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第三十三話 魔術師は語る
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ゼロ距離で見るマーリンのかわいらしい顔は、やはりあのスーパーの店員さんであった。僕の胸にあたる豊かなおっぱいの感触はたまらなく心地よい。
マーリンの言葉から推測すると彼女は、ユリコやヒメノ姉さんたちのようにこのアヴァロンに転生したのではなく、生きてこの地にやって来たということか。
多分だけどこの星の搭と呼ばれる宇宙船にのってやって来たのではないかと思われる。
「そうよ、朝倉君って頭いいのね」
マーリンはそう言い、僕に椅子に座るように促した。
僕はそのアンティークな椅子に座る。マーリンが僕たちに紅茶をいれてくれる。
紅茶はいい香りがした。一口飲むとほんのり甘い。茶葉に蜂蜜が混ぜられているのだろう。くどくなくて、上品な甘さだ。
クロネは熱い紅茶にふーふーと息を吹きかけている。そうか、クロネは猫舌だ。
「お姉さん、ジャック先生の知り合いなの?」
クロネはマーリンにきく。
「そうよ、私がエルフになったときに夢幻の世界に迷いこんだのよ。そこで夢の魔女ジャック・オー・ランタンに会ったのよ」
マーリンはそう言い、お茶菓子も用意してくれた。甘い香りのするクッキーであった。
僕はそれを一つとり、口にいれる。
ほろりと口にとける甘さが心地よい。
「魔女ジャックは言ったわ。待っていれば朝倉君に再会できるって」
ふふっとマーリンはかわいい笑みを浮かべる。
疑問が脳内にあらわれる。
仮にマーリンがあのスーパーの店員だったとして、どうして僕に会いたかったのだ。前の世界ではスーパーの店員と客という関係で名前すらしらなかった。もうそれは他人といっていいだろう。
「私はね、ずっとあなたを見ていたのよ。もう五百年も前のことだけどね。朝倉君は覚えてないかも知れないけどね。私はあなたのことが好きだったのよ。出来そこないの私の目を見てくれたのはあなただけだったから……」
マーリンはそう言い、紅茶をすする。
確かに僕は彼女を見ていた。
それはただこんなかわいい人が彼女だったらなとそんな妄想の材料として、見ていただけだ。
あれっ、ということはあの時、僕たちは両片思いみたいなことだったのだろうか。
「そうね、そうかも知れないわね」
マーリンはじっと僕の目を見る。
ならあの時、僕はマーリンと恋人として付き合えたのかもしれない。そうしていたら、未来は違っていたかもしれない。
「でもこうして再会できたから、私はこれで良いわ」
とマーリンは言った。
「じゃあマーリン、君は僕たちと一緒に来てくれるのだね」
僕はマーリンの手をとる。
「ええ、もちろんよ。この星の搭を出るわ」
マーリンは頷く。
「朝倉君、私がこの搭を出ると言うことは聖杯教会と完全に敵対することになるわよ。それでもいい?」
マーリンは僕に決意を問う。
「ああ、覚悟は出来てるよ。この国の女の子たちを苦しめている聖杯教会とやらを僕はぶっ潰してやるよ」
僕はマーリンにそう答えた。
「決して楽な道のりではないわよ、それでもいい?」
さらにマーリンは問う。
「僕はこのアヴァロンに住む人々に希望を与えたい。決意はゆらがないよ」
僕が知るかぎり、聖杯教会はこのアヴァロン王国の人々を苦しめている。僕の彼女になる人たちを苦しめているということを、僕が許すわけはない。
「朝倉君の決意は理解したわ。私は全知全能を用いてあなたを助けるわ。共に聖杯教会の理不尽と戦いましょう」
マーリンは言った。
これで魔術師マーリンは僕の仲間になったことになる。
「地球の戦乱を避けて、このアヴァロンに方舟にのり移住できたのは、わずかに百人だけだったの。長い宇宙の旅で男性はすべて死んだわ。そこで私たちは人工子宮とクローン技術を使い人口を増やしたの」
そこでマーリンは紅茶で口を湿らす。
