148 / 157
第四章
148「賢者《ワイズマン》の懸念(1)」
しおりを挟む「え? 炎呪が⋯⋯?」
「ええ」
いつものようにSランクダンジョンの探索を終え帰る時に明凛の声をかけられた。
「あ、そうそう。私にも炎呪から連絡があったわ。これから探索者ギルドに来てくれって」
とは、メイベル。
「ふ~ん、何だろ? まさか⋯⋯何か無茶振り案件とかではっ!?」
俺が警戒するようなことを言うと、
「大丈夫よ。もし、そうだったら私が一言物申すから」
と、メイベルが不敵な笑みを浮かべながら淡々と告げる。
「何? 炎呪とメイベルって仲悪いの?」
明凛にそっと聞いてみた。
「別に⋯⋯というわけでもないけど。何だろ⋯⋯まーいろいろとあの二人は因縁があるのよ」
「因縁?」
「あの二人って、探索者デビューも一緒だったし、その後のランク昇格や実績とか含めて何かと競っていたからね」
「へ~、そうなんだ」
と、明凛と話していると、
「ちょっと! 何、勝手に人のこと話してんのよ!!」
「別に。ただ、あんたと炎呪の因縁について軽く説明してただけよ」
「やめてよ! 炎呪との因縁だなんて⋯⋯」
「何、メイベルって炎呪とはライバル関係とかなのか?」
「そんな良いものじゃないわよ」
そう言って、メイベルが淡々と話し始めた。
「まー明凛が言った通り、探索者がデビューが一緒でね。それからは何かとあいつとはやり合っていたわ」
「へ~」
「あいつはね~⋯⋯炎呪はやることなすこと計算高いからむかつくのよ! あ、そう言えば⋯⋯!」
そう言って、メイベルは何かを思い出したようだ。
「あいつ、私よりS級ランカーの昇格が早かったとか言っているらしいのよ!」
「そうなのか?」
「違うわよ! 私のほうが一日早いってのっ!! あいつ⋯⋯ちょうどいいわ。今から殴り込みに行くわよ!」
「「何でそうなんだよ(のよ)!」」
と、メイベルが一人プリプリしながら、俺たちはインフィニティ日本本部へと向かった。
「やあ、久しぶりだね。ソラ君!」
「ども」
ギルドマスターの部屋に入ると、炎呪が笑顔で迎えてくれた。
「あいかわらず、うっさんくさいわねー」
「やあ、メイベル。それに明凛も⋯⋯探索者世界会議以来だね」
そんな感じで、一通り挨拶を済ませるとすぐに炎呪が話し始めた。
「実は、今日ここにあるゲストが来ているんだ」
「「「ゲスト?」」」
「おーい」
と、炎呪が部屋の外に向かって声をかけた。すると、ドアがギィーと開いて入ってきたのは、
「「「ワ、賢者っ!!!!」」」
********************
「久方ぶりだな、ソラ。王明凛にメイベル・ホワイトはかなり久しぶり⋯⋯といったところか」
ドアを開けて現れたのは、まさかの賢者だった。
「賢者⋯⋯お久しぶりです」
「ま、まさか賢者が来るなんて⋯⋯!」
「?」
明凛とメイベルは、少し固い感じで挨拶をした。ていうか、緊張⋯⋯してる?
「賢者は二人は面識はあまりないのか?」
「まーそうだな。基本、私は日本から出ることは少ないからな」
「へ~そうなんだ」
などと、いつものように俺が賢者と話していると、
「ちょ、ちょっと?! ソラっ!!」
「ん?」
突然、メイベルが話に入ってきた。ていうか、何か怒っている様子だ。
「あ、あんた、賢者相手に少し馴れ馴れしいんじゃなくてっ!?」
「え?」
メイベルからまさかそんな指摘を受けるとは⋯⋯。
「い、いや、馴れ馴れしいって言われても、これくらい普通⋯⋯」
「普通じゃないですよ、ソラ」
「ええっ?!」
ここで、まさかの明凛にも注意された。
な、何だ? どゆこと?
「あははは⋯⋯。そっか、ソラは知らないからね」
すると、俺たちのやり取りを見て炎呪がカラカラと笑う。
「知らない? 何がだ?」
さすがの俺も炎呪の態度に少しムッとする。
「ごめん、ごめん。えっとね⋯⋯」
そう言って、炎呪が事の次第を説明した。
「賢者は普段からあまり人前に姿を現さない⋯⋯いわゆる『SSR』なんだ」
「おい、炎呪。人をガチャのレアカードのような言い方をするな」
ここで賢者が炎呪にツッコんだ。賢者のそんな姿もまた滅多にない珍しい光景だ。ていうか、この二人、意外と仲が良いのかもな。
「まあまあ。で、だから賢者に会えることって実は特別で滅多にないんだよ」
「え? そうなの?」
「うん。国内の探索者だってそうなんだから、海外の探索者なんて余計に会う機会なんてほとんどないからね。そして、それはこのS級ランカー二人も例外じゃない」
「えっ?!」
俺は炎呪の説明を聞いて思わず二人に顔を向けた。
「炎呪の言う通りよ」
「ま、そう言うことよ」
明凛とメイベルが即答する。
「だから、ソラ君がさも当たり前のように賢者と接しているのは、二人からしたらとんでもないことって感じで映っているんだよ」
「⋯⋯⋯⋯」
マジでかー。
0
あなたにおすすめの小説
社畜生活に疲れた俺が転生先で拾ったのは喋る古代ゴーレムだった。のんびり修理屋を開店したら、なぜか伝説の職人だと勘違いされている件
☆ほしい
ファンタジー
過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。
もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。
俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる