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第15話『呪いの勇者、首狩りの王と相対する』

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 「何で俺の治療がテキトーなんだ! しっかりやれ!」
 
 「うるせぇバーカ! 何で俺がお前なんか助けなきゃいけないんだよ」

 智治と口喧嘩をなんでしなきゃならんのか、俺にはサッパリだが気に食わないので、女性陣の手当てだけすることにした。

 こんな時でさえ智治は、自己中心的だからな。そんなに自分だけ助かりたいのだろうか。瀕死の一樹のことなんか一切心配していない。こんなのが勇者だと思うと、この世界も可哀想だな。

 いがみ合いをしていると、ヒーラーの綾香が俺に治療のお礼を言ってきた。そこまで律儀にしなくてもいいんだけどね。今後は、もう助けないだろうから。

 「ありがとうカケルくん。一樹はどうだった?」

 「あれは恐らく瀕死だよ。教会で蘇生して貰いな」
 
 「何で助けてくれたの? 確かに助けてとは言ったけど私達はカケルくんに酷いことしてたのよ?」

 「まだパーティにいた時、綾香だけは俺に優しかったからな。そのお返しだ。次は無いぞ」

 最低限の言葉だけ交わし、智治達を襲った襲撃者について聞いてみることにした。少しでも情報を入れておかないと、俺達まで死にかけてしまうかも知れないからな。

 「ネッチョリとした言葉使いで、一瞬で俺達を切りつけて来たんだ。カケル達じゃ敵わない。急いで脱出しろ!」

 「それだけ分かれば充分だ。情報通りで助かる。お前らはもう脱出しろよ。後は俺らがやるから尻尾巻いて逃げるんだな」

 「調子に乗るなよ! 仲間さえまともならあんな敵に遅れなんか取らないさ!」

 「そうやって、すぐ仲間のせいにするんだな。お前は正真正銘のクズだよ」

 魔王軍幹部の強さは、勇者である智治らを見ればよく分かる。噂通りの強者らしい。チームワークすら取れていないんだから、負けて当然だと納得してしまう。

 アクアの約束の為、絶対に討伐すると決めたのだからもう俺達は引き下がれ無いんだ。この先の戦闘に、集中することにしよう。

 ーードドドド!!

 地響きを鳴らし、あり得ない何かが迫ってくる音がしていた。まさかと思うがそうで無いことを祈るしかない。

 「奴だ……。奴が来る! 逃げろ!」

 「奴ってまさか……」

 轟音を鳴らし、クリスタルを破壊しながら現れたそいつは、まるで巨人だった。魚みたいなツラに、気持ち悪い化粧が施されていて、見ただけで吐き気が止まらない。

 「あら~? 強い魔物の気配を感じると思って来てみれば、私が殺し損なったゴミ虫ちゃんじゃない。見つけたからには殺しちゃうわよ~ん!」

|(魚ズラしたオカマが来たー!)

 恐らくアイツが『首狩りの王』なんだろう。巨人に魚をハイブリッドさせたような醜さを見せつけられただけで、俺達は死んでしまいそうだ。

 俺とエリクシア、マリエルにアリアドネは、そのあまりの気持ち悪さから来てるのか、恐怖から来てるのか分からんが体を震わせて絶句してしまっていた。


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