もっと僕を見て

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後日談:潮島視点

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感想の方で、潮島視点も読みたかったというのがあったので後日談を潮島視点にしてみました
前半4P……というか、2対2の見せ合い? みたいなエロです
相手カップルへのお触りはありません
白田×服有カップルの方はぬるーく痛いプレイあります

後半は喧嘩ップルがまた喧嘩して仲直りします




ーーーーーーーーーーーー









「白田だなんて聞いてないっ!!」

 開口一番そう叫んだ真広に、予想通りだと肩を竦めた。

「言ってないしねぇ」

 俺がそう答えると、真広は信じられないみたいに目を丸くして俺を見つめた。大きな瞳にうるうると涙が広がって、こぼれ落ちそうになるのに胸が詰まる。可愛い顔が歪むのって、なんでこんなに愛らしいんだろう。ああ、もっと虐めたい。
 服有さんが怪訝な目でカナメを見て、カナメは慌てて首を横に振った。それから俺に視線を移して、叱責するような表情で口を開く。

「パートナーに話を通してもいない人とプレイ出来ません」

 パートナー、とハッキリ言い切った服有さんに、真広が驚いたのが分かる。そうか、カナメは真広には本当に何も話してないんだな。カナメと服有さんも元々はSMのパートナーである事から話さなければならないようだ。

「……だってよ、真広? どうする? したくないなら、このまま中止にしてもいいけど」

 隣に立つ真広は目の前の友人カップルを前に尻込みしているらしい。助けを求めるように目で縋られたが、それは俺には逆効果だ。

「知ってる人に見られるの、嫌?」
「……っ」

 今日の目的を思い出したのか、真広は瞬時に顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 真広の反応を見た服有さんは、それが拒否反応なのか期待なのかを探るようにじっと見つめている。

「高久田くん。さっさとドア閉めたいんだけど。他のお客さんと鉢合わせとか嫌だよ俺は」
「あ、す……すみません。入り、ます」
 
 服有さんの刺々しい言葉に急かされ──わざとそうしてくれたんだろう──、真広は部屋の中へと靴を進めた。
 今、俺たちが居るのは、ラブホテルの中だ。その扉を開けたところで、中に待っていたのがカナメと服有さんだと知って真広が固まってしまっていたのだ。
 真広の後ろでニヤけてしまう俺を見てカナメが呆れた顔をして、背を向けてベッドの方へすたすた歩いていく。俺がドアを閉め、ガチャンと鍵の音がしたのを真広が恐々と振り返った。

「し、潮」
「はいはい、かわいいかわいい」
「……そんな雑な」

 怯える風なのが演技ではないと分かっていても、そのあざとさは鼻につく。可愛いからこそ、虐めて苦しめて泣かせたくなってしまう。頭を適当に撫でると、真広は唇を尖らせて拗ねてしまったようだ。
 部屋の中は、ベッドが二つ置いてあるだけの簡素な内装だった。ビジネスホテルのツインのように、ベッドとベッドの間は少し空いて配置されており、あとは壁掛けのテレビと簡易クロークがあるだけだ。浴室への扉も見えるが、普通の部屋よりかなり狭く見える。
 何せ、ベッドがダブルサイズなのだ。それを二つも入れれば、そりゃ狭くて当然だろう。
 先にベッドに座っていたカナメの横に、服有さんも腰掛ける。それを真似て隣のベッドの方に彼らと向かい合わせに座ろうとした真広の、後ろ髪を掴んで引き止めた。

「先に、ご挨拶しよっか?」

 俺を肩越しに振り返った真広の目元が朱に染まる。小さく震えて二度深呼吸してから、頷くのを見て喉の奥が熱くなった。悦びで口角が上がってしまいそうになるのを必死に我慢して、「奴隷なんだから下に座ろうね」と床を指差すと、真広は素直にそこに腰を下ろした。
 カナメが微かに眉を顰めている。そうだろうな、普段の俺達を知っていれば、真広が俺の言う事を素直に聞いているだけで驚きだろう。カナメは見せたくない派のようだが、俺は見せたくてたまらない。俺の可愛い真広が、どれだけ俺に従順なのかを。

「……ご主人様の奴隷の、真広と申します。本日は、ご主人様と僕の、……えっちを、見て頂く為に、御足労頂き、ありがとうございます」

 事前に教えた台詞を、俯いて辿々しいながらも正座で宣言出来た真広を、ことさら優しく撫でてやる。サラサラした細い髪の感触が良い。まっすぐなチョコレート色の前髪の下から、俺を見上げた瞳が酷く不安そうにしていたから笑い掛けて褒めてやった。

「よくできたね。ちゃんと言えて偉いよ、真広」
「はい……」

 頭を撫でた俺の手に、真広が猫のように顔を擦り寄せてくる。可愛らしさで爆発しそうだ。なんで真広はこんなに可愛いのか。
 数瞬、真広を見つめて止まってしまった俺に、呆れたようなカナメの声が掛けられる。

「それ、こいつにもやらせんの?」
「えっ、俺も!?」

 カナメの言葉に、服有さんは胸の前で勢いよく両手を振って拒否を示した。

「いやいや、今日は見てるだけでいいっていうから来ただけで。な? だよな、カナメ」
「ああ」

 カナメの方は服有さんにも事前に話を通してあったようで、服有さんは肯定が返ってきてホッとしたようなのだが。カナメは真広を見遣って、服有さんの脹脛(ふくらはぎ)あたりを靴の先でつつく。

「そのつもりだったんだが、高久田が緊張してっから。あんたも同じような事すればちったぁ楽になるかと思って」
「はい?」
「慣れてんだろ」

 カナメは服有さんの背中をバンと叩いて、その勢いで床に下ろさせた。前のめりに床に手をついた服有さんは、忌々しげにカナメを睨んでから、一度ため息を吐いてすぐに正座に座り直す。
 普段のカナメからは想像もつかない荒っぽい言動に驚いて固まっている真広の前で、服有さんは綺麗な所作で手をついてそこに額を載せるように頭を下げた。

