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第七十話 ギネビア庭園での会談
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漂流者の名はウイリアム・アダムスといった。
三十代前半の男性で濃茶色の髪に同色の瞳をしているということだ。
彼の話す言葉は最初さっぱりわからなかったが、ロジャー・ベーコンが根気よく解読を続け、ついに意思疎通をはかれるようになったという。
サーシャも身振り手振りを交えてではあるが、どうやら言葉のやりとりができるようだ。
「言葉のわからぬ者を陛下の御前につれてはこれまいと思ったしだいでございます。思いのほか時間がかかったのは誠に申し訳ございません」
ロジャー・ベーコンがすまなさそうに謝る。
そんなに謝らなくてもいいよ。
どうやら、ロジャー・ベーコンとサーシャがいれば その漂流者とは会話ができるようだ。
「その…… 陛下……」
サーシャがおろおろと僕の顔を見る。
緊張した面持ちだ。
「なんだい、サーシャ。言ってみなよ」
僕はサーシャに言葉をうながす。
「その、ウイリアムに手荒なことをできれば……」
そこでサーシャは言葉をつまらせた。
ちょっと涙目になっている。
サーシャの声音を聞いたギネビアが僕の手を握る。
彼女が念話で話しかけてきた。
おそらくですが、サーシャとウイリアムは男女の関係になったのかもしれませんね。国外からの侵入者に対してアーサーがなにか処罰するのではと危惧しているのでしょう。
そうか、それでサーシャはあんな話し方をしていたのか。
いやいや、僕はそんなことをしないよ。それじゃあ暴君じゃないか。
「サーシャ、心配しないでいいよ。そのウイリアムという人にあってみたい。外国の様子を知りたい」
僕がサーシャに言うと彼女の顔はぱっと明るくなった。
朝食の後、その漂流者であるウイリアム・アダムスと面会することになった。
場所はキャメロットの王宮内にある庭園の一角にある東屋で行われる。
小さなテーブルと椅子がいくつか置かれている。
ギネビアの私的なスペースだ。
その名もギネビア庭園だ。
周囲には彼女が植えた花が美しく咲き乱れている。
よく手入れされた庭園だ。
ウイリアム・アダムスとの面会にはギネビアとマーリンも立ち会う。一応護衛としてアルも参加する。
「外の国の人間は初めて見ます」
とアルは若干緊張している。
また通訳としてロジャー・ベーコンとサーシャも参加する。
しばらくしてサーシャが一人の男性を連れてやってきた。先ほど聞いていた通りの風貌をしている。
イケメンってわけじゃないけど、何となく話しやすそうな雰囲気の人物だ。
ウイリアムは右拳を左胸の心臓あたりにあて、軽く頭を下げる。
ロジャーがいうにはそれがラーマ帝国貴族の挨拶らしい。
ロジャーの話では彼自身は貴族ではなく、海運業を営んでいるとのことだ。
運悪く嵐にあい、乗っていた船が破壊され、難破し漂流したとのことだ。
「アーサー王陛下、お初にお目にかかります。私はウイリアム・アダムスといいます」
かなりたどたどしい言葉使いだったが、聞き取ることは可能だ。
どうやら彼もアヴァロンの言葉をある程度覚えたということだ。
ちなみにアヴァロンの言語はほぼ日本語である。
それはこの地に降り立った最初の百人がほとんど日本人だったことに起因する。
「こんにちは。僕はアーサー・クロード・ペンドラゴンだ。よろしくね」
僕はそう言い、右手を差し出す。
サーシャに促され、ウイリアムは僕の手を握る。
海の男らしい、硬い手であった。
挨拶のあとはロジャーが通訳をつとめてくれた。
マーリンがその様子を真剣に見ている。
「アーサー王陛下、かの者はラーマ帝国ではかなり大きな帆船をいくつも持つ商人だということです。アヴァロン王国より南にはアルガルド大陸という広大な大地が広がり七つの国が支配しているようです。その内で最大の版図を持つのがラーマ帝国だということだす」
ロジャーがその様に語る。
外国があるとは聞いていたが、その様になっているのか。内政だけでも大変なのにこれからは外交もしなくてはいけないのか。
頭の痛い話だ。
「でもロジャー、この国の周囲はアテナの首飾りで守られているんじゃないか。彼はその激しい海流をこえてきたのかい?」
