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Ⅱ ふみ
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梅雨の晴れ間、庭先にガリガリに痩せた三毛の子猫があらわれた。じっとうずくまっていたが、そのうちどこかへ消えた。次の日、又やって来てすぐいなくなったが、草陰に置いたえさが、なくなっていた。朝、お皿に入れたえさを食べ、木の根元で眠る。そんな日がしばらく続いた。
「母ネコはどうしたのだろう?飼い主はいないのだろうか?」
私は、その子猫が薄汚れて痩せていく様子を、ハラハラしながら見ていることしかできなかった。少しずつお皿を部屋に近づけて、軒下に置くようになると、夜もそこで寝るようになった。愛くるしい寝顔を遠くから見ていた私の心は、もう決まっていた。
「この子はうちの子になる!」
その日、えさのお皿を少しずつ家の中へ入れ、それを食べようとして、子猫が、桟をまたいだ瞬間、窓を閉めた。ものすごく暴れたけれど、しばらくほっておくと、疲れ果てたのか眠ってしまった。
翌日連れて行った病院で、先生はこう言われた。
「よかった!もう二日遅かったら命なかったかもしれないね。ダニもたくさんいるし」
七月文月にやってきたので「ふみ」と名付けた。
ふみは、日毎に元気になり、天真爛漫に動き回るようになった。早食いで、のんびり食べているなつきのお皿に横から顔をつっこむ。そんなお転婆ぶりで家を賑やかにしてくれた。
ところが、その九月、事件は起こった。網戸を破って脱出してしまったのだ。
「ふーちゃーん!ふーちゃん!」
毎日、人目も気にせず探し回った。チラシを刷って近所に配ったりもした。
「なんだ、猫か!」
鼻で笑われることも多かった。
「いやあ、うちも家出されたことあるんです。ご心配ですねえ。きっと見つかりますよ」
そう言って、一緒に探してくれた方もいた。
台風の夜には、吹き飛ばされそうな傘と懐中電灯を握りしめて歩き続けた。
何も手につかず、溝を覗き込んだり、空き地に入ったりと、不審者まがいのことをしながら、時間だけが過ぎていった。お電話をいただいたり、いろんな情報を集めると、どうも割と近くで楽し気に走り回っているらしい。
睡眠不足と食欲不振で、私が倒れそうになった十日目の夕方、ふみが、なんと家の庭にちょこんと座っていたのだ!私はドキドキする胸をなんとか抑え、家の電気を全部消すと、大好物のカニカマを濡れ縁に置いた。ふみは、そろりそろりと部屋に近づき、そして、飛び込んで来た。私は、勢いよく閉めた窓にもたれて号泣した。
それなのに半年ほどたった頃、また家出を決行したのだ。今度はノラたちにいじめられたようで、三日目の朝、ひと回り小さくなり、激しく泣いているふみを、隣の庭で見つけたのだ。
家出騒動はもうこりごりと、毎年網戸を張り替えてもらっている。
グオー
何だろうと驚くと、ふみのいびきだ。その容貌とミスマッチで笑わせてくれる。
私を見つめ、膝に乗って来て大きな声で訴える。なあに?文句?あの冒険はもう忘れた?
「わたしね、ここの肩のとこ、もうちょっと白かったらよかったのにね、どう思う?おばあちゃん」
「ふーちゃんは、そのままがかわいいよ。もうばっちりだよ」
そんな話ならいいのだけれど。
我が家の子になってはや五年、私のアイドル「おしかけっ子」ふみである。
「母ネコはどうしたのだろう?飼い主はいないのだろうか?」
私は、その子猫が薄汚れて痩せていく様子を、ハラハラしながら見ていることしかできなかった。少しずつお皿を部屋に近づけて、軒下に置くようになると、夜もそこで寝るようになった。愛くるしい寝顔を遠くから見ていた私の心は、もう決まっていた。
「この子はうちの子になる!」
その日、えさのお皿を少しずつ家の中へ入れ、それを食べようとして、子猫が、桟をまたいだ瞬間、窓を閉めた。ものすごく暴れたけれど、しばらくほっておくと、疲れ果てたのか眠ってしまった。
翌日連れて行った病院で、先生はこう言われた。
「よかった!もう二日遅かったら命なかったかもしれないね。ダニもたくさんいるし」
七月文月にやってきたので「ふみ」と名付けた。
ふみは、日毎に元気になり、天真爛漫に動き回るようになった。早食いで、のんびり食べているなつきのお皿に横から顔をつっこむ。そんなお転婆ぶりで家を賑やかにしてくれた。
ところが、その九月、事件は起こった。網戸を破って脱出してしまったのだ。
「ふーちゃーん!ふーちゃん!」
毎日、人目も気にせず探し回った。チラシを刷って近所に配ったりもした。
「なんだ、猫か!」
鼻で笑われることも多かった。
「いやあ、うちも家出されたことあるんです。ご心配ですねえ。きっと見つかりますよ」
そう言って、一緒に探してくれた方もいた。
台風の夜には、吹き飛ばされそうな傘と懐中電灯を握りしめて歩き続けた。
何も手につかず、溝を覗き込んだり、空き地に入ったりと、不審者まがいのことをしながら、時間だけが過ぎていった。お電話をいただいたり、いろんな情報を集めると、どうも割と近くで楽し気に走り回っているらしい。
睡眠不足と食欲不振で、私が倒れそうになった十日目の夕方、ふみが、なんと家の庭にちょこんと座っていたのだ!私はドキドキする胸をなんとか抑え、家の電気を全部消すと、大好物のカニカマを濡れ縁に置いた。ふみは、そろりそろりと部屋に近づき、そして、飛び込んで来た。私は、勢いよく閉めた窓にもたれて号泣した。
それなのに半年ほどたった頃、また家出を決行したのだ。今度はノラたちにいじめられたようで、三日目の朝、ひと回り小さくなり、激しく泣いているふみを、隣の庭で見つけたのだ。
家出騒動はもうこりごりと、毎年網戸を張り替えてもらっている。
グオー
何だろうと驚くと、ふみのいびきだ。その容貌とミスマッチで笑わせてくれる。
私を見つめ、膝に乗って来て大きな声で訴える。なあに?文句?あの冒険はもう忘れた?
「わたしね、ここの肩のとこ、もうちょっと白かったらよかったのにね、どう思う?おばあちゃん」
「ふーちゃんは、そのままがかわいいよ。もうばっちりだよ」
そんな話ならいいのだけれど。
我が家の子になってはや五年、私のアイドル「おしかけっ子」ふみである。
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