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白鷺雨月

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第二十六話 硬い手を忘れない②

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その二人組の人間に助け出された俺はあるカフェという場所でやっかいになることになった。
 そこには俺たちのような犬や猫が多く暮らしていた。
 お湯で洗われた俺はきれいさっぱりしてそのカフェにいる。
 そうするとどうだうだろうか、人間たちは俺を撫でたりときにはおやつをくれたりする。ちなみに俺の好物は牛乳味のクッキーと煮干しだ。

 カフェでの暮らしはなかなか快適だった。
 あの臭いからも解放されたし、それに排泄を決まった場所でするだけで人間は俺を誉める。
 そんなのは簡単なことなのに。
 俺が煮干しを噛んでいると老猫が俺に話しかけてきた。
 年老いた黒猫だった。
 もうここでの生活は長いという。
「あまり人間に良い顔をしないことだな」
 黒猫は言った。
「何故だい、じいさん」
 俺は言う。
 人間はあの臭い部屋から俺を出してくれたし、今のような安全な暮らしを与えてくれている。信用に値すると思うが。
「若いの、お前はまだ人間を知らないのだ。そもそも我らを捨てたのはやつらではないか」
 老猫は言う。
「まあ、そうだけど。ここに連れてくれたのも人間じゃないか」
 俺は答えた。
「それにな、あいつら人間と仲良くするとある日突然どこかに連れ去られるのだ。私は人間と仲良くしてどこへともなくつれていかれた仲間たちを多く知っているのだ。彼らはそれ以来ここには帰ってきていないのだ」
 老猫は言った。
 にわかには信じがたい話であったが、この黒猫が嘘を言っているようには思えなかった。
「まあ、覚えていくよ」
 俺は半信半疑で黒猫に言った。

 黒猫に忠告された俺だったが、人間に誉められたりするのが好きな俺はその忠告を守れずにいた。
 その日も人間とボールで俺は遊んでいた。
 いや遊んでやっていたといっていいだろう。
 その一組の男女は嬉しそうに俺と遊び、背中や顔を撫でていた。
 仕方がないな、手でもなめてやるか。
 そうするとその女は嬉しそうに微笑んだ。
 男も俺の頭をなでる。
 その手はごつごつと固い手であった。
 だが、不思議と不快ではなかった。
「どうですかこの子は。なかなか賢いですよ。散歩もあまりひっぱりませんし、トイレもきっちりできます」
 男女に話かけるのは店長と呼ばれている男だった。
「ええ、とても賢いですね。それにかわいい」
 その女はにこやかに言った。
 どうやら誉められているようなので誇らしい気持ちになった。
「じゃあ、この子にしよう。僕も気に入ったよ。この子をうちで引き取ろうじゃないか」
「いいの、孝司さん」
 女は言った。
「いいよ、貴美さん。今度引っ越すマンションはペットを飼ってもいいからね」
 孝司は言った。

 黒猫の忠告をきかなかった俺はこの二人にひきとられ、このカフェをさることになった。
 ゲージにいれられた俺を哀れみの顔で黒猫は見送った。
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