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第三章
112「告白(カミングアウト)」
しおりを挟む「賢者の言う通り、俺はこの二人と同じように別の地球からこの世界に転移してきた⋯⋯⋯⋯『転移者』だ」
「ソラっ!?」
「ソラ君っ!!」
唐沢と胡桃沢がガタッと席を立つ⋯⋯⋯⋯が、俺は二人のリアクションに反応することなく話を続けた。
「ここにいる人たちが『転移者』の話をどこまで知っているのかわからないが、俺自身『転移』について何もわからない」
周囲の者たちは、ソラの言葉に黙って耳を傾ける。
「最初は『天罰』への加入を躊躇っていた⋯⋯⋯⋯けど、転移者の情報や今回の『朧』の件も含めて一人じゃ限界があると思って、それで最終的に賢者に『天罰』に加入することを伝えた」
そう言って、ソラが賢者へと目線を向ける。賢者はフッと微笑する。
「ま、そういうこともあって、俺はこの二人が『天罰』に加入したいと考えるのは『別に当たり前だよな~』と思っている」
「「⋯⋯⋯⋯」」
唐沢と胡桃沢も少し落ち着いたのか、俺の話を黙って聞くようになった。
「あと、賢者から『朧』の話やその中で『首領』と言われる、前回の転移者の話も聞いた。正直、俺たち以外にもこの世界に転移していた人間が過去にいると聞いたときは驚いたよ。⋯⋯⋯⋯ただ、その前回の転移者がこの世界を支配しようと動いているという話を聞いたときはぶっちゃけ引いたけどな」
そう言って、ソラは苦笑いを浮かべる。
「⋯⋯まあ、そんなわけで『転移者』である俺は、いずれ望まなくとも問題に巻き込まれるんだろうと悟った。で、こうして、今『天罰』に入ってここにいるわけだが⋯⋯⋯⋯たぶん、この二人も俺とは入口は違うにしても目的は一緒なんだと思っている」
「情報収集⋯⋯⋯⋯てことか?」
「ああ。でもそれだけじゃない。どうしても一人や二人じゃいろいろと限界があるからな」
ランスが尋ねるとソラは即答した。
「あのさ~、別によ~⋯⋯」
すると、ここで鏑木から声が上がる。
「別に、俺らは仲良くしようぜってことでここに来ているわけじゃないんだぜ? 俺たちはただこの世界の住人じゃねーからよ~、とりあえず同郷の仲間を集めてよ~、この世界でどうやって生きていくかって話をしたいだけなんだ」
と、淡々と言葉を発する鏑木。そして、
「⋯⋯鏑木の言う通りです。私たちがいた地球では、この世界のようにダンジョンや魔法、スキルなんてものは存在しません。確かにそれ以外の社会システムとかテクノロジーなどは似ているところはありますが、それでも厳密には同じではないです。『明らかに違う世界』なんです。それは、もはや私たちにとっては『異世界転移』したのと何ら変わりません」
早乙女もまたいつもより声を張り上げ、皆に訴える。
「なので、私たちの目的はソラ君も言っていたように仲間を見つけるための情報収集が第一です。でも、もちろん、私たちに協力できることがあれば協力も致します。なので、そこだけは信用していただきたい」
そう言って、早乙女が頭を下げた。
「⋯⋯だそうだぞ、ランス?」
ジョーがランスに意地悪く声を掛ける。
「ケッ! わーったよ! ただ、全面的に信頼しているわけじゃねー。変な行動を取ったらその時はそれ相応の対処をする」
「もちろんだ」
「じゃー、問題ねー!」
ランスは早乙女に釘を刺すと、一応の了解を示した。
「他はどうだ?」
賢者が他の者たちにも確認すると、他もランスと同様の意見だったようで「それならば問題はない」ということでとりあえずの納得を示す。
「感謝する」
早乙女はそう言うと、鏑木と二人皆に頭を下げた。
これで二人の受け入れ問題はとりあえずの決着を見せた。
********************
「さて、ここからがいよいよ本題だが⋯⋯」
と言って、賢者が話を始める。
「今回『朧』の目的は、メイベル・ホワイト、王明凛、新屋敷ソラの拉致だと言っていた。⋯⋯⋯⋯大丈夫だったか?」
「まー、いろいろあったけど、とりあえずはね。でも⋯⋯」
賢者の質問に王明凛が反応する。
「『朧』の第一席、『朧十二支最強』と言われている朧辰と対峙したけど、あいつ相当強かったわ。そうでしょう⋯⋯⋯⋯ジョー?」
「ああ。ありゃ、ゲオルグの旦那と良い勝負するか⋯⋯⋯⋯それ以上の可能性もあるな」
「「「「「何っ?!」」」」」
ジョーの発言に一同が驚きの声を上げる。
「⋯⋯ほう? そんなにか?」
そして、当の本人ゲオルグ・シェフチェンコがジョーに声を掛ける。
「ああ。まー魔法やスキルとか使うような戦いにはならなかったから、実際は何とも言えないが⋯⋯⋯⋯少なくとも『物理』でやり合うだけなら旦那と良い勝負するか、それ以上の可能性はあると思うぞ」
「お前はどうだったんだ、ジョー?」
「俺? まーとりあえずは対抗できたが、ただ、朧辰は様子を見ている感じだったからな。ガチでの殴り合いだと何とも言えん」
「ジョー・ウェインがそこまで認めるか⋯⋯⋯⋯フフ、朧辰か。面白いな」
そう言って、ゲオルグがニィィと獰猛な笑みを浮かべる。
「メイベルのほうはどうだった?」
次に、賢者がメイベルに声を掛けた。
「私のほうは⋯⋯」
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