「カナメの奴隷の義久と申します。本日はお招き頂き有り難う御座います。お二人の愛に触れられる事、誠に光栄でございます。僭越ながら、高久田様は緊張のご様子。私のような醜い奴隷で宜しければ、その緊張を解いて差し上げたく……」
「やり過ぎだっ」

 朗々と語るように自己紹介し出した服有さんに目を丸くしている間に、彼に真広の手を取られてそこに口付けられそうになっていた。慌てて俺が剥ごうとする前に、カナメに蹴られて服有さんがベッドの横側に頭をぶつけて呻く。

「なんだよっ! やれって言ったのはカナメだろ!?」
「自己紹介だけでいいんだよ! なんで高久田に奉仕しようとしてんだっ」
「しょーがないだろ! どうせ俺は『慣れて』んだから!!」
「何キレてんだあんたは!」

 喧嘩し出した二人に、真広がおろおろしているのは可愛いが、面倒くさい。
 パンパンと軽く手を叩くと、カナメと服有さんが動きを止めて俺を見た。

「すみません」
「悪い」

 二人同時に謝ってきて、雰囲気は少し壊れたが続行することにして真広の腕をとって、ベッドに腰掛けた俺の、膝の間に座るように促す。

「真広が緊張してるのはその通りですけどね。……どうする真広、服有さんにも、一緒に恥ずかしい事してもらう?」

 真広に決めてもらおうと訊ねると、カナメが露骨に嫌そうな表情をした。大丈夫だって、服有さんにはミリも興味無いから。
 真広は少し悩んだ様子の後、服有さんを見た。

「すみません……お願いしても、いいですか……?」

 一人だけなのは少し怖いです、という真広に、服有さんは困ったように笑ってから「分かりました」と頷いてくれた。
 この人、かなり慣れてる筈なのに急にカナメにキレだしたりして、根は結構じゃじゃ馬っぽいな。歴代彼女も気の強い子が多かったなぁとカナメの恋愛遍歴を思い出して、男なのにカナメの彼氏の座を射止めたのにも納得する。

「じゃあ、服有さんもカナメの方に座ってもらっていいですか」
「はい、潮島様」

 二組で同じように進行するのは、きっと真広が喜ぶだろう。そう思って服有さんに勧めたら、カナメがまた舌打ちした。

「……誰に様付けしてる」
「拗ねんなって、プレイ進まないだろ? ほら、たまには俺も可愛く従順にしてやるから。お前、好きだろ?」

 明らかに苛立つ様子のカナメが気になるようで、真広は楽しむどころか正面に座る二人が心配で体を強張らせている。
 今日のこのプレイを提案したのは俺だ。羞恥好きな真広に喜んでもらおうと嫌がるカナメに頼み込んだ事だったが、想像以上にカナメの嫉妬心が厄介だ。無理にでも始めてしまえば真広は流せるだろうが、このことが蟠りになってカナメと真広の友人としての仲が白けるのも避けたい。
 どうにかしてカナメを落ち着かせ、真広に気持ち良く羞恥プレイを楽しんで欲しいのだが──と考えていたら、目が合った服有さんが申し訳無さそうに目を伏せた。服有さんもカナメの手綱をとろうとしてくれているのは分かるが、どうにも難しらしい。
 服有さんは一度目を閉じて、それからカナメに視線を移して、悪戯っぽく笑った。

「カナメ。俺の、カナメの物だって証、高久田くん達に見せたい。いい?」
「……」
「今日ね、一番気に入ってるやつ着けてきたよ。この前カナメが買ってくれた、カナメの誕生石が入ってるやつ。自慢させて?」
「……勝手にしろ」

 服有さんは急に人が変わったように甘えた態度でカナメの膝の上に乗り、カナメの了承を得るとすぐに上着を脱ぎ出した。腰の辺りから持ち上げて、首からスポッと服を抜いてベッドに投げる。靴を脱いでカナメの膝の上で俺達の方に向き直り、その胸に付いたピアスを指で揺らして見せつけてきた。
 三センチ程もある長い乳首が垂れている様に、真広が息を飲んだ。乳首の先には、今言っていたカナメから贈られたであろう小振りのピアスが刺さって光っている。ピアスの重みで伸びているのでは無さそうだ。おそらく、時間を掛けて意図的に伸ばされたのだろう。
 俺から見たら醜いだけのそこも、カナメと服有さんにとっては互いの執着の証のようだ。嬉しそうにピアスを見せびらかす服有さんを、カナメは満更でもない様子で服有さんの腹を撫でている。

「えへ。これね、カナメが開けてくれたんだよ。俺はカナメの所有物だって、いつでも思い出せるように」

 いいでしょ、と舌っ足らずに喋るのは、カナメの趣味なのだろうか。真広と違って容姿も並の三十路男がそういう喋りなのは正直受け付けないので、知らず眉間に皺を寄せてしまったらしい。目が合った服有さんが申し訳なさそうに目を潤ませるのに、一瞬ドキッとした。泣き顔は良さそう、なんて考えてしまって、慌てて視線を逸らす。

「高久田くんも、脱いで?」

 服有さんに促され、真広もシャツのボタンを外し始める。ボタンの多い襟付きシャツを着るように指定したのは俺だ。これから脱ぐぞ、という緊張感は、今正に真広を辱めているだろう。一個、また一個と自らボタンを外す度、真広の息が荒くなっていく。こんな事で恥ずかしいなんて、本当に可愛い。

