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257~263 銃とは
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【257.浪漫】
「ちょっと待って! あんなの全然使えないじゃない! あのくらい、あたしの魔法だってできるし、レンジが針を投げたって同じでしょ!? もっと使えるものにしなさいよ!」
魔法使いが声を荒らげた。
しかしハンターはやれやれと頭を振る。
「解ってねぇなぁ。男はあんなのに憧れるんだよ。なっ!?」
ハンターは最後、剣士に振った。
「さあ?」
しかし同意を得ることは叶わず、不満が口から漏れる。
「浪漫だろ! これこそ浪漫じゃないか!」
「どうかな?」
槍士も心惹かれないらしい。
「えーっ。何だよもう……」
ハンターは拗ねて、足を地面を蹴った。
【258.前向きに】
「しかし考えてみれば、拳銃とやらは飛び道具を持たない拙者やゾッケンが牽制や奥の手として使うのは有るやも知れぬ」
ハンターが拗ねたからでもないだろうが、槍士は前向きに意見した。
「ほう。それイケそうだな。セヒイラもどうだ?」
「わたしですか!?」
「セヒイラかぁ。確かにセヒイラの攻撃魔法より強そうだぞ?」
「そんなに!?」
「もう……、元々セヒイラが攻撃魔法なんて使う必要ないでしょ」
「盛り上がっているところ悪いが、拳銃を持ち帰っても無意味だぞ?」
「「「えっ!?」」」
横から挟まれた魔王の声に、男三人は喫驚の声を上げた。
【259.拳銃がどうして】
「どうして無意味なんだ?」
ハンターはご不満である。折角のおもちゃを奪われたような心持ちなのだ。
「弾丸が要るからな」
「たま?」
「これだ」
魔王は2種類の弾丸を取り出してこたつの反対側に置く。2丁の拳銃それぞれの弾丸だ。その弾丸をハンターが手に取ってしげしげと検分する。
「これは……」
「どれどれ?」
剣士はハンターから弾丸の一方を受け取って、やはりしげしげと検分する。
「やけに精巧だな」
「その精巧な弾丸を1回ごとに消費する」
「「えっ……」」
ハンターも剣士も喫驚を顔に浮かべた。
【260.弾丸が消耗するなら】
「それならまた貰いに来るってのは駄目なのか?」
「駄目だ。最初に言った通りにお土産は1回限り。持ち帰った分が無くなったらそれっ切りだ」
何度もお土産を渡していたら切りが無い。万が一にもそれを売うる商売をされたらこの世界の秩序が乱れる。そう言うのは魔王の望むところではないのだ。尤も、そんな説明をいちいちすることも無い。
「まあ、そりゃそうだよな……」
ハンターも虫が良すぎる話の自覚があった。だから説明されずとも察した。
「それなら俺はここに残るぜ」
「〃「えっ!?」〃」
いきなり掌を返したのだから、仲間達が驚くのも道理だ。
「こんな面白そうなものをほっぽって帰れるかって」
ハンターはドヤ顔である。
【261.ハンターが残るなら】
「だったらあたしも残る」
茫然と呟くのは魔法使いである。人に相談も無しに独りで決めたハンターのことは憎たらしいが、別れるのはもっと嫌なのだ。
「マホが残るならわたしも……」
「うむ。拙者も残ろう」
槍士の口の端からよだれが覗いているのは、恐らくシェフの料理への未練が勝ったのだろう。
「おいおい、今みんなで帰るってことにしたばっかりじゃないか」
剣士は腕を広げて呆れてみせる。
「やれやれ、しょうがないなぁ」
しかし直ぐに剣士も残ることにした。そこまで積極的に帰りたいのでもないのだ。
「あれ? みんなで一緒に立ち話?」
「〃「あっ」〃」
振り向いた5人はそれぞれの声音で息を漏らした。オリエがすっぽんぽんで立っていた。鍛練を終えて戻って来たところらしい。思った以上に時間が過ぎていた。
オリエからして見れば、自分が知らない間に5人の帰還計画が持ち上がって消えた空白の時間であった。
【262.帰らないとなれば】
「てりゃっ!」
剣士がズババンと牛の魔物を切り裂いた。魔物が光に包まれて肉に変わる。
「絶好調!」
「然り」
剣士が威勢の良い声を上げ、槍士が頷いて応えた。その槍士の構える槍も1ヶ月前のように腹に支えたりはしていない。彼らの身体の切れも元に戻っている。
それでも落ち着かない人物が約1名。ヒーラーはその人物に声を掛けた。
「オリエさん、全然危なげなかったじゃありませんか」
「でもでも!」
実際、前衛で戦う剣士も槍士も傷一つ負っていない。ところがそれでもオリエには危なっかしく見えるのだ。魔王の助言で彼らの実戦を認めたものの気が休まらない。
「困ったものね」
魔法使いは得心がいった。オリエはあまりに心配性なのだ。だからずっとソロで活動していた。
そんなオリエはずっとハラハラした様子で戦いを見ていて、終わった後までハラハラしたままだった。
【263.オリエの心配を余所に】
「お次はこれだぜ」
オリエの気持ちを知ってか知らずか、ハンターは9㎜拳銃を取り出した。折しもひょっこり顔を出した牛の魔物に狙いを定める。
カチッ、カチッ、カチッ。
「ちょっ! 出ねぇ!」
その声で気付いたか、魔物が振り返り、殆ど間を置かずに猛然とハンターに突進する。
ハンターはその巨大な角が目前に迫ってから漸く魔物の動きに気付いた。
「うおっ!」
ブモキーッ!
