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第二十七話 硬い手を忘れない③
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この家に俺がやって来てから二年がたとうとしていた。
俺は孝司と貴美という名前の夫婦が住む家に住んでいる。
あの黒猫のじいさんが言っていたことは杞憂というやつだったようだ。
俺はこの二人とけっこう仲良くやっているつもりだ。
朝夕の散歩は主に貴美が一緒なのだが、たまに孝司のやつがついてくる。
そんなときは俺が散歩でよく行く公園なんかを案内してやるんだ。
孝司はたまにしか散歩に付き合わないので、この時ばかりは俺が率先してやらないとな。
そして俺が好きな瞬間がある。
それは散歩から帰ってきたときに孝司のあの硬い手で頭や背中を撫でてもらうときだ。
あんなごつごつした手なのに不思議と心が落ちつくのだ。
おそらくだが他のいなくなったという連中も俺のように楽しくやっているのだろう。
そうやって俺と孝司と貴美でそれなりに楽しくやっていたのだが、ある時から妙なことがおこりはじめた。
それは貴美の腹が日に日に大きくなっていくのだ。
貴美は日がたつにつれ体が重くなり、動くのもつらそうになった。
俺の散歩にも行けなくなってきたのだ。
貴美の代わりに俺を散歩に連れていくようになったのは政子という貴美によく似た女であった。
貴美より顔にしわが多いのが政子だ。
「お母さん、ロンのことよろしくね」
貴美は政子に言った。
ちなみにロンとは俺の名前のようだ。
どうだい、短いがいい名前だろう。
貴美は政子のことをお母さんと呼んだ。
「ええ、まかせておきなさい、おまえはお腹の子のことだけ考えたらいいんだから。それにいい運動になるしね」
仕方ない。
貴美はしばらく散歩にいけそうになさそうなのでこの政子でがまんしてやるか。
それからさらに日が過ぎると貴美のお腹は、はちきれんばかりに膨らんでいった。
おいおい、貴美は大丈夫なのか。
だが、そんな心配をよそに孝司はうれしそうに貴美のお腹をさすっていた。
試しに俺は貴美の腹のにおいを嗅いでみた。
俺は鼻がいいからな。
あの腹になにが入っているか見極めてやる。
クンクンと貴美の腹のにおいをかぐと、俺は正直驚いた。
なんと腹の中からもう一人別の人間のにおいがするじゃあないか。
あの腹の中にはどうやら小さな人間がつまっているようだ。
しかもその小さな人間はもうすぐ外に出ようとしている。
さらにその数日後、貴美は家から消えてしまったのだ。
俺は心配でたまらなかった。
貴美は腹に小さな人間を入れたままどこにいったというのだ。
その日、俺は政子と一緒に家で留守番をしていた。
俺はすっかり政子のことを好きになっていた。
彼女はよく好物の煮干しをくれるからだ。
政子はよく貴美にあんまりおやつをあげすぎないでねと注意されていた。
まったく貴美は口うるさいのがたまにきずだな。
留守番をしていると政子が小さい箱に向かって話かけた。
「そうそう、よかったわ。無事に生まれたのね。そう、女の子なのね。本当によかったわ」
政子はうれしそうにそう話した。
さらに日がたちやっと貴美が帰ってきた。
貴美のお腹はぺたんこになっていた。
無事に帰ってきて俺はほっとした。
孝司も一緒だ。
孝司はその腕に小さな人間を抱いていた。
その小さな人間は気持ち良さそうに眠っている。
俺はにおいでその小さな人間が貴美の腹の中にいたのと同じだとわかった。
「ロン、ただいま。この子は恵美だよ、よろしくな」
孝司は器用にその小さな人間を抱きながら、俺の頭を固い手で撫でるのだった。
俺は孝司と貴美という名前の夫婦が住む家に住んでいる。
あの黒猫のじいさんが言っていたことは杞憂というやつだったようだ。
俺はこの二人とけっこう仲良くやっているつもりだ。
朝夕の散歩は主に貴美が一緒なのだが、たまに孝司のやつがついてくる。
そんなときは俺が散歩でよく行く公園なんかを案内してやるんだ。
孝司はたまにしか散歩に付き合わないので、この時ばかりは俺が率先してやらないとな。
そして俺が好きな瞬間がある。
それは散歩から帰ってきたときに孝司のあの硬い手で頭や背中を撫でてもらうときだ。
あんなごつごつした手なのに不思議と心が落ちつくのだ。
おそらくだが他のいなくなったという連中も俺のように楽しくやっているのだろう。
そうやって俺と孝司と貴美でそれなりに楽しくやっていたのだが、ある時から妙なことがおこりはじめた。
それは貴美の腹が日に日に大きくなっていくのだ。
貴美は日がたつにつれ体が重くなり、動くのもつらそうになった。
俺の散歩にも行けなくなってきたのだ。
貴美の代わりに俺を散歩に連れていくようになったのは政子という貴美によく似た女であった。
貴美より顔にしわが多いのが政子だ。
「お母さん、ロンのことよろしくね」
貴美は政子に言った。
ちなみにロンとは俺の名前のようだ。
どうだい、短いがいい名前だろう。
貴美は政子のことをお母さんと呼んだ。
「ええ、まかせておきなさい、おまえはお腹の子のことだけ考えたらいいんだから。それにいい運動になるしね」
仕方ない。
貴美はしばらく散歩にいけそうになさそうなのでこの政子でがまんしてやるか。
それからさらに日が過ぎると貴美のお腹は、はちきれんばかりに膨らんでいった。
おいおい、貴美は大丈夫なのか。
だが、そんな心配をよそに孝司はうれしそうに貴美のお腹をさすっていた。
試しに俺は貴美の腹のにおいを嗅いでみた。
俺は鼻がいいからな。
あの腹になにが入っているか見極めてやる。
クンクンと貴美の腹のにおいをかぐと、俺は正直驚いた。
なんと腹の中からもう一人別の人間のにおいがするじゃあないか。
あの腹の中にはどうやら小さな人間がつまっているようだ。
しかもその小さな人間はもうすぐ外に出ようとしている。
さらにその数日後、貴美は家から消えてしまったのだ。
俺は心配でたまらなかった。
貴美は腹に小さな人間を入れたままどこにいったというのだ。
その日、俺は政子と一緒に家で留守番をしていた。
俺はすっかり政子のことを好きになっていた。
彼女はよく好物の煮干しをくれるからだ。
政子はよく貴美にあんまりおやつをあげすぎないでねと注意されていた。
まったく貴美は口うるさいのがたまにきずだな。
留守番をしていると政子が小さい箱に向かって話かけた。
「そうそう、よかったわ。無事に生まれたのね。そう、女の子なのね。本当によかったわ」
政子はうれしそうにそう話した。
さらに日がたちやっと貴美が帰ってきた。
貴美のお腹はぺたんこになっていた。
無事に帰ってきて俺はほっとした。
孝司も一緒だ。
孝司はその腕に小さな人間を抱いていた。
その小さな人間は気持ち良さそうに眠っている。
俺はにおいでその小さな人間が貴美の腹の中にいたのと同じだとわかった。
「ロン、ただいま。この子は恵美だよ、よろしくな」
孝司は器用にその小さな人間を抱きながら、俺の頭を固い手で撫でるのだった。
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