「可愛いなぁ、高久田くん。脱ぐの、恥ずかしい?」

 そろそろ言葉で虐めてやろうかというタイミングで、服有さんに先を越された。
 びく、と動きを止めた真広が、真っ赤な顔を上げて服有さんの言葉に頷く。

「そっか。じゃあ、ボタン外したら、ゆっくり脱いでね」
「えと……もっとゆっくり、ですか?」
「そう。ボタンは全部外した? じゃあ、シャツは脱いじゃって。……うん、で、その長袖、お腹からゆっくり捲って?」

 服有さんの言葉に、真広は素直に従う。ちょっと待て、なんで服有さんが。

「わあ、高久田くん肌綺麗だねぇ。お腹柔らかそう。でも太ってないし、すごく美味しそうな体だね」
「お、美味しそう……ですか?」
「うんうん。舐めたり噛んだりしたくなっちゃうなぁ。あ、そろそろ乳首見えちゃうね?」

 乳首が見えそう、と言われて、服を脱ごうとしていた真広の手が止まった。その頰が一気に紅潮したのを見て、顔には笑顔を貼り付けながら内心焦る。服有さんに言葉責めされている事に、真広は気付いているのだろうか。素直に従っているのが俺以外の命令だと、気付かないのだろうか。

「高久田くん、潮島くん以外の人に乳首見せた事ある?」
「無い……です」
「だよねぇ。じゃあ、触らせた事は?」
「無いですっ」
「赤くなっちゃって、かーわいい。……じゃあ、初めてだね。潮島くんにいっぱい可愛がられてる乳首、誰かに見てもらえるの」
「あ……っ、はいっ」

 俺の脚の間で、真広がぶるりと震えた。背後の俺を見上げて、だらしない顔で息を切らして笑いかけてきた。

「し、潮島……っ、僕、僕の乳首っ、見せてもいい……?」
「……見せたいの?」
「んん……、恥ずかしいのに、僕……っ、も、見せたくて、我慢出来なくて、ぇ」

 直前になって俺の許可を取ろうとしてきた真広に笑みが溢れてしまう。そうだよな、俺に責めて貰えるのが一番気持ちいいもんな。
 気を良くした俺に、カナメが横を向いて吹き出すのを堪えているのが視界に入る。服有さんが調子に乗るタイプなの、知ってて止めなかったなこいつ。勝手に人のパートナーにちょっかい掛けるなと文句を言ってやりたいが、このプレイ自体無理強いした手前それは飲み込んだ。
 それよりも、我慢させている真広を辱めてやるのが優先だ。

「先に、おっきくしてからの方がよく見えるんじゃない?」

 服を捲る前に指で弄って立たせたら? と唆したら、真広は泣きそうな顔で俯いた。いつもならしばらく悩んでからなのに、今日はすぐに自分の胸に指を持っていった。捲った服を親指と人差し指と中指で持ったまま、服に隠して薬指で直接突起を捏ね回して腰を跳ねさせる。

「自分で触って気持ちよくなってきちゃった? ここ、開けてあげようか?」
「や……っ、だめぇっ」

 乳首を弄る真広があまりに可愛くて、窮屈そうな股間を指で優しく叩いてやると、膝の中で高い声で啼いて大きく跳ねた。みるみるうちに青いデニムが濃い藍色に染まるのを見て失笑が漏れる。

「あー、あー……。もう出ちゃったの?」

 俺の呆れたような言葉に、真広がスンと鼻を啜る。泣き顔が見たくて覗き込むと、目は潤んでいるがその顔は嬉しそうだった。

「あっ、ご主人様ぁ、……どうしよう、僕、ほんとに、人前で……こんな」

 恍惚としたその表情に、ぞくりとした。羞恥プレイが好きなのは良い。良いけれど、……他の人間に、俺以外に見せる事に興奮するようになったらどうしようと、悪寒が走る。そんなのは駄目だ。許せない。
 無言で睨み下ろす俺に、惚けていた真広が気付いてみるみるうちにその瞳から涙が溢れた。ぼろぼろ、といつも以上の勢いで泣き出した真広に、驚いて慌ててその身体を抱き締める。

「どうした? 嫌だったか?」
「ちが……、僕じゃなくて、潮島が……、本当は、嫌なんじゃないか……?」
「俺が?」

 胸の内を見透かされたのかとギクリとするが、どうやら真広の言うのはそういう意味では無かったらしい。

「僕が、こんな……、見られて興奮するような変態で……っ、呆れるよな……」

 ぐすぐすと、今更な事で泣き言を言われて安堵していいんだか困ったらいいんだか分からない。そんな事無いと示す為に何度も真広の頰にキスして抱き締めるのに、一度泣き出した彼はなかなか泣き止む事は無い。
 中断してしまって申し訳ない、と今度は俺がカナメ達の方を見遣ると、二人は知った風な顔でニヤニヤと俺達を見ていた。

「お前、そういうヘキか……」
「こんな可愛いのに泣くまで虐めたいとか、結構鬼畜だなぁ潮島くん」

 バッと口元を掌で隠す。どうやら満面の笑みだったらしい。口の端がピクピクと痙攣して、下げたいのに上がったまま戻らない。クソ。

「これは、別に」

 思わぬ所で性癖バレしてしまって恥ずかしく、否定しようとしたら腕の中の真広が俺を見上げてまた悲しそうな顔をした。

「……? 泣かすの、好きじゃないのか? 僕はてっきり、君が好きでやっているんだと……だから、泣かされても良いと思っていたのに……」

 違ったのか、とまた大粒の涙が溢れたのを見てブンブンと顔を振った。

「好き。泣き顔、大好き。ごめん真広」
「ならいい。……潮島になら、虐められても、いいんだ」

 回した腕をぎゅっと掴まれて、心臓を掴まれたのかと思った。いや、とっくの昔に捕まっているのだけど。

「真広、可愛い、可愛い……」

 我慢が効かず、真広の耳に噛み付いた。痛くはしない。カリ、と微かに歯の先で擦るだけで、真広は震えて恍惚とした溜め息を吐いてくれる。

「ほら、真広、脱いじゃおうね」
「あ……」

 胸下まで脱いで止まっていたTシャツを後ろから俺が脱がすと、真広は所在無さげに腕をうろうろさせた。たぶん、女じゃないのに胸を隠すのも変かな、とかそういう事を考えているんだろう。

