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白鷺雨月

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第四十六話 夢を食む者と少年たちの銀河鉄道④

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 不思議な夢を私はみた。
 そこはどこか懐かしい喫茶店だった。
 四人がけのソファー席に、私はある女と向かい会わせになって座っていた。
 目の前にはアイスコーヒーがおかれている。
 それをずずっとすするとほろ苦く、すっきりした味わいが口じゅうに広がった。
「こいつはまあ、アフターケアみたいなものなんけど、あなた一つ頼まれてくれませんか。隣の部屋に行って欲しいのです。鍵がかかってるかもしれんが、ぶち壊してなかにはいってください。私はまだこちらの世界でうまく動けません。現実世界のことは人間でないとどうにもできないの。なに、ただとは言いません。このキャンディーを差し上げます。もし狐やスライム、ドラゴンがあなたを誘いにきても、このキャンディーがあればあなたはこちらの世界に戻ってこれます」
 黒いスーツスカート姿の胸の大きな女性が私にいう。
 目の細い女は私にキャンディー一つで不法侵入するようにそそのかしている。
 普通に考えたら、割に合わない。
 でも私は不思議な使命感と責任感にかられ、それを成し遂げようと考えた。

 私は目を覚ました。
 左手には赤い包のキャンディーが握られていた。

 
 妙な使命感のようなものが心の底から湧きだし、私はベランダに出た。
 非常用の区切りになっている板を蹴破り、隣室に侵入する。
 窓から中の様子をうかがう。
 カーテンのわずかな隙間から中の様子を確認することができた。
 フローリングの床に痩せ細った二人の男の子たちが寝転がっていた。
 数分見ていたが、まったく動く気配がない。

 もしかすると……。

 彼らの命が危うい。

 部屋に一度もどり、私は金づちを工具箱から出して、手に握る。
 隣室のベランダに戻り、窓ガラスに金づちを叩きつける。
 ガラスの破片が部屋の内側に飛び散る。
 手首を切らないように空いた穴に手を差し込み、鍵をあける。
 破片を踏まないように部屋の中に入る。
倒れている男の子の首にそっと手をあてる。
小さいほうの男の子は眠っていた。少し大きなほうの男の子はうっすらと目を開ける。
 抱き上げると兄弟のあまりの軽さに驚愕した。

 救急車を呼ぶと、彼らを救急隊員が連れ出していった。
 私はその後、警察の事情聴取をうけることになった。いろいろと聞かれたが、適当に話をでっちあげた。
 さすがに夢の中の目の細い女にたのまれたとは言えなかった。
「いやあ、いろいろときいてすいませんね。もう、帰ってもらって大丈夫ですよ」
 丸眼鏡の早川という刑事がそう言い、私は解放された。
「あの子達はどうなったんですか?」
 と私はきいた。
「弟君もお兄ちゃんのほうもどうにか、一命をとりもどしたようですよ。あっ、これは内緒でお願いしますよ」
 と小声で童顔の刑事早川は言った。

 しばらくテレビのワイドショーはそのニュースでもちきりだった。
 遊ぶ時間ほしさに幼い兄弟を置き去りにした母親が、保護責任者遺棄致死の罪で逮捕された。
 部屋に閉じ込められ幼い兄弟は冷蔵庫に残ったマヨネーズや味噌などの調味料を口にいれ、どうにか生き延びたようだ。
 幼い兄弟は栄養失調で倒れていた。
 この飽食の現代社会においてである。
 意識を取り戻した兄が最初に言ったのは、「お母さん、まだ帰っこないの」という言葉だったという。
 その言葉を知って、私は涙を流した。

 ベランダで夜空を見ながら、私は夢の中でもらったキャンディーを袋から取り出し、口に入れた
 キャンディーなんていつぶりだろうか。
 甘酸っぱい果実の味が口に広がる。
 どうしてかはわからないが、星空に浮かぶ雲がSL機関車から出される煙を連想させた。







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