーヤが泣いてくれている。
俺を利用する方法だって、サーヤならいくらでもあるのに他の人間みたいにサーヤは俺や精霊王達を利用しようとしないで、正面からきちんと向き合ってくれる。
だから大好きなんだ。
それにエリュシオンだって・・・
「・・・ホントはね、この気持ち、サーヤに告げても困らせるだけだってわかってたから黙ってるつもりだった。・・・でも、俺の気持ちを知って欲しいと思ったし、“好き”って気持ちも含めて色んなことを教えてくれたサーヤにお礼も言いたかった・・・そしたらね、エリュシオンが“伝えたいなら伝えれば良い”って言ってくれたんだ」
「・・・エルが・・・?」
俺とサーヤに何があったのか、俺がサーヤをどう思っているのか、それを全部知った上で俺を排除するんじゃなくきちんとサーヤと話す機会を与えてくれた。
俺はサーヤも大好きだけど、エリュシオンも大好きだ・・・―――――
「サーヤ、好きだよ。すっごく大好き。・・・でもね、一番好きなのはエリュシオンと一緒にいる時の幸せそうなサーヤの笑顔・・・俺にはあんな顔させられない」
「ベルナート、さん・・・」
「好きだけど、俺じゃダメで・・・俺がエリュシオンと同じ事したくてもサーヤを傷つけちゃう。大好きだけど、傷つけたくない。・・・大好きだから、傷つけたくない・・・今も、泣かせたくなんかないのに、ごめんね」
せっかく綺麗に着飾っていたのに、ボロボロに泣かせてしまった。
多少は気にしてくれるかなと思ったけど、ここまで泣かれるとは思わなかった。
ホントにサーヤは優しい・・・振られたのに、これからも護りたいと思ってしまう。
「ううん。ベルナートさん、ありがとう。気持ちもお礼の言葉もすごく嬉しい」
「・・・っ、サーヤ・・・俺が、初めて好きになった人・・・初めて護りたいと思った人・・・そして、これからも護りたい人・・・」
「ベル、ナートさ・・・」
「結婚式、サーヤの幸せいっぱいの顔、すっごくすっごく可愛かった。これからも、サーヤが笑顔でいられるよう護るから・・・だから・・・サーヤを好きでいる事は、許してね・・・」
「!!」
サーヤはまた涙を溢れさせながら無言で頷いてくれた。
こんなサーヤだから、俺は好きになったんだ。
気持ちだけでも受け入れてくれたのが嬉しくて、“好きだよ”とか“大好き”と呟きながらサーヤを抱きしめた。
このままずっとこうしていたいけど、さすがにそうもいかないしサーヤをエリュシオンや双子の元へ帰さないとね。
「話、聞いてくれてありがとう、サーヤ。」
「ん、聞いてあげる事しかできなくて・・・ごめんね」
「ううん、サーヤがこうして俺の事を思って泣いてくれてるのが嬉しい。俺、サーヤにちゃんと好かれてたんだね」
「・・・かけがえのない仲間だもの。今までいっぱい助けてくれて、ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
想いを告げた後に振られたら、今まで通り俺はサーヤを加護の対象として護ると決めていた。
サーヤをエリュシオンの元へ送ったら、俺はサーヤを必要以上に抱きしめたり、ましてや口づけもしないつもりだ。
だから・・・
「サーヤ・・・最後に1つだけ良い?」
「ん、なぁに?」
「最後に、口づけ、しても良い?」
「・・・」
はっきりと特別なのはエリュシオンだけって言ってたのに、ここですぐにダメと言わないのは優しさなのか、少しは俺を好きになってくれたからなのか・・・
どちらでも良い。今だけはその優しさに付け込ませてもらうね、サーヤ・・・
「ふふっ、最後だから俺が勝手にしちゃうよ。サーヤは勝手にされただけなんだから悪くないからね」
「え・・・んんっ」
以前サーヤにしてもらった、蕩けそうなほど甘くて気持ち良い口づけ。
上手くできてるかどうかわからないけど、”大好きだよ”と気持ちを込めて、口唇を優しく甘噛みしてみたり、歯列を舌で丁寧になぞったり、必死に逃げようとするサーヤの舌を絡めとったり、サーヤがしてくれた口づけを思い出しながらしてみた。