「出しちゃったんだから、下もね」

 デニムの方に手を掛けたら、真広が息を飲む。けれど、止めようとはしてこない。上がる息を噛み殺し、ごくゆっくりとベルトを外してボタンを開け、ジッパーを下げた。下着を掻き分けて真広の可愛い色の陰茎を取り出すと、「ひっ」と腕の中で小さく声を上げた。

「大丈夫。可愛いよ」
「や……、潮島、ほんとに? 本当に、するの……?」
「するよ」

 少し腰を浮かせてズボンを膝まで下ろすと、そこから足首までトサリと落ちた。足を抜きながら、真広が顔を赤くして正面で鑑賞の様相の二人に声を掛ける。

「あ、あの、服有さんも」
「え、俺も?」

 完全に自分の仕事は終わったような気でいたらしい服有さんは、カナメの膝の上で目を丸くした。

「だって、僕一人だけ全裸って、恥ずかしい……」

 人前でイッておいてそれを言うか、というのは黙っておく。カナメを窺うと、服有さんをぎゅうと抱き締めた。これ以上は無理だろうな。
 真広を嗜めようとしたら、カナメが服有さんのスラックスのベルトを外し始めた。服有さんも予想外だったのか、背後を振り返って動揺している。
 やけに真広を気遣うけれど、もしかして気があるんじゃないだろうな、と勘繰りそうになったが、すぐにそれは杞憂だと分かった。
 服有さんの半勃ちの陰茎を片手で掴んで取り出したカナメは、もう片方の手でそれを思い切り平手で打った。

「いっ」

 服有さんが呻き、腕の中の真広が硬直する。
 カナメは真広の反応なんてどうでもいいらしく、バチンバチンと容赦なく服有さんの急所を平手打ちした。見ているだけで痛いのに、当の服有さんは唇を噛んで俯いている。

「我慢してんじゃねぇよ」

 服有さんの反応が不服なのかカナメはまた舌打ちして、彼を立ち上がらせてベッドとベッドの間に向い合わせに立つと、服有さんの腹に膝蹴りを入れた。

「ぐ……っぅ」
「可愛い高久田に興奮したか? 勃ってんじゃねぇよクソマゾが、テメエが勃起して良いのは俺だけだっつったろうが」
「あぐっ」

 カナメの肩を掴んで呻く服有さんの腹を、カナメは膝で何度も蹴り上げる。
 真広の陰茎が俺の手の中でみるみる縮こまっていって、その可愛さにくにくにと揉んだ。

「え、えっ、や、潮島、これ止めなきゃ」
「違う違う。これ、こいつらのプレイだから大丈夫」

 暴力に怯える真広の顔も可愛い。殴る蹴るは趣味じゃないけれど、お仕置きが必要になったら平手打ちのフリくらいならアリかもしれない。想像してニヤつく俺を信じられないみたいに見て、真広は目の前のカナメと服有さんを見上げる。
 服有さんだって、嫌ならカナメの肩を掴む手で彼を突き飛ばす筈だ。カナメがフラつく服有さんの胴を掴んでいるのも、逃げられないようにしているんじゃなく、危険な場所に当てない為だろう。だいぶ形は歪だが、彼らなりのプレイなのだと真広の耳元で教えると、しかし真広はまだ半信半疑みたいに眉を下げた。
 このままだと、真広の気持ちが萎えて続行が難しいかもしれない。

「……カナメ、真広が怖がってるから、それくらいにしてやって」

 俺が声を掛けると、カナメはやっと服有さんの顔からこちらへ視線を移してきた。少し思案してから、服有さんへ「座って」と指示を出す。ずるずるとその場にへたり込んだ服有さんの息は荒く、いつもは姿勢の良い背筋が猫背に曲がっていた。

「声出せ」

 カナメに頭を撫でられた服有さんの表情は、こちらからは見えない。俯いたまま首を横に振る彼の陰茎を、カナメが靴のまま踏み潰した。

「……う、ぁ」
「可愛こぶってんじゃねえ。テメエにそんなもん求めてねぇんだよ」

 ぐち、ぐち、と肉を踏む音が部屋に響く。服有さんも限界なのか、カナメの膝に縋って何度も首を振っては小さな声で「やめて」と呻いている。
 さすがに痛そうで目を逸らして真広を抱き締めるのに、真広の目は服有さんに釘付けのようだった。何故だか、俺の手の中の真広が大きくなってくる。

「やぁ、あ、カナメ……っ、やだ、も….っ」
「ヤダじゃねぇんだよ、さっさとイけ」
「い……ッ、あ、あぁぁっ」

 一際強くカナメが服有さんの肉を踏むと、高い悲鳴が上がった。
 病院沙汰じゃないだろうな、と心配になるのに、カナメはちょいちょいと指を動かして真広の視線を誘導し、少し横にずれて床を見せた。暗い色のフローリングに、白濁の水溜まり。
 ……今、踏まれてたよな?
 俺が若干引くのに、真広は口に手を当てて「ふあ」とか可愛い声を出した。なんだよふあって。

「ご……ごめん、高久田くん、心配させて……」

 息を荒げてこちらを振り向いた服有さんは、間違いようもなく快楽に浮かされた表情をしていた。カナメは見せたくないみたいにすぐに服有さんの頭を掴んで自分の方へ向かせてしまったけれど、その顔で床の白濁が間違いなく精液だと知れた。

