ファミコンが来た日

白鷺雨月

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第十一話 甘くて美味しいウエディングケーキ

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 年が明け、二月の十四日、和人と有希子は沖縄県は那覇市にいた。
 和人たちは沖縄で結婚式を挙げるためにこの地をおとずれた
 二月十四日、世間はバレンタインデーだ。そして有希子の誕生日でもある。
 有希子の誕生日と結婚記念日を同じにするのは有希子の提案だ。
 婚姻届は早朝に区役所に提出してある。
そのあと、和人と有希子は関西国際空港に赴き、那覇行きの飛行機に乗る。
 結婚式は翌日の十五日に行われる。

 式に参加するのは和人側は母親の涼子に妹の晴美、その夫で友人の岸野雄一郎の三人だ。
 有希子側は娘の沙友理、友人の南条真喜子とその息子の司の三人だ。
 結婚式は二人のごくごく身近な人たちだけがあつまった。
 昼頃に那覇空港に到着した二人はシャトルバスでホテルに向かう。
 結婚式は併設してある教会で行われる。

「二月だけどけっこう暑いな」
 和人はジャケットを脱ぎ、手に持つ。
 明日の打ち合わせのため、ホテルにある応接室に二人はいた。
 ベテランっぽい女性があれこれとタイムスケジュールを説明してくれる。
 神父さんが自己紹介する。
 ゲイリー・オールドマンに似た渋いイギリス人神父だった。そして日本語がめちゃくちゃ上手い。

 そのあと、遅い昼食をとる。
 昼食は和人の好きな沖縄そばだ。
 和人は沖縄そばのラフテーが好物だった。
 和人は今から緊張していたが、有希子はにこにこと楽しそうだ。
 二回目だから、余裕があるのだろうかと和人は思った。
「あっ今二回目だから余裕じゃないって思ったでしょ」
 沖縄そばを食べながら、有希子は言った。
心を読まれたと思った和人は沖縄そばを吐きそうになった。
「確かに二回目だけど前のは昔すぎてほとんど忘れたわ。シンプルに和人君との結婚式が楽しいのよ」
 微笑みを崩すことなく、有希子は言った。

 夕刻頃に南条真喜子と息子の司の二人と合流した。
しばらくして晴美と岸野、母親の涼子と合流した。
 気の早い涼子はすでにかりゆしを着ていた。
 涼子はこの沖縄行きを存分に楽しむつもりでいた。
 集まった皆で国際通りにある沖縄居酒屋でちょっとした宴会が行われる。
 全員が和人と有希子の結婚を祝ってくれた。
 結婚式の写真はカメラマンをしている南条司がしてくれる。
 司は真喜子の写真集のカメラマンもしている。
 息子の司は真喜子のことが大好きで、母親を超える人ではないと結婚しないと公言している。そして司はけっこうなイキメンなのである。
 ちなみに司が好きなアニメは「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」である。

「吉田、これをやるよ」
 岸野が額縁に入ったイラストを和人に手渡した。
 そのイラストには和人と有希子が描かれていた。
和人は普通だったが、有希子はとても可愛く描かれていた。
「ありがとう、岸野」
 和人はそれをありがたく受け取った。

「私からのお祝いは明日渡すわね」
 泡盛をごくごくと飲みながら、真喜子は言った。

「やっぱり本場のゴーヤチャンプルーは違うわね」
 パクパクと沙友理は沖縄料理に舌鼓をうった。


 翌日の正午に結婚式は行われた。
 参加者は少ないのに和人はガチガチに緊張していた。
 ウエディングドレス姿の有希子は本当にきれいだと和人は思った。笑顔の彼女を見ると少しだけ緊張が和らいだ。

 ゲイリー・オールドマンっぽい神父さんが誓いますかと和人に聞いてくる。あんなに日本語が流暢だったのに、このときだけ片言だった。
 緊張していた和人は思わず聞き逃すところだった。
 和人は誓いますといい、有希子も誓いますと答えた。