断末魔の悲鳴は魔物のものだった。
「気を抜くでないぞ」
「わ、わりぃ」
魔物には槍士の槍が深々と突き刺さっていた。
「ちょっと待って! あんなの全然使えないじゃない! あのくらい、あたしの魔法だってできるし、レンジが針を投げたって同じでしょ!? もっと使えるものにしなさいよ!」
魔法使いが声を荒らげた。
しかしハンターはやれやれと頭を振る。
「解ってねぇなぁ。男はあんなのに憧れるんだよ。なっ!?」
ハンターは最後、剣士に振った。
「さあ?」
しかし同意を得ることは叶わず、不満が口から漏れる。
「浪漫だろ! これこそ浪漫じゃないか!」
「どうかな?」
槍士も心惹かれないらしい。
「えーっ。何だよもう……」
ハンターは拗ねて、足を地面を蹴った。
【258.前向きに】
「しかし考えてみれば、拳銃とやらは飛び道具を持たない拙者やゾッケンが牽制や奥の手として使うのは有るやも知れぬ」
ハンターが拗ねたからでもないだろうが、槍士は前向きに意見した。
「ほう。それイケそうだな。セヒイラもどうだ?」
「わたしですか!?」
「セヒイラかぁ。確かにセヒイラの攻撃魔法より強そうだぞ?」
「そんなに!?」
「もう……、元々セヒイラが攻撃魔法なんて使う必要ないでしょ」
「盛り上がっているところ悪いが、拳銃を持ち帰っても無意味だぞ?」
「「「えっ!?」」」
横から挟まれた魔王の声に、男三人は喫驚の声を上げた。
【259.拳銃がどうして】
「どうして無意味なんだ?」
ハンターはご不満である。折角のおもちゃを奪われたような心持ちなのだ。
「弾丸が要るからな」
「たま?」
「これだ」
魔王は2種類の弾丸を取り出してこたつの反対側に置く。2丁の拳銃それぞれの弾丸だ。その弾丸をハンターが手に取ってしげしげと検分する。
「これは……」
「どれどれ?」
剣士はハンターから弾丸の一方を受け取って、やはりしげしげと検分する。
「やけに精巧だな」
「その精巧な弾丸を1回ごとに消費する」
「「えっ……」」
ハンターも剣士も喫驚を顔に浮かべた。
【260.弾丸が消耗するなら】
「それならまた貰いに来るってのは駄目なのか?」
「駄目だ。最初に言った通りにお土産は1回限り。持ち帰った分が無くなったらそれっ切りだ」
何度もお土産を渡していたら切りが無い。万が一にもそれを売うる商売をされたらこの世界の秩序が乱れる。そう言うのは魔王の望むところではないのだ。尤も、そんな説明をいちいちすることも無い。
「まあ、そりゃそうだよな……」
ハンターも虫が良すぎる話の自覚があった。だから説明されずとも察した。
「それなら俺はここに残るぜ」
「〃「えっ!?」〃」
いきなり掌を返したのだから、仲間達が驚くのも道理だ。
「こんな面白そうなものをほっぽって帰れるかって」
ハンターはドヤ顔である。
【261.ハンターが残るなら】
「だったらあたしも残る」
茫然と呟くのは魔法使いである。人に相談も無しに独りで決めたハンターのことは憎たらしいが、別れるのはもっと嫌なのだ。
「マホが残るならわたしも……」
「うむ。拙者も残ろう」
槍士の口の端からよだれが覗いているのは、恐らくシェフの料理への未練が勝ったのだろう。
「おいおい、今みんなで帰るってことにしたばっかりじゃないか」
剣士は腕を広げて呆れてみせる。
「やれやれ、しょうがないなぁ」
しかし直ぐに剣士も残ることにした。そこまで積極的に帰りたいのでもないのだ。
「あれ? みんなで一緒に立ち話?」
「〃「あっ」〃」
振り向いた5人はそれぞれの声音で息を漏らした。オリエがすっぽんぽんで立っていた。鍛練を終えて戻って来たところらしい。思った以上に時間が過ぎていた。
オリエからして見れば、自分が知らない間に5人の帰還計画が持ち上がって消えた空白の時間であった。
【262.帰らないとなれば】
「てりゃっ!」
剣士がズババンと牛の魔物を切り裂いた。魔物が光に包まれて肉に変わる。
「絶好調!」
「然り」
剣士が威勢の良い声を上げ、槍士が頷いて応えた。その槍士の構える槍も1ヶ月前のように腹に支えたりはしていない。彼らの身体の切れも元に戻っている。
それでも落ち着かない人物が約1名。ヒーラーはその人物に声を掛けた。
「オリエさん、全然危なげなかったじゃありませんか」
「でもでも!」
実際、前衛で戦う剣士も槍士も傷一つ負っていない。ところがそれでもオリエには危なっかしく見えるのだ。魔王の助言で彼らの実戦を認めたものの気が休まらない。
「困ったものね」
魔法使いは得心がいった。オリエはあまりに心配性なのだ。だからずっとソロで活動していた。
そんなオリエはずっとハラハラした様子で戦いを見ていて、終わった後までハラハラしたままだった。
【263.オリエの心配を余所に】
「お次はこれだぜ」
オリエの気持ちを知ってか知らずか、ハンターは9㎜拳銃を取り出した。折しもひょっこり顔を出した牛の魔物に狙いを定める。
カチッ、カチッ、カチッ。
「ちょっ! 出ねぇ!」
その声で気付いたか、魔物が振り返り、殆ど間を置かずに猛然とハンターに突進する。
ハンターはその巨大な角が目前に迫ってから漸く魔物の動きに気付いた。
「うおっ!」
ブモキーッ!
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「気を抜くでないぞ」
「わ、わりぃ」
魔物には槍士の槍が深々と突き刺さっていた。
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