「いえ、あの……」

 真広が返事に迷うのに、服有さんが涙声で「ごめん」と被せる。

「変なもん見せて、怖がらせてごめん。今日はする気無かったのに、……ごめん」

 服有さんはカナメの膝に顔を押し付け、泣くのを堪えているようだがその声は悲痛だ。人前でするのに抵抗があるタイプには見えなかったが、何がそんなに悲しいのか。
 困ってカナメを見るのに、カナメは服有さんを見下ろして頭を撫でたまま、こちらを見ようともしない。

「あの、服有さん」
「ごめん……」
「大丈夫です。引いてないです」

 真広は服有さんが泣く理由が分かるのか、ハッキリとそう言った。カナメが顔を上げて、真広を見て嬉しそうに口角を上げる。

「……気を遣わせてごめん……」
「違います。ほんとに引いてません。……こっち、見て下さい」

 まだ謝る服有さんに、真広は根気よく話しかけた。
 いつの間にか、俺の手の中の真広の陰茎は一番大きいところまで育っていた。服有さんの視線を呼んで、真広は恥ずかしそうにそれを見せる。

「服有さん、とっても気持ち良さそうだったので……」

 口元を手で隠しながら顔を赤くする真広は、たまらなく可愛い。
 真広の素直な部分の反応を見て、服有さんが少し呆けて、そして嬉しそうに笑った。

「……高久田くんの可愛さ、やっばいなぁ」

 そうだろうそうだろう。大いに頷くと、カナメだけが肩を竦めた。

「そろそろ限界なんだけど?」

 自分の股間のジッパーを下げながらカナメが言うのに、服有さんが慌ててカナメから離れようとしたが、あえなく捕まっている。

「かっ、カナメッ、それは、それは本当に無理っ!」
「一回イくとこ見られたんだから二回も十回も同じだろ」
「全然違うし、ってか十回って何だよ回数の飛び方おかしい……!」

 ベッドに引き倒され、下肢を剥かれた服有さんを見て真広が反応した。カナメが服有さんの窄まりに唾を垂らし、指を挿入れるのを食い入るように見ているのを耳元で揶揄ってやる。

「俺たちもしよっか、真広」
「へ……」
「ほら、おっきく脚開いて」

 カナメ達に見えるようにM字開脚させると、真広は俺を見上げて目を潤ませた。手を伸ばしてヘッドボードの中からローションの小袋を取り出し、封を切って窄まりに垂らした。指で縁をなぞると、それだけで真広は小さく喘ぐ。

「カナメ、お前も服有さんばっかじゃなくて真広も見てやってよ」

 うつ伏せの服有さんの後ろから、既に二本も指を入れて中を掻き回しているカナメが、俺に呼ばれて不本意そうに真広を見る。そういう顔するなよ、真広が泣くだろ、と思ったら、傷付いたらしい真広が早速涙ぐむ。カナメはじっと真広を見て目を細め、にぃ、と唇を弧にした。

「いい格好だな、高久田」
「……っ!」

 真広が大きく震え、陰茎の先から少し溢れてくる。カナメの言葉に感じるのは気に喰わないが、カナメに泣かされる真広を見るよりはマシだ。泣かすのは俺だけでいい。

「あんたも見せてやれ」

 指を入れられてぐったりしていた服有さんを軽々と持ち上げて、カナメは俺達を真似るように、しかし背面ではなく対面するように膝の上に大股開きで服有さんを乗せた。カナメに抱き着いた服有さんは、狭間にカナメの先端を感じただけで大きく喘ぐ。

「や、あ、ぁ」
「俺のが入るとこ、見て貰え」

 唾液と指で少し解しただけの服有さんの窄まりに、カナメはその剛直を押し当てて腰を下ろさせる。

「やだ……っ、見るなぁ……!」

 控えめに叫びながらも、服有さんのソコはカナメの肉を飲み込んでいく。ボロボロと涙を流しながら嫌がって頭を振るのを見て、少しグッときてしまった。正面から泣き顔を見たかったな、とごくりと唾を飲んだのを気付かれて、真広に睨まれる。

「……潮島」
「あ、いや、もちろん真広が一番だよ?」
「ばか。……僕も、早く」

 指が疎かだぞ、と叱られて、堪えきれず俺も自分の股間を緩めた。下着から先を出して、真広の脇を下から持ち上げて窄まりに充てがう。真広がひゅっと息を飲んだ。

「ま……待て、まだ指すら」
「俺ねぇ、えっちしてる時に真広がその喋り方するの嫌いなんだぁ。だからお仕置きね?」

 真広の体を支える手から力を抜くだけで、自重で俺の陰茎が真広の中に入っていく。ぐぐぐ、と押し開く感じがたまらない。ぬるぬるした中が俺に纏わり付いて、柔らかく迎え入れて奥へ誘う。真広のココは、真広そのものみたいだ。初めは頑なに閉ざしているくせに、中に迎えると途端に甘やかしてくれる。

「あ、あ……っ、ごめんなさいっ」

 真広が可愛い声で謝ったのを、カナメに串刺されて放心していた服有さんが心配そうに見た。あー、マゾ同士が心配し合ってるの、可愛くていいな。

「だいじょーぶだよ、服有さん。真広のごめんなさいは、気持ちいいですって事だから」

 俺がにっこり笑って教えると、カナメが目を細めて笑う。

「……ほんと良い趣味してるよ、お前」
「ん? 真似する? いいよ、可愛いよ、ごめんなさいって言いながらイくの」
「俺の趣味じゃねぇ。……おら、そろそろ動け」

 いつまで呆けてるつもりだ、と服有さんの太腿を叩いて、カナメはまた真広から服有さんへ視線を戻した。服有さんはカナメの首に腕を回して不満そうに唸っているが、その腰はもう待ちきれないみたいに揺れている。カナメに尻を叩かれると、奥に押し付けるみたいにねっとりと腰を動かし出した。