「その百人の中にいたサウザンド・クレーンという人物が聖女主義というのを提唱したの。それが聖杯教会の始まりよ。男性は愚かで世界を滅ぼす存在で、女性こそが神に選ばれた存在だと」
マーリンは語る
「でもね、人工子宮とクローン技術を使い子供を作っても一定の割合で男子は生まれるの。教会はその男子を幽界に送ったの。幽界に送られた男子は皆魔物になったわ」
そこまで語るとマーリンは涙を流した。
あの豚鬼の言葉が思いだされた。
オマエモオトコカ。
そうか、あの豚鬼をはじめとしてこの国の魔物たちは元男子だったのだ。
まったく教会はひどいことをするな。
「ねえ、朝倉君、もう一つ約束してくれるかしら」
そう言うとマーリンは奥の本棚を見る。
本棚の影から誰かがこちらを見ている。
マーリンはその人物を手招きする。
その人物は金色の髪をした端正な顔立ちの少年であった。
この女子しかいないアヴァロンではじめて出会う人間の男子であった。
「マーリン先生、この人は?」
まだ声変わりしていない声だった。
天使のように愛らしい少年だ。
「モードレッド、こちらのアーサー様と一緒にこの星の搭を出るのよ。外の世界に行くのよ」
マーリンは優しくモードレッド少年の髪を撫でる。
「やっと外に出られるのですね。僕はモードレッドと言います。アーサー様、よろしくお願いします」
ペコリとモードレッド少年は頭を下げた。
なかなか賢そうで素直な感じの少年じゃないか。
きっとこの少年を匿っていたことが、マーリンが星の搭に閉じ籠っていた原因であろう。
「そうよ、このモードレッドはこのアヴァロン王国の前の女王イゾルテの子で現女王のギネビアの弟にあたるの」
マーリンはモードレッドをそう紹介した。
なるほど、この子は王子様なのか。確かに気品のある佇まいをしている。
もと社畜の僕とは大違いだ。
「なに言っているの、お兄ちゃんの方が素敵だよ」
クロネはそう言った。
お世辞だとしても嬉しい。
「それに関しては私も同意見です。朝倉君はとてもハンサムでかっこいいです」
マーリンは真面目な顔で言った。
なんかべた褒めされて、むちゃくちゃ照れるな。
僕はマーリンとモードレッドたちと共に星の搭を出た。
マーリンの言葉から推測すると彼女は、ユリコやヒメノ姉さんたちのようにこのアヴァロンに転生したのではなく、生きてこの地にやって来たということか。
多分だけどこの星の搭と呼ばれる宇宙船にのってやって来たのではないかと思われる。
「そうよ、朝倉君って頭いいのね」
マーリンはそう言い、僕に椅子に座るように促した。
僕はそのアンティークな椅子に座る。マーリンが僕たちに紅茶をいれてくれる。
紅茶はいい香りがした。一口飲むとほんのり甘い。茶葉に蜂蜜が混ぜられているのだろう。くどくなくて、上品な甘さだ。
クロネは熱い紅茶にふーふーと息を吹きかけている。そうか、クロネは猫舌だ。
「お姉さん、ジャック先生の知り合いなの?」
クロネはマーリンにきく。
「そうよ、私がエルフになったときに夢幻の世界に迷いこんだのよ。そこで夢の魔女ジャック・オー・ランタンに会ったのよ」
マーリンはそう言い、お茶菓子も用意してくれた。甘い香りのするクッキーであった。
僕はそれを一つとり、口にいれる。
ほろりと口にとける甘さが心地よい。
「魔女ジャックは言ったわ。待っていれば朝倉君に再会できるって」
ふふっとマーリンはかわいい笑みを浮かべる。
疑問が脳内にあらわれる。
仮にマーリンがあのスーパーの店員だったとして、どうして僕に会いたかったのだ。前の世界ではスーパーの店員と客という関係で名前すらしらなかった。もうそれは他人といっていいだろう。
「私はね、ずっとあなたを見ていたのよ。もう五百年も前のことだけどね。朝倉君は覚えてないかも知れないけどね。私はあなたのことが好きだったのよ。出来そこないの私の目を見てくれたのはあなただけだったから……」
マーリンはそう言い、紅茶をすする。
確かに僕は彼女を見ていた。
それはただこんなかわいい人が彼女だったらなとそんな妄想の材料として、見ていただけだ。
