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不運な選定
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空が高くて凄くいい天気で、空気の匂いまで覚えてる。
あの日が転機だった。
小高い丘にある大きな木の下で勇者…ジグが珍しく昼寝をしていた時。
悪ガキで大人も手を焼いてる三人が、昼寝ジグに悪戯しようとしてが見えて、私は行く手を阻んで睨みを利かせた。
「あんだよアンヌ、そこどけよ」
「そうだぞ、どけどけ!お前がこの草の泥汁被りたいのか?」
「ガキっぽいことしてんじゃないわよ。ジグはおじさんの手伝いで疲れてるんだから、休憩の邪魔しないの」
「おうおうなんだ?アンヌお前ジグの女房気取りかよ」
「は、はあ!?何言ってんの!?バカじゃないの!?」
「へへへ、顔真っ赤じゃん!図星か女房気取り!」
うわーやべーとか鬼嫁ーとか笑いながら囃し立てられて、アタシはかっとなって悪ガキが抱えてる草の泥汁入りのバケツを蹴る上げた。
派手な水音を立てて緑が混じった茶色みたいな液体が悪ガキどもに降りかかり、ついでぷんと変なにおいが立ち込める。
あたしは思わず鼻をつまんで三人から距離を取った。
「うわっ!ぺっぺっ…口ん中入っちまった!」
「くせー!くせー!お前何入れたんだこれえ!」
「適当にその辺の草だよぉ…どうしよ、こんな服汚したら母ちゃんに怒られちまう」
混乱しながら悪ガキ共は帰って行き、あたしはふんと鼻を鳴らした。
寝てる奴を襲うなんて意気地が無いったら。
左右を確認して、あたしはジグが背を預けてる木の反対側に腰掛けた。またあいつらが戻って来こないとも限らないから、少しの間見張っていようと思って。
ジグは大人びている。
大人び過ぎている。いつだっておじさんとおばさん、近所の人の手伝いをして、弟妹の面倒を見て、周りに気を遣って。
そんなジグなんだからたまにはこうやってサボったって罰当たらないわ。好きなだけ昼寝してりゃいいのよ。
「ありがとな」
まるであたしの考えを読んだみたいなタイミングで呟かれて、びくっと体が跳ねた。
「ど、ういたしまして」
声が少し掠れてしまった。
ジグは小さく笑うと、また寝息を立て始めた。
あたしの自惚れじゃなきゃお互いほんのり意識し合っていたと思う。
あたしとジグは近所の人や友達、両親にもいつかくっつくのだろうと思われていた。
それに複雑な心境になりながらも嫌じゃなくて。でも、ジグの方はどうだったのだろう。
でもきっとあのまま何も起こらなければ、多分あたしと勇者は結婚していたんじゃないかしら。
「おおいジグ!ジグーー!お、王国の兵隊が、お前を探してるって……!!」
いつものんびりしている木こりのトムおじさんが、叫んでるに近い声でジグを呼びに来た時。
あの時からあたし達を取り巻く全てが変わってしまった。
何事かと飛び起きたあたしとジグは、木こりのトムおじさんに連れられるまま村の広場に向かう。
そこには重そうな鎧を着て、仰々しい装いをした馬に跨った兵士がたくさん並んでいた。
その日常からかけ離れている光景にあたしは足が震えた。
先頭に居た一番豪華な鎧を着ている人が、ジグを確認すると馬から降り、こちらに近付いて来る。
「君がジグか」
いかにも騎士といった風貌の厳ついおじさんに声を掛けられ、ジグはおそるおそる頷いた。
ジグも体格が良い方なのに、一番偉そうな騎士のおじさんと並ぶとまるで大人と子供のような体格差だった。
「異世界より使命を果たすために召喚された聖女が、君を勇者に指名した。我々と一緒に城に来てもらいたい」
まるで現実感が無い状況で、あたしは嫌な予感で動機が早くなって耳鳴りがした。