僕はロジャーに尋ねる。
それをウイリアムに話し、ロジャーが返答を聞き、僕に話す。
「ウイリアムが申すにはそのような渦は無かったとのことです」
ロジャーが言った。
うん、これはかなり一大事じゃないか。
アテナの首飾りが無ければ、外国からの侵入者が絶えずあらわらるようになるのでは。
「陛下、おそらくですが聖杯システムと同様にアテナの首飾りも耐用年数の限界が近づいてるのかもしれません」
ロジャーが意見を言う。
なるほど、物には使用期限があるものね。永遠に使えるものなんてありえないか。
「だとしたらそう遠くない将来、我々は諸外国とどの様につきあうか決めなければいけませんね」
マーリンが形のいい顎に手を当てる。
「アーサー、妾はあなたの決めたことに従うわ」
ギネビアが僕の手を握る。
どのようなことになろうとも一緒ですよ。
ギネビアは念話で語りかける。
うれしいことを言ってくれる。
「我が君、私もどこまでもお供いたします」
それはアルらしい物言いだ。
けど、アルと僕の間には二人も子供がいるからね。あの子たちのことも考えないと。
とりあえず、僕はウイリアム・アダムスからラーマ帝国をはじめとする諸外国の情報を集めることにした。
ラーマ帝国は十三代皇帝ルキウスが治めているらしい。以前は名君の誉れたかかったが、一人の寵姫の出現により、あまり政治の表舞台に立たなくなったという。
約ニ年ほど前にロエルという妖艶な美女が後宮に仕えるようになり、瞬く間に皇帝ルキウスの寵愛を得ることになったという。
それでも政治は多くの賢臣たちにより運営されているので、今のところめだったみだれはないとのことだ。
しかし、それは海上商人のウイリアムが外からみたことなので、どこまで真実かわからないというのがマーリンの考えだ。
「百聞は一見にしかずというし、アルガルド大陸をこの目で見に行くというのもありだな」
僕は思案を巡らし、そう答えをだした。
戦艦ウロボロスなら海を越えるのは容易だろう。
日程と人員を決めて一度海を渡ってみよう。
僕はウイリアム・アダムスに大陸の様子をさらに詳しく尋ねた。
彼は頭脳明晰のようだ。
要点を捉え、客観的に説明してくれた。
この日、僕はウイリアム・アダムスを国王直属の外交官に任命した。
サーシャをその補佐役に任命した。
三十代前半の男性で濃茶色の髪に同色の瞳をしているということだ。
彼の話す言葉は最初さっぱりわからなかったが、ロジャー・ベーコンが根気よく解読を続け、ついに意思疎通をはかれるようになったという。
サーシャも身振り手振りを交えてではあるが、どうやら言葉のやりとりができるようだ。
「言葉のわからぬ者を陛下の御前につれてはこれまいと思ったしだいでございます。思いのほか時間がかかったのは誠に申し訳ございません」
ロジャー・ベーコンがすまなさそうに謝る。
そんなに謝らなくてもいいよ。
どうやら、ロジャー・ベーコンとサーシャがいれば その漂流者とは会話ができるようだ。
「その…… 陛下……」
サーシャがおろおろと僕の顔を見る。
緊張した面持ちだ。
「なんだい、サーシャ。言ってみなよ」
僕はサーシャに言葉をうながす。
「その、ウイリアムに手荒なことをできれば……」
そこでサーシャは言葉をつまらせた。
ちょっと涙目になっている。
サーシャの声音を聞いたギネビアが僕の手を握る。
彼女が念話で話しかけてきた。
おそらくですが、サーシャとウイリアムは男女の関係になったのかもしれませんね。国外からの侵入者に対してアーサーがなにか処罰するのではと危惧しているのでしょう。
そうか、それでサーシャはあんな話し方をしていたのか。
いやいや、僕はそんなことをしないよ。それじゃあ暴君じゃないか。
「サーシャ、心配しないでいいよ。そのウイリアムという人にあってみたい。外国の様子を知りたい」
僕がサーシャに言うと彼女の顔はぱっと明るくなった。
朝食の後、その漂流者であるウイリアム・アダムスと面会することになった。
場所はキャメロットの王宮内にある庭園の一角にある東屋で行われる。
小さなテーブルと椅子がいくつか置かれている。
ギネビアの私的なスペースだ。
その名もギネビア庭園だ。
周囲には彼女が植えた花が美しく咲き乱れている。
よく手入れされた庭園だ。
ウイリアム・アダムスとの面会にはギネビアとマーリンも立ち会う。一応護衛としてアルも参加する。
