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第八十一話 取調室④
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警察署を出るとすっかり夜になっていた。
腕時計をみると午後九時をまわっていた。
吐く息が白い。
私は隣に立つ背の高い女性をちらりと見る。
「タクシーでも呼びますか?」
下日尾千帆が私に尋ねる。
黒縁眼鏡をとり、豊かな膨らみをもつワイシャツの胸ポケットにかける。
黒縁眼鏡を外した下日尾千帆の目は糸のように細かった。
「お祖母様、ありがとうございます」
私は下日尾千帆に頭を下げる。
そうこの人は私の祖母である目《さがん》仁美《ひとみ》である。正しくは目《さがん》仁美《ひとみ》をモデルにした怪異である。
下日尾千帆をローマ字にするとsimohiotihoとなる。
簡単なアナグラムだ。
アルファベットを並び替えると以下のようになる。
hosoihitomiとなるわけだ。
怪異となっても祖母は私を見守っていてくれたのだ。しかも私の目的である父殺しまで成し遂げてくれた。感謝してもしきれない。
「いいのよ、あなたは私のかわいい孫ですからね。それぐらいお安い御用よ」
ふふっと下日尾千帆こと細井瞳は妖艶な笑みを浮かべる。
「お祖母様はこれからどうされるのですか?」
私は細井瞳に尋ねる。
「そうね、これからも怪異としていろんな物語に登場しようかしら。私の存在意義でもあるからね。そのためには貴方にこれからもいろいろな物語を紡いで貰わないといけないわね」
ぽんと細井瞳は私の頭をなでる。
そうされると私は落ち着く。
やはりこの人は私の祖母だと実感した。
「月子ちゃんはこの先どうするの。元の世界に戻るのかしら」
細井瞳は私にそう尋ねる。
「いいえ、お祖母様」
私は首を横に振る。
この世界に来て、もう十三年になる。もうすぐ十四年になる。おおよそ人生の半分をこの世界で過ごしたことになる。
この世界の高校を出て、大学で学び、就職した。戸沢麻美子などこの世界での友人も少ないが、確かにいる。
今さら元の世界にもどっても仕方がない。
それにこの世界のほうが怪異は存在しやすいようだ。
ドラゴンになった女性会社員、スライムに乗っ取られたコンビニ店員、人間のように生きる美しい人形、夜な夜な血を求める妖艶な吸血鬼などなど。
もちろん祖母である細井瞳もその一人だ。
私にとってもこの世界の方が面白いし、愛着もある。
「私はこの世界で生きていきます。もし、よろしければ私のことを見守っていてください」
私は祖母の手を握る。
祖母の手は温かく、柔らかい。
親族の手を握るのは久しぶりだ。
細井瞳は私の手を握りなおしてくれた。
タクシーが来るまでの僅かな時間、細井瞳はそうしていてくれた。
やがてタクシーが到着し、私は車内に乗り込む。
私はタクシーの運転手に行き先を告げる。
ベテランっぽい年配の男性ドライバーはかしこまりましたと言い、車を発車させた。
振り向くと細井瞳は何処にもいなくなっていた。
二十分ほどでタクシーは私が住むマンションの前に到着した。
私はドライバーさんに料金を支払い、車を降りた。
ドライバーさんはありがとうございますと言い、車は消えていった。
私がマンションの玄関に入ろうとしたら、白猫が私の前にあらわれた。
「あらヨウコじゃないの」
私が手を伸ばすと白猫のヨウコは指をぺろりと舐めた。
やだっくすぐったい。
「ヨウコ、よかったら私の部屋にくる?」
白猫のヨウコはにゃあと鳴く。
どうやら白猫のヨウコは細井瞳ことお祖母様にかわり、私を守ってくれるようだ。
私は白猫のヨウコの頭を撫で、抱きかかえる。
白猫のヨウコはうれしそうに喉をごろごろと鳴らした。
あっでも猫なんか飼ったら彼氏なんか出来なくなるか。まあ、もとからいないものを欲しがっても仕方がないか。
私は白猫のヨウコを抱き、自室に戻る。
白猫のヨウコは我が家のように平然と歩き、ラグの上に寝転がった。
私はコートをクローゼットにしまい、キッチンに向かう。
キッチンで買い置きしていたカップラーメンを食べた。
ソファーに座ると白猫のヨウコが膝の上に乗ってきた。
私は白猫のヨウコのお腹をなでながら、スマートフォンの電源をいれる。
私はXに投稿した。
