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第二十話 手だけの幽霊
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午後八時に僕は自宅マンションに帰宅した。
僕のマンションの部屋の間取りは1LDKで、典型的な独身者向けだ。
仕事で疲れた体を引きずるようにして、部屋に入る。
そして僕は部屋の中を見て、驚愕した。
驚きすぎると悲鳴はでないのだと僕はこのとき、初めて知った。
僕は喉から空気だけを吐き出す。
リビングのちいさなテーブルに何か白いものが二つ置かれている。
それは両の手だった。
細くて、美しい女の手だった。
手首から指先までの手であった。
僕は何故かその手の指の数を数えた。
当たり前だけど、ちょうど十本ある。
その女の手は指を広げた状態で、テーブルの上に置かれていた。
どうしてこんなものが、僕の部屋にあるのだ。
疑問が脳内を駆け巡るが、答えなど出るはずもない。
僕が困惑しているとその手はゆっくりと動きだした。
アダムス・ファミリーでこんなシーンを見たことがある。
手は物理法則を無視し、空中に浮く。
手は何かをつかむ形をとる。
それは鉛筆を持つポーズだと思われる。
僕は仕事用のカバンからメモ帳とボールペンを取り出し、恐る恐るテーブルに置く。
その白く、美しい手はボールペンを握るとメモ帳になにやら書き出した。
そこには「美優紀《みゆき》」と書かれていた。
「あなたは美優紀という名前なのですか?」
僕はその女の手に聞いた。
思ったよりも冷静な自分に驚く。
そうです、とメモ帳に書かれる。
手だけなのに、僕の声が聴き取れるのは不思議だ。
それが怪異である証明なのかもしれない。
「僕は田中孝宏《たなかたかひろ》といいます」
僕は手に自己紹介した。
このあまりにもふざけた状況に笑いがこみ上げてきた。
今のところ、この女の手には敵意とか害意はないようだ。それはこの手が女のものだから、僕はそう思ったのかもしれない。
この手が男のものだったら、僕は全力で排除したに違いない。
この両の手は、僕の警戒心を解くぐらいには美しかった。
田中さんにお願いがあります。
美優紀を名乗る手はさらさらとメモ帳に文字を書く。書道の先生なみの達筆だ。
「な、なんでしょうか」
僕は美優紀に聞く。
この手に出会ったばかりなのに、普通に会話している。いや、この場合は筆談といった方がいいか。
私はこの世に未練があり、こんな姿になりました。どうか、あなたの所に置いてくれませんか。
さらさらとメモ帳に文字が刻まれていく。
表彰状の文字ぐらいに綺麗な字だ。
僕は美優紀の手をじっと見つめる。
その手は、手だけのモデルとしても通用するぐらいには美しかった。
手フェチというわけではなかったが、この手を見ているうちに新しい性癖が目覚めるのを自覚した。
「わ、わかった……」
僕と美優紀の同居生活がこうして始まった。
僕のマンションの部屋の間取りは1LDKで、典型的な独身者向けだ。
仕事で疲れた体を引きずるようにして、部屋に入る。
そして僕は部屋の中を見て、驚愕した。
驚きすぎると悲鳴はでないのだと僕はこのとき、初めて知った。
僕は喉から空気だけを吐き出す。
リビングのちいさなテーブルに何か白いものが二つ置かれている。
それは両の手だった。
細くて、美しい女の手だった。
手首から指先までの手であった。
僕は何故かその手の指の数を数えた。
当たり前だけど、ちょうど十本ある。
その女の手は指を広げた状態で、テーブルの上に置かれていた。
どうしてこんなものが、僕の部屋にあるのだ。
疑問が脳内を駆け巡るが、答えなど出るはずもない。
僕が困惑しているとその手はゆっくりと動きだした。
アダムス・ファミリーでこんなシーンを見たことがある。
手は物理法則を無視し、空中に浮く。
手は何かをつかむ形をとる。
それは鉛筆を持つポーズだと思われる。
僕は仕事用のカバンからメモ帳とボールペンを取り出し、恐る恐るテーブルに置く。
その白く、美しい手はボールペンを握るとメモ帳になにやら書き出した。
そこには「美優紀《みゆき》」と書かれていた。
「あなたは美優紀という名前なのですか?」
僕はその女の手に聞いた。
思ったよりも冷静な自分に驚く。
そうです、とメモ帳に書かれる。
手だけなのに、僕の声が聴き取れるのは不思議だ。
それが怪異である証明なのかもしれない。
「僕は田中孝宏《たなかたかひろ》といいます」
僕は手に自己紹介した。
このあまりにもふざけた状況に笑いがこみ上げてきた。
今のところ、この女の手には敵意とか害意はないようだ。それはこの手が女のものだから、僕はそう思ったのかもしれない。
この手が男のものだったら、僕は全力で排除したに違いない。
この両の手は、僕の警戒心を解くぐらいには美しかった。
田中さんにお願いがあります。
美優紀を名乗る手はさらさらとメモ帳に文字を書く。書道の先生なみの達筆だ。
「な、なんでしょうか」
僕は美優紀に聞く。
この手に出会ったばかりなのに、普通に会話している。いや、この場合は筆談といった方がいいか。
私はこの世に未練があり、こんな姿になりました。どうか、あなたの所に置いてくれませんか。
さらさらとメモ帳に文字が刻まれていく。
表彰状の文字ぐらいに綺麗な字だ。
僕は美優紀の手をじっと見つめる。
その手は、手だけのモデルとしても通用するぐらいには美しかった。
手フェチというわけではなかったが、この手を見ているうちに新しい性癖が目覚めるのを自覚した。
「わ、わかった……」
僕と美優紀の同居生活がこうして始まった。
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