 何故かその二人を見て、沙友理と涼子が引くぐらい号泣していた。そんな中、司だけは冷静にカメラのシャッターを押していた。
 後で和人は司が撮った写真を見せてもらったのだが、有希子が女神のように美しく写っていた。自分はまあそれなりだった。
 有希子がきれいなら、それでいいと和人は考えた。


 式は無事に終わり、その日の夜、那覇市内のイタリアンレストランで披露宴のようなものが行われた。この店は真喜子の知り合いがオーナー兼シェフをつとめている。
 テーブルには所狭した美味しそうな料理が並べられていく。
「真喜子ちゃんがいてくれてよかったわ」
 美味しそうな料理を目の前にして、涼子と沙友理は目をキラキラさせていた。
 この旅行で涼子と沙友理は仲良くなっていた。
「涼子さんがお祖母ちゃんだったらよかったのに」
 なんてことまで沙友理は言った。
「それには賛成ね」
 有希子までそう言った。

有希子は子供時代にあまりにも厳しく育てられたため、その反感から実家と疎遠になっていた。

 南条真喜子がオーナーさんと一緒に大きなトレイを持ってやって来た。
 そのトレイにはフルーツがふんだんに盛られた大きな四角いケーキが乗せられていた。
「じゃーん、ウエディングケーキを作ったのよ。さあ 初めての共同作業やってちょうだい」
 オーナーさんがテーブルの料理をうまく並べ直し、トレイの置くスペースをつくる。

 オーナーさんからナイフを受け取った和人と有希子は手を重ね合わせてケーキに刃を入れた。
 そのあと、真喜子の手によってケーキは切り分けられ、皆に配られた。
 真喜子のケーキは文句なしに美味しかった。甘くて、フルーツは新鮮でいくらでも食べられる気がした。
「美味い美味い美味い美味い!!」
 と晴美は夢中になってケーキを食べた。
「さすが南条のケーキは絶品だな」
 岸野もお世辞抜きに褒める。

「ありがとう真喜子ちゃん」
 有希子が親友に礼を言う。
「いいのよ有希子。ねえ、まああんたならそんな心配はないと思うけど吉田君、有希子のことをよろしく頼むわよ」
 ペコリと真喜子は頭を下げた。
「よろしくお願いします」
 一緒に有希子も頭を下げた。
「あっママをよろしくね」
 沙友理も言った。
「こっちこそ和人をよろしくね。有希子ちゃんが和人をもらってくれて本当によかったわ」
 涼子は満面の笑みであった。

「こ、こちらこそこれからもよろしくお願いします」
 緊張気味に和人は答えた。彼は連日緊張しっぱなしだ。

「じゃあこっち向いてくれますか?」
 カメラを構える司の方に和人と有希子は視線を向ける。
 パシャとシャッター音がレストランに響いた。

 有希子は和人の手を握る。
 和人もその柔らかな手を握り返す。
 お互い視線を交差させ、二人は笑顔になった。


終わり
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感想 2

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みんなの感想(2件)

水護風火・(投稿は暫し休んでます)

 執筆投稿お疲れ様でした(^^)
 良き結果を得られますように!

 

2024.05.30 白鷺雨月

ありがとうございます!!
今回はこれで一度完結させました。
有希子と真喜子はお気に入りのキャラなので、また活躍させたいですね。

解除
矢木羽研
2024.05.08 矢木羽研

子供の頃の甘酸っぱい話と、結婚後のイチャラブが交互なのがいいですね。
これから青春時代の馴れ初めとかも読めるんでしょうか?

ライト文芸大賞に投票させていただきました。続きを待ってます!

2024.05.12 白鷺雨月

感想ありがとうございます。ファミコンというある年代にはささるものをテーマにしました。ファミコンがきっかけでであった子供たちがまたファミコンで再会する物語です。和人と有希子、その周囲の人々の物語です。グルメもテーマにしているので、一話ごとになにか食べ物を出していく予定です。
これからも応援お願いします

解除

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