「んっ、ぁ、ベルナートさ・・・んんっ」
「ん、なんか、口づけしょっぱいね」
「・・・っはぁ、バカ、それは涙・・・んんっ、ゃ、最後って、言ったのに・・・んっ」
「はぁ・・・最後とは言ったけど、“1回”とは言ってないよ♪」
「!!!」
”最後だ”と言い聞かせて、ここぞとばかりにサーヤの口唇を堪能する。
顔を赤くしながら少し息の荒くなったサーヤは、やっぱり堪らなく可愛い。
「結婚式を挙げた日の夜って“初夜”って言うんでしょ?エリュシオンにいっぱい消毒してもらえば良いよ」
「!!!!」
今夜はエリュシオンといっぱい愛し合う日だって聞いた。
だったら、俺が少しくらいサーヤに口づけをしたって・・・―――――
「・・・おい駄犬。俺はそこまで許した記憶はないのだが?」
「「??!!」」
ゾクッと底冷えするような殺気で一気に現実に引き戻され、一瞬強い風が吹き抜けたかと思ったら、さっきまで抱きしめていたサーヤはエリュシオンの腕の中にいた。
エリュシオンはサーヤに自分の上着を羽織らせタオルを渡してから、殺気を放ったまま俺に近づいてきた。
「駄犬・・・あんな事をしていたのだ。話は全部終わっているのだろう?」
「う、うん・・・」
「・・・お前は、今後もサーヤに加護を与え続けるのか?それとも・・・―――――」
「!!」
エリュシオンも、なんだかんだと心配して俺を気遣ってくれているのが嬉しい。
でも、殺気を放つのはそろそろやめて欲しいかな・・・
「これからもサーヤに加護は与え続けるし、変わらずサーヤを護るよ」
「そうか。ならば、今回は不問にしてやる。・・・今後はサーヤに近づくお前の様な男がいたら排除しろ。良いな」
「俺みたいな男・・・?」
「あぁ。・・・先ほどのようにサーヤを抱きしめているのが、自分ではない別の男だったらどうする?」
「!!!・・・ぶっ殺すっ!ってか、一生覚めない悪夢をお見舞いしてやるっ!!!」
「・・・今俺がお前に思っている感情もそれで理解できたか?」
「あ・・・」
これからの自分の役割と、エリュシオンが殺気を放っていた理由を理解して少し反省した。
「結婚式はもう終わっているから、俺達は家に戻る。双子は俺の両親に預けているから数日は家に来るな」
「え?レオンとサクラを預けてるの?どうして??」
「お前が言っていたではないか。”初夜でいっぱい消毒してもらえ”とな。初夜だけでは消毒も終わらぬし、俺も満足できないからな」
「!!!」
エリュシオンはそう言ってサーヤの元へ戻り、転移魔法で家に帰っていった。
サーヤはこの後エリュシオンにいっぱい・・・うん、考えるのはやめよう。
明日からすぐに普通になんてなれないから、数日時間が空くのは正直ありがたい。
・・・もしかしてそれを見越して・・・なんて、それは考え過ぎか。
「ははっ、エリュシオンにはホント敵わないなぁ・・・」
2人がいなくなった後、俺はその場で寝ころんだ。
終わった。
終わってしまった、俺の初めての恋・・・
離れがたくて、未練がましく何度も何度もサーヤに口づけた。
「ふふっ、最後に口づけさせてって言った時、“嫌だ”と即答しなかったよね・・・優しすぎるよ、サーヤ」
サーヤの優しさに甘えて、エリュシオンの気遣いに救われた。
「気持ちを伝えられてスッキリしたけど・・・はは、思ったより失恋ってしんどい、かも・・・」
心にぽっかり穴が開いてしまったような喪失感があり、また涙が溢れてくる。
助けを乞うように、流れる雲を見ながら俺は空に向かって手を伸ばす。
すると、ここにいるはずのない小さな手が、俺の手をきゅっと掴んでいた。
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ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
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