ホソイヒトミという人物を探しています。情報をお持ちのかたはご連絡ください。ダイレクトメールを@sirasagitukikoまでお送りください。
終わり
腕時計をみると午後九時をまわっていた。
吐く息が白い。
私は隣に立つ背の高い女性をちらりと見る。
「タクシーでも呼びますか?」
下日尾千帆が私に尋ねる。
黒縁眼鏡をとり、豊かな膨らみをもつワイシャツの胸ポケットにかける。
黒縁眼鏡を外した下日尾千帆の目は糸のように細かった。
「お祖母様、ありがとうございます」
私は下日尾千帆に頭を下げる。
そうこの人は私の祖母である目《さがん》仁美《ひとみ》である。正しくは目《さがん》仁美《ひとみ》をモデルにした怪異である。
下日尾千帆をローマ字にするとsimohiotihoとなる。
簡単なアナグラムだ。
アルファベットを並び替えると以下のようになる。
hosoihitomiとなるわけだ。
怪異となっても祖母は私を見守っていてくれたのだ。しかも私の目的である父殺しまで成し遂げてくれた。感謝してもしきれない。
「いいのよ、あなたは私のかわいい孫ですからね。それぐらいお安い御用よ」
ふふっと下日尾千帆こと細井瞳は妖艶な笑みを浮かべる。
「お祖母様はこれからどうされるのですか?」
私は細井瞳に尋ねる。
「そうね、これからも怪異としていろんな物語に登場しようかしら。私の存在意義でもあるからね。そのためには貴方にこれからもいろいろな物語を紡いで貰わないといけないわね」
ぽんと細井瞳は私の頭をなでる。
そうされると私は落ち着く。
やはりこの人は私の祖母だと実感した。
「月子ちゃんはこの先どうするの。元の世界に戻るのかしら」
細井瞳は私にそう尋ねる。
「いいえ、お祖母様」
私は首を横に振る。
この世界に来て、もう十三年になる。もうすぐ十四年になる。おおよそ人生の半分をこの世界で過ごしたことになる。
この世界の高校を出て、大学で学び、就職した。戸沢麻美子などこの世界での友人も少ないが、確かにいる。
今さら元の世界にもどっても仕方がない。
それにこの世界のほうが怪異は存在しやすいようだ。
ドラゴンになった女性会社員、スライムに乗っ取られたコンビニ店員、人間のように生きる美しい人形、夜な夜な血を求める妖艶な吸血鬼などなど。
もちろん祖母である細井瞳もその一人だ。
私にとってもこの世界の方が面白いし、愛着もある。
「私はこの世界で生きていきます。もし、よろしければ私のことを見守っていてください」
私は祖母の手を握る。
祖母の手は温かく、柔らかい。
親族の手を握るのは久しぶりだ。
細井瞳は私の手を握りなおしてくれた。
タクシーが来るまでの僅かな時間、細井瞳はそうしていてくれた。
やがてタクシーが到着し、私は車内に乗り込む。
私はタクシーの運転手に行き先を告げる。
ベテランっぽい年配の男性ドライバーはかしこまりましたと言い、車を発車させた。
振り向くと細井瞳は何処にもいなくなっていた。
二十分ほどでタクシーは私が住むマンションの前に到着した。
私はドライバーさんに料金を支払い、車を降りた。
ドライバーさんはありがとうございますと言い、車は消えていった。
私がマンションの玄関に入ろうとしたら、白猫が私の前にあらわれた。
「あらヨウコじゃないの」
私が手を伸ばすと白猫のヨウコは指をぺろりと舐めた。
やだっくすぐったい。
「ヨウコ、よかったら私の部屋にくる?」
白猫のヨウコはにゃあと鳴く。
どうやら白猫のヨウコは細井瞳ことお祖母様にかわり、私を守ってくれるようだ。
私は白猫のヨウコの頭を撫で、抱きかかえる。
白猫のヨウコはうれしそうに喉をごろごろと鳴らした。
あっでも猫なんか飼ったら彼氏なんか出来なくなるか。まあ、もとからいないものを欲しがっても仕方がないか。
私は白猫のヨウコを抱き、自室に戻る。
白猫のヨウコは我が家のように平然と歩き、ラグの上に寝転がった。
私はコートをクローゼットにしまい、キッチンに向かう。
キッチンで買い置きしていたカップラーメンを食べた。
ソファーに座ると白猫のヨウコが膝の上に乗ってきた。
私は白猫のヨウコのお腹をなでながら、スマートフォンの電源をいれる。
私はXに投稿した。
ホソイヒトミという人物を探しています。情報をお持ちのかたはご連絡ください。ダイレクトメールを@sirasagitukikoまでお送りください。
終わり
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