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第二章
075「緊急生ライブ配信③」
しおりを挟む——ギルド本部『記者会見会場』
「お、おい、ちょっと待てっ!! じゃあ何か! 新屋敷ソラっていう16歳の未成年探索者が今回の『魔物暴走』を『単独』で食い止められると判断できるだけの圧倒的な実力を持っているって言いたいのかっ?!」
「ああ、そうだよ! 実際結果がそう言ってるだろっ!!!!」
「なっ?! そ、そんなわけあるかっ!! あの⋯⋯あのイギリスのレヴィアス・アークシュルトでさえ、『魔物暴走』を一人で食い止めたのだって20代になってからだぞ!」
「知ってるよ!」
「だったら! お前が言っていることはまるで⋯⋯⋯⋯レヴィアス・アークシュルト以上の実力者と言っているようなもんなんだぞっ?!」
「ああ、そうだよ! 実際、結果が出ているじゃねーか! ていうか、そこまで言うのなら直接本人に聞けよっ?!」
「「「「「っ!!!!!!!!」」」」」
そして、記者たちの視線が一斉に俺へと向けられる。
ニカッ。
記者の向けられた視線の先にいた俺は満面な笑みを浮かべ話し始めた。
「えーと、初めまして⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラです」
パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
一斉にストロボが焚かれる。
ま、まぶしい。
「今回の『魔物暴走鎮圧』の件でご質問があればお答えします」
瞬間——ほとんどの記者がすごい勢いで一斉に手を挙げた。すると、司会進行役の琴音さんが質問者を選んでくれた。
「えー⋯⋯関東毎日の吉田です。今回の『魔物暴走』ですが、新屋敷ソラさんが一人で38階層に残ったのは『ギリギリまで粘って転移水晶で離脱する予定』だったのでしょうか? それとも『一人で食い止める自信があったから』でしょうか?」
「はい、食い止めれるという自信があったので残りました」
「「「「「なっ!!!!!!!!!」」」」」
記者たちがさっき激しくやり取りしていた話をその記者がストレートに質問してきたので、こちらもストレートに即答した。それと、
「あと、レベリングのボーナスステージかと思ってました」
「「「「「⋯⋯はっ?????」」」」」
一瞬、記者たちが呆気に取られる。
「そ、それは、つまり⋯⋯自分のレベルを上げるための最適な環境⋯⋯といった感じでしょうか?」
「そうですね。固い言い方だとそうなりますかね」
「い、いやいやいやいやいや⋯⋯っ?! レベリングのボーナスステージっておかしいでしょ!!『魔物暴走』ですよっ?!」
「はい。なので、こっちから魔物を探さなくても向こうからやってくるのでラッキーでした」
「ラ、ラッキー⋯⋯?????」
全記者が俺のこの解答に唖然とする。
あと、横に座っている唐沢と胡桃沢が頭を抱え、その横の炎呪はゲラゲラと一人爆笑していた。
⋯⋯解せぬ。
********************
「あ、あの⋯⋯」
「はい、そちらの方」
「と、東京朝日の古賀です! 新屋敷さん! あなたは現在D級ランカーのはずですよね?」
「はい、そうです」
「⋯⋯通常、D級ランカーであればBランクダンジョンの『魔物暴走』を食い止めるなんてあり得ないです! ただ、もしあり得るとしたら、それはあなたのレベルがD級ランクのそれを遥かに超えたレベルであるということになりますが⋯⋯⋯⋯これについてはいかがでしょうっ!!」
「仰る通りです」
「っ!? つ、つまり、現在の新屋敷さんの探索者レベルはD級ランカーの適正レベルを超えていると⋯⋯?」
「う~ん⋯⋯⋯⋯まー各ランカーの適正レベルがどのくらいなのかわかりませんが、たぶんD級ランカーの適正レベルよりも上だと思いますよ?」
「ち、ちなみに⋯⋯現在の探索者レベルは⋯⋯どのくらい⋯⋯」
「そうですね~、えーと、60ぅ⋯⋯⋯⋯」
「「「「「⋯⋯えっ!?」」」」」
「あ、やっぱ、レベルについては教えられないです。すみません」
「そ、そう⋯⋯ですか⋯⋯。わ、わかりました、ありがとうございます」
彼や他の記者たちがザワザワしている。おそらく俺が自分のレベルを聞かれた時に「60ぅ⋯⋯」ということを聞いてざわついているのだろう。
ちなみに、実際の俺の探索者レベルはというと⋯⋯、
——————————————————
名前:新屋敷ソラ
レベル:86
魔法:<初級>ファイヤバレット/ファイヤランス/ウィンドバレット/サンダーバレット/サンダーランス/ソードウィンド/コールドブレス/サンドアタック<中級>魔炎豪雨/風刀豪雨/雷刀豪雨/氷塊豪雨
スキル:<初級>身体強化/縮地/怪力/忍足<中級>魔力洗浄/小規模索敵/気配遮断/鑑定調査
恩寵:自動最適化/共有化
——————————————————
と、ダンジョンボスを倒したときにレベルが一気に5つ上がったので、現在のレベルは『86』になっている。つまり、さっきの俺の「60ぅ⋯⋯」発言は完全にガセ。偽情報である。しかも過少申告。
まー探索者ランクの適正レベルというのは、俺にはわからないのだが少なくともレベル60台はD級ランクの適正レベルは超えていると唐沢から聞いたことがあったので、これが『過小申告』であると疑うのはいないだろう。
この後もいろいろと質問されたが、俺は特に隠すことなくそのまま真実を話した。そんな中、最後の質問ということで一人の記者がこんな質問をした。
「新屋敷ソラさん。今回、あなたの功績は探索者の歴史においても輝かしい偉業と功績であることは間違いないでしょう。そして、あなたのその強さは国内だけに留まらず、海外の⋯⋯とりわけ先進国のギルド本部はもちろん、全世界の探索者に様々なインパクトを与えたと思います。そこで質問ですが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラさんは世界ランキングトップ10を目指すつもりはあるのでしょうか?」
「「「「「っ!!!!!!!!!」」」」」
この質問に、全記者が俺の言葉に注目した。
「そう⋯⋯ですね~⋯⋯⋯⋯はい、やれるだけのことはやってみたいと思います」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」
すると、俺の言葉に記者だけでなく、周囲の探索者やギルド職員などが一斉に声を上げた。
「あ、新屋敷ソラさんのこの強さなら⋯⋯本当に世界ランキングトップ10に日本人が入る日が来るかも⋯⋯っ!!」
「よっしゃぁぁぁ!! これで『弱小国探索者ギルド』なんて言われる日ともおさらばだぜっ!!」
「日本の探索者、なめんじゃねーぞーっ!!」
こうして、急遽開いたギルド本部での『記者会見』が幕を閉じた。
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