【R18】無能王子の傀儡計画 怠惰に寵姫たちと暮らしたいだけです

白鷺雨月

文字の大きさ
37 / 44

第三十七話 イザベラ・レノーア伯爵夫人

しおりを挟む
 レイシャン王国のイザベラ・レノーア伯爵夫人の領地は南方にあり、元ハルトムート公爵領と接している。
 ハルトムート家がエルディア王国の北方守護を任せられている様にレノーア家はレイシャン王国の南方守護を委任されている。
 セリーナはそのレノーア家当主のイザベラを調略しようと提案した。
「私に策がございます。シオン殿下が協力していただければ必ずやイザベラはこちらにつきます」
 自信満々にセリーナは言う。
 僕はセリーナの策に乗ってみようと思う。
 イザベラという人物を味方にできたなら、現在北方を守る黒騎士ロシュフォールの牽制となる。
 シリウス王に対して戦力の劣る僕たちは戦略で対抗しなければいけない。
 この策はぜひ成功させたいところだ。

 翌日、僕たちは大森林奥にある転移魔法陣に向けて出発した。同行するのはセリーナとエルクである。
 僕は愛馬オリオンに乗り、セリーナはエルクと共にヘラクレスに乗る。
 大森林の道案内はアルベルトに頼んだ。
 大森林は迷宮に等しく、猪牙オーク族か土鬼ドワーフ族の案内がなければすぐに道に迷う。
 転移魔法陣は銀竜山脈の麓にあり、旅程は約二日ほどだ。
 一日目の夜にアルベルトの村で休んだ。
 アルベルトの村の住人から僕たちは歓待を受けた。狩りの獲物を村人に分け与えていたことに感謝された。悪い気はしない。
「ところでヒルダはお役に立てていますかな?」
 夕食時にアルベルトにそう尋ねられた。
 ヒルダことヒルデガルトには世話になっている。ヒルダは料理上手しかも巨乳だ。
 その巨乳を使ってのパイズリはとても気持ちいい。
「ええとてもお世話になっています。とくにパイ……」
 これはまずい。
 ヒルダの巨乳でパイズリしてもらったことを思い出していたら、父親のアルベルトに言ってしまうところだった。
「パイ?」
 アルベルトが不思議な顔をしている。
「ヒルダのミートパイは格別です」
 どうにか取り繕う。
「わが娘は料理が得意ですからな」
 にこやかにアルベルトは微笑む。
 隣のセリーナがいつもの妖艶な笑みを浮かべていた。

 アルベルトの村を朝早くに出て、昼過ぎにはその転移魔法陣があるという祠に到着した。
 そこにはジュピターが待機していた。
 どうやらスノウ・ホワイトから応対を命じられていたようだ。
「殿下、私も連れて行ってください」
 僕はそのジュピターの申し出を受け入れた。
 好奇心の強い彼は外国を見てみたいのだという。
「いいよ、ジュピターも一緒に行こう」
 僕はこのオタク気質のある土鬼ドワーフを気に入っている。僕の数少ない男友達だ。

 オリオンとヘラクレスをアルベルトに預けて、僕たちは祠に入る。
 馬が転移魔法陣で転移できないのは欠点だと思う。
 
 祠の中にはあの王城地下で見た魔法陣と同じものが床に刻まれていた。
 僕たちはその魔法陣の中央に進む。
 次の瞬間、視界が光に包まれる。
 目が眩しさから癒えたころ、視界にうつるのはまるで違うものだった。石造りの部屋だ。
 その部屋の端に一人の女性が立っていた。
 上半身は鉄鎧で下半身は白いスカートという姿だ。
 赤毛の背の高い美人だ。
 目元のほくろがセクシーだ。
 腰に長剣ブロードソードをぶら下げている。
「貴君がエルディアのシオンか?」
 そう訊かれた。
 敬称をつけずに呼ばれるのは母親のクラウディアに会ったとき以来だな。
 僕はそうだと答える。

「お久しぶりです。イザベラ様」
 セリーナが丁寧に頭をさげる。
 警戒したエルクが僕の真後ろにたち、背中の戦斧に手をかける。
 どうやら目の前の人物があのイザベラ・レノーア伯爵夫人ということか。
 年齢は恐らく三十代後半だろうか。落ち着いた雰囲気の美人だ。
 でもこの声とこの顔、見覚えがあるな。
 
「どうした、人の顔をじろじろ見るのは失礼ではないかね」
 イザベラは僕を睨むように見る。次に不敵な笑みを浮かべる。
 その笑みを見て僕はある人物を思いだした。
 淫夢の魔女リリムだ。
「リリム……」
 僕は思わず口走る。

「そうです。イザベラ様はリリム様の末裔なのです。そして我が夜の教団の女司祭プリーステスの一人でございます」
 うふふっとセリーナはあの妖艶な笑みを浮かべる。
 なるほどそのつながりがあるから、イザベラは調略に応じるとセリーナは踏んだのか。

「シオン、あなたのことを試させてもらう」
 僕の手を掴むとイザベラはどこかに連れていこうとする。
 エルクがイザベラの手を引き剥がそうとするが、それをセリーナは止めた。
「シオン殿下、あとは貴方様におまかせいたします。イザベラはある条件を提示しました。その条件をかなえられるのは王子殿下のみです」
 エルクの手を止めながら、セリーナは真剣な顔でいう。
 その様子を興味津々な顔でジュピターは見ている。


 僕はイザベラに手を引かれて、その部屋を出た。
 どうやらここはイザベラが城主をつとめるレノーア城の地下だということだ。
 魔法陣の部屋を出て、廊下を手を引かれて歩く。
 僕は別の部屋に連れていかれた。
 そこは質素で広い部屋だった。
 大きなベッドが真ん中に置かれ、壁のまわりには明かり用のランプがいくつかかけられている。
 それだけの部屋だ。

 イザベラはばきばきと鎧の留め具を外していく。
 白いワンピースのような服だけになる。
 腰の長剣をベルトごと壁掛けにかけた。
 イザベラは固い手のひらで僕の頬を掴む。
 エルクのように剣を握り続けた人間の手だ。
「私は十五歳でレノーア家に嫁いだ。嫁いですぐに夫のダミアンは戦死した。それ以来二十年、私は夫にかわりこの地を守ってきた。私はまだ女としての悦びを知らない。セリーナはシオンならばそれを教えてくれると言った」
 突如、秀麗な顔が近づき唇が重ねられる。
「私に忘れられないものを体験させたなら、味方になってやろう」
 僕はイザベラに唇を噛まれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

処理中です...