「真広も、ほら、動いて。カナメに、えっちなとこ見て貰いたいでしょ?」
「ぁっ、はい……っ」

 真広の耳元で囁くと、真広は俺の太腿に手をついて、自分で抜き挿しし始めた。M字に大股開きのまま、腰を上下させて俺の陰茎を小さなアナルで飲み込んでいる様子は、さぞ淫猥だろう。自分で見られないのが残念だ、と思っていたら、カナメと目が合った。

「……撮るか?」
「え、いいの? やってやって」

 履いたままだった尻ポケットから俺のスマホを渡すと、カナメはちょいちょいと弄ってすぐにこちらにカメラを向けてきた。ペコン、と動画の撮影が始まった音に、夢中で腰を振っていた真広が気付いて胸を反らした。背筋が震えて、俺を一際締め付ける。

「はい真広、カメラの方見て笑ってー」
「あっ、やっ……あ、あんっ」
「撮られ始めたら急に声出るようになったね? 可愛い声であんあんしてるの、後で一緒に見ようね」
「あっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
「可愛い、何がごめんなさいなの?」
「えっち、えっちしてるの撮られるの、嬉しいですっ、ご主人様のが僕に入ってるの、いっぱい撮ってほしくてっ、気持ちいいのっ」
「うん、じゃあ、中に出して、中から出てるとこも撮ってもらおっか」

 きゅうきゅうと締め付けてくる真広をベッドのスプリングの反動で下から穿ってやると、快楽に浮かされて馬鹿になった真広は大きな声で強請ってくれる。可愛い、とてつもなく可愛い。
 今まで俺だけしか知らなかったけれど、もうカナメと服有さんが証人だ。真広は俺の奴隷で、こんなに俺を愛している。真広が今後どれだけ否定しようと、この二人が知っているし、録画までされている。いつまでだって、これで真広を脅せる。
 暗い悦びに笑うと、カナメが目を細めた。その目が、人の事言えないだろ、と言っている気がする。

「ご主人様っ、僕の、僕の中に出してっ」
「いっぱいあげるよ、真広」

 ごちゅごちゅと腰骨とぶつかる音がする。常に無い勢いで腰を振る真広に、それだけ興奮しているのが分かって嬉しい。

「あ、あぁ、あ……っ」

 俺が出すタイミングで真広を抱き締めて奥へ叩き付けると、真広も陰茎から精を吐いた。宙を飛んだ精液が、ぱたぱたと音をさせて床へ落ちる。

「……ありがとう、ございます」

 真広が腹を撫でて謝意を示すのを聞いたカナメが、ヒュウと口笛を吹いた。

「それ、いいな」
「真似していいぞ」
「義久、あんたも言って」
「……やだっ」

 真広に夢中で気付かなかったが、どうやらカナメは先に服有さんの中で果てていたらしい。スマホを持つ手はそのままで、器用に服有さんの額にキスしている。

「義久」
「やだ」
「お願い」

 二人を見ていると、どっちがご主人様なのか分からない。奴隷に強請るカナメに呆れていると、真広がゆっくりと腰を上げていく。

「カナメ、ちょっとこっち寄って撮って」
「ん」

 中から垂れてくるのを撮ってくれ、と言うと、カナメは服有さんを抱きかかえたまま前のめりになってきた。反射的にカナメに抱き着いた服有さんが、小さく呻く。

「……ほい」
「さんきゅー」

 ペコン、と撮影を終了した音がして、カナメからスマホを返された。家に帰ったら真広と見ながらもう一回しよう。
 思わずニヤつくと、何故か真広が口を尖らせて拗ねた顔をしていた。

「真広?」
「……潮島、服有さんばっかり見てた」
「は? 見てないよ?」

 完全な濡れ衣に、慌てて否定するのに真広はさっさと立ち上がってシャワーを浴びに行ってしまう。追い掛ける俺の後ろから、カナメと服有さんの苦笑が聞こえた。











 大学入学後、すぐの頃だった。
 写真家になるのが夢でーす、なんて言って一眼見せると顔覚えられない易いから、ただそれだけの冗談として言っていただけだったけれど。
 「なら、高久田くんはライバルだねぇ」なんてある教授に言われて、妙にその苗字が気になってネットで検索したら、俺が写真を始めたきっかけの彼だった。今も撮影を続けていて、記憶にあった写真よりもっとずっと綺麗な写真をSNSにアップしていたから、即フォローして片っ端からハートを押した。たまにアップされている自撮りが美少年過ぎて、神は二物も三物も与えるもんなんだなぁと、見惚れながらそれを保存した。
 同じ大学にきていた事に驚き喜んで、彼を探した。
 さすがに本気の彼を前に写真家を目指しているなんて冗談は言えなくて、でも彼の写真が好きだという事くらいは伝えたかった。
 しかし。学内で見つけた彼に声を掛けて、「あなたの写真が好きです。俺も趣味で写真を撮ってて……」と言っている途中で、「そうですか」とだけ言って、こちらも見ずに去られてしまったのだ。
 自撮りで想像していた、可愛らしい彼では無かった。素っ気なく、無感情。それ以後も学内で見掛けはしたが、彼は誰とも親しくなりたくないようだった。あんなに綺麗な写真を撮る人なのに中身は冷血漢らしい。
 それ以上声を掛ける勇気も無く、しかし俺が写真を趣味にしていると言うだけで彼の名前が出てきた。繰り返し繰り返し、うんざりするほど。
 フォローしたSNSに新作がアップされる度、綺麗だ、という思いと、冷たい顔が思い出されて胸がざわついた。次第に綺麗な写真にすら虫唾が走るようになった。あんなに冷たい男が綺麗な写真を撮れるなんておかしいと、完全に妬みが俺の中で増長していった。友人でも無ければ知り合いでも無かったから、尚更だったと思う。

