イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第四章

147「ある少年(3)」

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 そして、そこから階段で2階に上がるとそこがメインの生活エリアになる。ちなみに湊くんはちょうど2階の入口から中に入ってきたところだ。

「す、すごい家ですね⋯⋯」
「ありがとう!」

 湊くんが第一声でそんなことを言ってくれた。嬉しい。

探索者シーカーの第一線で活躍している方って、やっぱりすごく稼ぐんですね!」

 湊くんが目を輝かせてお兄ちゃんに聞いてくる。

「まーそうだな。でも、俺は運が良かったよ」
「運⋯⋯ですか?」
「ああ。そもそも探索者シーカーとしてデビューできたのもソラと出会ったおかげだし、その後のあれだけの急成長もすべてソラのおかげだよ」
「ソラ⋯⋯って、新屋敷ソラさんですよね?
「ああ、そうだ。ソラはすごい奴だよ。ソラは知っているだろ?」
「も、もちろんです?! 唐沢さんたち探索者集団シーカー・クラン新進気鋭アップスタート』のリーダーにして最速でS級ランカーになった方ですよね!」
「おお、そうだ。よく知ってるな! 俺や胡桃沢はソラがいなかったら探索者シーカーになんて絶対になれなかったと思うよ」
「へ~、ソラさんって、そんなにすごい人なんだ」
「そうだぞ、桃華。ソラはすごいんだぞ」
「ふ~ん」

 私はお兄ちゃんの仕事や探索者シーカーについて、正直そこまで興味がないからその手の話をほとんどしたことがなかった。そんな私が興味を示す態度を取ったからか、お兄ちゃんが嬉しそうに私のほうを見た。

「ふ~んって⋯⋯桃華ちゃんは知らないの、新屋敷ソラさん?」
「えっ!? し、知っているよ! あ、あれでしょ! お兄ちゃんと一緒に活動しているチームのリーダーさんの⋯⋯」
「う、うん。まーそうなんだけど⋯⋯ソラさんはかなり有名人だよ。まさか、唐沢さんの妹だからてっきりソラさんのこと知っているかと思ったけど⋯⋯」
「まーしょうがねーよ。桃華は俺の仕事や探索者シーカー自体にあまり興味ないからな。兄としてはもうちっと興味持って欲しいと思ってんだけどな⋯⋯ははは」

 そう言って、お兄ちゃんが湊くんに苦笑いしながら愚痴をこぼす。

「そうなんですね~。僕としてはすごく羨ましい環境だと思うんですけどねぇ~⋯⋯」

 そして、湊くんもまた私を見て何だか『残念』な表情でお兄ちゃんに返事を返す。

「ちょ、ちょっとぉー?! 何で私が悪者みたいな感じになっちゃうのよー!」
「はは、冗談だよ、冗談。そんなに怒るなよ、桃華」
「ごめん、桃華ちゃん。つい調子に乗っちゃった」

 そう言って、2人が「揶揄からかってごめん」と謝った。

「それにしても湊くんとは何だか気が合うな~」
「そ、そんな! 恐れ多いですよ!?」
「いやいやいや、本当、本当。それに湊くんは桃華と同じ小学4年生なのに、妙に大人びていると言うか、しっかりしていると言うか⋯⋯あと相手の話もちゃんと聞いているし。あと自分の意見もしっかり持っているじゃん。正直、こんな小学生見たことねーよ」
「い、言いすぎですよぉ~?!」
「いや、マジ、マジ! 湊くんすげーって!」
「⋯⋯⋯⋯」

 お兄ちゃんと湊くんが、何だか目の前ですごいイチャイチャしてる。⋯⋯何これ?

「いや~、それがよ~、探索者シーカーになって初めて入った関東C24のダンジョンでな~⋯⋯」
「え~! そうなんですか!? すごいですね!!」
「⋯⋯⋯⋯」

 その後、私はお兄ちゃんと湊くんのイチャイチャタイムを約30分間見せられる羽目になった。

「ナンダカ タノシソウ デスネ」
「「あ⋯⋯⋯⋯」」

 二人がやっと私の存在に気が付いてくれた。

「ご、ごめん⋯⋯桃華ちゃん」
「ううん、気にしないで。だって、湊くんはお兄ちゃんとお話がしたかったんだから何も問題ないよ?」
「わ、悪ぃ⋯⋯桃華」
「お兄ちゃん。話すのはいいけど、私のことほったらかしにするってどうなの?」
「「⋯⋯ごめんなさい」」

 二人が声を揃えて土下座して謝った。

 あれ? 湊くんまでお兄ちゃんと一緒に謝っちゃった。

 そんなつもりじゃなかったんだけど⋯⋯まーいっか。


「それじゃあ、そろそろ⋯⋯」
「え? 湊くん、もう帰るのぉ?」
「うん。遅くなるとお母さんが心配するからね」
「うん、えらい! やっぱり湊くんはしっかりしてるな~。うちの桃華とは大違い⋯⋯」
「うっさい!」
「痛ぇっ!?」

 むかついたので、お兄ちゃんの脛を蹴ってやった。

「ははは⋯⋯。今日はありがとう、桃華ちゃん。そして、唐沢さん⋯⋯今日は貴重な話を聞かせていただいてありがとうございました!」
「いいって、いいって。そんな大層なことじゃないから!?」
「そう、そう。本当に大したことないんだから」
「⋯⋯おい、桃華。お前が言うと何だかニュアンスが変わるんだが?」
「何よー!」
「ふふ⋯⋯本当に仲が良いんですね、二人とも」
「「よくない!」」
「ふふふ⋯⋯では、これで失礼します!」
「あ、駅まで送る⋯⋯」
「いいよ、桃華ちゃん。駅まですぐだし。それじゃあ、失礼します!」

 そう言って、湊くんは帰って行った。

「⋯⋯湊くん、いい子だな」
「うん」
「もし、またウチ来たいって言うなら構わないからな」
「いいの?!」
「おう! 俺も湊くんは気に入ったしな!」
「ありがとう、お兄ちゃん!」

 どうやら、お兄ちゃんも湊くんのことを気に入ってくれたようだ。

 これで、次も家に呼ぶことができる。やったー!


********************


「⋯⋯あれが唐沢利樹、か」

 その言葉を吐いたのは、唐沢の家から駅へと向かっている湊修二。

「なるほど。ソラのおかげでこの短期間で強くなっているな、面白い⋯⋯くくく」

 湊はそんなことを特に小声でもなく普通にしゃべりながら歩いていた。通常、そんな他人に聞こえる声量でひとり言を言っていたら危ない人だとジロジロ見られそうなものだが⋯⋯しかし、周囲の人間は湊がそもそもそこに存在していることを認識できていないような⋯⋯そんな振る舞いをしていた。

「さて、これからしばらくは唐沢家に出入りして信頼関係を築きながら、ソラのところへ案内してもらおうかな? くくく⋯⋯ソラは私を見て気づいてくれるかな? いや~楽しみだ」
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