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第19話『呪いの勇者は臨界者である』

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 「これから話すのは、聖堂教会で召喚されたカケルさん達についての話しです。この話しは、聖堂教会の上層部と内通者の私しか知り得ない情報ですので、絶対に他言しないようお願いします」

 俺や智治達の召喚にまつわる秘密であるらしい。この世界に召喚された、明確な理由を知ることが出来るんだろうか。今は黙って聞くしかないんだろう。

 聞いた話しを現実問題として受け入れるだけの器が俺にあるか分からんが、妙な話しでない事を祈るばかりである。

 「本当は四人だったんですよ。この世界では勇者の召喚は四人であり、それ以上は今までにあり得ないことでした」

 「まさか、それって……」

 「そうです。あなたが五番目に召喚されたイレギュラー、天月 翔 だったんです」

 ーー俺の召喚は、本当はあり得ないことだったらしい。

 誰に呼び出されたのかも不明。存在そのものがおかしい、呪われた勇者のイレギュラー、それが俺のようだ。俺の存在にも驚いていたみたいだけど、また別件で教会内を騒がせていたという。

 もうお腹いっぱいなんですけど。これ以上何も驚きませんからね。そう思ってたけど、やっぱり無理でした。これから常に、俺は驚きを隠せなくなる。

 「そんなイレギュラーなカケルさんは、更におかしな所があったんです」

 「それはどんな?」

 「ーー臨界者、だったんですよ」

 「臨界者? なんだそれ」

 臨界者とはまた聞き慣れない言葉だ。俺は限界でも超えているんだろうか。馬鹿言ってんじゃねーよ。俺は仲間の支援無しじゃ戦えないほど、欠陥してるんだけどな。

 「臨界者とは、まず教会で願ったスキルや武器を貰ったと思います。そのスキルや武器は勇者の素質を認めた時、覚醒を始めるんです。その覚醒した武器は、魔王をも倒す力があるんだとか」

 「それってつまり、召喚時から俺の諸刃の剣は覚醒してたってこと?」

 「はい。カケルさんは、最初から武器に勇者として認められていたんです。武器を覚醒させた者は、聖堂教会で臨界者と呼ぶそうですよ」

|(どーして俺が認めてられなきゃいけねーんだよ!)

 勇者パーティから無能だと追放された俺が本当は真の勇者だったとは呆れた話しだな。現場では、俺しか魔王の討伐は出来ないってことなんだろうけど、魔王を討伐する気なんて毛頭ない。

 勝手に智治らが、臨界者とやらになるだろうと他人事なんだから。自分で追放した失態は、自分達で責任を取るべきだ。

 「魔王なんざ討伐する気なんか俺にはねぇよ」

 「分かってますよ。仲間の為にしか戦わないんでしょ?」

 「勿論だ」

 「もし私が聖堂教会に消されそうになった時、カケルさんは私を助けてくれますか?」

 内通者である彼女は、密告したことがバレてしまった時に聖堂教会に消されてしまうのだろう。この件はどうもきな臭い。

 元々は聖剣の情報をアクアの両親が握っていたんだ。それはアクアだって知っていた筈である。魔王軍幹部の強襲は、たまたまだったのだろうか。それとも聖堂教会が、邪魔と見做して消したのか。

 審議は分からないが、アクアもそれを知りたくて内通者をしながら、ギルドで受付嬢もこなしている事を思うと、両親の様に消されかねないと不安になっているんだろうな。

 「魔王なんて知らねーし、聖堂教会も微塵も興味ない。だけど、アクアに悲しい思いさせるってんなら俺とエリクシア達が黙っちゃおかねぇ。そん時は、命に変えても護ってやるよ」

 「いつものやる気あるのか無いんだか、分からない返事ですね。でも、そういうところが本当に素敵です」
 
 他言無用の約束を取り交わし、アクアを屋敷の門まで見送って今回の密会は幕を終えた。

 多少なりとも理解はしたが、頭の整理をする時間が必要だ。

 誰に呼び出された分からんし、今は俺しか魔王を倒す術がないこと。そして、怪しさ満点の聖堂教会のこと。教会のことなら、アリアドネが詳しいかも知れないな。暇な時にでも色々聞いてみよう。

 首狩りの王との戦闘でも、かなり疲労しているので一刻も早く眠りに着きたい。

 俺は、全てを忘れて泥のように眠るのであった。


 

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