ファミコンが来た日

白鷺雨月

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第四話 コナミコマンドはコーラ味

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友永有希子が和人の家で遊ぶのはおおよそ二週間に一度の割合であった。
土曜日の昼か日曜日に友永有希子は和人の家でファミコンで遊ぶ。
友永有希子の実家は開業医である。
和人の母親の言葉を借りれば、良いとこの子なのである。
その証拠に有希子はいつも襟首がフリルの白いブラウスにスカートという姿であった。
ちなみに和人は母親がダイエーかジャスコで買ってきた服を着ている。
有希子の前で母親が買ってきた服を着ていることに恥ずかしさを覚えるようになったのは、このときだ。
でも他に服がないから仕方ない。

有希子は必ず和人の家にくる前に電話をかけてきた。和人本人が電話をとれるときはいいのだが、たまたま母親がとるとなぜかニヤニヤ笑いながら、電話を代わるのである。
和人はそれがいやでたまらなかった。

友永有希子はゲームがうまかった。
スーパーマリオは二、三度プレイしただけで次々とステージをクリアしていく。
マリオが有希子の分身のようにジャンプし、ノコノコを蹴り、ファイアーボールで敵キャラを駆逐していくのである。
グラディウスをプレイするとビックバイパーが雨あられと降り注がれる敵の弾幕を紙一重でかわしていく。
和人は何度もやられたと思ったが、友永有希子は平然とビックパイパーを操り、敵をかわしていく。
友永名人、そんな言葉が頭に浮かぶ。
当時流行した名人という呼称は友永にもつけていいと思われた。

ゴールデンウィークも終わった五月中頃の日曜日のことである。
その日も友永有希子は和人の家でファミコンで遊んでいた。
「有希子ちゃん、こんにちは」
リビングにやって来た母親の涼子はテーブルにコーラと缶に入ったクッキーを置いていく。
「こんにちは、お母さん」
有希子が挨拶すると涼子は嬉しそうに微笑んだ。
挨拶したあと、有希子は和人の母親のお腹に視線を移した。
涼子のお腹はぽっこりと膨らんでいる。
涼子は痩せがたなので、ぽっこりと膨らんだお腹はとても目立つ。
視線を友永有希子は再び涼子の目に移動させる。
「赤ちゃんがいるの?」
と有希子はきいた。

やっぱり気づくよなと和人は思った。
涼子は妊娠しているのである。
年末か、年明けには弟か妹が産まれる予定だ。
事実、和人の妹はこの年のクリスマスに産まれることになる。

「ええ、そうなのよ」
にこやかに涼子は答える。

何で笑うんだよ。はやくパートにいけよと和人は思ったが、涼子はなかなか部屋を出ない。
有希子は床から立ち上がり、涼子のお腹に手をあてた。
「兄弟か、いいな」
有希子は言った。
そう言えば有希子は一人っ子だったなと和人は思いだした。
和人もこの年までは一人っ子だった。
だが、来年からは十二も離れた妹ができる。
そんなにいいかなと和人は思った。
きっと世話とかたいへんそうなのに。

「産まれたら有希子ちゃんもかわいがってね」
膨らんだお腹を撫でて、涼子は言った。
「じゃあね、お母さんパートに行ってくるからよろしくね」
そう言い、涼子は部屋を出ていった。


母親が出ていったので気がねなくファミコンができる。
ゲームイコールファミコンなので、ファミコンをするというのは、ゲームをプレイするという言葉と同じ意味だ。

「上上下下左右左右BA」
ぼそりと呪文のような言葉を言い、有希子はコントローラーのボタンを押していく。
スタートボタンを押すと完全武装のビックバイパーがブラウン管画面にあらわれた。
和人は思わずおおっーと感嘆の声をもらした。
それはその当時あまた存在した裏技の一つだ。
その名もコナミコマンドを有希子は実演したのだ。

「真喜子ちゃんの弟に教えてもらったのよ」
パーフェクトビックバイパーを操作し、有希子は言った。
真喜子とは南条真喜子のことだろうと和人は思いだした。有希子の仲の良いグループの一人だ。黒髪ロングヘアーの美少女であった。
和人は知っている。
クラスの男子で有希子派と真喜子派に別れているということを……。

ただでさえゲームのうまい友永が完璧なビックバイパーを手に入れたら、まさに鬼に金棒だと思われた。
その証拠に有希子は未踏のステージに進んでいく。
その画面は持ち主の和人も初めて見るものだった。
「ねえ、和人君……」
視線をテレビ画面に向けたまま有希子は和人の名前を呼ぶ
いつも吉田君なのに和人君って呼ばれるのは初めてだった。
どこか気恥ずかしい気持ちに和人はなった。

ちらりと真剣な顔でゲームをする有希子の顔を和人は見る。白い頬をほんのりと紅く染めている。大きな瞳と綺麗に切り揃えられた前髪が特徴的だ。
視線をわずかに下げるとブラウスのボタンの隙間から成長途中の胸の膨らみがわずかに見える。そしてその胸はフリルのついたブラジャーに包まれている。
それを見たとき、和人はこれ迄感じたことのないほど体が熱くなるのを覚えた。
風邪引きのときのように熱っぽいのに妙にここちよかった。

友永有希子はクラスの中でも発育がいい。
すでに大人になりかけている。ブラジャーをクラスでつけだしたのは二番目だというのを岸野が言っていた。一番は南条真喜子であった。

「赤ちゃんってどうやってできるか知ってる?」
有希子はテレビ画面から視線を外さない。
「さ、さあっ……」
和人はそれを知っている。エッチなことが大好きなクラスメイトから聞いていたからだ。それに保健体育の授業でもやったから。
それでも和人はとぼけた。
有希子の質問を聞き、和人は思わず有希子と赤ちゃんができるようなことをしていることを想像してしまった。
想像して自己嫌悪した。
友永とはゲーム友だちでいたい。
友永有希子は友永名人でいてほしい。
それなのに体は勝手に友永有希子とエッチなことをしていることを想像してしまう。

「真喜子ちゃんはそういう漫画持ってるのよ。おかしいわね」
くくくっと喉の奥を鳴らすような妙な笑いかたを有希子はした。
その漫画見てみたいと和人は思った。

そのあと、いつも通りに二人はゲームをした。
夕方四時ごろに有希子は帰った。
有希子が帰り、母親の涼子はまだ帰っていない。
ソファーにうつ伏せになる。
頭から有希子の顔が離れない。
有希子のことを考えていると下半身が熱くなり、しばらくすると冷たいものがパンツを濡らした。
ベトベトに濡れて不快なのに、今まで感じたことのない気持ちよさだった。
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