「お前、高久田くんの写真けなしてたんだって? だからお前が苦手なんだ、って言ってたぞ」

 カナメにそう言われた時、頭が真っ白になった。
 いつ、どこでの話だか、心当たりが有り過ぎて苦しくなる。冷めているように見えて、表情に出ないだけで傷つき易い彼は、どんな気持ちで俺の戯言を聞いていたのか。
 嫌われていても仕方がない。
 だから、寄らなかったのだ。寄り添ってまた冷たく拒絶されたら、立ち直れないから。
 我ながら臆病が過ぎていたと反省するしかない。
 どんなに怖くても、話してみなければ前には進めないのだと学習した。筈、なのだけれど。

「あの、真広」
「なに」
「夕飯、どっか食べに行く?」
「今日は生姜焼き。仕込んであるからあとは焼くだけだ」
「そっか」
「うん」

 カナメに頼んで4P……いや、あれは2ON2と呼んだ方が近いかもしれない。あのプレイをしてから、ずっと真広の機嫌が悪い。無視されるとか、喧嘩腰だとかでは無いのだけれど、なんとなくこう……、冷たい。
 解散する前はカナメと服有さんには笑顔で挨拶していたのに、帰宅してからせっかく録画してもらった動画も見ずに「疲れたから」と寝てしまっていた。
 何が理由なのか聞こうにも、責める程の態度をとられた訳でもない。

「……ぎゅってして、いい?」
「今、編集してるから」

 タブレットで写真の編集をしているのは、横に座っているから見えている。だから、邪魔にならないように後ろから抱き締めるだけでも、と思ったのだけれど。まただ。断られてはいないけれど、遠回しに嫌がられている気がして喉の奥が重くなる。

「邪魔しないから……」

 少しだけ、と真広の背中に手を伸ばしたら、こちらを見た真広の眇められた目に動けなくなってしまった。両思いのはずなのに、触れるのが怖い。こうならないように、動画にまで撮って残したのに。
 奥歯を噛んだ俺に、真広がふぅと溜め息を吐いた。やめてくれ。真広に冷たくされるのは、怖い。またあの、会話すらまともに出来ない関係性に戻るのは嫌だ。

「……僕じゃなくてもいい癖に」
「え?」

 小さく呟いた言葉が聞き取れず、間抜けな声が出た。訝しむ俺に、怒った顔になった真広がもう一度、今度はハッキリと言う。

「僕じゃなくてもいいんだろう、潮島は。だったら、そんな風に好きなフリなんてしないでくれ。僕は、……僕だけが特別だと、勘違いしていた。もう勘違いしたくないから、君も勘違いさせるような言動は謹んでくれ」

 何を言っているのか。真広が特別じゃなければ、誰を特別だと思えというんだ。

「真広だけだよ?」
「嘘をつけ。服有さんの泣き顔に興奮していただろう」

 怒っても泣くのか、真広の目が潤むのを、こんな時なのにキュンとしてしまう。それに勘付いた真広が、さらに怒って俺の両頰を指で引っ張った。

「ほら、その顔だ! 嬉しそうに笑って。泣いていれば誰にでも興奮するんだろう!」
「いで、ででで。だって、だって真広、そりゃ性癖ってやつで」
「認めたな! 浮気者!」
「えええぇ~……」

 まさかそんな事で怒られるとは思っていなかった。泣き顔に興奮するなって言われても、してしまうからSMやってるわけで。

「真広だってカナメに見られて興奮しただろ?」
「それは……っ、だって、君とのえっちだからで! 白田としたいとは思わない!」
「服有さんに言葉責めされて興奮してたよな」
「してない」
「してた」
「してない」

 涙目の真広と睨み合う。
 テーブルの上で握った真広の拳が震えているのを握ってやりたいけれど、それをして振り払われたらと思うと出来ない。付き合っているのに、なんでこんな怖い思いをしなきゃならないんだ。

「真広だって、女の子の裸見たら勃つだろ」
「勃たない」
「真広、今自分が何言ってるか分かってるか? AV見て勃起すんなって言ってる馬鹿な女と同じだぞ?」
「……そう言ってるんだよ」

 はあ? と心底呆れて鼻で笑うと、みるみる真広の目に涙が溜まって、だけれどそれを見せたくないみたいにそっぽを向かれてしまった。

「まひ……」
「やめろ。君に見せたくない」

 目の前がカッと赤くなった。俺に見せたくない? 俺じゃなく、じゃあ誰にその顔を見せるつもりだ。真広は俺だけの物だ。彼の二の腕を掴んで、無理やりこちらを向かせた。唇を噛んで涙を堪えるその顔に、口付けたい衝動が湧いて顔を寄せると真広は暴れて俺を蹴った。

「痛ってぇな!」
「好きなだけ他の奴で勃起していろ! 僕はもう君とはしない!」
「は……?」

 駄目だ、と思うのに、手が勝手に真広の喉を掴んでいた。
 俺としない、って。つまりそれは、俺を捨てるってことか。

「出来るわけないだろ」

 喉を緩く絞められて呻きながら俺の指を剥がそうとする真広に、ことさら優しく語り掛けてやる。

「なあ、今まで何枚写真撮ったと思う? ケツに指だのチンポだの咥え込んで喜んでるのも、この可愛いお口でチンポ舐めてるのも、いっぱい撮ってるんだよ? ほら、この前なんて動画も撮ったね? 生中出しされてる真広の顔出し動画、ネットにアップしたらどうなっちゃうかな?」
「な……、君はまさか、そんなつもりで」

