生活魔法は万能です

浜柔

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64 地下二階

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 ガノスの先導で一同は階段を下って地下二階に降り立った。

「この階には無料宿泊所や炊事場などの他、訓練施設が在る。訓練施設は登録して一ヶ月以内なら無料で好きな訓練を受けられる。ここから近いのは宿泊所だ」

 奥へと進む。そして通路に空いた入口から部屋へと入る。するとそこには人が中で寝られそうな三段の棚がずらっと並んでいた。下段は概ね腰の高さくらいまで、中段は頭の上くらいまで、その上に上段が在る。

「これが無料宿泊所だ」
「はいっ?」

 ルキアスが素っ頓狂な声を出すが、ガノスはにこりともしない。この施設の在り方自体を快く思っているようだ。

「蜂の巣みたいで人が泊まるようには見えないだろう? だがこれがそうだ。
 中段上段には梯子を登って柵もないベランダを這って入ることになる。下段も這わないと入れないがな」

 しかしルキアスの感想は真逆だ。ここまでの旅で自作のテントに寝泊まりするのは辛いものがあった。

(テントより寝心地良さそう)

 奥を覗けば足を延ばして寝られる奥行きがある。足を伸ばせないテントに比べれば雲泥の差である。ルキアスは今夜から利用すると心に決めた。

「利用する時は好きな所を適当に使え。もしも何かで一旦出る場合があったら、私物は全部持ち出すように。置きっぱなしは捨てたものと見なされる。ちょっとした隙に他のヤツが入ったら置いていた荷物はもうそいつのもんだ。拾い主としてな」

(殺伐としてる……)

 ルキアスは率直にそう感じた。しかしこの感想は一面的だ。最大の理由は探索者が戻って来ないことがあるためなのだ。ダンジョンで命を落とすかベクロテから立ち去るかはその人物次第だが、そうした人物が残した物品の所有権をその人物に付けたままでは処分できない。そんな部分で管理コストが嵩めば買取価格の下落として反映され、活動を続けている探索者の不利益になる。

「ダンジョンの中も似たようなものだ。ダンジョンで死んだ奴が持っていた物を見付けたら、見付けた奴のものになる。
 さっきも言った殺しをする奴はこれを悪用する訳だが、そんな連中は当然恨みを買うから殺されて終わるのがオチだ」

 暗に「そうはなるな」と言うことだ。
 ルキアスとザネクは頷きで応えた。

「それじゃ後はこっちだ」

 ガノスはまた手を煽って部屋を出て奥へと進む。次に在ったのは仕切りで区切られた部屋。何の部屋かはそこに居た人の様子を見れば一目瞭然だ。

「見ての通り、炊事場だ」

 ガノスはまた次に進む。「手洗い所だ」「洗濯場だ」とここら辺は細かい説明をしない。

「ここはシャワー室だ。一応男用と女用に別れている」

 浴場は戸で仕切られているので中までは見えない。ガノスは更に進む。

「ここから先が訓練場だ。幾つかに別れていて剣、槍、弓、魔法、体術なんかを教えている。受講申し込みは地下一階の受付だ。その日に何の講習をするかも受付で聞いてくれ」

 地下二階を俯瞰すれば四分の一が削れたドーナツのような形をしている。ここまでで一同はその片方の端に在る階段から降り、ぐるっと回って反対側の端まで達したことになる。
 ガノスはルキアスとザネクに視線を向けた。

「以上だ。リュミア、何かあるか?」
「特に無い……わ。ガノスがしっかり講師していてびっくりしたわ……よ」

 リュミアが微笑むとガノスは嫌な顔をした。

「お前達は何か質問はあるか?」

 ルキアスとザネクは首を横に振った。

「おし。それじゃお疲れさん。講習はここまでだ。ところでお前達はパーティーを組むつもりなのか?」
「それは……」

 ザネクは口籠もってルキアスを見る。しかしルキアスはザネクを見ない。

「あ、いえ、ぼくはまだ準備が出来ていないので、暫く一人でやります」
「そうか。頑張れ」
「はい」
「それじゃ、ザネクはこの後兄ちゃんとの再会を祝して一緒に飯を食うぞ。ルキアス……だったよな? お前はどうする?」
「あ、ぼくはその、お邪魔しても悪いですし……」
「そうか。そりゃ悪いな。また縁があったら会おう」
「はい」
「ザネク、行くぞ」

 ガノスはザネクの腕を軽く階段の方へと押してからさっさと歩き出す。

「あ、ああ……」

 ザネクは後ろ髪を引かれるようにルキアスを振り返るが、ルキアスが小さく手を振ると、振り切るようにガノスを追った。
 ルキアスはザネクを見送ってから無料宿泊所の方へと向かった。
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