愛が重すぎて婚約者に嫌われてるので、惚れ薬をのんで別の殿方を見てみようと思います

ヘルベ

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1、最初の落とし穴

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 愛が重すぎる、と婚約者のアヒムに何度言われただろう。

 婚約が決まったのはお互いが8歳の頃。
 子爵家の我が家の領地が葡萄の栽培が盛んで、アヒムの家である伯爵家領地がワインの生産に力を入れてるがために成された、まさに教本通りの政略意図の婚約である。
 アヒム曰く「つまらない政略にも程がある」とのこと。

 初めての顔合わせでは、彼はとても冷たい印象の子供だった。
 礼儀作法はしっかりしていたが、しっかりし過ぎていたからこそ愛嬌というものがなく、私の拙い挨拶を見て微かに眉を顰めていたのを見つけてしまったのは幼心に傷付いた。

 しかし、その冷たさとは裏腹にエスコートは完璧。

 私を無駄に一人残すことはせず、ダンスはしっかりとリードしてくれ、喉が渇くころには何も言わずとも飲み物を取って来てくれる。
 会話は少し難しいものが多いが入退場には優しく手を取り、馬車の乗り降りの時も手を貸してくれる。

 そんなアンバランスな完璧さに、子供の私は尊敬を抱いた。

 アヒムは頭が良く、剣も使え、乗馬も難なくこなす文武両道型の秀才だ。

 周りの子供よりもずっと大人びており、同年代とは話が合わないのかよく年上の人と会話をしている。
 そして自分と同じくらいに成熟し、勉強のできる人間に会った時にだけ、心からの笑顔を見せる。

 そのアヒムの笑顔を初めて見たのは10歳の時。

 ――私はその笑顔に心の全てを持って行かれた。

 彼の人に釣り合うべく、笑顔を見せてもらえる人間になるべく私は猛勉強をした。

 本来女性が手を出す勉強じゃないものも、アヒムの興味を引きそうなものなら進んで学んだ。

 一年で飛躍的に学力の向上を果たし、政治と歴史の話が好きなアヒムとしっかり会話できるようになった時は微かに微笑んでくれたのを鮮明に覚えている。

 その微笑みが、私を更なる深みへと誘った。

 調子に乗って勉強ばかりしていたせいで社交が疎かになり、友達がいつの間にか全然いなくなっていた時には、アヒムから「君は友達がいないんですか?社交性のない女性は私の妻には向きません」と注意され、慌てて刺繍・乗馬を始め、友達作りに参加できるパーティへ足繁く通った。

 これだけでは不足かもしれないと見えない恐怖心に襲われ、ダンスの先生も付けて貰った。

 私の貪欲さに教師は舌を巻き、教え甲斐があるためかどんどん新しい事を習わせてくれた。
 今思うと子爵令嬢の学ぶ範疇を大幅に越えたものだと思う。

 そしてある日、連日の無理が祟り熱を出して倒れてしまった。

 ベッドで寝ている間にもアヒムはどんどん先へ行く。そう考えると寝ているのが苦痛で仕方なかったが、両親に叱られ、妹に泣かれてしまっては大人しく療養するしかない。

 疲労で倒れた次の日、アヒムがお見舞いに来てくれた。
 その時貰った言葉はそう、「自己管理もまともにできないのですか」だ。

 今度の課題は、己の限界と体調を知ることに決定した。

 アヒムはその日にお見舞いに来たきりで、元気になったと報告した手紙には返事をくれたが顔は見せに来てくれなかった。


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