縋るようにジグの袖を掴むけど、ジグも呆然としていて反応は返って来なかった。
あの日が転機だった。
小高い丘にある大きな木の下で勇者…ジグが珍しく昼寝をしていた時。
悪ガキで大人も手を焼いてる三人が、昼寝ジグに悪戯しようとしてが見えて、私は行く手を阻んで睨みを利かせた。
「あんだよアンヌ、そこどけよ」
「そうだぞ、どけどけ!お前がこの草の泥汁被りたいのか?」
「ガキっぽいことしてんじゃないわよ。ジグはおじさんの手伝いで疲れてるんだから、休憩の邪魔しないの」
「おうおうなんだ?アンヌお前ジグの女房気取りかよ」
「は、はあ!?何言ってんの!?バカじゃないの!?」
「へへへ、顔真っ赤じゃん!図星か女房気取り!」
うわーやべーとか鬼嫁ーとか笑いながら囃し立てられて、アタシはかっとなって悪ガキが抱えてる草の泥汁入りのバケツを蹴る上げた。
派手な水音を立てて緑が混じった茶色みたいな液体が悪ガキどもに降りかかり、ついでぷんと変なにおいが立ち込める。
あたしは思わず鼻をつまんで三人から距離を取った。
「うわっ!ぺっぺっ…口ん中入っちまった!」
「くせー!くせー!お前何入れたんだこれえ!」
「適当にその辺の草だよぉ…どうしよ、こんな服汚したら母ちゃんに怒られちまう」
混乱しながら悪ガキ共は帰って行き、あたしはふんと鼻を鳴らした。
寝てる奴を襲うなんて意気地が無いったら。
左右を確認して、あたしはジグが背を預けてる木の反対側に腰掛けた。またあいつらが戻って来こないとも限らないから、少しの間見張っていようと思って。
ジグは大人びている。
大人び過ぎている。いつだっておじさんとおばさん、近所の人の手伝いをして、弟妹の面倒を見て、周りに気を遣って。
そんなジグなんだからたまにはこうやってサボったって罰当たらないわ。好きなだけ昼寝してりゃいいのよ。
「ありがとな」
まるであたしの考えを読んだみたいなタイミングで呟かれて、びくっと体が跳ねた。
「ど、ういたしまして」
声が少し掠れてしまった。
ジグは小さく笑うと、また寝息を立て始めた。
あたしの自惚れじゃなきゃお互いほんのり意識し合っていたと思う。
あたしとジグは近所の人や友達、両親にもいつかくっつくのだろうと思われていた。
それに複雑な心境になりながらも嫌じゃなくて。でも、ジグの方はどうだったのだろう。
でもきっとあのまま何も起こらなければ、多分あたしと勇者は結婚していたんじゃないかしら。
「おおいジグ!ジグーー!お、王国の兵隊が、お前を探してるって……!!」
いつものんびりしている木こりのトムおじさんが、叫んでるに近い声でジグを呼びに来た時。
あの時からあたし達を取り巻く全てが変わってしまった。
何事かと飛び起きたあたしとジグは、木こりのトムおじさんに連れられるまま村の広場に向かう。
そこには重そうな鎧を着て、仰々しい装いをした馬に跨った兵士がたくさん並んでいた。
その日常からかけ離れている光景にあたしは足が震えた。
先頭に居た一番豪華な鎧を着ている人が、ジグを確認すると馬から降り、こちらに近付いて来る。
「君がジグか」
いかにも騎士といった風貌の厳ついおじさんに声を掛けられ、ジグはおそるおそる頷いた。
ジグも体格が良い方なのに、一番偉そうな騎士のおじさんと並ぶとまるで大人と子供のような体格差だった。
「異世界より使命を果たすために召喚された聖女が、君を勇者に指名した。我々と一緒に城に来てもらいたい」
まるで現実感が無い状況で、あたしは嫌な予感で動機が早くなって耳鳴りがした。
縋るようにジグの袖を掴むけど、ジグも呆然としていて反応は返って来なかった。
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