魔☆かるちゃ～魔王はこたつで茶をすする～

１４２４．避難

　オリエは槍士とハンターの待つ町の郊外で止まった。
　ここで馬車を降りるのだが、オリエの姉は強く握り締めた手摺りからなかなか手が離せない。
　あまりのスピードに凍えた身体がなかなか緩まない。
　だがあまり悠長にしてもいられない。
　オリエは馬車に乗ったままの姉に魔王から融通して貰った異世界の特殊なマスクを被せて変装させる。
　姉の夫も変装させた。
　ハンターが感嘆する。

「すげぇ。まるで元からそんな顔だったみたいだ」

　よほど注意深く見なければ違和感にすら気付けない変わりようなのだ。
　オリエの姉が落ち着いたところでダンジョンに向かう。
　姉夫婦は槍士、ハンターと共に歩き、オリエのアバターは出る時同様袋詰めで槍士に担がれてだ。
　ダンジョンにも既に姉の家での顛末を聞いただろう者達が詰め掛けていたが、彼らとてその殆どは刺客でもなければ戦闘に長けている訳でもない。
　彼らは槍士やハンター、その連れが怪しく見えても絡むのをためらった。
　槍士やハンターを相手に腕力では束になっても敵わないのだ。
　こうしてオリエの姉夫婦は悠々とダンジョン第３階層への移動を達成した。