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第27話『呪いの勇者は、勝利の余韻に浸る』

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 「私ごと撃ちなさい、カケルくん。何を躊躇ってるの!」
 「茅森警部、無理ですよ。撃てません!」
 「今撃たなきゃ、何万の人が死ぬわ。早くしなさい!」
 「うぁぁぁぁ!!」

 ーー、パァーッン!!

 あの硝煙と血の匂いを、今でも思い出すぐらい覚えている。

 俺の後悔や、正義とは何かを考えさせられた出来事だ。俺は、この罪を一生背負って、生きていかなければならない。仲間が出来てからこの悪夢はあまり見なくなったが、今回は久しぶりに見てしまったな。

 俺はいつも、夢の銃声の音で飛び起きてしまうのです。

♦︎♦︎♦︎♦︎

 「ーー、夢……か」

 「大丈夫ですかカケルさん。うなされていましたよ?」

 俺の寝室に人だかりが出来ていた。分かったぞ、この悪夢を呼んで来たのはマリエル達だな。後で説教してやる。メンバーの他に、アクアやニーナがいて俺に飛びついてきた。

 勘弁してくれよ。こちとら病み上がりだぞ? 

 そんなのお構い無しでニーナは俺に抱きつき泣きじゃくっていた。どさくさに紛れて、鼻水を俺の服になすりつけてきたのをしっかり見たからな。

 ムカつくのでビンタしたらまたワンワン泣きだしてしまい、逆にアクアから往復ビンタを貰うハメになった。俺、悪くなくねーか? 多少、落ち着いた頃に、その後の転末をアクアから聞かされた。

 「聖堂教会は、証拠隠滅を図りリッチー村の件において、一切関与していないとシラを切りだしたわ」

 「トカゲの尻尾切りだな」

 「情報操作までやっているから、今回の件は相当ドジったのね。いつか、聖堂教会に暗殺されても知らないわよ?」

 「なに、死にゃーせんよ。仲間がいるからな」

 また、何か企んでくるんだろうな。俺達がやった事は、聖堂教会からしたら断片的なもの何だろう。いつか必ず、また事を構える日が来るのだろうな。

 誰一人死なずに、丸く収まってくれたようで本当に良かった。俺達がやった事が、間違いでは無かったという証明にもなる。ニーナも元気そうだしな。今回の依頼は、完遂したってことでいいよな。

 「ありがとうございました。誤解も解けまして、今、村は復興を始めてます。何とお礼すればよろしいでしょうか」

 「そうですか。ならば、そのおっぱいを……」

 エリクシアには噛まれて、マリエルには平手打ち、アリアドネは俺の額にコキュートスを突きつけて来た。分かってましたよ。いつもこうですものね。お前ら絶対わざとだろ。

 「んっんん、その笑顔一つありゃ充分だ。その為に、みんな戦ってたんだから」

 「本当に……。ありがとうございます!」

 深々と頭を下げてアクアと共にニーナは、俺の寝室から立ち去った。それと同時にアリアドネ以外は、二人きりにするつもりだったのか空気を読んで立ち去ってしまう。

 何か話しがあるんだろうかと思い、アリアドネに何気ない世間話をしたのだが少しして本題を語ってくれた。やっぱり、俺が庇ったことを気にしてるんだろうか。

 「すみません。カケル様を殺してしまうところでした」

 「いいってことよ! この通り、元気ピンピンさ!」

 「そうではありません! 自分が許せないんです。自分の不注意であんな事に……」

 やっぱり気にしてたのか。涙を流すアリアドネに、そんな顔をさせた俺が一番の悪者だよ。本当にごめんな。

 「仮にアリアが逆の立場なら、俺と同じことしたと思うぞ? それは、エリィだってマリエルだってそうだ。そして、何だかんだ言って助けて助けられて……。それがパーティなんだ。昔、間違えちゃってな。救えるもんも救えなかったんだ。だから俺は今の自分を誇らしく思う!」

 「ありがとうございますカケル様。この御恩は絶対に忘れません。愛しております」

 アリアドネも感情が昂ってしまったのか。真偽は定かではないが俺の額に熱い唇を重ねていた。

 嬉しいですよ。 嬉しいんですよ!?

 だけど、あまりの激痛に俺は泡を吹きベッドに倒れこんでしまいました。昇天したっす。

 「あれ、あれれ!? カケル様ー!!」

 これにて、死ぬつもりであったリッチーの思いを護る為に、必死で戦った長いようで短かった日々は終幕した。もうこれ以上、厄介事はこりごりだ。

 ーー俺らのスローライフは、まだ遠いのでしょうか。
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