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第14話『呪いの勇者、勇者と再会する』
しおりを挟むギルド受付嬢アクアの願いを聞き入れた俺達は現在、封鎖中の誰が設置したかも分からない、ダンジョン『荒れた洞窟』の魔法転送陣の前まで来ていた。
行けば直ぐにでも、魔王幹部と戦闘になるリスクもあるけど何とか全員で頑張ろうと思う。
「みんな準備はいいな! ここに踏み込んだら戦闘態勢を取ってくれ」
「私は、カケルから離れないようにするね」
「カケルさんにデバフを付与する準備完了です!」
「コキュートスも準備完了です!」
「それじゃ、踏み込むぞ!!」
♦︎♦︎♦︎♦︎
踏み込んだ先にあったのは、マグマが吹き荒れる洞窟でも無く、強敵が蔓延るダンジョンでも無かった。一面にクリスタルが輝く迷宮のような所だったのです。
あまりに綺麗なので、マリエルが拍子抜けしたかと思えばはしゃぎ始めていた。頼むよ、こんな所まで来て暴れないでくれ。俺の思いは、マリエルに届かないんだろうな。
「ガキか! ここ敵地だぞ? 敵が来たらどうすんだ!」
「いいじゃないですか。こんなにも綺麗なんですから。エリクシアもアリアドネだって見惚れていますよ?」
「まぁ、そうなんだけどさ。いいや、この辺を少しづつ探索して行こう」
探索と言ってもクリスタルの結晶があるばかりで、景色が一向に変わる事なく続いている。一応、アクアから地図は受け取っているんだけどあの女、絶対に絵を描く才能が無い!
ミミズみたいな線しか書いてなくて、俺達が今どこにいるのかすら分からないんだから。帰ったら絶対に怒鳴りつけてやる。
「カケルさん! これ見て下さい!」
あんまり、マリエルが騒ぐもんだから俺は急いでマリエルの元に向かう。すると、マリエルが指を指す一面に血溜まりが出来ていて、クリスタルに血がかかり、雫となってポタポタと地面に落ちていた。
「何だこれはー!!」
「カケル様、なんて酷い現場なのでしょう。吐いてしまいそうです」
「確かに気持ち悪いな。この道は通らないようにしておこう」
明らかに何者かと交戦した後なんだろう。勇者連中が襲われたのかも知れない。ヒーラーの彼女がとても心配だ。綾香はいつも俺を気にかけてくれたし、いつも回復魔法をかけてくれた。
毎度毎度、その回復魔法で死にかけてたんだけどな。あのパーティでは唯一の常識人であったし、今は仲間では無いけど状況が状況だ。生存の確認が取れればいいんだけどな。
道を迂回し進み続けると、物陰から息を切らす四人組が死にそうな顔で疲れ果て地面に転がっていた。そいつらは、俺がよく知っている奴でして、見るだけでいけ好かない奴だった。
「その様子を見ると、大分お疲れのようだな」
「その……声は…… 。カケルだな」
「助けてカケルくん! 一樹が死にそうなの!」
恐らく、魔王幹部の強襲に敗戦してやっとの思いで逃げて来たのだろう。魔術師の桜とヒーラーの綾香を除いては、かなりの重症だ。
助けると思うだろ?
答えは否だ。誰が助けてやるものか!
綾香の生存も無事確認が取れたのだから、これ以上は構ってやる必要も無い。このまま、無視をしてやるつもりだったんです。
ーー何で俺は、いつもこうなんだろうか。
「大丈夫か綾香。マリエル、治療薬を取ってくれ!」
「全く、カケルさんは女に甘いんですから」
「いつも一言余計なんだよ!」
甘ちゃんな俺を、エリクシア達がハイハイといつもの様に納得して治療に協力してくれた。こんなことしてる場合じゃないのなんて分かってるけど、嫌な顔一つしないで俺に協力してくれる姿に俺は感動した。
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