「外の国の人間は初めて見ます」
とアルは若干緊張している。
また通訳としてロジャー・ベーコンとサーシャも参加する。
しばらくしてサーシャが一人の男性を連れてやってきた。先ほど聞いていた通りの風貌をしている。
イケメンってわけじゃないけど、何となく話しやすそうな雰囲気の人物だ。
ウイリアムは右拳を左胸の心臓あたりにあて、軽く頭を下げる。
ロジャーがいうにはそれがラーマ帝国貴族の挨拶らしい。
ロジャーの話では彼自身は貴族ではなく、海運業を営んでいるとのことだ。
運悪く嵐にあい、乗っていた船が破壊され、難破し漂流したとのことだ。
「アーサー王陛下、お初にお目にかかります。私はウイリアム・アダムスといいます」
かなりたどたどしい言葉使いだったが、聞き取ることは可能だ。
どうやら彼もアヴァロンの言葉をある程度覚えたということだ。
ちなみにアヴァロンの言語はほぼ日本語である。
それはこの地に降り立った最初の百人がほとんど日本人だったことに起因する。
「こんにちは。僕はアーサー・クロード・ペンドラゴンだ。よろしくね」
僕はそう言い、右手を差し出す。
サーシャに促され、ウイリアムは僕の手を握る。
海の男らしい、硬い手であった。
挨拶のあとはロジャーが通訳をつとめてくれた。
マーリンがその様子を真剣に見ている。
「アーサー王陛下、かの者はラーマ帝国ではかなり大きな帆船をいくつも持つ商人だということです。アヴァロン王国より南にはアルガルド大陸という広大な大地が広がり七つの国が支配しているようです。その内で最大の版図を持つのがラーマ帝国だということだす」
ロジャーがその様に語る。
外国があるとは聞いていたが、その様になっているのか。内政だけでも大変なのにこれからは外交もしなくてはいけないのか。
頭の痛い話だ。
「でもロジャー、この国の周囲はアテナの首飾りで守られているんじゃないか。彼はその激しい海流をこえてきたのかい?」
僕はロジャーに尋ねる。
それをウイリアムに話し、ロジャーが返答を聞き、僕に話す。
「ウイリアムが申すにはそのような渦は無かったとのことです」
ロジャーが言った。
うん、これはかなり一大事じゃないか。
アテナの首飾りが無ければ、外国からの侵入者が絶えずあらわらるようになるのでは。
「陛下、おそらくですが聖杯システムと同様にアテナの首飾りも耐用年数の限界が近づいてるのかもしれません」
ロジャーが意見を言う。
なるほど、物には使用期限があるものね。永遠に使えるものなんてありえないか。
「だとしたらそう遠くない将来、我々は諸外国とどの様につきあうか決めなければいけませんね」
マーリンが形のいい顎に手を当てる。
「アーサー、妾はあなたの決めたことに従うわ」
ギネビアが僕の手を握る。
どのようなことになろうとも一緒ですよ。
ギネビアは念話で語りかける。
うれしいことを言ってくれる。
「我が君、私もどこまでもお供いたします」
それはアルらしい物言いだ。
けど、アルと僕の間には二人も子供がいるからね。あの子たちのことも考えないと。
とりあえず、僕はウイリアム・アダムスからラーマ帝国をはじめとする諸外国の情報を集めることにした。
ラーマ帝国は十三代皇帝ルキウスが治めているらしい。以前は名君の誉れたかかったが、一人の寵姫の出現により、あまり政治の表舞台に立たなくなったという。
約ニ年ほど前にロエルという妖艶な美女が後宮に仕えるようになり、瞬く間に皇帝ルキウスの寵愛を得ることになったという。
それでも政治は多くの賢臣たちにより運営されているので、今のところめだったみだれはないとのことだ。
しかし、それは海上商人のウイリアムが外からみたことなので、どこまで真実かわからないというのがマーリンの考えだ。
「百聞は一見にしかずというし、アルガルド大陸をこの目で見に行くというのもありだな」
僕は思案を巡らし、そう答えをだした。
戦艦ウロボロスなら海を越えるのは容易だろう。
日程と人員を決めて一度海を渡ってみよう。
僕はウイリアム・アダムスに大陸の様子をさらに詳しく尋ねた。
彼は頭脳明晰のようだ。
要点を捉え、客観的に説明してくれた。
この日、僕はウイリアム・アダムスを国王直属の外交官に任命した。
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