あれっ、ということはあの時、僕たちは両片思いみたいなことだったのだろうか。
「そうね、そうかも知れないわね」
マーリンはじっと僕の目を見る。
ならあの時、僕はマーリンと恋人として付き合えたのかもしれない。そうしていたら、未来は違っていたかもしれない。
「でもこうして再会できたから、私はこれで良いわ」
とマーリンは言った。
「じゃあマーリン、君は僕たちと一緒に来てくれるのだね」
僕はマーリンの手をとる。
「ええ、もちろんよ。この星の搭を出るわ」
マーリンは頷く。
「朝倉君、私がこの搭を出ると言うことは聖杯教会と完全に敵対することになるわよ。それでもいい?」
マーリンは僕に決意を問う。
「ああ、覚悟は出来てるよ。この国の女の子たちを苦しめている聖杯教会とやらを僕はぶっ潰してやるよ」
僕はマーリンにそう答えた。
「決して楽な道のりではないわよ、それでもいい?」
さらにマーリンは問う。
「僕はこのアヴァロンに住む人々に希望を与えたい。決意はゆらがないよ」
僕が知るかぎり、聖杯教会はこのアヴァロン王国の人々を苦しめている。僕の彼女になる人たちを苦しめているということを、僕が許すわけはない。
「朝倉君の決意は理解したわ。私は全知全能を用いてあなたを助けるわ。共に聖杯教会の理不尽と戦いましょう」
マーリンは言った。
これで魔術師マーリンは僕の仲間になったことになる。
「地球の戦乱を避けて、このアヴァロンに方舟にのり移住できたのは、わずかに百人だけだったの。長い宇宙の旅で男性はすべて死んだわ。そこで私たちは人工子宮とクローン技術を使い人口を増やしたの」
そこでマーリンは紅茶で口を湿らす。
「その百人の中にいたサウザンド・クレーンという人物が聖女主義というのを提唱したの。それが聖杯教会の始まりよ。男性は愚かで世界を滅ぼす存在で、女性こそが神に選ばれた存在だと」
マーリンは語る
「でもね、人工子宮とクローン技術を使い子供を作っても一定の割合で男子は生まれるの。教会はその男子を幽界に送ったの。幽界に送られた男子は皆魔物になったわ」
そこまで語るとマーリンは涙を流した。
あの豚鬼の言葉が思いだされた。
オマエモオトコカ。
そうか、あの豚鬼をはじめとしてこの国の魔物たちは元男子だったのだ。
まったく教会はひどいことをするな。
「ねえ、朝倉君、もう一つ約束してくれるかしら」
そう言うとマーリンは奥の本棚を見る。
本棚の影から誰かがこちらを見ている。
マーリンはその人物を手招きする。
その人物は金色の髪をした端正な顔立ちの少年であった。
この女子しかいないアヴァロンではじめて出会う人間の男子であった。
「マーリン先生、この人は?」
まだ声変わりしていない声だった。
天使のように愛らしい少年だ。
「モードレッド、こちらのアーサー様と一緒にこの星の搭を出るのよ。外の世界に行くのよ」
マーリンは優しくモードレッド少年の髪を撫でる。
「やっと外に出られるのですね。僕はモードレッドと言います。アーサー様、よろしくお願いします」
ペコリとモードレッド少年は頭を下げた。
なかなか賢そうで素直な感じの少年じゃないか。
きっとこの少年を匿っていたことが、マーリンが星の搭に閉じ籠っていた原因であろう。
「そうよ、このモードレッドはこのアヴァロン王国の前の女王イゾルテの子で現女王のギネビアの弟にあたるの」
マーリンはモードレッドをそう紹介した。
なるほど、この子は王子様なのか。確かに気品のある佇まいをしている。
もと社畜の僕とは大違いだ。
「なに言っているの、お兄ちゃんの方が素敵だよ」
クロネはそう言った。
お世辞だとしても嬉しい。
「それに関しては私も同意見です。朝倉君はとてもハンサムでかっこいいです」
マーリンは真面目な顔で言った。
なんかべた褒めされて、むちゃくちゃ照れるな。
僕はマーリンとモードレッドたちと共に星の搭を出た。
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