 別れるなんて許さない。ハメ撮りした大量の写真と動画を人質に、俺は真広の顔を覗き込んで笑った。

「真広は俺だけ見てればいいんだ」

 やっと手に入れたんだ。誰にも渡さない。
 ちゅ、と鼻の頭にキスしたら、とうとう真広は泣き出してしまった。可愛い真広。可哀想な真広。

「どうして……」
「どうしてって。好きだからだよ」

 それ以外に理由なんて無い。好きだから、別れるなんて許せない。俺以外の物になるなんて許さない。
 しゃくり上げて泣く真広が、「ばか」と俺の胸を叩いた。

「僕が好きなら、僕以外で興奮するなよっ」
「だからそれは……」
「嘘でも分かったって言えないのか! 本当に、本当に……っ、僕を不安にさせて、僕ばかり泣かせて……! 本当に嫌なやつだ、君は!」

 握った拳で俺を叩く真広は、俺が告白したあの日と重なる。不安って、何がだ。俺はずっと真広だけを好きなのに。喉を絞める指を緩めると、真広が咳込んだ。それを見てやっと、自分が何をしていたのか気付いた。

「あ……、ご、ごめん真広、苦しかった?」
「苦しかったか? 君は馬鹿か、君の首も絞めないと分からないのか!?」
「ごめん……」

 首を絞めるつもりなんて無かったと言う俺を、真広は睨み上げてまたそっぽを向いてしまう。当たり前だ。さすがに怒らせても仕方ない。
 カナメのように表に出さないよう、必死に抑え込んできたのに。この強過ぎる感情を見せたら逃げられてしまうのは分かりきっていたから、奥底にしまっていたのに。別れると言われて動揺してしまった。

「ごめん、真広。しばらく近付かないようにするから、別れるとかは……」

 考え直してくれ、と言おうとしたら、真広がその瞳を大きく見開いて固まっていた。

「別れる……だって……?」

 ぼろ、と涙が溢れる。いつもなら嬉しい筈の彼の涙が、今は見るのが辛い。

「君は、えっちできなければ、僕なんて必要ないっていうのか」
「な、違うっ!」

 真広の勘違いに驚いて否定するのに、彼は俯いて静かに瞬きした。落ちた涙が、彼のデニムの膝を黒く染める。
 どうしたらいい。どうしたら、この涙を止められる。
 泣かせたいと思っていたのに、泣かせたくなんてなかった。傷付けたくなんて無い。こんな辛い喧嘩したくない。

「……しない」

 嘘だとしても、言うしかない。言えば真広の涙が止まるなら。

「もう、他の奴が泣いてても興奮したりしないから。だから、俺とえっちしないなんて言わないで」

 真広の肩を掴んで、縋っていた。お願いだから、と見つめたら、真広が驚いたようにポカンと口を開けて、それから困ったように眉尻を下げて笑った。

「……泣くほど辛いかい?」

 目が熱いと思っていたら、俺まで泣いていたらしい。俺の目尻の涙を指で拭って、真広が肩を竦める。

「君の気持ち、全く分からないね。好きな人を泣かせるなんて、僕はごめんだ」
「真広……」
「つまらない我儘を言って悪かった。自分でも言うべきじゃないと分かってたんだけど……すまない。忘れてくれ、というのは無理だな。今夜にでも好きなだけえっちしてやるから、泣かないでくれ」

 少し頭を冷やしてくる、と真広は立ち上がって部屋から出て行こうとした。
 なんで。俺が泣かせたのに、なんで真広に謝らせてるんだ?

「ごめん、違う、真広。悪いのは俺で」
「いいや、僕が拗ねてたのが悪いんだ。難しいな、付き合うっていうのは……」

 苦笑する真広の腕を掴もうとして、するりと逃げられて目の前が真っ暗になる。ダメだ、足りない。まだ言葉が足りてない。

「俺が泣かせたいと思うのは、真広だけだ。そりゃ他の奴でも泣き顔見れたらラッキーって思うけど、俺の為に泣かせたいのは、真広だけだよ。パンチラと同じだ」

 部屋から出て行かせないように、何か言わなくちゃと思って出てきた俺の言葉に、真広が振り向いて噴き出した。

「なんだそれ」
「通りすがりの知らない子のパンチラはラッキーだけど、だからって自分でスカート捲りたいとは思わないだろ。俺だけに見せろとも思わない。真広だけなんだ、俺は。それだけは信じて」

 俺の言い訳がよほど必死だったのか、真広はくつくつと笑いながら戻ってきて俺の頭を抱き締めてくれた。真広の掌が髪を撫でるのが、震えるほど嬉しい。

「……本当?」
「ほんとのほんと」
「なら、いい。まあ、……偶然のパンチラに嫉妬してもしょうがないもんな」

 でも、自分から泣かせてると判断したら怒るからな、と睨まれて、ありえないと首を振った。

「しないよ、そんな事」
「今は信じてやろう」

 撫でてくる真広から体を離して、彼を見上げる。その眦にはまだ涙の跡がある。酷いことをした。二度とこんな理由で泣かせない、と心に誓う。
 腕を広げて、おそるおそる聞いた。

「ぎゅってして、いいですか」
「いいですよ」

 俺が抱き締める前に、真広の方から抱き締めてきた。真広の匂いがして、心拍数が上がる。喧嘩なんて嫌だ。こうしてずっと仲良くしていたい。

「喧嘩するのは……嫌だな……」
「俺も、そう思ってたとこ」

 同じ事を考えていたと聞いて、少し嬉しくなる。ぎゅうっと強く抱き締めたら、「痛い」と苦情が出たが。

「でも、真広の言いたいこと我慢してほしくない」
「……じゃあ、次は喧嘩にならないように……言い方を考える」
「俺も、返事はちゃんと考えてからにする」

 二人で反省して、それから仲直りに、とキスをした。

「……なんだか、恋人っぽいな」
「そうなんだけど?」

 顔を見合わせて、馬鹿馬鹿しさに笑ってしまった。
 もう一度、強く抱き締める。
 喧嘩になってしまったけれど、話し掛けるのは、もう怖くない。一歩前進。
 少しずつ進んでいけばいい。きっと俺たちは、そうやってしか進めない。


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